((m1,m2),(rL,rR), p, q) = ( (R, R),(u, u),p , 1 2 ) ( (R, R),(d, u),p , 1 2

経済学のためのゲーム理論入門
第 4 章 不完備情報の動学ゲーム
4.4
以下では,本問 4.4 のごく簡単な解答,解説を与える.問題 4.3,4.5 と同様に考えるので,より
詳しい考え方や解答の過程についてはそちらの方を参照されたい.また,a と b の各ゲームにおい
て,戦略の組を ((m1 , m2 ), (rL , rR )) という形で表す.ここで,mk (k = 1, 2) はタイプ tk の送り手
の戦略,rL は左側の情報集合 uL における受け手の戦略,rR は右側の情報集合 uR における受け
手の戦略を表す.また,受け手の信念について,p = Prob(t = t1 |uL ),1 − p = Prob(t = t2 |uL ),
q = Prob(t = t1 |uR ),1 − q = Prob(t = t2 |uR ) で表す(ただし,0 ≤ p, q ≤ 1).
a.
タイプ t2 の送り手について,R が L を強く支配する戦略であるため,m2 = L を含むような均
衡が存在しないことを踏まえて解く.
(Case1) 一括均衡 (m1 , m2 ) = (R, R)
受け手の信念は,送り手のタイプの従う共有事前分布から q =
1
2
と計算されなければならない.
この信念を所与とした場合,uR においては,受け手にとっては u をとるのが最適な反応になって
いる.かつ,受け手のこの行動を所与とした時,どちらのタイプの送り手にとっても,単独で戦略
を R から L に変更することで自らの利得を厳密に向上させることのできる余地はないから,そう
する誘因が存在しないことが分かる*1 .以上から,
(
1)
((m1 , m2 ), (rL , rR ), p, q) = (R, R), (u, u), p′ ,
2
(
)
′′ 1
(R, R), (d, u), p ,
2
(p′ ,p′′ は何でもよい)
の二つの一括完全ベイジアン・ナッシュ均衡が存在する.
(Case2) 分離均衡 (m1 , m2 ) = (L, R)
送り手の信念については,p = 1, q = 0 となっていなければならない.この時,受け手の最適な
戦略は (rL , rR ) = (u, d).この受け手の行動を所与とした時,どちらのタイプの送り手にとっても
単独で戦略を変更する誘因は存在しない.以上から,
((m1 , m2 ), (rL , rR ), p, q) = ((L, R), (u, d), 1, 0)
の一つの分離完全ベイジアン均衡が存在する.
*1
タイプ t2 の送り手については R が L を強支配するのがわかっているので,実際は,タイプ t1 に戦略を単独で変更
する誘因があるかないかだけを調べればそれで十分である.
1
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第 4 章 不完備情報の動学ゲーム
b.
a. と同様に,送り手の戦略によって場合分けしながら均衡を計算していく.
(Case1) 一括均衡 (m1 , m2 ) = (L, L)
受け手の信念について,p =
1
2
でなければならず,この信念の下で,uL における受け手の最適
な行動は u.この受け手の行動を所与とすると,rR が何であろうと,タイプ t2 の送り手には単独
で戦略を変更する誘因はないが,タイプ t1 の送り手について,もし uR において受け手が d を選
択する場合,送り手には戦略を単独で変更する誘因が生じる.uR において,受け手が u をとるの
が最適となるための条件は,信念 q について,q ≤
2
3
である.以上から,戦略と信念の組
(
1 )
2
((m1 , m2 ), (rL , rR ), p, q) = (L, L), (u, u), , q ′ (ただし,q ′ ≤ )
2
3
は,一括完全ベイジアン均衡である.
(Case2) 一括均衡 (m1 , m2 ) = (R, R)
受け手の信念について,q =
1
2
でなければならず,この信念の下で,uR における受け手の最
適な行動は u.この受け手の行動を所与とすると,タイプが t1 の送り手については,uL にお
ける送り手の行動が何であろうと,戦略を R から L に変更する誘因を持つから,送り手の戦略
(m1 , m2 ) = (R, R) を含むような完全ベイジアン均衡の戦略の組は存在しない.
(Case3) 分離均衡 (m1 , m2 ) = (L, R)
受け手の信念について,p = 1, q = 0 でなければならない.この信念の下では,受け手の最適な
戦略は (rL , rR ) = (d, u),受け手のこの行動を所与とした時,どちらのタイプの送り手にとっても
単独で戦略を変更する誘因は存在しない.以上から,戦略の組
((m1 , m2 ), (rL , rR ), p, q) = ((L, R), (d, u), 1, 0)
は,分離完全ベイジアン均衡である.
(Case4) 分離均衡 (m1 , m2 ) = (R, L)
受け手の信念について,p = 0, q = 1 でなければならない.この信念の下では,受け手の最適な
戦略は (rL , rR ) = (u, d),受け手のこの行動を所与とした時,どちらのタイプの送り手にとっても,
単独で戦略を R から L に変更する誘因は存在しない.以上から,戦略の組
((m1 , m2 ), (rL , rR ), p, q) = ((R, L), (u, d), 0, 1)
は,分離完全ベイジアン均衡である.
2
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第 4 章 不完備情報の動学ゲーム
以上まとめると,このゲームには一つの一括完全ベイジアン均衡
(
1 )
2
((m1 , m2 ), (rL , rR ), p, q) = (L, L), (u, u), , q ′ (ただし,q ′ ≤ )
2
3
と,二つの分離完全均衡
((m1 , m2 ), (rL , rR ), p, q) = ((L, R), (d, u), 1, 0)
((R, L), (u, d), 0, 1)
が存在する.
3