広島工業大学紀要研究編 第4 1巻 ( 2 0 07 )p p .1 9 2 6 論 文 水道水のマイクロチャンネル内での流動沸騰熱伝達 橋 詰 健 ー ヘ 結 城 隆 洋 * * (平成 1 8年 8月1 7日受理) FlowB o i l i n gHeatT r a n s f e ro fTapWateri nM i c r o C h a n n e l s KenichiHASHIZUMEandTakahiroYUKI 0 0 6 ) ( R e c e i v e dA u g .1 7,2 Abstract Anexperimentwasconductedt oi n v e s t i g a t eheatt r a n s f e rc h a r a c t e r i s t i c so ftapwateri n m i c r o c h a n n e l s . Thet e s t e dchannelswerer e c t a n g u l a rchannelswith12mmb r e a d t h . They wereas t r a i g h tchannelandtwocurvedchannelshavingacurvatureradiuso f64mmand h echannelh e i g h twaschangedfroml .Ommt o3.0mm. Theexperimentalr e s u l t s 32mm,andt canbesummarizeda sf o l l o w s . 1 )Heatt r a n s f e rc o e f f i c i e n ti nasubcooledr e g i o ni n c r e a s e s r a p i d l ywithd e c r e a s i n gt h edegreeo fs u b c o o l i n g .2 )Heatt r a n s f e rc o e f f i c i e n ti nas a t u r a t e d r e g i o nf i r s td e c r e a s e sandthent u r n st oi n c r e a s e .3 )Heatt r a n s f e rc o e f f i c i e n ti nas a t u r a t e d l .uxandincreasingmassf l .uxf o ra l lexperimental regioni n c r e a s e swithdecreasingheatf c o n d i t i o n s .4 )Heatt r a n s f e rc o e f f i c i e n ti nacurvedchanneli ss m a l l e rthant h a ti nas t r a i g h t h i stendencyi sr e v e r s e d channelhavingt h esamechannelh e i g h tf o rnarrowerchannels,butt )Dryouto c c u r swiths m a l l e rvaporq u a l i t ywiths m a l l e rchannelh e i g h t, f o rh i g h e rc h a n n e l s .5 s m a l l e rc u r v a t u r er a d i u s,s m a l l e rmassf l .uxandl a r g e rheatf l .u x . KeyWords:heatt r a n s f e r,b o i l i n g,e v a p o r a t i o n,m i c r o c h a n n e l s,two-phasef l .ow,experiment 1.緒 mmを想定している モ量子 コ E O この程度の等価直径を持つ直線状の 流路であれば流動沸騰現象に関しては通常の流路と見倣さ 筆者らは簡易型の過熱蒸気発生器の開発を目指してい れる場合が多いが,大気圧下の水では飽和蒸気の比体積が る。これはらせん状の講を有する薄い円盤に蓋をして流路 非常に大きいので発生する蒸気泡は流路の影響を大きく受 を形成し,その中心部に水道水を流入させる O そして下面 l l が推奨しているマイクロチャンネルとし ける。 Thomei から電磁誘導加熱して外周部から過熱蒸気を取り出すもの ての次の判定基準 である。水道水は流路内で圧縮水(過冷却液)の状態から II' 2 = 1 ~{~ "~ ¥ A 2 1 三0 . 5一一 ( 1 ) L g ( ρLs 一 ρv ) d /J 気液二相流を経て過熱蒸気の状態へと変化するが,この場 合の流動沸騰現象には次のような特徴がある。 ①マイクロチャンネル内の現象である によれば大気圧下での流動沸騰水の流路としてマイクロ 流路幅は数 mm~ 数十 mm で,過冷却域で狭く,蒸気 チャンネルとして扱うべき等価直径 4は 5mm以下とい クオリテイの増加に伴って広くなってゆく。流路高さは数 うことになり,本研究で対象としている流動沸騰の熱伝達 *広島工業大学工学部知能機械工学科 日広島工業大学大学院工学研究科機械システム工学専攻 (現・東洋熱工業株式会社) -19一 橋詰健一・結城隆洋 はマイクロチャンネル内の現象になる 3 ②i 弗騰流体は i 容存空気を含んで、いる大気圧下の水道水で ある PH :予熱部 V ・飽和蒸気 W .伝熱面 水道水は加熱流路に流入して加熱されるとすぐに溶存空 2 . きに過冷却状態であっても空気/水の二成分系二相流にな 実 気を放出するので容存空気を含まないとして計算したと 装 験 置 実験系統を図 1に示す。水道水(l)は流量調節弁を有 るc ③上面が非加熱の矩形流路である する流量計 ( 2 ) を経て予熱部 ( 3 ) に流入し蒸気クオリ 開発対象としている過熱蒸気発生器では溝の蓋がガス 4 ) を経て測定部 ( 5 ) へ流 ティが設定されてから助走部 ( ケットを介して流路を構成するので上面は実質的に非加熱 入する O ここで熱伝達率が測定された後,後流部 ( 6 )を になる。 経て大気開放されている排出管 ( 7 ) へ流出する。 ④流路がらせん状である 流路の曲率半径が流れ方向に大きくなってゆく 1 C これらの特徴のうち,①のマイクロチャンネル内での 2 流れや流動沸騰現象に関しては,空気/水系 (2).(3) 冷 媒 4 i, 冷 媒 R lO J, 冷 媒 R R_1 l3i _ 1 2 3 I S i n o ¥ 冷 媒 R_llI -134a!1lI G についての研究は発表されているが,②の大気圧下の水/ / ¥ 一一一ムーム 同亡二計 一 7 M 4」」サ。 国皿山町::sssill'i国間 I 水蒸気系についての研究は見当たらない。しかもこれまで に得られた実験結果の間には定性的にさえ不一致がみられ, l : T a p w a t ぽ 2 : F 1 owme 町w i 1 hf l o w回 I 加 ,l v a l v e3 : 日油開町 伝熱機構が解明されているとはいい難い。③については藤 4 i 田らが冷媒 R_1 l31 1 2 3 ( 6 )を用いた実験を行って および R 4 : E r r 国 間r e g i o n5:M 関 山 田r e n t即 t i o n6 : E x 主r e g i o n7 : Ex初試 p i p e F i g . 1E x p e r i m e n t a la p p a r a t u s いるが,④のらせん状流路についての研究は見当たらない。 このような背景の下に筆者らは基礎研究として下面のみ を加熱する直線状および円弧状の矩形流路における流動沸 G :質量流束 g :重力加速度 H :流路高さ h :比エンタルピー Q :加熱熱量 q :熱流束 R :流路の曲率半径 T :温度 W :質量流量 x -クオリテイ α :熱伝達率 ! 1h, :蒸発潜熱 ρ .密度 σ :表面張力 号 ﹃ 巴 目 - 騰の熱伝達について実験を行ったので報告する O 12mm " 司 H 5 v a 3 6 l lHousing2 H 己a t ぽ 3 1 記a t e r b l ω ,k4:Spacぽ 5: P l e x i g l a s s 6百leIIl1∞o u p l 巴 F i g . 2Measurements e c t i o n 予 熱 部 は 内 径 4 m m~ 17mmの鋼管で, その外局にマ イクロヒーターを巻き付けて半田付けし 添え字 さらに厚さ 5 z n :予熱部入口 m mにサーモセメントを塗り,その外側を厚さ lOmmの Ls ・飽和液 グラスウールで断熱したものである。測定部は水平に設置 MS .測定部 された幅 12mmの矩形流路である。予熱部と測定部との MSC :測定部中央 聞には非加熱の助走部が設けられている。これは円形断面 -20- 水道水のマイクロチャンネル内での流動沸騰熱伝達 の予熱部から矩形断面の測定部へ流れを滑らかに導く丸角 るものとし沸騰域ではこれに発生蒸気を加えた実際のク ダクトと,測定部と同じ断面形状を持つ長さ 80mmの矩 オリティを見積もって,ボ、イド率 εを均質流モデルおよび 形ダクトとから成る。後流部も測定部と同ーの断面形状を Z i v iモデル(12 1で計算した結果が図 3である。マイクロチャ AU 内U 1 持つ長さ 80mmの矩形ダクトと流れを滑らかに導く角丸 ダクトとから成り,排出管へ接続されている O 図 2に測定部を示す。ベークライト製のハウジング(1) ω10 一l 。 2 ) を有するアルミ製の加熱ブロッ の中にはシースヒータ ( 口 言 3 )が埋め込まれている。ハウジングの上面にはスベー ク( サ ( 4 ) を介して透明ユーピロンガラス ( 5 ) が載せられ, 占 コ マ 幅 12mmの矩形流路を形成している O 流路高さ H はスベー 〉 1 0 .2 。 ハ リ l 3 サの厚さにより1.0mm~ 3.0mmに設定される。流路の曲 率半径 R は R=∞(直線状流路).R=64mmおよび 32mm(円 1 0 .4 0 . 2 弧状流路)の 3種類であり,測定部の流れ方向長さはいず れも 100mmである o f!l.し • R=64mmの流路については 心 o 0 . 1 0 . 2 Vaporq u a l i t y Xv 加熱部を 3分 割 し 中 央 の 部 分 を 長 さ 100mmの測定部と F i g . 3V o i df r a c t i o nw i t hc o n t r i b u t i o nduet od i s s o l v e da i r した。伝熱面温度測定のために測定部の中央位置に表面か ら 2.5mmごとに T型シース熱電対 ( 6 ) を 3本埋め込んで いる O 3 . 実験データの評価方法 実験は定常状態で、行った。 測定部中央における蒸気クオ リテイ Xvはエンタルピーから算出した。 ノ四 1 J J 2 知 =h ( 2 ) XV = 玩竺k hMS 伝熱面の温度1'.,は加熱ブロックに埋め込まれた 3点の . l F i g . 4Flowc o n d i t i o no fs u b c o o l e dw a t e r( C u r v e dc h a n n e R=64mm,H=lふnm.qw=50kW1m 2• xv = 0. 11 4,T ,, = 6 9 " C) 熱電対による測定温度から外挿して求めた。そしてこれと 伝熱面での熱流束 q"および測定部中央における液の温度 九 : I ' C を用いて熱伝達率 αを算出した。 ン ネ ル で は 低 流 速 域 で は 扇 平 気 泡 流 (elongatedbubble f i o w ) が,高流速域では環状流 (annularf i o w ) が支配的 α-T,,.今函~"""(3) な流動様式になることが従来の研究において一致してお り,このときのボイド率は前者では均質流モデルが,後 ここで温度 , Tu s cは過冷却域 ( X v: ' S0 ) ではエンタルピ- 者では Z i v iモデルが大まかな予測値としては妥当と思わ h u s cから算出される測定部中央における液の温度弗騰域 れる。図 3よか過冷却域では均質流モデルによるボイド ( XVど0 ) では飽和温度とする。 率が実際のボイド率に近い値とみても,放出空気はボイド 率については決して無視できない量であることになる。と 4. 溶存空気の影響 ころが実際に流れの状態を目視観察すれば図 4のようで 水道水には空気が溶存しているので,予熱部で水温が あり,流れは確かに扇平気泡流であるが気泡は伝熱面に付 2 ) による蒸気クオ 上昇すれば溶存空気が放出されて式 ( 着して液よりもかなり遅い速度で移動するので,ボイド率 リティが負の値であっても流れは空気/水の二成分系二 は均質流モデルによる値よりもさらに大きいものと思われ 相流になる(実際のクオリティは正)。本実験で使用した るO 図 3において,沸騰が始まれば放出空気のボイド率への 水道水に含まれる溶存空気量は常温で飽和空気量に対し 8の過飽和状態である。水道水が温度上昇したと て約1.0 寄与は無視でき,蒸気クオリテイ き,液の温度に相当する飽和空気量以上の空気は放出され らのモデルによってもボイド率は 1に近い値になる O -21ー Xvが 0 . 2を超えるとどち 橋詰健一・結城隆 i 羊 パッチが発生する, 5 . 直線状流路についての実験結果 という流れになっている O 熱流束が大 きいときには一度発生したドライパッチには液が供給され 5・1 蒸気クオリティに対する熱伝達率変化の傾向と熱 にくくなって,これが熱伝達率の低下をもたらしている O しかしながら細管についての Kandlikar(l3)の整理式,菅 流東の影響 図 5に実験結果の代表例を示す。熱伝達率の変化は過冷 谷ら (8:や Baoら(!o)のデータではこれとは逆に熱流束が大 弗 却域では過冷却度が減少するに従って急上昇している。 i きいほど熱伝達率が高くなって核沸騰支配の様相を示して 騰域になると蒸気クオリテイの増加とともに一度低下した おり,また,藤田らげ)のデータでは質量流束の大小によっ .Ommでは蒸気 後,緩やかに上昇している O 流路高さ H=l て熱流束の影響が逆転している。マイクロチャンネル内で . 7付近になると熱伝達率が急激に低下 クオリティが Xv = 0 の流動沸騰熱伝達の研究を展望した Thome¥lIは今後の更 する。同様の傾向はマイクロチャンネル内での冷媒を用い なる実験的・解析的な研究が必要, としながらも,この領 た従来の研究 141 .( 6 ) .( 7 ) .1 1 0 1においてもみられている O 域が核沸騰支配という見方には実験データの健全性にまで 遡って疑問を呈している。一方,下面加熱の矩形流路の実 各領域における熱伝達率の変化の様子は次のように考察 される C 験を行った藤田ら ( 4 )は流路高さが 1-2mmでは熱流束が ( a ) 過冷却域 ( xv三 0 ) 大きいほど熱伝達率が大きいが. 0.5mm以下になればこ この領域における熱伝達率の急上昇については,同様の れが逆転することを見出した。彼らはこの理由を,流路高 現象が見られた従来の研究ではサブクール沸騰の影響 (1) さが小さく熱流束が大きいときには伝熱面への液膜の供給 ( 1 0 ) と説明されてきた。しかしながら本実験の結果では, が遅れるため, と推察しているが,前述した筆者らの目視 観察の結果もこの説明を裏付けている O 流路高さや熱流束,質量流束の顕著な影響は認められてい ない(図 5において過冷却域の実験点を貫く実線はすべて 5・2 流路高さと質量流束の影響 0 本実験では溶存空気が放出されるときにサブクー 同一 ) ル沸騰に似た効果が現れ,さらに,放出溶存空気による二 図 6は流路高さの影響を調べたものである。 i 弗騰域では 相流効果(図 3に示したボイド率に対応)が加わってこの 流路高さが小さいほど熱伝達率が大きくなっている。藤田 ような急上昇をもたらしているものと思われる。 ら(6)はこの理由を,流路高さが小さければ気泡成長に十分 xv三 0 ) ( b ) 沸騰域 ( な空間がないので気泡が合体して早く環状流に遷移するた この領域では最初は蒸気クオリテイの増加に伴って一 めと説明しているが,筆者らの目視観察でもこの説明は正 = O . 2程度になると緩やかな上 度熱伝達率が低下するが.xv しいと思われる O ドライパッチの部分が伝熱面全体に大き 昇に転じる。この傾向は,小蒸気クオリティ領域では核 く広がって熱伝達率が蒸気クオリティと共に低下する現象 沸騰支配,中 を“ドライアウトが発生しだ'ということにすれば, 大蒸気クオリテイ領域では対流支配とする l 1 3 1 ドラ イアウトの発生は流路高さが小さいほど早く .H=l .Omm Kandlikar の整理式の傾向と一致する O 熱流束の影響についてみると,熱伝達率は熱流束が大 のときは x = 0 . 6以降ですでにドライアウト発生の兆候が v きいほど低い値となっている。目視観察によれば,伝熱面 .5mmになると x v = 0 . 8を過ぎるまでその 見られるが. H =1 上には部分的なドライパッチが発生し,ここに液が供給さ 兆候がみられない。この理由も液膜の供給により説明され れてドライパッチが消滅し また別の部分に新たなドライ よう O しかしながら, ドライアウトが発生する蒸気クオリ ハリ ハリ ー 注品。 ENS¥ 200 S tr a i g h tc h a n n e l H=1.0mm S tr a i g h tc h a n n e l 2 S tr a i g h tc h a n n e l 告 9 0kg ' ms H=3.0mm 2 ' ms G= 30kg 50 50 80 ム 1 00 o 150 200 。 0 . 2 o 0. 4 0 . 6 0 . 8 0 . 2 o 。 0 . 2 0. 4 0 . 6 0 . 8 Vaporq u a l i t y Xv F i g . 5E f f e c to fh e a tf i u xf o rs t r a i g h tc h a n n e l s 2 2一 ︿﹀ 2 0 . 2 口 O 5 u w 円Ml マ 50 80 00 ム 1 o 150 200 口 FJJ マ マロム 2 一 一 qw[kW/m1 = 2m W qw[kWI ば1 = 1 0 LK z g百出 吉 8582UM 目 20 。 0 . 2 0. 4 50 80 100 150 200 水道水のマイクロチャンネル内での流動沸騰熱伝達 [凶刊︻何回¥診﹄]己 200 ハリ ハ U I S tr a i g h tc a h n n e l 2 S tr a i g h tc h a n n e l qw=1OOkWI r r t S tr a i g h tc h a n n e l qw=150kWI r r t 2 qw 200kW/rrt 二 2 G=45kglms G=45kglms G=45kglms 50 こ uh田口司﹄判定UZ 言U55UCH ム O 20 ムO 1 0 2 0 . 2 ︿﹀ 5 。 0 . 2 . 6 0 0. 4 0 . 8 。 0 . 2 0 . 2 0. 4 0 . 6 0 . 8 0 . 2 。 0 . 2 0. 4 H=l .Omm H=I.5mm H=3.0mm 0 . 6 0 . 8 Vaporq u a l i t y Xy F i g . 6E f f e c to fc h a n n e lh e i g h tf o rs t r a i g h tc h a n n e l s ρw ト 加 qw=150kWI r r t n n q u dm S tr a i g h tc h a n n e l H=l .Omm 問= qw=1OOkWI r r t H=I.0mm d ﹀puA] ANE¥ S t r a i g h tc h a n n e l 100 SH {リ 200 qw=20OkW/rrt 司 50 10 EEZ 百U35000若田口 20 5 0 . 2 0. 4 0 . 8 O 0 . 2 0 . 6 Vaporq u a l i t y Xy F i g . 7E f f e c to fmassf i u xf o rs t r a i g h tc h a n n e l 流路と同じ ) 0 しかし沸騰域に入ると蒸気クオリテイに対 ティについては熱流束の顕著な影響が認められなしミ。 図 7は質量流束の影響を調べたものである。 i 弗騰域では する熱伝達率変化の様子は直線状流路とはかなり異なって 質量流束が大きいほど熱伝達率が大きくなっている O ドラ くる O 目視観察によれば,未蒸発の液は流れに沿って内周 イアウト発生に質量流束の顕著な影響はみられない。 側に寄ってくる傾向にあり,伝熱面上のドライパッチは外 熱伝達率が質量流束に依存するのは,この領域では環 周側から次第に内周側へと広がってゆく。熱伝達率はドラ 状流になっていて熱伝達が対流支配になるためと考えられ イパッチ部分の割合に密接に関連していて,熱流束が大き る。しかしながら Kuwaharaら(11)のデータでは質量流束 くなるとドライパッチ部分には液が供給されにくくなるた の影響は本実験の結果よりもはるかに顕著で、ある一方,藤 め,熱伝達率は熱流束が大きいほど低くなる。 ドライアウ 6 )や Baoら ( 10 )のデータでは質量流束の影響が認めら 田ら ( トが発生する蒸気クオリティは熱流束に依存し熱流束が れていない。熱流束の影響も含めて,伝熱機構の解明に更 大きくなるにつれて小さな蒸気クオリテイでドライアウト なる研究が必要である。 が発生している。 6.2 流路高さと質量流束の影響 6 . 円弧状流路についての実験結果 0は流路高さの影響を調べたものである O 直線状流 図1 6・1 蒸気クオリティに対する熱伝達率変化の傾向と熱 路とは逆に, どちらの曲率半径についても流路高さが小さ いほど熱伝達率が小さい。前述のように円弧状流路では流 流束の影響 図 8および図 9は実験結果の代表例を示したものであ れと共に液が内周側に寄る傾向があって,伝熱面上に薄い る。過冷却域の熱伝達率は直線状流路と同ーであり,曲 液膜が形成されて高い熱伝達率を示すが,流路高さが小さ 率半径や流路高さ,熱流束の影響は見られない(図 8お くなれば液の移動が制限されて伝熱面上での液膜が薄くな よび図 9における過冷却域の実験点を貫く実線は直線状 りにくくなるためと思われる。 -23一 橋詰健一・結城隆洋 .Omm H=l Curvedc h a n n e l (R=64mm) nり ー n u 口 宮Z ZNE¥与は品}弓 E55uco主田g 200 Curvedc h a n n e l (R=64mm) 2 か 90kglms H=1 .5mm H=3.0mm Curvedc h a n n e l (R=64mm) 2 G= 60kglms 2 G= 30kglms 50 20 2 qw[kW/m] = マ 50 口 8 0 ム 1 00 o 150 < ) 200 1 0 5 2 0 . 2 。 0. 4 0 . 2 0 . 6 0 . 8 0 . 2 。 0 . 2 2 qw[kW/m] = マ 50 口 8 0 ム 1 00 o 150 < ) 200 qw[kW/ ば]= マ 50 ロ 80 ム 1 00 o 150 < ) 200 0. 4 0 . 6 0 . 8 0 . 2 O 0 . 2 0. 4 0 . 6 0 . 8 Vaporq u a l i t y Xv F i g . 8E f f e c to fh e a tf l u xf o rcurvedc h a n n e l s(R=64mm) Hニ 1 .0mm Curvec h a n n e l (R=32mm) ハ リ ハリ ー ZNE¥﹀ puA]弓 200 2 G= 90kglms 〉 く 20 2 2 = qw[kW/m] マ 50 口 8 0 ム 1 00 o 150 < ) 200 n u l 5 今ん 2A4 gH g z 言自u宕uoυu ﹄0﹄目 お 50 。 0 . 2 4 0. 0 . 2 qw[kW/m] = マ 50 口 8 0 ム 1 00 o 150 < ) 200 。 0 . 2 0. 4 0 . 6 0 . 8 0 . 2 O 0 . 2 . 6 0 . 8 0. 4 0 Vaporq u a l i t y Xv F i g . 9E f f e c to fh e a tf l u xf o rcurvedchannels(R=32mm) ハ リ n u l ENg¥﹀P4]司 200 C u r v e dc h a n n e l (R=64mm) 5 0 1 0 ム Oロ gEZ uE82U﹄田口 言 。 一 20 5 0 . 8 0 . 2 。 0 . 2 0. 4 日=1.Omm H=I.5mm H=3.0mm 0 . 6 0 . 8 Vaporq u a l i t y Xv F i g . 1 0E f f e c to fc h a n n e lh e i g h tf o rcurvedc h a n n e l s および R=32mml における熱伝達率を代表例について比 図1 1は質量流束の影響を調べたものである O 直線状流 較したものである O 流 路 高 さ が 小 さ い と き ( H =l.Omml 路と同様に質量流束が大きいほど熱伝達率も大きくなって いるが,影響の度合いは直線状流路よりも顕著であり, し には曲率半径が小さいほど熱伝達率が小さくなっている かも質量流束が大きくなるほどドライアウトが発生しにく .5mml と R=32mmの熱 が,流路高さが大きくなる (H=1 くなっている。 伝達率が直線状流路を上回以流路高さがさらに大きくな H=3.0mml と R=64mmの熱伝達率も直線状流路を上 る ( 6・3 流路曲率半径の比較 回るようになる O 円弧状流路において液が内周側による傾 図 12は直線状流路 ( R=∞) と円弧状流路 (R=64mm -24一 向は伝熱面上での液膜を薄くするから,液膜の移動が制限 水道水のマイクロチャンネル内での流動i 弗騰熱伝達 ハリハリ ハリハ V 21 ENE¥﹀P4]さ C u r v e dc h a n n e l (R=64mm) H=I.5mm q w ニ 1 00kWl 5 0 ﹄ 判的己司担制司 言 。-U503 U ' UZ 2 0 1 0 2 G[k glms l = く > 30 o 45 ! ) . 6 0 口 9 0 5 。 0 . 2 0. 4 0 . 6 0 . 8 0 . 2 O 0 . 2 0. 4 0 . 6 0 . 8 Vaporq u a l i t y Xy F i g . 1 1E f f e c to fmass丑uxf o rc u r v e dc h a n n e l s [凶門戸口¥注ぷ]6 200 AU ハU l ←45kglm 2 Gニ4 5kglms 2 2 H=1 .0mm G=45 kglms H=I.5mm Hニ 3.0mm q w = 1 0 0 k W / r r f q w = 1 0 0 k W / r r f q w = 1 0 0 k W / r r f 50 言。一u 出 20 UOO ﹄白﹄田口司・ 1 0 ハ リ 、By y一 今ム 、 ,一 mm mm﹂ 4 2一 8 M 巴 仏 ・ vvL u M d d﹂ fb Mnn 一向 U 副 n n一 Eaai d h h一 , 1 c c一4 O 吋吋一 0 一ハリ 。0.2 ハ リ 2 0 . 2 口町田一! ュ sc cL Oムマム 3H81 5 Vaporq u a l i t y Xy F i g . 1 2E f e c to fc h a n n e lgeometry きれない限り円弧状流路の方が直線状流路よりも熱伝達率 りも小さいが, 流路高さが大きくなる が高くなるものと考えられる。ドライアウトは曲率半径が と逆転する。 ( H = 3 . 0 m m ) 5) ドライアウトが発生する蒸気クオリテイは流路高さ 小さいほど小さな蒸気クオリテイで発生している。 が小さいほど,質量流束が小さいほど,熱流東が大 7 . 結 きいほど小さな値となる。但し直線状流路におい 吉 ては熱流束の影響は顕著ではない。 簡易型過熱蒸気発生器の開発のための基礎研究として, なお,本研究における実験には広島工業大学工学部知能 下面のみが加熱される矩形断面の直線状流路(曲率半径 機械工学科卒業研究として中俊典,細田恭史,両君の協力 R=∞)と円弧状流路 (R=64mmおよび 32mm) における を得たことを記し感謝の意を表す。 水道水の流動沸騰熱伝達特性を実験により調べ, 以下の事 文 項がわかった。 1)過冷却域の熱伝達率は過冷却度の減少とともに急激 に増加する。そしてその値は流路形状(曲率半径, J . R . ,I n t .J .HeatF l u i dF l o , w 25(2004),128-139 (1) Thome, n t .J .HeatMassT r a n s (2) Coleman, J . w .andG a r i m e l l a ,S .,I ,r 42( 19 9 9 ), 2 8 6 9 2 8 8 1 f e 流路高さ),熱流束,質量流束には依存しない。 2) i 弗騰域に入ると熱伝達率は蒸気クオリティの増加と i, M.andSawai, T . ラ 1 s tI n t .ForumonHeat (3) Ueda, T . ラ K司j T r a n s f e r ,Kyoto,2004,GS4-19 共に一度低下しその後ゆるやかな上昇に転じる。 3 )す べ て の 流 路 に お い て 弗 騰 域 の 熱 伝 達 率 は 熱 流 束 (4) 藤 田 恭 仲 ・ 楊 洋 , 第 40回日本伝熱シンポジウム, 2003年 5月. D311 が小さいほど,また,質量流束が大きいほど大きく (5)巌子刻・ほか 3名 , 第 39回日本伝熱シンポジウム, なる 0 4) 流路高さが小さい 献 ( H =l . Omm) ときには円弧状流 路の熱伝達率は同一流路高さを持つ直線状流路よ , F221 2002年 6月 (6) 藤田恭仲・楊洋. 第 39回日本伝熱シンポジウム, -25- 橋詰健一・結城隆 i 羊 2 0 0 2年 6月 , F234 (7)藤田恭伸・藤田奈美,第 4 0回日本伝熱シンポジウム, 2 0 0 3年 5月 , D312 1回日本伝熱シンポジウム, (8)菅谷正則・ほか 3名,第 4 2 0 0 4年 5月 , I l5 2 T .H .,S u z u k i, Y .a n dK a s a g i, N .,1 s tI n t . Forumo n (9) Yen, , Kyoto,2004,GS3-01 H e a tT r a n s f e r ( 10 ) Bao, Z .Y . ,F l e t c h e r ,D .F .andHaynes, B . S .,I n t .J .H eat ,r 4 3( 2 0 0 0 ), 3 3 4 7 3 3 5 8 MassT r a n s f e ( 1 1 ) Kuwahara, K . , Koyama , S .andK a z a r i, K .,ThermalSc i . E n g .,1 2・6( 2 0 0 4 ),1 3 2 1 ( 12 ) 技術資料,管路・ダクトの流体抵抗, 日本機械学会, 1 9 7 9, 1 8 1 1 8 3 ( 13 )K a n d l i k a r , S . G .a n dB a 1 a s u b r a m a n i a n, P .,HeatT r a n s f e r En , . g2 5 3( 2 0 0 4 ), 8 6 9 3
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