溶融 Sn-Ag 合金の表面張力に及ぼす酸素分圧の影響

E-17
溶融 Sn-Ag 合金の表面張力に及ぼす酸素分圧の影響
08-1-035-0139
1. 諸言
太平
知佳
と考えられる.
溶融 Sn-Ag 合金は,通常の溶融金属とは異なり,
また,図 1(b)より温度係数が正から負に変化し
その表面張力温度依存性が正になる組成があると
ていることが分かる.これは,温度の違いによる
報告されている.しかしながら,従来の研究では
液滴表面近傍の Sn と Ag の濃度差が原因で正の
表面張力の測定雰囲気が制御されていないことが
温度係数になり,ある一定の濃度になった後に温
多く,
真の値が得られているとは限らない.
特に,
度の影響で負の温度係数が現れると考えられる.
酸素は界面活性剤として働き,表面張力に影響を
及ぼすことが知られている.
そこで本研究では,静滴法の装置に酸素分圧制
御機構を組み込み,酸素分圧制御下で Sn,Ag お
よび Sn-Ag 合金の表面張力の測定を行い,表面張
力に及ぼす酸素分圧の影響を検討した.
2. 実験方法
測定雰囲気における酸素分圧の制御には,式(1)
(a) PO2=10-3~10-6[atm]
の反応を利用した脱酸素の装置を使用し,安定化
ZrO2 酸素センサーで PO2=10-21~10-23[atm]の極
低酸素分圧の値を確認した.高酸素分圧雰囲気に
は,
高純度 Ar
(PO2=10-3~10-6[atm])
を使用した.
2Mg + O2 ↔ 2MgO
・・・(1)
∆G0 = −1202700 + 214.28T
・・・(2)
表面張力の測定には改良型の静滴法を用い,単
-
結晶 Al2O3 の R 面(1102)に Sn,Ag,Sn-50%Ag
合金をそれぞれ滴下した.実験温度は Sn および
Ag では 1000℃,Sn-50%Ag 合金では 600℃,
800℃,1000℃とした.
3. 実験結果および考察
図 1 に酸素分圧 PO2=10-3~10-6[atm],
PO2=10-21
~10-23[atm]における
(b) PO2=10-21~10-23[atm]
図 1 Sn-50%Ag 合金の表面張力
4. 結言
(1) 高純度 Ar 雰囲気では,酸化物の生成によ
Sn-Ag 合金の表面張力を,
り正確な表面張力の測定ができないこと
直角二方向からの撮影で得られた値で示す.(a)
がわかった.本研究で用いた Mg の脱酸素
の高酸素分圧領域では,エラーバーで示す各撮影
装置を用いることで,極低酸素分圧雰囲気
におけるばらつきが非常に大きくなり,(b)の極低
での測定が可能であり,正確な表面張力値
酸素分圧領域では小さくなった.値がばらつく原
を得ることができる.
因として実験装置の振動や雰囲気との反応が考え
(2) Sn-50%Ag 合金の表面張力の温度係数は,
られるが,極低酸素分圧下でのばらつきが小さい
吸着と温度の影響で正から負へ変化する.
ことから,液滴は雰囲気中の酸素と反応している