QT-14052 2014 年 10 月 31 日 原子燃料工業(株) 東海事業所 加工工場 2 階 分析室Ⅲにおける漏水について 1.事象概要 1.1 事象発生日時 2014 年 6 月 14 日(土) 16 時 58 分(漏水確認) 1.2 事象発生場所 原子燃料工業株式会社 東海事業所 加工工場 2 階 分析室Ⅲ フッ素・塩素分析装置No.2(添 付資料-1、-2参照) 1.3 事象内容 2014 年 6 月 14 日 16:28 漏電警報が発報したことを受け、漏電発生箇所を調査した結果、16:58 当 事業所加工工場 2 階の分析室で漏水が発生していることを確認した。この漏水は「フッ素・塩素分析 装置No.2」の冷却水接続口からホースが外れ、循環冷却水漏れによるものであった。漏水は 2 階 の分析室Ⅰ~Ⅲの全域と、分析室の床貫通配管部のコーキング隙間から配管経路部を伝ってその階下 にある廃液処理室、粉末調整室に一部が滴下した。(添付資料-2~4参照) 漏水箇所の循環冷却水バルブを 17:20 に閉とし、漏水の回収を 20:45 に終了した。床のサーベイ 及び漏水の汚染検査を実施した結果、汚染がないことを確認した。 また、廃液処理室、粉末調整室への漏水の経路及び位置を調査・確認し、漏水の滴下範囲の拡大防 止方法を検討し(21:54)、滴下範囲拡大防止のための養生を 22:30 に完了した。 (6 月 14 日の対応は 完了) なお、6 月 14 日の漏水時、ウランの取り扱いはなく、本事象による周辺環境及び従業員への影響 はなかった。 (1) 装置の概要 ① フッ素・塩素分析装置 本装置は、ウラン試料中のフッ素及び塩素含有率を測定するため、試料からフッ素、塩素成分 を抽出する工程に使用するものであり、抽出工程の概要は以下のとおりである。 水を飽和させた酸素気流中でウラン試料を加熱し、試料中のフッ素及び塩素を熱加水分解によ りフッ酸及び塩酸として抽出し、抽出された高温のフッ酸及び塩酸成分を冷却管(循環冷却水で 冷却)で冷却・凝縮して弱アルカリ水溶液中に捕集する。 分析室Ⅲには「フッ素・塩素分析装置」及び「フッ素・塩素分析装置No.2」の2台があり、 本事象は「フッ素・塩素分析装置No.2」の方で発生した。(添付資料-5参照) なお、捕集液のフッ素及び塩素成分の濃度は、次工程でイオンクロマトグラフ装置にて測定を 行う。 1 ② 循環冷却水設備 本設備は、所内の生産設備、廃液処理設備及び分析設備へ冷却水を供給するための設備である。 冷却塔で冷却した水を溜めた専用の循環水槽から送水ポンプで各設備へ冷却水として供給し、使 用後の冷却水を戻り水槽に回収後、冷却塔で冷却するという一連のサイクルにより稼働している。 東海事業所内には循環冷却水設備 5 式設置しており、そのうち加工工場用は、循環水槽保持水 量がおよそ 34m3、送水ポンプ吐出圧力がおよそ 0.35MPa、通常時吐出流量がおよそ 1.3 m3/min で、 漏水が発生した当該装置等の分析設備の他、加工工場第1種管理区域内の焼結炉 5 台、焙焼炉 5 台及び廃液処理設備へ接続している。 循環冷却水の使用量が最も多い設備である焼結炉及び焙焼炉は、1 台あたり平均 0.10m3/min の 水量を使用しており、配管の詰まり等による冷却機能低下等の不具合を防止するため、焼結炉及 び焙焼炉を使用していない場合にも通水をしている。 一方、焼結炉及び焙焼炉以外の小規模設備は、設備稼働状況に応じて循環冷却水の使用を停止 することがあるが、その使用量は循環冷却水設備の全供給水量に対して割合が小さく、循環冷却 水系統全体に圧力変動が生じることはない。 (2)初期対応(漏水停止:17:20 完了、漏電停止:17:36 完了) 16:28 警備室警備員が警報盤で加工工場の漏電警報発報を確認し、直ちに警備員から日直者、設 備管理部員(当日出勤者)と設備管理部工務掛主任(以下、 「工務掛主任」と略す)及び環境安全部 放管計量掛主任(以下、 「放管計量掛主任」と略す)に漏電警報発報を電話連絡した。連絡を受けて 設備管理部員、放管計量掛主任は、各々設備の確認を開始した。 放管計量掛主任は、加工工場 1 階の廃液処理室で天井から水の滴下を認め、当室真上の分析室へ 向かい 16:58 漏水を確認した。直ちに、環境安全部長、分析室の所管部長である品質保証部長及び 日直者へ電話で状況連絡を行った。 なお、録画記録調査で、漏水発生時刻は同日 14:54 であることが確認された。 他方の設備管理部員は、機械棟の漏電警報器により加工工場分析室が漏電箇所であることを確認 し、16:34 工務掛主任へ確認状況を電話連絡した。この連絡を受けて工務掛主任は電気主任技術者へ 連絡して出社を求め、17:02 に工務掛主任が、17:10 に電気主任技術者が事業所に到着した。 電気主任技術者が出社した際、放管計量掛主任から分析室Ⅲで漏水が発生しているとの報告を受 け、そこで電源系統の被水が原因で、漏電が発生しているものと推定した。電気主任技術者は分析 室に到着後、室内を確認し、火花の発生、発煙、異臭等の異常がないことを確認した上で、主幹ブ レーカを即時に OFF にする必要はなく、ブレーカを一つずつ OFF にして漏電個所を特定するべきと 判断した。 電気主任技術者は状況確認のため分析室Ⅲへ入ったところ、外れたホースから水が出ていること を発見し、漏水の被害拡大を防ぐために 17:20 に当該分析装置を接続している循環冷却水系の In 側 及び Out 側バルブを閉止して漏水を止めた。 電気主任技術者は分析室所管部長である品質保証部長にブレーカ OFF の許可を得た後、設備管理 部員に機械棟の漏電警報器の発報変化の確認を指示し、相互に連絡を取りながら分析室入口前にあ る分析室への分電盤(L-Q分電盤 図 2.2(2)参照)を開けて、漏電警報器の漏電警報がリセット (滅灯)するまで、盤内ブレーカを一つずつ OFF し、17:36 分析室Ⅲ実験台コンセントのブレーカを 2 OFF したところで警報がリセットされた。この結果から、漏電箇所を分析室Ⅲ実験台コンセントと特 定した。(添付資料-6参照) 以上の処置は、社内文書「受変電設備取扱作業標準」(LC-000038)に基づき実施した。 この間、日直者は 17:17 原子力規制庁原子力防災政策課事故対処室及び東海・大洗原子力規制事 務所へ速報を FAX 送信した。 また、17:22 社内対応者を招集し、17:30 事業所対策本部を立ち上げ た。 (3)漏水発生時の設備の稼働状況確認 漏水発生時、加工工場内で核燃料物質の取り扱い作業は行われておらず、核燃料物質は所定の設 備内に保管していること及び貯蔵施設に貯蔵された状態であった(添付資料-7参照)。 分析室Ⅰ~Ⅲにおける核燃料物質については、分析室Ⅱ内の試料保管棚 2 箇所にウラン試料を試 料容器に収納した状態で保管していた。この試料保管棚は、 最も低いところで床面から約 80cm あり、 分析室内の漏水高さ約 1cm に対して十分な余裕を有している。 加工工場 1 階については、原料粉末及びペレットは原料保管棚及びペレット貯蔵棚(核燃料物質の 貯蔵施設)に貯蔵された状態であり、1 階の漏水が滴下したエリアとは別の部屋であることを確認し た。 (4)漏水の回収(20:45 完了) 漏水停止後、漏電箇所を特定し、電気主任技術者の判断により分析室Ⅲ実験台コンセントの他、 分析室Ⅰ~Ⅲ間の自動ドアのマットスイッチ(4 箇所)と分析室Ⅲドラフトチャンバーのブレーカを OFF した状態で、17:40 頃から漏水回収を開始し、20:45 回収を完了した。回収した漏水量は約 1.4m3 であった。 (5)1 階への漏水経路の特定、拡大防止(22:30 完了) 漏水の回収完了後、21:20 から現場確認を行った結果、廃液処理室及び粉末調整室への漏水の滴下 が認められたため、漏水経路(配管経路部)の確定と 1 階の漏水拡大防止対策が必要との事業所副 所長及び環境安全部長の判断を受け、現場天井部を詳細に確認し、21:54 コーキング部から漏水が浸 み出している貫通配管箇所を特定(添付資料-2、添付資料-4参照)するとともに、1 階の漏水滴 下箇所を養生して滴下領域の拡大防止処置を 22:30 完了した。また、蛍光灯に対する漏水の影響を 回避するため、廃液処理室の分電盤の照明ブレーカを OFF にし再投入禁止とした。 (6)漏水の汚染検査(床のサーベイ:23:00 完了、漏水の汚染検査:6 月 15 日 6:51 完了) 環境安全部長は、上水である循環冷却水の漏水であったが、第 1 種管理区域内床面の漏水である ことから、念のため漏水の汚染の有無確認が必要と判断し、18:00 頃漏水のサンプリングと放射能測 定を指示した。18:23 漏水の放射能測定(方法:簡易直接法)の結果、検出感度未満であった。また、 22:33 放射性物質濃度測定(方法:蒸発乾固法、サンプル量 2mL)の結果も検出感度未満であり、汚 染は無いと判断した。さらに測定感度を上げた放射性物質濃度測定(方法:蒸発乾固法、サンプル 量 50mL、6 月 15 日 6:51)の結果は 28.4×10-4Bq/cm3であった。 3 漏水回収後の床の表面密度を確認するために実施したサーベイ(方法:直接法、23:00)の結果、 通常管理されている床の表面密度と同程度であることを確認した。 (7)1 階への漏水滴下エリアの特定、及び設備の健全性確認 分析室Ⅰ、分析室Ⅱ・Ⅲそれぞれの階下にある粉末調整室、廃液処理室への漏水の滴下は床貫通 配管貫通部のコーキング劣化箇所から浸入した水が配管を伝ったものと判断されたため、影響しう るエリアを特定するため当該配管経路をウォークダウンで確認した結果、廃液処理室内の廃液タン クへ直結か、廃液処理室または粉末調整室内の壁を貫通して屋外に施工されており、またその経路 中に第1種管理区域の別室を通過していないことを確認した。これにより分析室の漏水が廃液処理 室または粉末調整室以外の第1種管理区域へ浸入することはない。(添付資料-7参照) なお、粉末調整室の設備には漏水の滴下はなかった。 漏電を起こした分析室の分電盤(L-Q分電盤 図 2.2(2)参照)の負荷設備及び廃液処理室、粉 末調整室内の設備に対し、6 月 16 日 水滴の付着がないこと、絶縁抵抗計による電源とアース間の 絶縁抵抗の点検・測定を実施した結果、水に浸った分析室自動ドア 4 箇所のマットスイッチが使用 不能であることが確認されたが、それ以外の設備に異常はなかった。 (8)周辺環境及び従業員への影響 排気モニタ及びモニタリングポスト指示値は、通常と同じレベルであり、漏電及び漏水の前後に おいて指示値に変動はなく、本事象による環境への影響はなかった。また、従業員の負傷及び被ば くはなかった。 (9)当該設備の取扱い 2 台のフッ素・塩素分析装置は、再発防止対策が完了するまでの間、設備の使用を停止した。 また、他の分析設備についても、再発防止対策が完了するまでの間、ウランの取り扱いを停止し た。 2.事象の整理と原因調査 2.1 事象の整理 (1) 2014 年 6 月 13 日のフッ素・塩素分析作業内容(漏水の前日作業) 前日の 6 月 13 日、「フッ素・塩素分析装置」を稼働し分析作業が行われていた。 2 台のフッ素・塩素分析装置の冷却水系統は、ループ状につながった構成となっており、両方の装 置に一緒に冷却水が循環する構成で、前日作業に使用していなかった「フッ素・塩素分析装置No. 2」にも冷却水が循環していた。(添付資料-5参照) なお、「フッ素・塩素分析装置No.2」は、2013 年 9 月 20 日以降は使用されていない状態であっ た。 漏水が発生した「フッ素・塩素分析装置No.2」の冷却水に係る使用条件、ホース及び継手の 4 仕様、取付方法及び漏水検知器を以下に記す。 ○使用条件 ・循環冷却水の供給圧力:装置入口約 0.12MPa(バルブを調整し、適正な流量となる圧力(通常 使用時の圧力)) ・循環冷却水の流量:約 0.5m3/hr(0.12MPa 時の実測値) ○ホース及び継手の仕様(添付資料-8参照) ・冷却水ホース:ブレードホース(外径 13.5mm、内径 8mm) ・取付口(継手):ガラス製継手(外径 9.1mm(最大部)) ○ホースの取付方法(添付資料-8参照) ・ガラス製継手へのホースの取付方法は、継手の 2 箇所を継手の溝の位置にワイヤ(外径 0.5mm) で取り付ける。1 箇所につき 1 本のワイヤを継手の回りに 2 周して、ペンチで締め付けを行う。 ○漏水検知器 ・分析室Ⅲ室内にスクラバーからの漏水を検知するため 1 個設置(添付資料-6参照)。 ① 点検作業 設備の点検作業は、社内文書「設備保守・点検標準」 (FI-000035)に従い、巡視・点検記録(チ ェックシート)により実施することになっている。点検作業として、設備の操作の有無にかかわ らず毎日実施する日常巡視点検と、設備の操作前後に実施する始業前点検及び終業時点検がある。 a.日常巡視点検 6 月 13 日 8:23、作業者 A は、巡視・点検記録(チェックシート)を使い、「フッ素・塩素分 析装置」及び「フッ素・塩素分析装置No.2」の外観確認(外観に損傷はないか)を実施し た。装置の異常がないことを確認し、巡視・点検記録にその旨を記録した。 b.始業前点検 6 月 13 日 8:26、作業者 B は、巡視・点検記録(チェックシート)を使い、分析作業で使用す る「フッ素・塩素分析装置」の始業前点検を実施した。装置の異常がないことを確認し、巡視・ 点検記録にその旨を記録した。 始業前点検項目は以下のとおりである。 ○電源は入るか ○冷却水ホースから水漏れはないか ○酸素ガスの残圧は 1MPa 以上か c.終業時点検 作業者 B は、分析作業終了後、巡視・点検記録(チェックシート)を使い、分析作業で使用し た「フッ素・塩素分析装置」の終業時点検を実施した。巡視・点検記録では、装置の異常は記 録されていなかった。 終業時点検項目は以下のとおりである。 ○装置の電源を切ったか 5 ○ガス、冷却水は止めたか ○整理整頓は良いか 終業時点検において、 「ガス、冷却水は止めたか」の確認項目では、作業者 B は、酸素ガスの バルブ閉は確認していたが、冷却水停止確認として In 側のバルブが閉まっていることを確認し ていなかった。 ② フッ素・塩素分析作業 6 月 13 日 8:26、作業者 B は始業前点検を実施した後、 「フッ素・塩素分析装置」を、社内文書 「酸化ウラン中の塩素及びフッ素分析法(イオンクロマトグラフ分析法)」 (I-010045)に従い立 ち上げた。(添付資料-9参照) ・フッ素・塩素分析装置の電源を入れる。 ・酸素ガスバルブを開け、分析装置内に試料中のフッ素・塩素成分を抽出するために酸素を所 定量流す。 ・冷却水のバルブ In 側を開け、蒸発したガスを冷却するための冷却水を所定量流す(Out 側 は常時開)。 ・分析試料を加熱するため昇温。 ・フッ素・塩素分析実施(分析終了後、降温) 。 作業者 B はフッ素・塩素分析作業が終了し、 「フッ素・塩素分析装置」の停止操作を実施した。 停止操作は以下のとおりである。 ・フッ素・塩素分析装置の電源を切る。 ・酸素ガスバルブを閉め、停止する(ここまで実施した状態で、昼休み中冷却を継続)。 ・冷却水の In 側のバルブを閉め、停止する(昼休み終了後に分析室Ⅲに戻り、終業時点検実 施)。 停止操作のうち、酸素ガスのバルブ閉操作は実施していたが、前述のとおり冷却水停止(In 側のバルブ閉止)を実施していなかった。前述のとおり「フッ素・塩素分析装置No.2」は、 6 月 13 日には使用していない。 2.2 設備に関する調査 (1) 「フッ素・塩素分析装置No.2」においてホースがガラス製継手から外れたことに関する検討 ① ガラス製継手及びホース外観(添付資料-8参照) ガラス製継手、外れたホース及びワイヤを確認した結果、以下の状態であった。 ・継手及びホースに付着したスケールの位置から、外れる直前の継手 In 側へのホースの差し込み 深さは約 10mm であったと推測される。一方、外れていない継手 Out 側では 16mm であった。 ・ホースの劣化による膨れ、割れ及び亀裂は確認できなかった。 6 ② ホースの取付状態(添付資料-8参照) ガラス製継手へのホース取付方法は、継手の溝の位置 2 箇所をワイヤで取り付け、1 箇所につき 1 本のワイヤを 2 周して締め付けることとなっていたが、外れた後の状態を確認した結果、以下の 状態であった。 ・ワイヤは 2 箇所とも緩んだ状態だった。 ・本来 2 箇所に分かれてあるべきところ 2 本のワイヤが 1 箇所に集まっていた。 ③ ガラス製継手の耐圧調査 ガラス製継手の耐圧は、水道水(出口側が開放状態)で使用することがメーカ推奨されている。 本装置使用時の冷却水圧力は、0.12MPa 程度であり、メーカ推奨値どおりであった。 ④ 冷却水圧力の変動について 前日の 6 月 13 日から漏水が発生した 6 月 14 日にかけて、焼結炉等の弁操作は実施していない ことから、本装置 In 側の冷却水圧力の変動(脈動含む)はなかったものと考えられる。 ⑤ ホース外れの原因 前述のことから、冷却水圧力に起因するものではなく、ガラス製継手へのホースの差し込みが 浅かったこと、ワイヤが緩んだ状態であったこと、及び冷却水の通水が長時間に及んだことによ り、ワイヤとホースが徐々に移動して、外れたものと推定される。 (2) 漏水が拡大したことについての検討 ① 冷却水の供給について 漏水が拡大した原因は、34m3 の保有水量を有する循環冷却水設備から水が供給され続けたこと にある。 ② 1 階への漏水可能性について 床への漏水が発生した加工工場2階分析室Ⅱ・Ⅲ真下(1 階)の廃液処理室、分析室Ⅰの真下(1 階)の粉末調整室において、漏水が滴下していることが確認された。漏水の滴下箇所は 2 階床か ら 1 階に貫通している配管箇所であることから、2 階床貫通箇所のコーキング劣化箇所から浸入し た水が配管を伝って 1 階に到達したものと判断した。 (3) 漏電警報が漏水警報より早く発報したことについての検討 ① 漏水検知 a.漏水検知の仕組み(簡単な検知器、機器等の構成) 検知器には、漏水検出信号が出力される電極Aと、もう一方の電極Bの 2 枚の電極が取り付け られている。検知器の底面は床面と接していないため、通常の状態では漏水検出信号が電極Bに 入力されることはないが、漏水が発生すると、液体を通じて漏水検出信号が電極Bに入力され、 その信号電圧を検出して漏水信号を出す仕組みである。漏水検知器の概要を図 2.2(1)に示す。 7 図 2.2(1) 漏水検知器の概要 b.検知器の設置箇所の考え方(添付資料-6参照) 貯水能力を持つ設備に不具合が生じると短時間で大量の漏水が発生するという考え方にたち、 スクラバーからの漏水検知を目的として、分析室Ⅲ内スクラバー近傍に検知器を設置していた。 c.スクラバー漏水検知器の未発報についての考察(添付資料-6参照) 当漏水検知器の機能に問題がないことが確認されていることから、検知器への漏水到達の視点 から、分析室Ⅲ内の複数ポイントの床面高さを測定したところ、検知器の設置ポイントは、漏水 発生箇所より床面が 10mm 高く、隣室(分析室Ⅱ)の床面は 4mm 低い事が分かった。即ち、漏水が 検知器と反対の隣室側へ流れやすい床勾配が形成されていた。これと相まって漏水源から隣室扉 までの水平距離は約 3mであるのに対し、検知器までは約 7mありこの位置関係も一因と推測され る。 d.今後の漏水検知の考え方 漏水検知については他の関係設備も含めて総合的に対策を検討し、必要な措置をとる(3.1(2) 及び 3.1(3)参照)。 ② 漏電警報 a.漏電警報の仕組み(図 2.2(2)参照) 機械棟 2 次変電所に、加工工場へ低圧電源を供給する全配電系統の漏電警報器を設置している。 漏電警報器は漏電を検知すると表示灯を点灯し、加工工場警報監視盤及び警備監視室警報盤へ 警報信号を発する機能を持つ。表示灯は配電系統別に設け漏電した系統を識別できるようにして いる。 また、漏電遮断器については、電熱負荷や湿気を伴う環境に設置する設備へ給電する電源回路 (主に設備制御盤)に使用するよう定めている。 b.漏電警報発報についての考察(添付資料-6参照) 電気主任技術者が行った漏電箇所の特定行為によって、分析室Ⅲ実験台コンセント(100V アー 8 ス付 3 極)の漏電により漏電警報が発報したことが判明している。また、画像記録調査で外れた 冷却水ホースから実験台側に水が噴き出していたことが確認されている。コンセントはホースか ら約 1.4m離れ、ホースから出た水による直接被水はないものの、その飛沫が時間とともにコンセ ント内部に浸入し、電源側とアースの導通、漏電に至ったものと推測される。 c.今後の漏電検知の考え方 加工工場の漏電警報の仕組みは 2.2(3)②a.に示したとおりであり、漏電が発生すると即座に 警報監視盤で警報が発報する。その後、設備管理部員が機械棟2次変電所へ行き、どの配電系統 で漏電が発生しているか確認できるようになっている。全ての配電系統の漏電が検知可能なシス テムとなっており、対応方法も確立されているため、現在のシステムで必要な要件を満たしてい ると考えている。 機械棟 2 次変電所 警備監視室 警報監視盤 漏電警報器 (警報吹鳴) 漏電検知 警報信号線 警報信号線 低圧配電線 安全管理室 警報監視盤 (警報吹鳴) 分析室 L-Q 分電盤 (負荷側で漏電発生) 加工工場 図 2.2(2) 漏電警報の仕組み 9 (4) 原因調査結果 2.2(1)~(3)の調査結果を踏まえて、設備に関する原因調査結果は以下のとおりである。 ① ガラス製継手からホースが外れた原因 ガラス製継手へのホースの差し込みが浅く、ワイヤが緩んだ状態において冷却水の通水が長時 間に及んだことにより、ワイヤとホースが徐々に移動して、外れたものと推定される。 現状の問題点は以下のとおりである。 ・ホース取付方法が、作業者の技量・経験に依存し、施工のばらつきの影響を受けやすいものだ った。 ・ホースに負荷がかかりやすい状態であった。 ② 漏水が拡大した原因 大量の保持水量を有する循環冷却水設備から供給していたこと、漏水拡大防止及び異常検知が 不十分であったためである。 現状の問題点は以下のとおりである。 ・少量の冷却水流量で使用するガラス製冷却管にも係らず、循環冷却水設備から供給していた。 ・循環冷却水設備から供給されていたにも係らず、本装置近傍に漏水検知器を設置していなかっ た。また、スクラバーの漏水検知器での漏水検知に至らなかった。(添付資料-6参照) ・2 階床貫通配管部のコーキング劣化箇所から 1 階に滴下した。 2.3 作業に関する調査 冷却水バルブが閉止されていなかったことに対し、作業体制、教育・訓練、点検体制及び点検に 関する作業手順書について原因調査を行い、問題点の検証を行った。 (1) 作業体制、教育・訓練及び点検体制に関する調査 ① 点検状況の調査 分析員(作業者 A、作業者 B、作業者 C の 3 名)の点検状況について、過去の録画記録(期間; 2014 年 5 月 1 日~6 月 13 日)により点検状況を調査した。確認範囲は、フッ素・塩素分析装置を 含む 7 種類の分析装置について合計 58 件の点検状況を確認した。 a.点検方法の検証 分析員の点検状況ついて録画記録により確認した結果は以下のとおりである。 ・日常巡視点検 作業者 A、C:巡視・点検記録(チェックシート)に従い、所定の点検を行い、全ての点検項目 (外観に損傷はないか)について点検した直後に記録を記入していた。 作業者 B :同上 ・始業前点検 作業者 A、C:巡視・点検記録(チェックシート)に従い、所定の点検を行い、全ての点検項目 (例:冷却水水漏れ、電源 ON、ガス開)について点検した直後に記録を記入し ていた。 10 作業者 B :同上 ・終業時点検 作業者 A、C:巡視・点検記録(チェックシート)に従い、所定の点検を行い、全ての点検項目 (例:電源 OFF、ガス・冷却水閉止、整理整頓)について点検した直後に記録 を記入していた。 作業者 B :6 月 13 日のフッ素・塩素分析装置以外は、巡視・点検記録(チェックシート)に 従い、所定の点検を行い、全ての点検項目(例:電源 OFF、ガス・冷却水閉止、 整理整頓)について点検した直後に記録を記入していた。 b.6 月 13 日の作業内容の検証 作業者 B は、 「フッ素・塩素分析装置」を使用した抽出操作と、「イオンクロマトグラフ装置N o.2」を使用した濃度分析作業を実施していた(2.1(1)②参照)。(添付資料-9参照) 時系列により社内文書「酸化ウラン中の塩素及びフッ素分析法(イオンクロマトグラフ分析法) 」 (I-010045)に基づき、適切な手順で分析操作を実施していることを確認した。 ただし、終業時点検時の「ガス、冷却水は止めたか」のチェック項目に対して、酸素ガスバル ブは 11:50 分頃、冷却水バルブ閉止等の終業時点検は 12:58 分に実施していた。 通常手順では、冷却水バルブ閉の点検は酸素ガスバルブの点検から冷却時間をおいて点検を実 施する運用となっていた。このため、酸素ガスバルブを閉止したことにより、冷却水バルブも閉 止したと思い込み、通常時は確実に実施している冷却水バルブ閉止を忘れたまま、チェックシー トに記録したものと推測される。 なお、終業時点検後は本装置周辺を頻繁に往来していたが、冷却水バルブ閉止の未実施に気付 くことはなかった。 ② 作業体制について 本装置の所管部署である品質保証部では、安全を確保するために必要な分析工程の標準配置人 員を、社内文書「燃料検査工程標準配置人員の管理(品質保証部)」(SS-000013)に定めている。 個別分析作業と共通分析作業の 2 種類の分析作業が定義されており、個別分析作業(濃縮度分 析、希土類分析、発光分光分析)は各々1 名以上(スキルランク B 以上注1)で実施することが定 められている。フッ素・塩素分析を含む他の分析は共通分析作業に位置づけられ、他の分析作業 と組み合わせて実施する場合がある。6 月 13 日の作業者 B の分析操作は、フッ素・塩素分析操作 (抽出操作、濃度分析)のみであり、作業体制は所定のルールに従っていた。 注1:スキルランクAとは「その作業についての知識と技能を有しており、指導者として班員を 教育できる」 、スキルランクBとは「その作業について一人で作業ができる知識と技能を有 している」、スキルランクCとは「知識と技能が十分でないが、ランク B 以上の者から直接 指示を受けながら作業ができる」である ③ 教育・訓練について 加工施設の操作に関する教育は、社内文書「保安教育基準」 (S-000014)に規定しており、作業 11 者 B は 1 回/年の頻度で保安教育を受講している。保安教育では「巡視・点検記録」についても 教育対象となっており、巡視・点検方法について十分な知識を有していた。 教育訓練は、社内文書「SD 教育」(QA-000009)に規定している。各作業者は SD 注2 教育活動の 中で OJT 等により教育訓練が実施される。スキルのレベルは、スキルランクA~Cで区分され、 本装置に対する作業者 B のランクは、スキルランクA注1であり、終業時点検に関する十分な知識 技能を有していた。 注2:SD とは Skill Development の略である ④ 点検体制について 巡視・点検を含む分析操作のスキルは、スキルランクB注2以上を有する者が実施することを、 社内文書「酸化ウラン中の塩素及びフッ素分析法(イオンクロマトグラフ分析法)」(I-010045) 及び「燃料検査工程標準配置人員の管理(品質保証部)」 (SS-000013)に規定している。また、巡 視・点検人数は前記①に記載されているとおり、1 名以上で実施する。点検体制は所定のルールに 従っていた。 (2) 循環冷却水停止に関する社内手順書の問題点検証 ① 循環冷却水停止に関する社内手順書 設備の点検作業は、社内文書「設備保守・点検標準」(FI-000035)に規定しており、終業時点 検として「ガス、冷却水を止めたか」をチェック項目としている。循環冷却水操作に関する記載 は、社内文書「酸化ウラン中の塩素及びフッ素分析法(イオンクロマトグラフ分析法) 」 (I-010045) に記載している。 ② チェック項目に関する社内手順書の問題点検証 チェック項目については、社内文書「設備保守・点検標準」に規定しており、フッ素・塩素分 析装置の循環冷却水に関する点検項目は、以下のとおりである。 ・始業前点検:冷却水ホースから水漏れはないか ・終業時点検:ガス、冷却水は止めたか 終業時点検項目として「ガス、冷却水を止めたか」が入っており、冷却水バルブ閉止に関する 項目が入っていることから不備はなかった。 ただし、チェックシートの内容については、以下のような問題点があげられる。 ・終業時点検項目は、 「ガス、冷却水は止めたか」と 1 つのチェック欄に 2 つの点検項目が入って おり、前述の酸素ガスバルブと冷却水バルブの点検時期が異なることと併せて、冷却水バルブ 閉止忘れを誘発するものであった。 ・ホース取付状態は、始業前点検項目の「冷却水ホースから水漏れ」点検で確認されることを期 待していたが、明確に「装置とホース接続部の取付状態」をチェックする旨が記載されておら ず、チェック項目の設定は不十分であった。 ・ 「フッ素・塩素分析装置」及び「フッ素・塩素分析装置No.2」の 2 台の冷却水系統が一体と なっていたにも係らず、分析作業に使用しない方の装置を点検対象としていなかった。 12 (3) 原因調査結果 2.3(1)~(2)の調査結果を踏まえて、冷却水バルブが閉止されていなかったこと等に対する原因調 査結果は以下のとおりである。 ① 冷却水バルブ閉止を忘れてしまった原因 作業者 B は以下のとおり社内ルールに従って適切に作業を行っていたことを確認した。 ・作業体制、教育・訓練及び点検体制は、所定の社内ルールに従ったものであった。 ・社内ルールに従い、6 月 13 日のフッ素・塩素分析操作を適切に実施していた。 ・作業者 B の過去の点検実績(録画記録)から 6 月 13 日以外は適切に点検を実施していた。 しかし、酸素ガスのバルブ閉止後、時間をおいてから冷却水バルブ閉止の点検を実施すること となっていたことと、巡視・点検記録(チェックシート)のチェック項目として「ガス、冷却水 は止めたか」と 1 つのチェック欄に 2 つの点検項目が入っていたことと併せて、酸素ガスバルブ を閉止した操作認識から冷却水バルブも閉止したと思い込み、冷却水バルブ閉止を忘れたままチ ェックシートに記録したものと推測される。 ② 冷却水バルブ閉止忘れを誘発した要因 作業者 B が冷却水バルブ閉の未実施に気付かなかった要因に以下のことが考えられる。 ・冷却水バルブの開閉を明示する表示板が、確認しにくい場所にあった(添付資料-5参照)。 ・ガラス製の冷却管内を循環する冷却水は透明なため、冷却水が止まっているか外観では確認し にくい状態であった。 ③ チェック項目に関する問題点 設備のチェック項目を検証した結果、以下の問題点があることを確認した。 ・ホース取付状態の点検は点検項目として明確に設定されておらず、取付状態の変化を事前に認 知できなかった。 ・2 台の装置の冷却水系統がループ状に一体になっていたにも係わらず、使用しない方の装置は 点検対象としていなかった。 3.再発防止対策 3.1 設備に対する対策 (1) 「フッ素・塩素分析装置No.2」に対する対策 「フッ素・塩素分析装置No.2」における冷却水ホースの外れ防止対策として、添付資料-1 0に示す再発防止対策を実施する。対策結果を添付資料-13及び添付資料-14に示す。 ① ホース取付部の仕様及び施工方法の改善(発生防止) ホース取付方法が作業者の技量・経験に依存し、施工のばらつきを受けやすく、ホース取付施 工時に適切な施工でなかった可能性があることから以下の対策を実施した(2014 年 7 月完了)。 13 ・ホース取付方法(継手への締め付け方法)は十分実績があるホースバンドに変更 ・ホース取付施工は、適切に設定された施工方法で行うこととし、社内手順書に明文化 ② ホースの移動防止(発生防止) ホースに負荷がかかり徐々に緩み、移動した可能性があることから以下の対策を実施した(2014 年 7 月完了) 。 ・ホースへのサポート設置 ③ 冷却水流量の少量化(拡大防止) 冷却水流量が少量の状態で使用するガラス製冷却管にも係らず、大量の保持水量を有する循環 冷却水設備からの供給としていたことから以下の対策を実施した(2014 年 7 月完了)。 ・循環冷却水からの供給を取り止め、保有水量が少量(約 4.7L)に限定される小型水冷チラー に変更 ・循環冷却水バルブは閉止プラグによる閉止措置を実施 ④ 漏水拡大防止及び異常検知(拡大防止及び異常検知) 分析室内への漏水拡大防止及び異常検知ができなかったことから以下の対策を実施した(2014 年 7 月完了) 。 ・小型水冷チラーの保有水量以上の容量を有する漏水拡大防止用バットを設置 ・循環冷却水設備からの供給を取り止め、閉止措置を実施したことにより大量に漏水する可能 性がなくなった。また、仮に小型水冷チラーから漏水した場合でも、漏水全量を上記バット で受けることができるため本装置に対する異常検知は実施しない なお、2 階から 1 階への漏水の滴下に対する対策及び管理区域内における漏水検知対策は、後述 の 3.1(2)を参照とする。 ⑤ 他の冷却水使用設備に関するホース取付部の調査 東海事業所内で冷却水を供給する設備について調査した結果、冷却水種類と継手の組み合わせ として以下のケースがあげられる。ケース1が本事象と同様のケースである。 ケース 冷却水種類と継手の組み合わせ 装置 ケース1 循環冷却水設備+ガラス製継手(ワイヤ締め付け) 分析装置(蒸発性不純物測定装置) ケース2 循環冷却水設備+金属製ねじ込み継手 焼結炉等 ケース3 個別水冷チラー+金属製ねじ込み継手 分析装置等 ケース4 個別水冷チラー+金属製継手(ホースバンド締め付け) 分析装置等 ケース1のフッ素・塩素分析装置No.2と同様の装置として、蒸発性不純物測定装置があげ られる。本装置は、前述の①~④の対策について同様の対策を実施する必要があるが、今後本装 置の使用予定がないことから、循環冷却水バルブの閉止プラグによる閉止措置を実施した(2014 年 7 月完了) 。 14 ケース2~ケース4の装置については、冷却水ホース及び配管接続部の緊急点検により、これ らの健全性について確認した(2014 年 6 月完了)。配管接続部は十分実績のある金属製のねじ込み 継手等が使用されていたことから、現状では漏水発生のリスクが非常に低いことを確認した。た だし、ケース2の循環冷却水設備を使用する装置における漏水防止対策については、後述の 3.1(2) 及び 3.1(3)に示すこととする。 (2) 事業所管理区域内における漏水の発生・拡大を防止する対策 漏水事象を踏まえ、事業所管理区域内における漏水の発生・拡大を防止するための対策実施結果、 及び今後の実施予定を示す。 ① 漏水を発生させない対策 ・設備と配管の接続には金属製のホースを使用する。やむを得ずそれ以外の材質のホースを使 用する場合は、定期的に点検を行い管理することとした(2014 年 10 月 28 日完了)。 ② 漏水が発生しても拡大させない対策 本事象において 2 階から 1 階への漏水の滴下が 2 階床貫通箇所のコーキング劣化箇所から 1 階に到達したため、分析室と同様の部屋の調査及び再コーキングの実施について対策を検討 した。 ・分析室Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの各部屋の床貫通部については、コーキング実施に加え、貫通部を鋼材で 囲んだ堰を設けた(2014 年 7 月完了)(添付資料-15参照) 。 ・貫通部のコーキングについて、月例点検で健全性を確認するよう新たに項目を追加し、月例 点検を実施する仕組みとした(2014 年 9 月から開始済み)。 ③ 漏水が拡大しないよう検知する対策 ・核燃料物質の使用量や貯水量を考慮し、加工工場第1種管理区域内の焼結炉(5 台)周辺へ漏 水検知器を新設する(2015 年 3 月完了予定)。 ④ 水平展開 上記①~③と同様の検討を廃棄物処理棟及びHTR棟の第1種管理区域に対しても実施し、 必要な処置を講じる(2015 年 3 月完了予定)。 なお、加工工場分析室Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの他に、1階に第1種管理区域があり、水を使用する作業 を行いなおかつ床に配管が貫通している 2 階の部屋は、所内に加工工場 Ⅱ、廃棄物処理棟 炉室・廃棄物処理室Ⅱ・排気室、HTR 棟 給気室Ⅰ・給気室 被覆粒子製造室Ⅱ・排気室の 7 室ある。 加工工場以外の建屋における第1種管理区域における床貫通部については、目視によりコー キング部の外観に有害な傷、ひび割れ等がないことを確認した(2014 年 8 月完了)。また、全 ての貫通箇所について堰を設け(2014 年 12 月完了予定)、月例点検で健全性を確認する仕組 みとした(2014 年 10 月から月例点検開始済み) 。 (3) 臨界防止の観点からの対策 15 2014 年 6 月 14 日に発生した漏水事象では、2 階の分析室内での漏水の拡大及び床面の配管貫通部 を経由した 1 階廃液処理室及び粉末調整室への漏水の滴下があった。しかし、核燃料物質を取り扱 う設備は、被水していないため、漏水もしくは漏水の滴下による影響を受けていない。また、核燃 料物質を取り扱う設備は、設備の被水があっても未臨界が維持できる設計となっており、万が一、 漏水等の拡大により被水しても、臨界に達するおそれは生じない。しかし、一層の安全確保のため、 水配管破損により予想される設備の被水リスク及び漏水拡大リスクを抽出し、その対策を実施する。 具体的には、上水・純水・循環冷却水の各配管が管理区域内に施工されている範囲をウォークダ ウンにより明らかにし、それらが破損した際に生じるリスクを、周辺の設備やウランの管理場所と の位置関係や距離、配管が破損した場合の漏水量から明らかにする。 また、同じくウォークダウンを行うことにより、各部屋のレイアウトや床の傾斜、ピットの配置 等を明らかにし、漏水が続くことによる範囲拡大を防ぐための対策(漏水検知器の設置)を検討し 実施していく。 <実施予定> 2014 年 12 月 加工施設及び使用施設内の水配管施工箇所等の調査実施 加工施設及び使用施設内の水配管に対する巡視点検開始 2015 年 3 月 周辺施設との距離、配管破損時の漏水量等をもとにリスク評価 漏水検知器設置場所の選定 9月 設備の被水リスクへの対策検討(配管ルートの変更、飛散防止板の施工等) 漏水検知器設置完了 2016 年 3 月 対策実施完了 3.2 作業に対する対策 (1) 冷却水バルブ閉止忘れに対する対策 冷却水バルブ閉止忘れに対する対策として、酸素ガスバルブと冷却水バルブの点検時期に関する 見直しを実施するとともに、巡視・点検記録(チェックシート)の改善を行う。また、これらの対 策に加え、巡視・点検方法に関する対策を実施する。 ① 酸素ガスバルブと冷却水バルブの点検時期の見直し注3 酸素ガスバルブ閉の点検から冷却水停止に関する点検まで、時間を置かずに点検を実施する運 用に変更した(2014 年 8 月完了)。なお、本運用においても装置保全上問題ないことを確認してい る。 ② 巡視・点検記録(チェックシート)の改善注3 「ガス、冷却水は止めたか」と 1 つのチェック欄に 2 つの点検項目となっていたことに対して、 1 つのチェック欄に 1 つの点検項目とする巡視・点検記録(チェックシート)の改善を行った(2014 年 8 月完了) 。(添付資料-16参照) 注3:1 つのチェック欄に複数の点検項目があり、点検時期が異なる装置は他にはない ③ 巡視・点検方法に関する対策 16 巡視・点検の重要性を作業者に対し再認識(意識面の改善)させ、点検忘れを防止するため、 巡視・点検方法に関する対策を実施する。ただし、原因を特定し、恒久対策を実施するまでには その準備も含めて時間を要することから、まず暫定対策を実施することとし、その後、恒久対策 に切り替えて実施することとする。 a.暫定対策 巡視・点検の重要性を作業者に再認識(意識面の改善)させるため、早急に対策が可能な以下 の 2 つの対策を実施した。(添付資料-12参照) ○巡視・点検方法に関する教育 チェックシートを使用して安全を確認し、それを記録として残すということの重要性につい て所員全員で確認する必要がある。そのために、東海事業所の全作業者に対して以下の調査を 実施した。 ・チェックシートの使い方に関する調査 ・チェックシートに関する意識調査 調査結果を元に、巡視・点検に関する重要性を再認識(意識面の改善)させるための教育を 実施した(2014 年 8 月完了)。 ○巡視・点検のダブルチェック 巡視・点検方法を作業者に対して周知徹底(意識面の改善を促す)することに加えて、原因 が判明するまでの間、監視を強化するため、恒久対策開始までの暫定的な措置として巡視・点 検のダブルチェックを開始した(2014 年 8 月から開始済み) 。 巡視・点検のダブルチェックの対象として「日常巡視点検」、「始業前点検」、「終業時点検」 があげられる。 「日常巡視点検」及び「始業前点検」は、いずれも種々の点検項目を短い時間帯 にまとめて点検するのに対して、 「終業時点検」は個々の点検項目の実施時期が異なる場合があ るため、全ての点検を終了後にダブルチェックとして一斉点検を実施することとした。 対象設備は保安規定で定める設備(設備の操作に係る点検)とし、管理者等がダブルチェッ クを実施することとした。ダブルチェックの運用例を添付資料-16に示す。 b.恒久対策 暫定対策で実施した巡視・点検方法に関する教育については、本事象を踏まえて教育内容を充 実し、今後も継続的に実施していくものとする。 また、巡視・点検のダブルチェックについては、原因が判明するまでの間、監視を強化するた め暫定的に実施してきたが、点検忘れの原因が点検時期及び巡視・点検記録(チェックシート) に関することであることが判明したため、重要危険源に対する終業後の停止点検に切り替え、可 燃性ガス、上水・純水・循環冷却水、熱源等の重要危険源からのトラブル拡大を未然に防止する ための恒久対策を実施する。重要危険源とは、仮に停止忘れがあった場合、重大なトラブルにつ ながるリスクがある危険源とする。 今後予定している恒久対策について以下に示す。(2015 年 1 月から実施予定) 17 ・巡視・点検方法に関する教育の充実・改善及び継続的実施 ・重要危険源(可燃性ガス、上水・純水・循環冷却水、熱源等)に対する終業後の停止点検 ・巡視・点検方法について改善した運用方法を社内文書に明確化 ④ 冷却水閉止忘れの誘発を防止するための対策(未実施に気付くための対策) バルブの開閉状態及び冷却水循環状態が確認しにくく、冷却水バルブ閉止忘れに気付くことが なかったことから、以下の対策を実施した(2014 年 7 月完了)。(添付資料-14参照) ・バルブの開閉表示等を明確に表示 ・冷却水が循環していることを明確に表示 (2) チェック項目に対する問題点の改善 ホース取付状態(差し込み深さ、締め付け状態)の点検を実施しておらず、不適切な取付状態を 検知できなかったこと、2 台の装置の冷却水系統が一体となっていたにも係らず、使用しない方の装 置を点検対象として設定していなかったことから以下の対策を実施した(2014 年 8 月完了) 。 ・始業時点検項目に「ホース取付状態は適切か」を追加(添付資料-16参照) ・使用しない装置には冷却水が循環しないように、冷却水系統を変更(添付資料-13参照) 4.今後の計画 分析室Ⅲの漏水に係る原因究明と再発防止対策完了までの全体スケジュールを添付資料-17に示 す。 設備に対する再発防止対策として、フッ素・塩素分析装置No.2に対する対策を 2014 年 7 月に実 施完了した。また、事業所管理区域内の漏水発生・拡大防止対策については 2015 年 3 月末までに完了 する予定である。臨界防止の観点からの対策については 2016 年 9 月末までに完了する予定である。 作業に対する再発防止対策として、酸素ガスバルブと冷却水バルブの点検時期の見直し、巡視・点 検記録(チェックシート)の改善及び巡視・点検方法に関する暫定対策については 2014 年 8 月に実施 完了した。また、巡視・点検方法に関する恒久対策については 2015 年 1 月から開始する予定である。 18 添付資料 (添付資料-1)施設配置図 (添付資料-2)加工工場 1 階の分析室Ⅰ~Ⅲにおける漏水箇所と漏水範囲 (添付資料-3)漏水箇所の状況写真 フッ素・塩素分析装置No.2 (添付資料―4)加工工場 1 階の廃液処理室及び粉末調整室における漏水箇所 (添付資料―5)フッ素・塩素分析装置No.2における冷却水の概略系統 (添付資料-6)分析室Ⅱ、分析室Ⅲにおける漏水個所とコンセント等の位置 (添付資料―7)漏水発生時における核燃料物質の保管及び貯蔵場所 (添付資料―8)ブレードホースの差し込み状態及び取付口の詳細 (添付資料-9)2014 年 6 月 13 日における作業者 B の作業時系列 (添付資料-10)設備に対する原因分析と再発防止対策 (ガラス製継手からのホース外れ防止及び漏水拡大防止について) (添付資料-11)事業所管理区域内における漏水の発生・拡大を防止する対策及び臨界防止の観点 での対策 (添付資料-12)作業(巡視・点検方法)に対する原因分析と再発防止対策 (冷却水バルブ閉止忘れ等に対する再発防止対策) (添付資料-13)設備に対する対策結果(1/3) (フッ素・塩素分析装置及びフッ素・塩素分析装置No.2への対策1) (添付資料-14)設備に対する対策結果(2/3) (フッ素・塩素分析装置及びフッ素・塩素分析装置No.2への対策2) (添付資料-15)設備に対する対策結果(3/3) (分析室Ⅰ~Ⅲの配管貫通口への再コーキング及び循環冷却水閉止措置) (添付資料-16)ダブルチェック運用時のチェック要領(暫定対策)及びフッ素・塩素分析装置の 点検項目の改善 (添付資料-17)分析室Ⅲの漏水に係る原因究明と再発防止対策完了までのスケジュール 以上 19
© Copyright 2024 ExpyDoc