論 文 要 旨 氏名 名方 剛 学位論文 題名 The Impact of Plaque Characterization Assessed by Intravascular Ultrasound on Myocardial Perfusion After Primary Angioplasty in Patients With ST-segment Elevation Myocardial Infarction (ST 上昇型心筋梗塞患者におけるステント留置後の心筋灌流障害と 血管内超音波の検討) 背景: ST 上昇型心筋梗塞患者(ST-segment elevation myocardial infarction ; STEMI) において primary percutaneous coronary intervention (PCI)後の予後規定因子の 1 つで ある、心筋再灌流障害を primary PCI 時に血管内超音波(intravascular ultrasound; IVUS)を用いて予測することを目的とした。 方法: 初回発症の STEMI 患者で primary PCI 前に IVUS にて責任病変の粥腫形態を観 察しえた 306 人 306 病変を対象とした。冠動脈造影にて梗塞責任病変を同定後、IVUS カテーテルを梗塞責任病変から 10mm 以上末梢側へ挿入し、0.5mm/秒の速度で自動プル バックし梗塞責任病変を観察した。その後、末梢保護デバイスを使用せずに冠動脈ステ ントを用いて通常通りの手技でステントを用いた primary PCI を行った。IVUS の解析 は梗塞責任病変部位と中枢側の対照血管部位で血管面積、内腔面積、さらにはステント 留置後の IVUS にてステント面積を定量的に計測。さらに、プラーク破錠の有無、解離 の有無、低エコー領域としての Lipid pool の有無、180 度以上のエコーの減衰をきたす 粥腫(ultrasound attenuation; UA)の有無に関しての定性的評価も行った。石灰化に関し ては、内膜内における石灰化の分布部位(プラーク厚の 50%より浅い位置を superficial、 深い位置を deep)を評価した。Primary PCI 後の心筋灌流障害に関しては、治療前の 12 誘導心電図において ST 上昇の電位が最も高い誘導を選択し、Primary PCI から 60 分後 の ST 上昇電位が primary PCI 前のそれと比べ 70%以上軽減しているものを complete、 30-70%軽減しているものを partial、電位の軽減が 30%未満のものを absent ST resolution (STR)と定義した。 結果: IVUSでの定性的粥腫性状診断解析ではプラーク破錠、解離、lipid pool、superficial calciumの頻度で3群間に差を認めなかったが、absent STR群では他の群と比べ有意に UAとdeep calciumが多く観察された(60%, 42%, 26% for UA; 78%, 68%, 48% for deep calcium、両者ともp<0.001) 。多変量解析でもIVUSにおける梗塞責任病変部位でのUA とdeep calciumの存在がabsent STRの強い独立寄与因子であった。 考察: UAを伴うプラークはその後に我々が行った病理像との対比研究(剖検症例での 検討)においても、微小石灰成分や多量の壊死性コア、またマクロファージを中心とす る炎症細胞を含有していることが明らかとなり、これらの粥腫に対して末梢保護デバイ スを用いずに冠動脈ステントを留置すると、末梢塞栓から心筋灌流不全を引き起こすこ とが示唆される。 結語: STEMI患者に対するprimary PCIの際にステント留置前のIVUSでUAやdeep calciumが梗塞責任病変部位で観察されれば、高率にPCI後の心筋再灌流障害を引き起こ す。これらが観察された場合は末梢保護デバイスを用いてステント留置することが推奨 される。
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