問題解答 - 奈良女子大学

問題解答
奈良女子大学理学部情報科学科
平成 26 年 7 月 10 日
加古富志雄
i
目次
第 3 章 代数学の基礎
3.1
解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
第 4 章 整数と多項式の演算
4.1
解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
第 5 章 最大公約数と多項式剰余列
5.1
解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
第 6 章 多項式の因数分解
6.1
解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
第 7 章 代数方程式の解法
7.1
1
5
5
7
7
9
9
15
解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15
第 9 章 有理式の不定積分
9.1
1
19
解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19
1
第 3 章 代数学の基礎
3.1
解答
問題 3.1. 2 × 2 の行列で、非対角成分がゼロであるもの全体の集合 D2 を考える。ただし、行列の要素は整数
であるものとする。D2 は通常の行列の加算および乗算に関して環になるかどうかを示せ。
解答 3.1.
{(
D2 =
a 0
0 b
今、D2 から任意に二つの要素 α, β を取り出すと、
(
)
α1 0
,
α=
0 α2
)
}
|a, b ∈ Z
(
β=
β1
0
0
β2
)
と表される。ここで、α1 , α2 , β1 , β2 は全て整数。この α, β の和、積を次のように決める。
(
)
(
)
α 1 + β1
0
α1 × β1
0
, α×β =
α+β =
0
α2 + β2
0
α2 × β2
この時、α1 + β1 , α1 × β1 等は全て整数になるので、ここで定義した α + β, α × β は D2 に含まれているので、
加算、乗算が上で示した演算として定義できる。(この演算は、通常の行列の和および積の定義と同じである。)
これが、環になることを示すためには、
(
)
0 0
(1) 加算の単位元の存在、 0 0
(
) (
a 0
−a
(2) 加算の逆元の存在、−
=
0 b
0
0
−b
)
(3) 加算に関する結合則、 (α + β) + γ = α + (β + γ)
(4) 加算に関する可換性、 α + β = β + α
(
)
1 0
(5) 乗算の単位元の存在、
0 1
(6) 乗算に関する結合則、(α × β) × γ = α × (β × γ)
(7) 分配則、(α + β) × γ = α × γ + β × γ
を示す必要があるが、これらはほとんど自明。
問題 3.2.
(1) 有限体 F7 の加算および乗算の表を書け。
(2) F7 の要素 a で、ak 6= 1, k = 1, . . . , 5 であり、a6 = 1 となるものを見つけよ。これを 7 の原始元という。
(3) F7 の 0 以外の要素はすべて問 (2) の要素 a を使って ak の形で表される事を示せ。
第3章
2
解答 3.2.
代数学の基礎
(1)
(2)
22 = 4, 23 = 6, 24 = 1
32 = 2, 33 = 6, 34 = 4, 35 = 5, 36 = 1
従って、36 = 1
(3)
1 = 30 , 2 = 32 , 3 = 31 , 4 = 34 , 5 = 55 , 6 = 33
問題 3.3.
(1) ω を 1 の 3 乗根の内で、1 でない数とする。(ω 2 + ω + 1 = 0) このとき、
Q(ω) = {a + bω|a, b ∈ Q}
は体となることを示せ。
√
(2) ω = −1+2
示せ。
−3
とする。このとき、ω 2 + ω + 1 = 0 の共役根 ω
¯=
√
−1− −3
2
が Q(ω) に含まれていることを
解答 3.3. (1) の体になることの証明
Q(ω) = {a + bω|a, b ∈ Q}
ただし、ω は ω 2 + ω + 1 = 0 を満たす数である。
Q(ω) から任意に二つの要素 α, β を取り出すと、
α = a1 + b1 ω,
β = a2 + b2 ω,
と表すことができる。ここで、a1 , a2 , b1 , b2 ∈ Q.
これから、Q(ω) 上での加算および乗算を次のように定義する(これは通常の数の加算と乗算)と
α+β
= (a1 + b1 ω) + (a2 + b2 ω) = (a1 + a2 ) + (b1 + b2 )ω
α×β
= (a1 + b1 ω) × (a2 + b2 ω) = a1 a2 + (a1 b2 + a2 b1 )ω + b1 b2 ω 2
= (a1 a2 − b1 b2 ) + (a1 b2 + a2 b1 − b1 b2 )ω
となるが、a1 , a2 , b1 , b2 が有理数である時、a1 + b1 , a1 a2 等は有理数となるので、α + β, α × β ∈ Q(ω)。従って、
加算および乗算が定義できる。
これが、体になることを示すには、環になることを示して、さらに乗算に関する逆元が存在することを示せば
よい。加算の単位元は 0 + 0ω = 0、乗算の単位元は 1 + 0ω = 1 となる。加算の逆元は −α = (−a1 ) + (−b1 )ω 、
乗算の逆元は
1
a1 + b1 ω 2
1
=
=
α
a1 + b1 ω
(a1 + b1 ω)(a1 + b1 ω 2 )
となるが、これを ω 2 = −1 − ω を使って整理すると
−b1
a1 − b1
+ 2
ω
a21 + b21 − a1 b1
a1 + b21 − a1 b1
a1 −b1
となる。a1 , b1 が有理数である時、a21 + b21 − a1 b1 がゼロでなければ、 a2 +b
2 −a b と
1 1
なる。
1
1
−b1
a21 +b21 −a1 b1
は共に有理数と
3.1. 解答
3
ここで、a21 + b21 − a1 b1 がゼロになる条件を調べると a21 + b21 − a1 b1 = (a1 − 21 b1 )2 + 41 b21 から、a1 = b1 = 0
の時だけであることが分かる。従って α 6= 0 に対してその逆元 1/α が Q(ω) の中に存在することが言える。
演算が可換であることや、結合則と分配則を満たすことは、演算が通常の数の演算であることから自明である。
(2) ω
¯ ∈ Q(ω) は
√
−1− −3
ω
¯=
= −1 −
2
√
−1+ −3
2
= −1 − ω より示せる。
問題 3.4.
√
D2 = {a + b 2|a, b ∈ Z}
を考える。
(1) これは通常の加算および乗算に関して環となることを示せ。この環上では 2 =
√
(2) 1 + 2 は 1 の約数であることを示せ。
√
(3) 1 + 2 以外で 1 の約数であるものをあげよ。
√
√
2 × 2 と因数分解される。
解答 3.4. (1) 1 の約数
(1 +
から、1 ±
√
√
2)(−1 +
√
2) = 2 − 1 = 1
2 は 1 の約数である。これから、
±1, 1 ±
√
2, (1 ±
√
2)2 = 3 ±
√
2, . . .
は 1 の約数である。(これ以外に 1 の約数はないがそれを示すのはちょっと大変)
√
(2) 2 の既約性
√
逆に 2 が既約でないと仮定してみる。そうすると、
√
√
√
2 = (a + b 2)(c + d 2)
と分解される。右辺を展開して整理すると
√
√
2 = (ac + 2bd) + (ad + bc) 2
となる。これから、ac + 2bd = 0, ad + bc = 1 を満たすことが必要である。
ac + 2bd = 0 から、a あるいは c は 2 の倍数でなければならない。今、a が 2 の倍数であるとする。つまり、
ある整数 a0 が存在して、a = 2a0 。これから、最初の分解は
√
となるが、両辺を
√
√
√
√
√
√
2 = (2a0 + b 2)(c + d 2) = 2(b + a0 2)(c + d 2)
2 で割ると
√
√
(b + a0 2)(c + d 2) = 1
√
√
√
となる。つまり、b + a0 2,c + d 2 は 1 の約数である。従って、 2 は既約である。(分解できるとしても 1 の
約数の分解だけ)。
√
ちなみに、 2 はこの環で素数か?
√
√
α = a + b 2, β = c + d 2 として、
√
√
α × β = (a + b 2)(c + d 2)
√
√
2 で割り切れると仮定する。左辺を展開して整理すると (ac + 2bd) + (bc + ad) 2 となるが、これが 2 で
√
割り切れるためには ac が 2 で割り切れなければならない。ac は整数なのでこのことは ac が 2 で割り切れな
が
√
第3章
4
代数学の基礎
ければならないことを意味している。つまり、a あるいは c は 2 で割り切れなければならない。例えば、a が 2
√
√
の倍数とすると a + b 2 は 2 で割り切れる。
√
√
従って、αβ が 2 で割り切れるとすると α あるいは β のいずれかは必ず 2 で割り切れなければならない。
√
従って、 2 はこ環上で素数である。
√
注意:このことはどんな数で考えても 2 が素数であると言っているのではない。今考えている数の集合
√
{a + b 2|a, b ∈ Z} で素数であるということ。
問題 3.5. 2 × 2 の行列で、
(
a b
−b a
)
の形をしたもの全体の集合 D を考える。ただし、a, b は実数であるとする。
(1) 任意の A, B ∈ D について、A + B 、A × B を求めよ。
A + B, A × B ∈ D であることを示せ。
ただし
(
A=
a
b
−b a
)
(
,
B=
c
d
−d
c
)
とする。
(2) a と b のどちらかがゼロでないとき、A−1 は D に含まれることを示せ。
(3) 集合 D は通常の行列の和および積に対して、体であることを示せ。
問題 3.6.
(1) 有理数係数の一変数多項式全体からなる環はユークリッド環であることを示せ。
ユークリッド関数としては、r(f ) = f の次数 と定義する。ただし、r(0) = −∞。
(2) 整数係数の一変数多項式全体からなる環はなぜユークリッド環では無いのか。説明せよ。
問題 3.7. 環 O5 、
において、要素 2, 3, (1 +
√
O5 = {a + b −5|a, b ∈ Z}
√
−5), (1 −
√
−5) は既約であることを示せ。
5
第 4 章 整数と多項式の演算
4.1
解答
問題 4.1.
(1) n 桁の正整数と m 桁の正整数の和は max(n, m) 桁以上 max(n, m) + 1 桁以下であることを示せ。
(2) n 桁の正整数と m 桁の正整数の積は n + m − 1 桁以上 n + m 桁以下であることを示せ。
解答 4.1. 解答省略
問題 4.2.
(1) Karatsuba の方法を使って、57 × 38 の計算を行なえ。
(2) 3分割の方法を使って、257 × 183 の計算を行なえ。
解答 4.2.
(1)
5 × 3 = 15
7 × 8 = 56
(5 + 7) × (3 + 8) − 15 − 56 = 132 − 15 − 56 = 61
従って、
57 × 38 = 1500 + 610 + 56 = 2166
(2)
21 +
s0
=
21
s1
=
(2 + 5 + 7) × (1 + 8 + 3) = 168
s2
=
(4 × 2 + 2 × 5 + 7) × (4 × 1 + 2 × 8 + 3) = 575
s3
=
(2 − 5 + 7) × (1 − 8 + 3) = −16
s4
=
2
−3 × 21 + 6 × 168 − 575 − 2 × (−16) + 12 × 2
−2 × 21 + 168 − 16 − 2 × 2
× 10 +
× 100
6
2
3 × 21 − 3 × 168 + 575 − (−16) − 12 × 2
× 1000 + 2 × 10000
+
6
= 21 + 710 + 5300 + 21000 + 20000 = 47031
問題 4.3.
f (x) = x3 − 2x
g(x) =
とする。
3x2 − 2
第4章
6
(1) f (x) ÷ g(x) の剰余および商を求めよ。
(2) f (x) の g(x) による擬商および擬剰余を求めよ。
解答 4.3.
(1)
f ÷g =
(2) 擬商は 3x 、 擬剰余は −12x
1
4
x··· − x
3
3
整数と多項式の演算
7
第 5 章 最大公約数と多項式剰余列
解答
5.1
問題 5.1. 与えられた二つの整数 a, b に対して、その最大公約数 g と
ax + by = g
を満たす整数の組 x, y を一つ求めるプログラムを C 言語で作成せよ。
また、a = 144, b = 111 の時、g, x, y を求めてみよ。
解答 5.1.
int euclid(f,g, a,b,c)
int f,g;
int *a, *b, *c;
{
int q,r;
int a11,a12,a21,a22;
int t1, t2;
a11=a22=1;
a12=a21=0;
while(r != 0) {
q = f / g;
r = f % g;
f = g;
g = r;
t1 = a11;
t2 = a12;
a11 = -q * a11 + a21;
a12 = -q * a12 + a22;
a21 = t1;
a22 = t2;
}
*a = a11;
*b = a12;
*c = f;
/* gcd */
return f;
/* gcd */
}
gcd(144, 111) = 3
48x + 37y = 1
48x + 37y = 37(x + y) + 11x = 37x0 + 11y 0 = 11(3x0 + y 0 ) + 4x0 = 1
第5章
8
最大公約数と多項式剰余列
11x00 + 4y 00 = 4(2x00 + y 00 ) + 3x00 = 1
4x000 + 3y 000 = 4(x000 + y 000 ) + x000 = 1
x000 = 1, y 000 = −1。x00 = −1, y 00 = x000 − 2x00 = 3。x0 = 3, y 0 = x00 − 3x0 = −10。
x = −10, y = x0 − x = 13
あるいは
144 ÷ 111
=
1 · · · 33
111 ÷ 33 =
3 · · · 12
33 ÷ 12 =
2···9
12 ÷ 9 =
1···3
9÷3 =
3···0
これから、
(
−3 1
1 0
)(
−1 1
1 0
)(
−2 1
1 0
)(
となり g = 3 および x = −10, y = 13 が得られる。
−3 1
1 0
)(
−1 1
1 0
)
(
=
−48
13
37
−10
)
9
第 6 章 多項式の因数分解
6.1
解答
問題 6.1. 多項式 f (x) を x − 1 で割ったときの余りは 2 であり、また x − 2 で割ったときの余りは 17 となる。
このとき、f (x) を (x − 1)(x − 2) で割ったときの余りを求めよ。
解答 6.1.
f
= g1 (x − 1) + 2
= g2 (x − 2) + 17
= g(x − 1)(x − 2) + ax + b
f (x) を二次式 (x − 1)(x − 2) で割った余りは一次式になるから。x = 1 および x = 2 を代入すると、2 = a + b,
17 = 2a + b という連立方程式が得られる。これから、a, b を求めると、a = 15, b = −13 が得られる。従って、
f (x) を (x − 1)(x − 2) で割った余りは 15x − 13
問題 6.2. 次の多項式を因数分解せよ。
(1) x3 − 2x2 − x + 2
(2) 3x3 − 4x2 + 2x − 1
解答 6.2.
(1)
f = x3 − 2x2 − x + 2
三次式ですが、分解可能であるならば必ず一次の因子が含まれているはずである。その因子の候補は、f の
3 次の係数が 1 であり、0次の係数が 2 であることから、(x ± 1), (x ± 2) である。これから、x = ±1, ±2
を順人代入することによって f (1) = 0 から、f は (x − 1) で割り切れる。同様にして、f (2) = f (−1) = 0
から、(x − 2), (x + 1) で割り切れることが分かる。この結果と、f の最高次の係数が 1 であることより、
f = (x − 1)(x − 2)(x + 1)
(2) 同様にして、x = ±1, ± 13 を代入してみると
f (1) = 3 − 4 + 2 − 1 = 0
f (−1) = −3 − 4 − 2 − 1 6= 0
1
1 4 2
−6
f( ) =
− + −1=
6= 0
3
9 9 3
9
1
1 4 2
−20
f (− ) = − − − − 1 =
6= 0
3
9 9 3
9
より、(x − 1) で割り切れることが分かる。これ以外に一次の因子は持たないことから
f = (x − 1)(3x2 − x + 1)
第 6 章 多項式の因数分解
10
問題 6.3. 次の多項式の無平方分解を求めよ。
(1) x4 + 2x3 − 2x − 1
(2) x4 − 2x2 + 1
(3) x5 − 3x4 − 2x3 + 6x2 + x − 3
解答 6.3.
(1) f = x4 + 2x3 − 2x − 1
g = f 0 = 4x3 + 6x2 − 2 = 2(2x3 + 3x2 − 1)
h = g 0 = 12(x2 + x) = 12x(x + 1)
から gcd(g,h) = (x + 1).
g/(x + 1)2 = 4x2 + 2x − 2 = 2(2x2 + x − 1) = 2(2x − 1)
従って、gcd(f, g) = (x + 1)2 から f は x + 1 の三乗で割り切れる。
f = (x + 1)3 (x − 1)
(2) f = x4 − 2x2 + 1
g = f 0 = 4x3 − 4x = 4x(x2 − 1)
から gcd(f, g) = x2 − 1.
h = g 0 = 12x2 − 4 = 4(3x2 − 1)
から、gcd(g, h) = 1。従って、
f = (x2 − 1)2
(3) f = x5 − 3x4 − 2x3 + 6x2 + x − 3
g = f 0 = 5x4 − 12x3 − 6x2 + 12x + 1
gcd(f, g) = x2 − 1.
これから、f は x2 − 1 の二乗で割り切れる。
f = (x2 − 1)2 (x − 3)
問題 6.4. 13 は 7 を法として 2 × 3 と因数分解される。
13 ≡ 2 × 3
(mod 7)
これから、72 , 73 を法とした 13 の因数分解をヘンゼルの補題から求めよ。
解答 6.4.
13 ≡ 2 × 3
(mod 7)
13 = f g として
f = f0 + 7f1 + 72 f2 + . . .
6.1. 解答
11
g = g0 + 7g1 + 72 g2 + . . .
で f0 = 2, g0 = 3.
13 − 2 × 3 = 7 = 7 × 1 から、f1 , g1 を決める方程式は
f0 g1 + f1 g0 = 2g1 + 3f1 = 1
これを解いて、f1 = 1, g1 = −1 が得られる。つまり、f = 9 + 72 f2 + . . . , g = −4 + 72 g2 + . . .
13 − 9 × (−4) = 49 = 72 × 1 から、f2 , g2 を決める式は
f0 g2 + f2 g0 = 2g2 + 3f2 = 1
これから、f2 = 1, g2 = −1 が答え。従って、
f = 2 + 7 × 1 + 72 × 1 + . . .
g = 3 − 7 × 1 − 72 × 1 + . . .
問題 6.5. 次の問いに答えよ。
(1)
23a + 48b = 1
を満たす、整数 a, b を求めよ。
(2)
(x2 + 1)f (x) + (x + 1)g(x) = 1
を満たす、多項式 f (x), g(x) を求めよ。ただし、deg(g) < 2、deg(f ) < 1。(deg(f ) は f の次数を表す。)
解答 6.5.
(1)
48 = 2 × 23 + 2
23a + 48b = 23(a + 2b) + 2b
a + 2b = a0 , b = b0 とおくと、方程式は 23a0 + 2b0 = 1 となる。
23 = 2 × 11 + 1
から、23a0 + 2b0 = 2(11a0 + b0 ) + a0 = 1。従って、a0 = 1 が解。これから、b0 = −11。
b = −11
a = a0 − 2b = 1 + 22 = 23
これは1つの解。全ての解は
{
a = 23 + 48k
b = −11 − 48k
ただし、k = 0, ±1, ±2, . . .。
(2)
(x2 + 1) ÷ (x + 1) = x − 1 · · · 2
これから
(x2 + 1)f + (x + 1)g = (x + 1)((x − 1)f + g) + 2f = 1
従って、解は
f=
1
2
g = −(x − 1)f = −
x−1
2
第 6 章 多項式の因数分解
12
問題 6.6. 次の条件を満たす、最小次数の多項式 f (x) をそれぞれ求めよ。
(1) f (−1) = −3, f (0) = 1, f (1) = 1, f (2) = 3.
(2) f (−1) = −2, f (0) = −3, f (1) = −2, f (2) = −3, f (3) = 12.
解答 6.6.
(1)
f (x) = x3 − 2x2 + x + 1
(2)
f (x) =
11x4 − 30x3 + x2 + 30x − 36
12
問題 6.7. 多項式
f (x) = x3 − 5x2 − 7x + 35
について、
(1) f (x) が p = 5 を法として無平方であることを示せ。
(2) U (x)5 ≡ U (x) (mod 5, f (x)) を満たす多項式 U (x) を求めよ。
(3) f (x)
(mod 5) を因数分解せよ。
(4) f (x) の (mod 52 ) での因数分解を求めよ。
解答 6.7.
(1) mod 5 で計算すると
f = x3 − 2x = x(x2 − 2)
x と x2 − 2 は互いに素。また、(x2 − 2)0 = 2x と x2 − 2 とも素。従って、f は無平方。
f と f 0 = 3x2 − 2 との gcd を計算しても良い。
(2)
U (x) = ax2 + bx + c
と置くと、U 5 − U を f で割った余りは 3bx となる。これから b = 0。従って、
U (x) = x2 + c,
c = 0, 1, . . . , 4
(3) gcd(U, f ) を計算すると
gcd(x2 , x3 − 2x) = x
gcd(x2 + 1, x3 − 2x) = 1
gcd(x2 + 2, x3 − 2x) = 1
gcd(x2 + 3, x3 − 2x) = x2 + 3
gcd(x2 + 4, x3 − 2x) = 1
したがって、
f = x(x2 + 3)
問題 6.8. 多項式
f (x, y, z) = x2 y + y 2 z + z 2 x − xy 2 − yz 2 − zx2
について、
(1) f (x, y, 0) が無平方であることを示せ。
6.1. 解答
13
(2) f (x, y, 0) を因数分解せよ。これは f (x, y, z) の (mod z) での因数分解である。
(3) f (x, y, z) の (mod z 2 ) での因数分解を求めよ。また、(mod z 3 ) での因数分解を求めよ。
解答 6.8.
(1)
f (x, y, 0) = x2 y − xy 2
df (x, y, 0)
) = gcd(x2 y − xy 2 , 2xy − y 2 ) = y
dx
gcd が x の関数でないので、x の多項式として無平方である。
gcd(f (x, y, 0),
(2)
f (x, y, 0) = xy(x − y)
(3) g = xy, h = x − y とおくと
f = gh
(mod z)
f − gh = y 2 z − zx2
(mod z 2 )
から、
ˆ + hˆ
gh
g = y 2 − x2
ˆ = 0 を得る。従って、
を解いて gˆ = −(x + y), h
g2
= g + zˆ
g = xy − z(x + y)
h2
ˆ =x−y
= h + zh
f − g2 h2 = z 2 (x − y) (mod z 3 )
従って、
ˆ + hˆ
gh
g =x−y
ˆ = 0。これから、
を解くと、gˆ = 1, h
g3
=
g2 + z 2 gˆ = xy − z(x + y) + z 2
h3
=
ˆ =x−y
h2 + z 2 h
問題 6.9. 与えられた多項式 F (x) が、ある素数 p を法として
F (x) ≡ G1 (x)G2 (x)G3 (x) (mod p)
と分解されるなら pk , (k = 1, 2, . . .) を法として
(k)
(k)
(k)
F (x) ≡ G1 (x)G2 (x)G3 (x) (mod pk )
という分解が可能であることを証明せよ。
(k)
また、与えられた F (x), Gi (x) から Gi (x) を計算する方法を示せ。
第 6 章 多項式の因数分解
14
解答 6.9.
F (x) = G1 (x)G2 (x)G3 (x) (mod p)
(0)
(0)
(0)
(1)
(0)
(1)
(0)
(1)
Gˆ1
= G1 + pG1 + p2 G1 (2) + . . .
Gˆ2
= G2 + pG2 + p2 G2 (2) + . . .
Gˆ3
= G3 + pG3 + p2 G3 (2) + . . .
(0)
(1)
(1)
(1)
ただし、 G1 = G1 , G2 = G2 , G3 = G3 、とすると G1 , G2 , G3 を決める式は
(1)
(1)
(1)
G1 G2 G3 + G2 G3 G1 + G3 G1 G2 = F (1)
ただし、
F = G1 G2 G3 + pF (1) + p2 F (2) + . . .
g1 = G1 , g2 = G2 G3 に対してヘンゼルの補題から (mod p2 ), (mod p3 ), の展開を求める。この結果に対して、
g2 の分解を求めるとよい。
15
第 7 章 代数方程式の解法
7.1
解答
問題 7.1. 次の問いに答えよ。
(1) x21 + x22 + x23 を x1 , x2 , x3 の基本対称式を使って表せ。
(2) x31 + x32 + x33 を x1 , x2 , x3 の基本対称式を使って表せ。
解答 7.1.
(1)
(x1 + x2 + x3 )2 = x21 + x22 + x23 + 2(x1 x2 + x2 x3 + x3 x1 )
より
x21 + x22 + x23 = s21 − 2s2
(2)
(x1 + x2 + x3 )3 = x31 + x32 + x33 + 3{x1 (x22 + x23 ) + x2 (x21 + x23 ) + x3 (x21 + x22 )} + 6x1 x2 x3
s1 s2 = x1 (x22 + x23 ) + x2 (x21 + x23 ) + x3 (x21 + x22 ) + 3x1 x2 x3
従って、
x31 + x32 + x33 = s31 − 6s3 − 3(s1 s2 − 3s3 ) = s31 − 3s1 s2 + 3s3
問題 7.2. 二つの数 a, b について、a と b の和が 3 であり、積が 1 である。a と b を求めよ。
解答 7.2. a + b = 3, a × b = 1 から、a, b は
x2 − 3x + 1 = 0
の方程式の解である。
a =
b
=
√
3+ 5
2√
3− 5
2
問題 7.3. 三つの数 a, b, c について、
a+b+c
a2 + b2 + c2
3
3
a +b +c
である。このとき、a, b, c はいくらであるか。
3
= 3
= 17
= 27
第 7 章 代数方程式の解法
16
解答 7.3. 問題 7.1 から
s1 = 3, s2 = (32 − 17)/2 = −4, s3 = (27 − 33 + 3 × 3 × (−4))/3 = −12
従って、a, b, c は
x3 − 3x2 − 4x + 12 = 0
を満たす。a = 3, b = 2, c = −2 が答え。
問題 7.4. 次の方程式の解を求めよ。
(1) x3 + 9x − 26 = 0
(2) x4 − 6x2 + 16x + 21 = 0
解答 7.4.
(1) x3 + 9x − 26 = 0
これは、x3 + 3px + 2q = 0 の形と対応させると、p = 3, q = −13 ということ。これから、u3 , v 3 を解とす
る方程式は
t2 + 2qt − p3 = t2 − 26t − 27 = 0
この方程式の解は、t = −1, t = 27。従って、u = −1, v = 3 が一つの解になる。これから、
u + v = x1
より、x1 = 2。他の解は、
x2 = ω 2 u + ωv = −ω 2 + 3ω = 4ω + 1
x3 = ωu + ω 2 v = −ω + 3ω 2 = −4ω − 3
ω=
√
−1+ −3
2
より、x2 , x3 が求まる。
(2) x4 − 6x2 + 16x + 21 = 0
x4 − 6x2 + 16x + 21 = (x2 + α)2 + β(x + γ)2
と置くと、
2α + β = −6
2βγ = 16
α2 + βγ 2 = 21
これから、γ = 8/β 。これを3番目の式に代入すると。
α2 + 64/β = 21
最初の式から、β = −6 − 2α。従って、
α2 + 64/(−6 − 2α) = 21
整理すると
(α2 − 21)(3 + α) − 32 = 0
つまり、
α3 + 3α2 − 21α − 95 = 0
7.1. 解答
17
この式で、α = y − 1 と変数を変換すると
y 3 − 24y − 72 = 0
となる。
この三次方程式は、 p = −8, q = −36
t2 − 72t + 83 = 0
これは t = 8, t = 64 を解に持つ。
従って、 y = 2 + 4 = 6 が3次方程式の解の一つになる。これから、
α=5
β = −6 − 2α = −16
1
γ = 8/β = −
2
となり、最初の4次式は
1
x4 − 6x2 + 16x + 21 = (x2 + 5)2 − 16(x − )2 = (x2 + 5)2 − (4x − 2)2
2
これを因数分解すると
(x2 + 5 − 4x + 2)(x2 + 5 + 4x − 2) = (x2 − 4x + 7)(x2 + 4x + 3) = (x2 − 4x + 7)(x + 1)(x + 3)
従って、解は
x = −1, −3, 2 ±
√
−3
問題 7.5. 次の方程式の解を求めよ。
(1) x3 − 18x − 35 = 0
(2) x4 − 6x2 − 16x − 15 = 0
解答 7.5.
(1)
√
−5 ± 3i
x=
2
x=5
(2)
x=1±
√
6
√
x = −1 ± 2i
問題 7.6. f (x) = x3 + 9x − 26 のスツルム列を求めよ。
解答 7.6.
f0
= f = x3 + 9x − 26
f1
= f 0 = 3x2 + 9
f2
= −6x + 26
196
= −
3
f3
問題 7.7. f (x) = x4 − 6x2 − 16x − 15 のスツルム列を求めよ。
これから、x = 0 と x = 5 の間に、f (x) = 0 の解がいくつ存在するか調べよ。
第 7 章 代数方程式の解法
18
解答 7.7.
f0
= f = x4 − 6x2 − 16x − 15
f1
= f 0 = 4x3 − 12x − 16
f2
= 3x2 + 12x + 15
f3
= −32x − 64
f4
= −3
V (0) = V {−, −, +, −, −} = 2
V (5) = V {380, 424, 150, −224, −3} = 1
従って、2-1 =1個の解が存在する。
問題 7.8. 四次方程式
f = x4 + px2 + qx + r = 0
の 4 つの解を x1 , x2 , x3 , x4 とし、
y1
= (x1 + x2 )(x3 + x4 ),
y2
= (x1 + x3 )(x2 + x4 ),
y3
= (x1 + x4 )(x2 + x3 ),
とおく。このとき、y1 , y2 , y3 の対称式は、x1 , x2 , x3 , x4 の対称式で表されることを示せ。
y1 , y2 , y3 を解とする 3 次方程式を求めよ。
解答 7.8.
y1 + y2 + y3
= (x1 + x2 )(x3 + x4 ) + (x1 + x3 )(x2 + x4 ) + (x1 + x4 )(x2 + x3 )
= 2x1 (x2 + x3 + x4 ) + 2x2 (x3 + x4 ) + 2x3 x4 = 2s2
y1 y2 + y2 y3 + y3 y1
=
(x1 + x2 )(x3 + x4 )(x1 + x3 )(x2 + x4 ) + (x1 + x3 )(x2 + x4 )(x1 + x4 )(x2 + x3 )
+(x1 + x4 )(x2 + x3 )(x1 + x2 )(x3 + x4 )
=
2x21 x2 x3 + · · · + x21 x22 + · · ·
=
s22 + s1 s3 − 4s4
y1 y2 y3
= (x1 + x2 )(x3 + x4 )(x1 + x3 )(x2 + x4 )(x1 + x4 )(x2 + x3 )
= x31 x22 x3 + · · ·
= s1 s2 s3 − s21 s4 − s23
19
第 9 章 有理式の不定積分
9.1
解答
問題 9.1. 次の有理式の部分分数分解を求めよ。
(1)
x3 − 1
x(x + 1)4
(2)
2x2 + 5x + 4
(x + 1)2 (x + 2)
(3)
3x2 − 2x + 2
(x2 + 1)(x − 2)
解答 9.1.
(1)
x3 −1
x(x+1)4
を部分分数に分解すると、
−1 x3 + 5x2 + 6x + 4
+
x
(x + 1)4
完全部分分数に分解すると
−1
1
2
−1
2
+
+
+
+
x
x + 1 (x + 1)2
(x + 1)3
(x + 1)4
∫
x3 − 1
2
1
2
= − log(x) + log(x + 1) −
+
−
x(x + 1)4
x + 1 2(x + 1)2
3(x + 1)3
(2) 部分分数に分解すると
1
2
+
(x + 1)2
x+2
これは完全部分分数分解になっているので、これから
∫
2x2 + 5x + 4
1
=−
+ 2 log(x + 2)
(x + 1)2 (x + 2)
x+1
(3) この有理式の分母は無平方なので、不定積分は対数関数で表される。
r
q − yr0
= (x2 + 1)(x − 2) = 0
= (3x2 − 2x + 2) − y(3x2 − 4x + 1) = 0
の解を求めると、x = 2, y = 2 と、x = ±i, y = 1/2 が得られる。
y = 2 のとき、gcd(r, q − yr0 ) = (x − 2)。y = 1/2 のとき、gcd(r, q − yr0 ) = x2 + 1。従って、
∫
3x2 − 2x + 2
1
= 2 log(x − 2) + log(x2 + 1)
(x2 + 1)(x − 2)
2
第 9 章 有理式の不定積分
20
問題 9.2. 因数分解
x3 − 1 = (x − 1)(x − w)(x − w2 )
を使って、次の不定積分
を求めよ。
ただし、w =
解答 9.2.
∫
1
dx
x3 − 1
√
−1+ −3
。
2
1
(x−1)(x−w)(x−w2 )
を部分分数に分解する。
1
A
B
C
=
+
+
(x − 1)(x − w)(x − w2 )
x − 1 x − w x − w2
として、通分すると
1 = A(x − w)(x − w2 ) + B(x − 1)(x − w2 ) + C(x − 1)(x − w)
これから、 1 + w + w2 = 0 を使って
A+B+C =0
(−w − w2 )A + (−1 − w2 )B + (−1 − w)C = A + wB + w2 C = 0
A + w2 B + wC = 1
これから、A = 1/3, B = w/3, C = w2 /3 となる。従って、
∫
1
1
=
x3 − 1
3
=
∫
1
w
+
x−1
3
∫
1
w2
+
x−w
3
∫
1
x − w2
1
w
w2
log(x − 1) + log(x − w) +
log(x − w2 )
3
3
3
問題 9.3.
∫
dx
1 + x4
を求めよ。
解答 9.3.
∫
1
1 + x4
q=1
r = 1 + x4
となるので、
q − yr0 = 1 − 4yx3
これが、r と共通因子を持つ条件は
1
0
0
−4y
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
1
0
0
0
1
0 1
0 0
0 0
−4y
0
0
−4y
0
0
1 0
0 1
0
0
−4y
0 0
0 0 1 0 =0
0 0 1 9.1. 解答
21
一列目で小行列式展開を行うと
1
0
0
1
0
0
−4y
0
0
−4y
0
0
さらに、
1
0
1
0
0
0
0
−4y
0
−4y
これは
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
−4y
0
1 1
0 0 0 0 +4y 0
−4y
1 0 0
0 1 0 0
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
0
−4y
0
0
0 1
1 0
0 + 4y −4y
0 0
0 0
1 1 0
0 1
0 0
0
0
1
0
0
0
1
0
−4y
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
−4y
0
0
0
−4y
0
0 1
0 0 1 0 0 0 −4y 0
−4y
0 1 0 0
0 0 1 0
−4y
0
0
1
0
0
0
−4y
0
0 1 0 0 0
2
+
(4y)
0 0 1
1 0 −4y
0
0 1
になる。さらに小行列式展開を行っていくと。
1
0
0 0 0 0 0 1
0
1
1 0 0 0 0 0
+ 4y 0
0 1 0 1 0 0
0
−4y 0 0 1 −4y 0 0 1
0
+ (4y)2 0
0
−4y
0
0
0
0
−4y
1
0
0
0
1
1
0
0
1 0
0 1
0 0
0 0 1 0 0 1 0
0 0
0 0 1 2
1 0 0 +(4y) 1
−4y
0 1 0 0
0 0 1 1
0
0
0
0
0
−4y
0 0 1 0 0 0 1 0 1 0 0 0 1 1
0
0 0 1 0 0 0 1 0 1 0 0 0 1 1
0
0
+ (4y)3 0
0
−4y
1 0
0
0
1
0
0
0
1
0
0
0
1 0
0
1
これは結局
1 + (4y)4 = 0
となる。
これから、y を求める事が出来るが、後の計算はちょっと難しすぎる。
(非常に面倒なので、止めておきます。)
問題 9.4.
∫
dx
1 + xn
を求めよ。
解答 9.4. この問題は間違い。(ちょっと難しすぎる)
問題 9.5.
∫
dx
x + x3
を求めよ。
解答 9.5.
∫
1
x + x3
q=1
r = x3 + x
第 9 章 有理式の不定積分
22
より
q − yr0 = 1 − y(3x2 + 1)
これが、r と共通因子を持つ条件は
1
0
−3y
0
0
0
1
0
1
0
0
1−y
1
0
−3y
0
0
−3y
1−y
0
この行列式は、5列目で小行列式展開を行うと、
1
0
(1 − y) −3y
0
これは、一行目で小列式展開を行うと
1
0
(1 − y) 0
1−y
−3y
0
0 0 = 0
0 1−y 0
0
1
1
0
−3y
0
1−y
0
1 0 1−y 0
0
+ (1 − y) −3y
0
1−y 1
0
1
0
−3y
1−y 1
0
= (1 − y)3 + 3y(1 − y)2 + 3y(1 − y)2 + 9y 2 (1 − y) = (1 − y)3 + 6y(1 − y)2 + 9y 2 (1 − y) = (1 − y)(1 − y + 3y)2
結局、この行列式がゼロになるのは y = 1 あるいは y = −1/2 である。
y = 1 のとき、
GCD(x3 + x, 1 − 3x2 − 1) = x
y = −1/2 のとき、
GCD(x3 + x, 1 + 3/2x2 + 1/2) = GCD(x3 + x, 3/2x2 + 3/2) = x2 + 1
従って、
∫
2
1
1
= log(x) − log(x2 + 1)
x3 + x
2
2
問題 9.6. ex は 多項式 × ex の形の不定積分を持たないことをつぎに示す手順で証明する。
∫
2
2
ex dx = g(x) · ex + C
(C は積分定数)
の両辺を微分すると、g(x) は、微分方程式
g 0 + 2xg = 1
を満たすことを示せ。
次に、g が n 次の多項式であるとして、両辺の次数を比較することにより、この微分方程式を満たす多項式 g
は存在しないことを示せ。
解答 9.6.
∫
2
ex = g(x) · ex
2
の両辺を微分すると、
ex = g 0 (x)ex + 2xg(x)ex
2
2
2
9.1. 解答
23
すなわち、g(x) は次の方程式を満たす。
2xg(x) + g 0 (x) − 1 = 0
いま、g(x) が n 次式であると仮定して、g(x) を
g(x) = an xn + an−1 xn−1 + . . . + a0
an 6= 0
とおいて、上の式に代入すると、x について最高次数の項から、
2an = 0
を満たす事が判る。つまり、an はゼロとなる。
すなわち、g(x) を多項式として、その次数を n と仮定すると、その係数 an はゼロとなる。つまり、g(x) は n
次の多項式ではない。つまり、このような多項式 g(x) は存在しない。