AUSTRIAN WINE~静かで軽やかな情熱 - rd-daijiiwase official we... 1 von 4 http://rd-daijiiwase.jimdo.com/2014/07/17/austrian-wine-童話の... 17 7月 ヨーロッパ · 2014年7月 先日、10日間、ニューヨークを巡った。ニューヨーク州産ワインの現状と、 一方でマンハッタンやブルックリンではどのようにワインを楽しんでいるの か、という2つの側面のリサーチとリポートが主な目的だった。シティでは 10軒ほどのワインショップを訪問して、なるほどニューヨーカーたちの好 みが浮き上がってきた。 その中で日本との違いはたくさんあったのだが、印象的だったのが、オー ストリアワインの扱いだ。どの店でも大きく扱っている。日本の大きめの販 売店で言うところのチリやドイツと同じぐらいの割合でオーストリアワイン が並んでいる、といえばイメージしやすいだろうか。価格帯も手ごろ。ボー ジョレやロワールと同等程度で揃っている。オーストリア単体で扱ってい るところもあれば、ドイツとオーストリアがまとまったコーナーになっている ところも多かった。その際の表記はアルファベット順ということもあるのだろうけれど、オーストリア、ドイツの 順。日本よりも、ニューヨークのワイン愛好者にとってはオーストリアワインはごくごく、身近なものなんだろ う。 欧州などでも、やはりその名前は通っていて、高品質だが手頃、という評価はすでに確立している。なんと いっても古代ローマ時代からのワイン造りの伝統がある国だ。ブルゴーニュとほぼ同じ緯度で、さらに日中の 寒暖差は激しい。今、日本でもトレンドになりつつある、「冷涼」というキーワードにもはまる。 しかし、日本でオーストリアワインの知名度はどれほどだろうか。ここまで読んでいただいても、ん?オースト ラリアワインなら知っているよ、という声がありそうなほど、ほとんど知られていないだろうと思われる。と、こ んなことを言っていながら、僕自身も。オーストリアワインに、ちょっと真面目に向き合ったのは3年ほど前。白 ではリースリング、赤では、ツヴァイゲルトという葡萄品種を手掛かりに、ドイツや隣国ハンガリーなどとの接 点、逆に独自性などに興味は持ったが、その程度。その時、接点を持ったワインたちは、なかなか楽しく、 オーストリアワインに対して、ほのかに好ましく思っていたところだった。 そんな折に、お招きいただいたのが、オーストリアの生産者『ローレンツ・ファイブ』のテイスティング会だった のだが…ここで、オーストリアワインの素晴らしさ、その一端を見せつけられた。 22.07.2014 09:14 AUSTRIAN WINE~静かで軽やかな情熱 - rd-daijiiwase official we... 2 von 4 http://rd-daijiiwase.jimdo.com/2014/07/17/austrian-wine-童話の... オーストリアには大規模ワイナリーがほとんど存在しないという。9,000軒ともいわれる小規模な家族経営ワ イナリーが中心で、テロワールとともに家族の伝統というのもオーストリアワインを楽しむ上では手がかりの 一つとなりそうだが、ローレンツ・ファイブはまさにそれを体現するワインメイカーだ。 ローレンツ・ファイブのラインアップの軸となるブドウ品種は、『グリューナー・フェルトリーナー』。日本のワイ ンのテキストには、主要品種としては登場してこないが、ドライでグリーンな白ワインを生み出す、オーストリ アが誇る主要品種だ。レンツ家はこの葡萄にこだわり、この葡萄の可能性に賭けてきた。この日テイスティン グしたのは(テイスティングというにははばかられるかなりの量だったが)、10アイテム。大きく分けると、快活 な『シンギング』、おおらかな『シルバー・ブレット』、その名の通りの『チャーミング』の3つに加えてのプレス ティージュが2種という構成。 22.07.2014 09:14 AUSTRIAN WINE~静かで軽やかな情熱 - rd-daijiiwase official we... 3 von 4 http://rd-daijiiwase.jimdo.com/2014/07/17/austrian-wine-童話の... 共通する特徴は、当主曰く「リースリングの華やかさ、ソーヴィニヨン・ブランの爽やかさ、そしてピノ・グリの 豊かさの融合」。ワインのテキストをご存知の方であれば、確かに腹におちる表現だ。軽く、爽やかで、慎ま しやかな芳香だが、熟成していくと大化けするんじゃないかという期待感もある。ミネラル感はこのワインをタ イトに、緊張感あふれるものにするのではなく、心と身体に溶け込ませるために作用する。初夏のピーチと 爽快なホワイトペッパーのニュアンスから、次第にあらわれてくるグレープフルーツの皮の苦味が無い果肉 と青りんごのハーモニー。 ここまでは、いつものグリューナー・フェルトリーナなのだが、ここで驚かされたのはこの3つの世界観、シン ギング、シルバー・ブレット、チャーミングで見事に表情を変えるのだ。基本のぶどうの個性はそのままに、 ネーミング通りの変化をみせる。僕のテイスティングメモも弾けている。 シンギングの2012と2013は、同じ明るくて快活な少女なのだけれど、13は輝きの中の反抗期。親から見たら 何にも考えていないような娘が、本当はすさまじくさまざまなことを考えている荒々しい内面。それが12は、そ の経験を経て成長し、その経験によって美しいオーラを纏う。纏うといっても、まだ17歳。 少女の快活さとヒリヒリするような危うさ、驚くほど高く広がる青空を見上げて、もうなかないぞ!と笑顔で 誓って、好きな歌をくちずさむ17歳、が、シンギングならば、シルバー・ブレットは、20代のイケメン君だろう か。田舎の中では都会で育って、生徒会長かキャプテンかを経験して、そんな爽やかイケメン君の新社会人 での爽やかな奮闘をイメージさせる2012年。その彼がもうすぐ30歳を迎えて、ノータイ、サマージャケットで過 ごす初夏のアフター5.爽やか男子の成長物語のごとき、爽やかな熟成への変化。 特徴がはっきりいて、おとなしげだと思っていたグリューナー・フェルトリーナ―に魅せられてしまった夏の午 後の妄想。続く。チャーミングは12、09、06,05…4種の垂直では、その妄想モードが恐ろしいほどに加速。人 生の深みは知らないけれど今を一生懸命頑張る高校生から、夢みる大学生、そして爽やかなグレーのスー ツが似合う若者から、家庭と伝統を軽やかな笑顔で守る40代へ…。ドライな世界観で、淡いピーチ、やわら かいとけこむミネラル、青リンゴとグレープフルーツのハーモニーにホワイトペッパーのアクセントはすべて変 わらない。変わらないのに、そんな世界を見せられる。 ここで注がれたのはピュリニー・モンラッシェ。最後の10種類目のシグネチャーワイン、『フォー(4)』との比較 のための贅沢な1杯だ。ブルゴーニュとの比較には、自らが信じる、グリューナー・フェルトリーナ―との比 較、ブルゴーニュのグラン・クリュと、カンタプル・ガイスバーグというテロワールとの比較への挑戦と自信が ある。ほかのアイテムはステンレスでこちらはフレンチオーク18か月熟成という挑戦。究極のグリューナ―を 目指すというそのワインは、やはりグリューナー・フェルトリーナ―の持つ、静けさと爽やかさなのだが、その 奥の奥に、激情が渦巻く。爽やかな風が吹く丘の向こうにある美しいが深い森。そこから熱風が漏れてくる。 「私と父がナパを訪れたときに、教えられた。ロバート・モンダヴィがフュメ・ブランで施したマジックと同じアイ 22.07.2014 09:14 AUSTRIAN WINE~静かで軽やかな情熱 - rd-daijiiwase official we... 4 von 4 http://rd-daijiiwase.jimdo.com/2014/07/17/austrian-wine-童話の... デアがここにあるんだ」と、当主は静かに微笑む。 グリューナー・フェルトリーナ―という葡萄の面白さを堪能させてもらったし、オーストリアのワインメーカーの 卓越のテクニックと、遊び心も心地よい。オーストリアワインでは、僕が選ぶ昨年出会ったトップ10ワインの中 で、別のワイナリーのリースリングをピックアップした。そのワインも、おかしな想像をさせてくれる楽しいワイ ンだった。夏、そして初秋。静かな緑の風の中で、楽しい白日夢を見られるオーストリアワイン。キンキンに 冷えた爽快なワインや、スタミナフードにばっちりな小気味いいパンチの赤ワインなどともまた違う、静かな 時間を楽しむ際のお供にしたい。 22.07.2014 09:14
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