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放射線治療かたろう会
第 10 回放射線治療システム研究分科会前抄録
講演 1
『第三者機関による放射線治療計画装置(TPS)の品質管理支援プログラム』
国立がん研究センター
がん対策情報センター
峯村 俊行 先生
近年,放射線治療は高精度放射線治療などの高度な技術と新しい知識を必要とする放射線
治療機器の開発と導入により,治療計画や照射線量などの検証作業は結果的に複雑化し,業
務量も増大化している.これらの治療を安全に実施するためには,放射線治療の品質保証
(Quality Assurance: QA),品質管理(Quality Control: QC)は不可欠となっている.欧
米では,各施設に合わせた QA・QC プログラムの施行と共に,外部 QA センターによる第
三者評価が行われている.国立がん研究センターがん対策情報センターでは,第三者評価機
関としてがん診療拠点病院等を対象に放射線治療に対する QA・QC 支援を 2007 年より行
なっている.本研究会では,TPS 品質管理支援プログラムを中心に当センターが実施して
いる支援活動について報告する.
TPS 品質管理支援プログラムは,TPS のビーム構成データを確認するプログラムであり,
がん診療連携拠点病院を対象に 60 施設(223 ビーム)に対して実施した.線量計算条件は,
以下の 3 通りの条件(計 55 項目)で実施した.①SSD=100 cm での各照射野(5x5 cm2, 10x10
cm2, 15x15 cm2, 20x20 cm2, 30x30 cm2)における中心軸上の各深さ(dr, 5 cm, 10 cm, 15 cm,
20 cm)での線量.②各 wedge 角度 (15 度, 30 度, 45 度, 60 度),各照射野(5x5 cm2, 10x10
cm2, 15x15 cm2, 20x20 cm2),各深さ(5 cm, 10 cm, 15 cm)での MU 値.③STD=100 cm,
照射野 10x10 cm2 での各深さでの線量. 結果は放射線照射装置の種類,エネルギー,wedge
filter の種類ごとに分けて,Dose/MU や出力係数や楔係数の平均をとり,その差を解析した
ところ,97%の施設で±3%以下で一致した.また,平均値からの相違が大きいデータを持
つ施設について訪問による実測を行い,比較検討した.
引き続き,各種 QA 支援プログラムを用いて各施設の放射線照射装置や放射線治療計画装置
などの QA 施策に有益な情報を提供し,安全管理体制の確立とがん医療の均てん化の推進を
図るためのプログラムを考える必要がある.
講演 2
『関西の多施設データから考察するゴールデンデータ
~我々のデータはどのようなバラツキを持っているか?~』
大阪大学医学部附属病院
水野 裕一 先生
治療計画装置導入時には ESTRO booklet7 にも見られるように,多くの測定,検証を行わなけれ
ばならず,非常に多くの時間を要する.しかし実際には可能な限り早い立ち上げを要求されるケー
スが多いと考えられる.我々は効率性と安全性のバランスを考慮して測定,検証を行う必要がある.
例えばビームペナンブラ領域では測定ツールによってプロファイル形状は変化することが知られて
おり,AAPM TG106 にあるように,測定ツールの特徴を理解した上で計測を行う必要がある.また
治療計画装置のビームモデリングでもビームプロファイルは変化する.よって実測データと計画装
置内のデータ間でもバラツキは存在する.
各治療装置メーカーは装置のゴールデンデータを所有しており,例えば Accuray の CyberKnife は
ビームデータ測定後に装置の各施設平均データとの比較を行い,大きなズレがないかの確認を行う.
また,アメリカにはバリアンの装置の立ち上げを請け負う会社があり,ゴールデンデータを用いて
10 日間で導入時測定を終わらせている.このようにゴールデンデータを使用した立ち上げが可能に
なっている理由の一つに,近年の技術の発展により治療装置の品質や計画装置の精度が格段に向上
していることが挙げられる.
今回の講演では関西の施設における実測データと計画装置のデータを比較し,測定者,測定ツール,
モデリングによるバラツキを検討し,ゴールデンデータの是非について考察する.ゴールデンデー
タのメリット,デメリットについて参加者の皆様とディスカッションしながら,ゴールデンデータ
の妥当性について一緒に考えたい.
講演 3
『放射線治療装置のビームデータ測定』
国立がん研究センター中央病院
脇田 明尚 先生
放射線治療装置を導入した際に測定するビームデータは,治療計画装置への入力として用いられ
るとともに,治療装置の状態を管理するための基準データとしても利用される.このデータは,治
療計画装置を介して直接的あるいは間接的に患者へ投与する線量へ影響を与えうる重要なものであ
るのにもかかわらず,施設によっては限られた人員と時間ですべてのデータを取得しなければなら
ないことも多い.また,ビームデータの測定にはある程度の知識と技術が必要とされ,本来は不変
であるはずのデータが測定機器や測定者によってばらついてしまうこともある.本発表では,効率
と精度を両立したビームデータ測定について紹介するとともに,治療計画装置への入力についても
簡単に概説する.また,近年の高精度治療装置においてはいわゆる”Golden”ビームデータが提供さ
れつつあることを踏まえ,ユーザーがビームデータ測定を行う必要性などについて参加者の皆様と
ディスカッションをし,今後の流れについて考えたい.