Title Author(s) Citation Issue Date Type 戦略形bargaining game : Rubinsteinのモデルより 榎本, 康人 一橋研究, 16(1): 1-13 1991-04-30 Departmental Bulletin Paper Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/10086/5948 Right Hitotsubashi University Repository 1 戦略形bargainig game Rubinsteinのモデルより 榎 本 康 人 1.序 本稿では,基本的に,買い手一人と売り手L人によって行われる一つの財の 相対取引における価格決定について論ずる。相対取引における取引価格は,買 い手と売り手の一対一の交渉によって決定される。買い手がこの価格よりも低 ければ買ってもよいとする最高価格をPBとし,売り手がこの価格よりも高けれ ば売ってもよいとする最低価格をPSとすると,PB>PSならば買い手と売り手 の双方に取引を行うincentiveがある。そして,両者が取引から受け取る総余剰 PB−Psは,交渉の結果,決定された取引価格をpとすれば,買い手が受け取 る余剰PB−pと売り手が受け取る余剰p−Psに分割される。このような状況 は,2人協力ゲーム(bargaining game)によって表現できる。このゲームでは, 利得は正一次変換から独立であるから,買い手と売り手が分け合う総余剰PB− Psを1にnormalizeすることができる。そうすれば,取引価格決定をめぐる bargaining gameは,利益1の配分をめぐるbargaining gameに書き換えるこ とができる。このような利益1の配分を決定する交渉を,二人のplayerが交互 にofferとそれに対する回答を繰り返す戦略形ゲームとしてとらえたのが, Rubinstein[1986]である。本稿の2節では,その内容を解説する。3節では, 二人のplayerのうち一方が,ある一定の期間,交渉を続けても合意が得られな い場合には交渉相手を変えることが許されるShaked and Sutton[1986]のモ デルを解説する。 2.Rubinsteinの戦略形bargaining game1) 2.1 Rubinsteinのbargaining model 2 一橋研究 第16巻第1号 図2.1 ac a s i r e fi v a c s’ re トー一一=7一一ヨト一一一一「「7一一H t=偶数 t=奇数 playerαとplayerβが粗利益1を分け合う割合について交渉を行う状況を 考える。まず,第0期に先手としてplayerαが配分s(0≦s≦1)をofferす る。[以下では,配分sのofferをもって,playerαがsの量を受け取り,player βが1−sの量を受け取るというofferを表すものとする]playerβがその offerをacceptすれば,交渉はそこで終わり,offerどおりの量を互いに受け取 る。逆に,playerβがそのofferをrejectすれば,次の第1期にcounteroffer Sをplayerαがそれをacceptすれば,交渉はそこで終わる。αがそれをreject すれば次の期にplayerβにcouterofferをする……というようにofferが rejectされる限り,交渉は無限に続く。そのbargaining gameが続いていく過 程をgame treeとして示したのが図2.1である。 第0期から第t期までまでにofferされてきた配分の系列をso, s’,……s空 かくことにする。先手のplayerαの戦略は,次のような関数列f={∫’陰、で 表される。 f‘ : [0, 1]t → [0, 1] for t=循禺数 ft:[0,1]t→{accept, reject} for t=奇数 このような関数列全体の集合,すなわち偶数期を配分をofferし,奇数期に offerに対する回答をするplayerの戦略集合をFとかくことにする。 ([0,1]t[0,1]のt個の直積)同様に,後手のplayerβの戦略は,次のよ うな関数列g={g弓漁で表される。 戦略形bargainig game−Rubinsteinのモデルより 3 gt:[0,1]t→ {accepo, reject} for t=偶数: gt:[0,1]t→[0,1] for t=奇数 このような奇数期に配分をofferし偶数期にofferに対する回答をするplayer の戦略集合をGとかくことにする2)。 playerαとβの戦略の組み合わせ(f, q)∈F×Gが決定されると,その ときのoutcomeとして,パイの配分s=D(f, q)と交渉が妥結した期の番号 t=T(f,q),及び0(f, q)=(s, t)が決定される。(交渉が永久に妥結 しない場合,すなわちt=○○のときにはplayerαもβも受け取れる配分は0 とする。) ところで,playerβが先手として,同様に,進められるゲームも考えること ができる。このとき,q∈F, f∈Gとなり,同様に, D(g, f),T(g, f), 及び0(q,プ)が定義される。 outcome(s, t)のもとでのplayerαとβの利得関数をそれぞれ P. ( s, t ) = 6t. s Pfi (s, t)=6fo (1一 s) と,以下の議論の本質をはっきりさせるために具体的な形のものとする。ここ で,6iはplayer i(i=α,β)の時間割引因子で,0〈6,<1とする。 (定義)戦略の組み合わせ(fO, qO)∈F×Gが次の条件を満たすとき, Nash均 衡であるという。 for a P. (O(fO, qO))21’. (O( f, qO)) for all f E F for rs Pfi (O(fO, qO))2Pp (O(fO, q)) for all q E G 2.2unreasonableなNash均衡 [命題]任意のs∈[0,1]について,sはNash均衡のもとでの配分になり 得る。(証明)Rubinstein[1986]Proposition. 次のような戦略の組み合わせ(f’,4)∈F×GがNash均衡のもとで任意の 配分s∈ [0,1]を達成させる。 ・…一偶数f’…q’t(s・…st)一{灘∵1 [X s’S s一 1−stl 1一 s] …t一奇数q’t∈s・f・t(si…・t)一{膿t魚 4 一橋研究 第16巻第1号 この命題が意味することは,もし相手のplayerの戦略がofferできる期に頑 として同じ配分s(極論すれば,playerαが1,またはβが0)をofferし続 けるものであることを所与とするならば,それに対する最適反応戦略は,利得 が時間割引されることを考えに入れれば,offerされたその期のうちにaccept しておく以外にないということである。しかし,例えばplayerαが頑として回 り配分sをofferし続ける戦略をとるとき,βは第0期にαのofferをreject し,第1期にP。(s一ε,1)>P。(s,2)すなわちδ。(s一ε)〉δ3sとな る十分に小さい正の数εをとって,配分s一εをofferすれば,αは上記の戦 略をやめてそれをacceptする方が有利になる。したがって,このようなNash 均衡は,βがほんのわずかofferする配分を変えることによって,実際には,実 現しなくなる可能性という意味でunreasonableなものでしかない。 Dixit L1982」にunreasonableなNash均衡とreasonableなそれを区別する わかりやすい数値例が出ているので,以下ではそれを紹介する。 ある産業部門に,独占者である企業Aと,その部門に参入しようとしている 企業Bがいる状況がある。もし企業Bが参入してこなければ(Bが戦略Nをと るならば),Aは独占利潤6を得てBの利潤は0となる。もしBが参入してくる ならば(Bが戦略Eをとるならば),Aにはそれに対抗する戦略は二種類ある。 一つは価格競争をもってBに対抗すること(.4が戦略Fをとること)で,こ のときAとBの利潤はともに一1となる。 (6, O) B/N (一 1,一1) 4 N E S 6.0 3.3 F 6.0 E F A s B 一1−1 , (3, 3) 図2.2 図2.3 もう一つの対抗策はAが市場をBに分与する(Aが戦略Sをとる)ことで, このときAとBの利潤はともに3となる。この状況を示しているのが図2.2の 戦略形bargainig game 一 Rubinsteinのモデルより 5 game treeと図2.3のpayoff表である。 このようなゲームのNash均衡は, AとBの戦略の組(S,E)と(F,N) の二つである。 そのうち,Nash均衡(F,N)が成り立っている状況は,企業BがAの戦略 Fを所与としたとき,Bの最適反応戦略は参入しないこと(戦略N)というこ とである。すなわち(もしBが参入してきた(戦略E)ならば,Eは価格競争 に訴えることによって,Bの利潤を不参入(N)の場合の0よりも少ない一1 に落としてやるという脅しをかけて,Bもそれに屈して参入しないということ である。 しかし,Bが,実際には,参入してきたならばAはどうするだろうか。この 場合,Aは当初予定していた価格競争に訴えて(戦略F)利潤を一1にするよ りも,市場を分与して(S)利潤を3にする方を選ぶだろう。したがって,こ のような脅しは,実際には実行されない「カラ脅しコにすぎない。この意味で, Nash均衡(F,N)はunreasonableなものといえる 他方,Nash均衡(S,E)は上のようなunreasonableな性質をもたない。 B が参入してきたならば,.4は予定通り市場を分与して,それぞれ利潤3を得る。 [実は,このNash均衡は次の節に出てくるsubgame parfect均衡である。] 2.3subgame perfect均衡 以下では,前節でみたようなunreasonableなNash均衡を除外しようとい う,Nash均衡概念のrefinementの試みの一つであるsubgame perfect均衡に ついて説明し,Rubinstein[1986]におけるsubgame perfect均衡の存在定理 が,本節のように具体的な利潤関数を仮定するとき,連立方程式の解を求める 問題に帰着されることを説明する3)。 この展開形ゲームは,図2.1のgame treeによって表されるが,どの偶数期の nodeα,どの奇数期のnodeβをinitial nodeとしてgame treeを切断しても, perfect information gameだから, subgameになることに注意すべきである。 一般に,ある戦略の組み合わせが,subgame perfect均衡であるとは,それ が次の二つの条件を満たしていることである。 (1)その戦略の組み合わせ自体がNash均衡である。 (II)任意のsubgameにおいて,元の戦略をそのsubgameに限定したも のの組み合わせがやはりNash均衡になっている。 6 一橋研究 第16巻第1号 では,本節のモデルにおけるsubgame perfect均衡を定義する。 so,…sT∈ [0,1]に対して,記号fIso…sTとqIso…sTをもって, offer s so…∫Tが なされてそれがすべてrejectされた後の戦略fとqを表すことにする。すな わち, (.f!SO…ST)t(rO…rt).・ fT+t(SO…ST, rO…rt) (q 1 sO...sT)t (rO...rt)=qT+t(se...sT, rO...rt) (定義)(f*,q*)がsubgame perfect均衡であるとは,すべてのse…sTに対し て T=偶数のとき (1)すべてのf∈Fに対して Pα(0(プ*Iso…sT,(1*Iso…sT))≧、Pα(0(f, q*lso…sT)) (2)!*T(so…sT)=acceptならば,(sT,0)≧Pα(0(f, q*lso…∫T)) for all f E F (3)f*T(so…sT)=rejectならば, P. (O if’ 1 sO一・sT, q’ i sO…sT)2(sO, o) T=奇数のとき (4)すべてのfEFに対して Pβ(0(プ*1∫o…sT, q*1so…sT)≧Pβ(0(f*lso…sT, f)) (5)q*T(so…sT)=acceptならば,(sT,0)≧Pβ(O(if*lso…sT, f)) for all f E F (6)q*T(so…sT)=rejectならば, Pp (0 (f* 1 sO・・一s’, q 1 sO一・・sT)2(sO, O) それでは,subgame perfect均衡解(一意存在する場合)を連立方程式の解 として求める。以下では,playerαが先手としてofferをするところから始ま るゲームのsubgame perfect均衡での配分をx*,βを先手として始まるゲーム のsubgame perfect均衡での配分をy*とかくことにする。 偶数期で,次の期のβのcounter・offer yを所与とするとき,今期のαのoffer xがacceptされるための条件は, P, (x, O)IPfi (y, 1) ・’・ 1−x)6, (1−y) そのときαがofferするのは, max[x l 1−x≧δβ(1−y)]すなわち, 1−x=δβ(1−y)となるxである。 戦略形bargainig game−Rubinsteinのモデルより 7 奇数期で,次の期のαの 1 7 / counteroffer xを所与とする とき,今期のβのoffer yが / / Y= 6aX // ,・______ノ/ acceptされるための条件は, Pα(二y,0)≧Pα(x, /7i 1) 一’一y)6.x / / i ノ コ ノ び コ そのときβがofferするのは, / ! i ノ ケ / ノ 1 ノ び / / i ’ argmczx[1一夕 1)ノ≧δαx]す , 巳 ノ ! o 1−x なわち, X* 1 = 6p(1−Y) y=δ。xとなるyである。 そこで,連立方程式 ︷ 1−x=6fi (1 一y)‘) N=6a x5) の解xはすべてのinitial nodeαから始まるsubgameのNash均衡での配分 x*で,解yはすべてのinitiaI node 6か月始まるsubgameのNash均.衡での配 分y*であるから,(x*,y*)はsubgame perfect均衡での配分で, .一 1T6fi .,.r6a(1−6fi) X’“==一i=一一EiE−16.6 Y’”=ma−6.6 が成り立つ。そして,以下のような戦略の組み合わせ(f*,q*)がsubgame perfect均衡になる。 t=偶数のとき f・・一、鴇(一・・)…(s・…s・)一{欝、1ご勢: t=奇数のとき q・・一δ 蜑コ)(一・・)f・・(S・…蝋欝、撫ほ1: このbargaining gameが妥結する決定的要因は,利得Pi(i=α,β)が交渉 が妥結した期tの単調減少関数であること,すなわちimpatianceである。した がって,offerをするplayerは,自分のofferをacceptしなければその間に時 間が経過し,利得が時間割引されて小さくなることを脅しとして用いる。また, 8 一橋研究 第16巻第1号 相手がacceptする範囲内のofferをしなければrejectされて,その間に時間が 経過し利得が小さくなることを念頭に置いてofferをしなけばならない。この ことから,上でみた,相手がacceptする範囲内で自分の利得を最大にする行動 がこのゲームでの最適行動であることがわかる。 3.Shaked and Suttonのモデル Shaked and Sutton[1986]では,まず企業一人遅労働者一人の交渉による 賃金決定を,前節でみたRubinsteinのモデルを用いて説明している。次に,企 業が一人の労働者1とある一定期間交渉を続けても合意が得られない場合に は,別の労働者2に交渉相手を変えることが許されるモデルを説明している。 このモデルは,一対一の交渉の場合を特殊なものとして含むものになっている。 3.1 一対一の場合 上で述べたように,本質的にはRubinsteinのモデルと全く同じ状況である。 企業fと労働者1が粗利益1の分割をめぐるbargainingを,前節と同じルール のもとでfが第0期にofferするところから始めるゲームを考える。 企業fと労働者1の利得関数げが得る分け前をmとして)をそれぞれ Pf(m, t) :6>m P, (m, t) := 6}(1 一m) と前節と同じ形のものとする。 このゲームのsubgame perfect均衡は当然,前節の解法でも求められるが, Shaked and Sutton[1986]とSutton[1986]ではbackwardに解を求める別 の解法を用いているので,以下ではそれを紹介する。 まず,第0期に企業fのofferで始まるoriginal gameと第2期にofferで始 まるsubgameとは全く同じ構造なので,それらから得られるsubgame perfect 均衡での分け前が等しくなることに注意すべきである。 そこで,第2期から始まるsubgameの任意のsubgame perfect均衡で企業 fが得る分け前の上限(resp.下限)をMとする。一期戻って, fが第1期に得 る分け前の時間割引価格は6fMとなる。第1期での労働者1の6fMより大き い(resp。小さい)企業fの分け前のofferはすべてaccept(resp. reject)され る6)。第1期から始まるsubgameで,労働者1がどのsubgame perfect均衡か ら得る分け前も1−6fMより小さく(resp.大きく)なることはない。したがっ 戦略形bargainig game−Rubinsteinのモデルより 9 て,第1期から始まるsubgameから労働者1が得る分け前の下限(resp.上限) は1−6fMとなる。 第0期から始まるoriginal gameで,企業fが6,(1一の44)より小さい (resp.大きい)労働者1の分け前をofferしたならば,1は必ずreject(resp. accept)する6)。したがって, orginal gameのsubgame perfect均衡から企業 fが得る分け前の上限(resp.下限)は1−6,(1一嗣4)ということになる。 上の注意より,最初に出た企業fの分け前の上限(resp.下限)Mと最後に導出 された上限(resp.下限)1−6,(1−6fM)は一致しなければならない。したがっ て, M= 1 一 of (1 一 6fM) これを解いて, 1−di 乃4= 1−6f of Mを上限としても下限もしても同じ解が得られることから,このゲームのsub− game perfect均衡で企業fが得る分け前は一意的に上の解のみになる。 time ∫gets at least(at most)share. 0 1一δ1(1 一 6fM) 1 2 1gets at most(at least>share. 1一(職f 躍 尚,以下では簡単化のためにδ≡6f=6,とする。このとき, 1 M= 1十6 3.2 一対(潜在的には)複数の場合 さて,次に初めに企業fが労働者1と利益1の配分をめぐってbargainingを するが,ある一定の制約のもとで別の労働者に交渉相手を変えることが許され る状況を考える。このとき,もし企業fが交渉相手を変えたならば,労働者1 は配分0にnormalizeされているreservation wageに相当する利益さえ得る ことができなくなってしまう。したがって,企業fは自分のofferをacceptし なければ別の労働者に交渉相手を変える,という脅しを用いることができる 一橋研究 第16巻第1号 !0 fii 戟g:G ノ fll f[1は企業fが労働者1にofferを GO. llf B fll C f D GO. !1 f12 ←G することを表す。 11f, f 12,21fも同様 T 12if 一Go (outside option) o 企業fは次の制約条件(a)と(b)のもとで交渉相手を変えることができる。 [条件(a)]企業プは任意の時点で,それまで交渉してきた労働者に一且offerを したならば交渉相手を変えるのに最低1期間待たなければならない。 [条件(b)]企業ノ’はある時点である一人の労働者とbargainingを開始したなら ば交渉相手を変えるのに少なくとも7「(>1)期間待たなければならない。 条件(a)は,企業fが一 9 offerをしたならばそれを受けた労働者1の counterofferを受けて,交渉相手を変えるならばそのcounterofferに対して rejectの回答をしてからでなければならなくしている。もし条件(a)がなければ, 企業fは労働者1にofferをして,すぐに労働者2にofferをすることができ る。これでは,本質的には二人目労働者に同時にできることになり,bargaining の状況とはいえなくなる。 また,Tが偶数だとすると,企業fは第T期までは労働者1にofferしなけれ ばならない。条件(a)よりfは,第T+1期に1のcounteroofferを受けてから, 交渉相手を変えるか,そのままの相手と交渉を続けるかを決定する。したがっ て,T+1をTに読み替えて, Tは常に奇数としても問題はない。 ここで,元のゲームと同じ構造をもつゲL一一・ムをGとかくことにする。この ゲームをT回繰り返した後には,企業fは交渉相手を変えるか,そのままの相 戦略形bargainig game−Rubinsteinのモデルより 11 手と交渉を続けるかを選択できるゲームに入る。これをGOとかくことにする (GOにおいて,企業プは現在交渉中の労働者に交渉相手を変えるという脅しを 使えるので,交渉においても優位に立てる。) [補題]M,MoをそれぞれゲームG, Goの企業fがsubgame perfect均衡=から 得る利得の上限(下限)とする。そのとき,以下が成り立つ。 (1)MO=max [6(1−6十6MO) ; M] 1一δT+1 (2) M= 十 6TMO 1十6 (証明)Shaked and Sutton[1976]のLemma (1)企業fが図3.1の点Bから,ゲームGOに入ることは労働者1とそれ以降も交 渉を続けるということであり,ゲームGに入ることは交渉相手を労働者2に変 えることである。そのとき得る利得の上限(下限)がそれぞれMO, Mである。 fは点B以下におけるsubgame perfect均衡での利得の上限(下限)としてMo を得る。 (s) プが点B以下で交渉相手を2に変えた方が利得が大きい場合には,ゲームG に入るから,MO=Mとなる。 (u) もし,点B以下で,そのまま1と交渉し続けたほうが利得が大きい場合には(1 は点BにおいてM以上のofferをしなければ交渉相手を変えられてしまうの で),点Dでプは多くとも(少なくとも)点Bからみた割引利得 62MOを得る。 点Cでfは多くとも(少なくとも)δ一δ2+δ2π40を得る。fは,点Bで1とそ のまま交渉を続けるほうを選ぶから,点Bで多くとも(少なくとも)δ一δ2+δ2 MOを得る。このときMO=δ一δ2+δ2ルノ0となる。 結局,(1)を得る。 (2)プは点B以下のsubgame perfect均衡で利得Moを得るが,それを第0期か らみた割引価値はδTMOである。そこで,点Aから始まるゲームGにおける subgame perfect均衡で得る利得は,前節のbackward解法を用いて,点Bか ら点Aに,一期戻るにつれてδを一回ずつかげながら以下のように導出でき る。 1一δT+1 1 一6十 62一 63一・・・… 一 oT十 6TMO == 十 oTMO 1十6 ゲームGにおけるsubgame perfect均衡で得る利得はMに等しいから,(2> 12 一橋研究 第16巻第1号 を得る。 [命題]ゲームのGのsubgame perfect均衡でのfの利得は,次の一意の値M である。 1 一 ,sLT+i M= (1+(S)(1一,sT) (証明)Shaked and sutton[1986]のPropsition 上の補題で,(u)の場合には,M。=δ一δ2+δ2MOで,(s)の場合は, MO=Mで ある。 まず,(U)が成り立つことを仮定して矛盾を導く。(U)の場合に成り立つ方程式 をMOについて解くと, fL .一.M=一,l!, [補題の(2)より] Mo,. 1十6 1十6 しかし,補題の(1)より,MO≧Mで,これは上と矛盾する。 したがって,成り立つのは(s>MO=Mの場合のみである。これを補題の(2)に 代入して, 1 一 cs‘T+i M= (!十6)(1−6T) 上の補題と命題から,企業fは第T期まで労働者1と交渉し,その後は必ず 交渉相手を2に変える戦略をとる。実際には,1はfの上の命題で得たMの offerを第0期にacceptして,ゲームは終わる。 T皇恩ったら交渉相手を変え られるかもしれないという脅しが,第0期から効いているのである(*)。 T→1のとき,M=1となる。このとき,企業fは第0期に労働者1にoffer をして,もし1がrejectしたならば, fは第1;期に1のofferをrejectしてすぐ に交渉相手を2に変える戦略をとる。1はその戦略を知っているので第0期に offerM =1をacceptする以外にない。 T→・・のとき,114=1/(1+δ)となる。このとき,fは1以外の労働者に 交渉相手を変えることはできない。したがって,前節の一対一のbargainingと 同じ結果になる。また,上の(*)の主張は,不等式 1−6T’i 一 1 (1+δ)(1一δ・)>1+δ から真であることが確認され,左辺と右辺の差は,Tが大きくなるにつれ,小 さくなる。 戦略形bargainig game−Rubinsteinのモデルより 13 1︶ 注 ︶ 2 本節では,Rubinstein[1986]の解説論文Rubinstein[1987]をさらに具 体的にしたモデルを用いてその本質を見やすくしている。 Fが必ずし.もplayerαの戦略集合ではなく,Gが必ずしもplayerβの戦 ︶ ︶﹂ ︶ρU 3︶ 4只 略集合ではないことに注意。 Rubinstein[1987]のTheorem 1の主張より具体的にしたものである。 Rubinstein[1987]では,(x,0)∼β(y,1)となってい。 Rubinstin[1987]では,(y,0)∼α(x,1)となっている。 これは相手にacceptされる範囲内の利得最大化行動であり,2.3節の連立 方程式を立てて解を求める方法と本質的に同じ。 参考文献 T, Bewly (ed) [1987] “Advances in Economic Theory−Fifth World Congress”, New York:Cambridge University Press. K. Binmore and P. Dasgupta (ed) [1986] “The Economics of Bargaining”, Oxfrd:Blackwell. A. Dixit [1982] “Recent Developments in Oligopoly”, American Econ. Review, vol. 72, no, 2, Papers and Pmoceeidng, p12−v17 A. Rubinstein [1986] “Perfect Equilibrium in Bargaining Model”, in K. BinmQre and P. Dasgupoa (ed) [1986] A. Rubinstein [1987] “A Sequential Strategic Theory of Barbaining”in T. Bewley (ed) [1987] A. Shaked and J. Sutton [!986] “lnvoluntary Unemployment as a Perfect Equilibrium in a Bargaining Model”, in K. Binmore and P. Dasgupta (ed) [1986] J, Sutton [1986] “Non−Cooperative Bargaining Theory”, Review of Econ. Theory, vol. 53, p709一一一724. R. Wilson [1987] “Game−theoretic Analysis of Tmading Process”, in T. Bewley (ed) [1987]
© Copyright 2025 ExpyDoc