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速
報
糖 尿病 に お け る心 拍 変 動 を表 す3指 標 の 測 定 値 の 比較
鈴木
松岡 健平
隔変動
尿 例 は11名.入
一 部 の 糖 尿 病 患 者 で は 心 電 図 上RR間
吉彦
院 時 の 平 均 空 腹 時 血 糖 値 は159±
幅 また は 心 拍 変動 幅 が 減 少 し,自 律 神 経 障 害 を 反
61mg/dlで
映 す る現 象 とさ れ る1).そ れ を定 量す るた め,こ れ
あ っ た.ま た,血 清Cr2.0mg/dl以
まで に 多 くの 指 標 化 が 提 案 さ れ て きた.中
剤 服 薬 中 の 者 は除 外 した.
邦 で は安 静 時 のRR間
隔 の 変 動 係 数(以
で も本
方
の 差(以 下Max
RR間
れ て きた.ま
置SRR5(GMS社,医
隔変動 観 察装
療 器 具 承 認 番 号04B-1703)
を用 い 深 呼 吸 時RR間
HSRRと
略 す)1)が良 く用 い ら
た 最 近 で は 新 型RR間
隔 ヒ ン ジ 散 布 度(以
下
略 す)が 測 定 され る3).し か し これ ら を臨
床 で 利 用 す る際,ど
上 の 者,降 圧
下CVRR
と略 す)2)と,深 呼 吸 時 心 拍 数 の 最 大 値 と最 小 値 と
MinHRと
あ り,平 均HbAlcは8.7±2.5%で
れ が 最 も優 れ た もの か,十
分
法
隔 変 動 観 察 検 査 で は,対 象 を約5分
静 臥 位 に した 後,安
間安
静 時 心 拍100拍
を記 録 し た.
続 い て 深 呼 吸 負 荷 に よ る心 拍100拍
を記 録 し た.
深 呼 吸 は吸 気 よ り開 始 し5秒
ご とに 吸 気 と呼 気 を
反 復 させ た.観 察 装 置 に はSRR5ま
た は 日本 光 電
社 製 ミニ ポ リグ ラ フRM
ら出力 され た
6100か
な 検 討 が な さ れ て い な い.こ の た め,本 調 査 で は,
デ ー タ を コ ン ピ ュー タ ー 上 で デ ジ タ ル 変 換 し,再
正 常 者 対 糖 尿 病 患 者,糖 尿 病 の 各 神 経 因 子 で 分 け
計 算 後 にMax-MinHR,CVRR,HSRRの3指
た 群 間,で
記3指 標 で 表 現 さ れ た 測
測 定 値 を 求 め た 。 この 時,2個
定 値 が どの 程 度 統 計 的 有 意 性 を も ち変 わ る か を評
した 例 は対 象 か ら除 外 し た.
の比 較 で,上
価 し,そ れ か ら 各指 標 の優 劣 を検 討 す る事 を 目的
と した 。
標の
以上 の不整 脈 を有
また 糖 尿 病 患 者 に つ い て は ア キ レ ス腱 反 射 の 有
無 を調 べ2群
に 分 け た.さ
ら に起 立 負 荷 後 の最 高
血 圧 降 下 度(起 立 後 最 高 血 圧 ―起 立 直 前 最 高 血 圧;
対
以 下BPFと
象
正 常 人16名
と入 院 中 の 糖 尿 病 患 者48名
を対 象
略 す)と
下NCVと
と した.加 齢 の 影 響 を 最 小 限 とす る た め 全 員 を40
mmHg,-15mmHgを
歳 代(40∼49歳,45.1±2.9歳)と
した.患
sec,40m/secを
の背 景 は男 性32名,女
ン ス リ ン依 存
型糖 尿 病 患 者7名,イ
者41名
性16名.イ
す る上 記3指
境 に し,NCVで
は+5
は45m/
境 に し3群 に 分 け,心 拍 変 動 に関
標 との 関 係 を 比 較 検 討 した.
ン ス リ ン非 依 存 型 糖 尿 病 患
で あ っ た.糖
尿 病 罹 病 期 間 は1カ
年.糖 尿 病 性 網 膜 症 を有 す る例21名,持
東 京都 済 生 会 中 央病 院 内 科(〒108東
Key
者群
脛 骨 運 動 神 経 伝 導 速 度(以
略 す)を 測 定 し,BPFで
words:(1)自
統
月 ∼29
続性 蛋 白
計
正 常 対 糖 尿 病,ま
た は糖 尿 病 各 群 間 で の,各 指
京都 港 区 三
田1417)
律 神 経 障 害(2)RR間
隔 変 動(3)自
律 神 経 検 査(4)心
拍 変 動 検 査(5)RR
間 隔 ヒ ン ジ散 布 度
受 付 日:平 成5年5月19日
採 択 日:平 成5年8月31日
― 889―
糖 尿 病36巻11号(1993)
Table
1
Results of different
measurements
of RR interval
variation
in normal and
diabetic
subjects.'t'values
on student's-`t'test
are shown just to the right of
the data.
(Mean•}SD)
cf.CVRR=Coefficient
the maximum
on deep
Table
2
of variance
and minimum
heart
breathing,n.s.=not
Results
criteria
of RR intervals
rates
on deep
at rest,Max-Min
HR=the
breathing, HSRR=Hinge
difference
spread
between
of RR intervals
significant
of different
measurements
of RR interval
for each neurological
parameter.
variation
in diabetic
subjects
divided
by
(Mean•}SD)
't'values
on student's -`t'test
and'F'values
in analysis
標 の 測 定 値 の 統 計 的 有 意 差 を 知 る た め,2群
比 較 で はStudent't'testを
果 の1,2).ま
を 行 いF値
た3群
を 求 め た(結
行 いt値
of variance
間 の
2群 間 に 有 意 差 を 認 め た(p<0.01).
3.NCVで
を 求 め た(結
間の比較 で は一元分散 分析
果 の3,4).
NCVで
1.正
HSRRに
常 者 と糖 尿 病 患 者 と の 比 較
正 常 者 と 糖 尿 病 患 者 で の,3指
標 の測 定 値 の
示 し た .t値
(1.54),Max-MinHR(0.12),HSRR(1.99)で,
HSRRが
最 も 大 き か っ た.ま
の み2群
標 の
段 に 示 し た.
4.BPFで
最 も大 き か っ た.ま
た,
間 に 有 意 差 を 認 め た(p<0.01).
分 け た 糖 尿 病 患 者3群
分 け た 糖 尿 病 患 者3群
での比較
で の,3指
定 値 のmeanとSDをTable2下
た,HSRRに
標 の測
段 に 示 し た.F
値 はCVRR(0.28),Max-MinHR(1.23),HSRR
間 に 有 意 差 を 認 め た(p<0.05).
2.ア
あ り,HSRRが
の み3群
BPFで
はCVRR
での比較
で の,3指
はCVRR(0.64),Max-MinHR(1.38),HSRR
(8.80)で
果
meanとSDをTable1に
分 け た 糖 尿 病 患 者3群
分 け た 糖 尿 病 患 者3群
測 定 値 のmeanとSDをTable2中
F値
結
are shown just to the right of the data .
(3.61)で
キ レス 腱 反 射 の 有 無 で 分 け た 糖 尿 病 患 者
HSRRに
あ り,HSRRが
の み3群
最 も大 き か っ た.ま
た,
間 に 有 意 差 を 認 め た(p<0.05).
2群 で の 比 較
ア キ レ ス 腱 反 射 の 有 無 別 に 分 け た 糖 尿 病 患 者2
群 で の,3指
考
標 の 測 定 値 のmeanとSDをTable
2上 段 に 示 し た .t値
あ り,そ
はHSRRが
た,HSRRに
最 も 大 き か っ た.ま
隔 変動 また は心拍
変 動 の 指 標 化 に は 未 だ 多 くの 問 題 が あ る.例
はCVRR(0.03),Max-Min
HR(-0.67),HSRR(-2.80)で
察
糖 尿 病 患 者 に お け るRR間
の絶対値
のみ
―890―
本 邦 内 で 普 及 し て い るCVRRは,再
不 整 脈 介 入 に 影 響 さ れ や す く,標
えば
現 性 は 悪 く,
準 偏 差 を平 均 値
糖 尿 病 にお け る心 拍 変動 を表 す3指 標 の 測 定 値 の比 較
で 割 り 算 し た 指 標 の 構 造 が 生 理 的 か,な
か っ た.ま
どの 問 題
ま た 例 え ばMax
Watkins1)ら
Min
HRはWheeler,
や す く,2個
か し 不 整 脈 に影 響 さ れ
の デ ー タだ け で 代 表 し分 布 幅 全 体 の
dataを
Spreadはnon
そ れ をRR間
で あ る.分
る,不
長 所 が 反 映 され て い る可 能 性 が 考 え られ る.
明 は な され て い な い.HSRRは
直 接 的 に デ ー タ幅
を表 現 す る指 標 で あ る だ け に,糖 尿 病 患 者 で の 心
布 幅 を 数 学 的 ・理 論 的 に 正 し く表 現 す
拍 変 動 幅 減 少 に伴 う観 察 と して 従 来 唱 え られ て き
ど
た 諸 家1)5)の見 解 に そ い,副 交 感 神 経 系 の 異 常 を よ
か し新 し い 指 標 で あ る た
り反 映 し や す い も の と理 論 的 に は 推 察 さ れ う る
整 脈 介 入 に 対 し 再 現 性 を 失 い に く い,な
が,こ
め,そ の 臨 床 的 有 川 性 の 検 討 は ま だ 十 分 で は な い.
こ う し た 中,参 考 に な る の は1981年Ewin95)ら
が 示 し た,Standard
square
vals,Max
deviation
successive
Min
験 で あ る.統
HRの3指
of RR
differellces
が 示 さ れ た.こ
intervals,
of RR
inter-
標 の測 定値 の比 較 試
有 用 性 が 高 い 指 標 で あ る事
の た めHSRRは,今
後,糖
尿 病臨
床 に お け る評 価 法 の ひ とつ と して 期 待 され る もの
と考 え た.
計 的 有 意 差 を川 い た 独 自 の 手 法 で 有
tion
こ う し た 手 法 を 手 本 と し 我 々 は 改 め て,CVRR
HRにIISRRを
加 え た3指
値 に つ き検 討 を 行 っ た.CVRRやIISRRを
点 の 他 に,対 象 者 を40歳
T and Watkins
in diabetes.
2) 景 山
標 の測定
扱 った
British
PJ (1973) Cardiac
Medical
茂 (1983) 心 電 図RR間
神 経 内 科19:
々独 自 の
denerva-
J. 4: 584-586
隔 の 変 動 と 自律 神 経 系.
119-126
3) 鈴 木 吉 彦, 高橋 良 当, 大 森 安 恵 (1992) RR間
代 に 限 り加 齢 の 影 響 を で
き る だ け 除 去 す る べ く配 慮 し た 点 が,我
隔定 量
化 指 標 に対 す る不整 脈 混 入 の影 響 につ い て. 糖 尿病 合
併 症5:
323-330
4) 鈴 木 吉 彦, 松 岡健 平 (1990) 糖 尿 病 性 神 経 障 害, 自律
工 夫 を 加 え た 点 で あ る.
そ の 結 果,正
文 献
1) Wheeler
や す い 方 法 だ っ た:
Min
の 点 は 今 後 検 討 が 必 要 で あ ろ う.
以 上 よ り,HSRRは
用 性 の 優 劣 を比 較 した 点 は臨 床 家 に と っ て理 解 し
とMax
を示 唆 し た.背 景 に は先 述 した 指 標 の 原 理 が もつ
隔 解 析 に 応 用 した もの
の 点 で 優 れ て い る3).し
Mean
よ り起 こ る病 態 の 変 化 を 反 映 し え る 指 標 で あ る事
の 中 の あ る特 定 な 異 常 の検 出 に 貢 献 し う る か の 証
parametric
扱 う 上で の 分 布 幅 を 示 す 数 学 的 概 念 で あ
り,HSRRは
れ
た だ し,本 結 果 だ け で は この比 較 が 自律 神 経 系
特 徴 を 反 映 で き る か に つ い て の 不 安 が あ る.
こ れ に 対 しHinge
計 的 有 意 性 を 示 した.こ
尿 病 も し くは糖 尿 病 性 神 経 障 害 に
よ っ て起 こ る影 響 と最 も よ く相 関 し,か つ そ れ に
が 最 初 に 提 唱 した 指 標 で あ るた め 外
国 で は 広 く川 い ら れ る.し
た 唯 一,統
はHRRRは,糖
も あ り2,4),諸 外 国 で は あ ま り 用 い ら れ て い な い.
常 者 と糖 尿 病 患 者 と の 比 較,な
ら
神 経 異 常. 臨 床脳 波32:
5) Ewing
びに神経 障害因 一
子で 分 け た 糖 尿 病 各 群 間 で の 比 較
DJ, Borsey
23-28
DQ, Bellavere
F and Clarke
BF
の い ず れ に お い て も,HSRRはCVRRとMaxMin
(1981)
Cardiac
Autonomic
Neuropathy
in
Diabetes:
Comparison
of Measures of R-R Interval
IIRに
Variation.
比 し,t値
も し く はF値
の 絶対 値 は大 き
―891―
Diabetologia
21:
1824
糖 尿 病36巻11号(1993)
Abstract
Comparison
of Three
Parameters
Yoshihiko
of RR
Suzuki,Kempei
Saiseikai
Although
test,there
the measurement
clinical
the relationship
Three
normal
subjects
achilles
tendon
nerve.The
debate
use.This
methods
subjects
selected
and diabetics,but
variation
is generally
available
to assess
accepted
method
as a valid
is the most practical
which test is most suitable
in terms
of
RR interval(heart
rate)variation
to diabetic
fall on standing,and
neurological
motor
on deep breathing
also between
differentiated
diabetics
were compared
measurements
conduction
velocity
the influence
most accurately
with and without
in 16
such as
of the tibial
of age as much as
not only between
neurological
damage.
of variation
of RR intervals at rest and the difference between the maximum and
rates on deep breathing did not differentiate
groups more accurately than the hinge
of RR intervals.
Therefore,for
variation
rate
were all in their 40s so as to exclude
of RR intervals
spread
heart
with responses
pressure
normal
The coefficient
minimum heart
Matsuoka
as to which currently
of analysing
possible.
Hinge spread
subjects
in Diabetes
neuropathy.
and 48 diabetics
reflex,blood
Variation
Hospital,Tokyo
study was designed
with diabetic
different
Central
of beatto-beat
is still considerable
for general
Interval
routine
clinical
on deep breathing
usage,we
conclude
is the most practical
that recording
method
currently
J.japan
― 892―
the hinge spread
of RR interval
available.
Dial).Sac.36(11):889•`592,1993