表 2. 患者の医師への信頼に関する研究 著者, 研究 発行年 デザイン Hayashi et al, (2000) 下平ら, (2010) Minamisawa et al, (2011) 調査対象 アウトカム/分析方法 1) 分析対象:118 名 (候補者数:不明) 2) 統合失調症患者 3) 都内の 1 精神科病院 医師への信頼度: クロス・ セクショナル 医師への信頼度: クロス・ セクショナル 1) 分析対象:127 名 (候補者数:211 名,参加率:60.2%) 2) 抗精神病薬での治療中 3) 入院患者と外来通院患者 4) 首都圏郊外の精神科病院 クロス・ セクショナル 分析対象:501 名 (候補者数:573 名,参加率:87.4%) 1) 外来通院患者 2) 東京と埼玉の 2 つのクリニック Reliable Therapist Perception scale (RTP) Patient’s Trust Feeling to his/her Physician (PTFP) ※オリジナル尺度 医師への信頼: Trust in Physician Scale (TPS) NA=該当なし,95%CIs = 95% confidence intervals(95%信頼区間) 暴露/介入 主たる研究結果 1) 精神症状:Positive and Negative Syndrome Scale (PANSS) 2) 病識欠如:PANSS G12 および Amador et al.’s insight scale 3) 患者役割の認識:Awareness of Being a Patient Scale (ABPS) ※下位尺度1:(薬物)治療の受け 入れについての質問 ※下位尺度 2:精神科病院での治 療の受け入れについての質問 4) 満足度:オリジナル尺度 1) 共分散構造方程式モデリングの結果; ①モデル適合度:X2 = 52.7, df= 32, p = 0.0012; GFI = 0.924; AGFI = 0.869; RMSEA=0.075 ②治療の受け入れが良い(患者役割の認識(ABPS 得点)が高い)患者は, 治療者への信頼度(RTP 得点)が高い傾向がある。 ③治療者への信頼度(RTP 得点)が高い患者は,満足度(PS 得点)が高い 傾向にある。 ④精神症状や病識の欠如(PANNS 得点および Amador et al.’s insight scale)は,治療者への信頼度に直接的な関係はない。 2) 共分散構造方程式モデリングで有意な関係にある 2 変数の相関 ①RTP×ABPS 下位尺度 1: r = 0.16, P>0.05 ⇒効果量 d = 0.32 [95%CIs: 0.07 to 0.58], p<0.05 ②RTP×ABPS 下位尺度 2: r = 0.19, p<0.05 ⇒効果量 d = 0.39 [95%CIs: 0.13 to 0.64], p<0.05 ③RTP×満足度: r = 0.68, p<0.001 ⇒ 効果量 d = 1.80 [95%CIs: 1.50 to 2.11], p<0.05 薬物治療態度:Drug Attitude Inventory short version (DAI-10) 1)DAI-10 平均値: 1.95 (s.d. = 5.28) 2) PTFP 平均値: 不明 3) DAI-10 と PTFP の相関:r = 0.53, p<0.001 ⇒効果量 d = 1.25 [95%CIs: 0.98 to 1.52], p<0.05 1) Global Assessment of Functioning (GAF) 2) 診断名(ICD-10) 3) 精神科医としての経験年数 4) 現在の精神科医(主治医)との 治療期間の長さ 5) 精神科医と患者の性別の一致 一般化線形モデルの結果,医師への信頼(TPS)に GAF と性別の一致は関 係していなかった。他方,下記の変数が関係していた。 1) ICD-10 の診断(F0, F2~F6):F(4, 483) = 4.00, P = 0.003 ※下位検定(Tukey–Kramer HSD):F3(気分障害)は,F4(神経症性障害, ストレス関連障害および身体表現性障害)より有意に TPS 得点が高い (p<0.001) ①F3 TPS 平均値: 44.1 (s.d.= 7.1), n = 252 ②F4 TPS 平均値: 41.0 (s.d.= 6.6), n = 147 ⇒効果量 d = 0.45 [95%CIs: 0.24 to 0.65], p<0.05 2) 精神科医としての経験年数:F(1, 483) = 5.03, p = 0.025) ①10 年未満 TPS 平均値: 42.1 (s.d.= 7.3), n = 207 ②10 年以上 TPS 平均値: 43.5 (s.d.= 7.1), n = 294 ⇒効果量 d = 0.19 [95%CIs: 0.02 to 0.37], p<0.05 3) 現在の精神科医(主治医)との治療期間:F(1, 483) = 8.01, p = 0.005) ①1 年未満 TPS 平均値: 41.7 (s.d.=7.2), n = 194 ②1 年以上 TPS 平均値: 43.7 (s.d.=7.1), n = 307 ⇒ 効果量 d = 0.28 [95%CIs: 0.10 to 0.46], p<0.05 表 3. 患者-医師関係および医師へのイメージに関する研究 著者, 研究 発行年 デザイン 調査対象 アウトカム/分析方法 暴露/介入 主たる研究結果 介入方法:入院治療(入院初期 からの約 2 ヵ月間) ※精神科医(治療者)の患者に 対して薬物療法や治療教育, 生活・医療上の助言,リハビリ テーションなどの他のスタッフ による治療の導入などの治療 全体の管理等を含む 患者の持つイメージと精神科医(治療者)の持つイメージの差について,入 院初期と 2 ヵ月後を比較 1) 患者の治療者イメージ(A)と治療者(E)の治療者イメージの差について の改善(減少) ①入院時 平均値:23.2 (s.d. = 9.1), n=52 ②2 ヵ月後 平均値:19.5 (s.d. = 8.6), n=52 ⇒効果量 d = 0.42 [95%CIs: 0.03 to 0.81], p<0.05 2) 患者の治療者イメージ(A)と治療者の患者の治療に対する態度(D)の差 についての改善(減少) ①入院時 平均値:23.7 (s.d. = 8.1), n=52 ②2 ヵ月後 平均値:21.5 (s.d. = 7.2), n=52 ⇒効果量 d = 0.29 [95%CIs: -00.3 to 0.67], p = 0.15 3) 患者の患者イメージ(B)と治療者の患者イメージ(C)の差についての改 善(減少) ①入院時 平均値:26.2 (s.d. = 9.5), n=52 ②2 ヵ月後 平均値:22.8 (s.d. = 9.0), n=52 ⇒効果量 d = 0.37 [95%CIs: -0.02 to 0.76], p = 0.06 患者と精神科医(治療者)の認識の 際: 林ら, (2000) 介入研究 (事前事後) ・患者 1) 分析対象:52 名 (同意者数:54 名,候補者数:不明) 2) 男性統合失調症患者(DSM-IV) 3) 入院患者 3) 都内の精神科病院 ・医師 上記の対象者の治療にあたる医師 佐川, (2003) 質的研究 1) 分析対象:34 名 (候補者数:37 名,参加率:91.9%) 2) 統合失調症患者 3) 実施場所は不明 患者および治療者のイメージ尺度 (Semantic Differential technique: SD 法):下記,A~E を含む 患者の治療者イメージ 患者の患者イメージ 治療者の患者イメージ 治療者の患者の治療に対する 態度 E. 治療者の治療者イメージ A. B. C. D. 1) 自身の薬や主治医への相談に ついての質問を含む半構造化面 接 2) 主治医に薬について相談しにく い 18 名と,相談しにくいと思わない 16 名を比較 3) 修正版グラウンデ・セオリー・ア プローチ NA=該当なし,95%CIs = 95% confidence intervals(95%信頼区間) NA 1) 主治医に薬のことを相談しにくいと思うグループ(18 名) ①主治医に「制裁者イメージ」を持つ場合,患者は「薬の話題をタブー」と 感じ,また「主治医への劣等感」を持っていた。 ②主治医に「救済者イメージ」を持つ場合,「主治医への罪悪感」を感じ, 患者は「従順な患者演技」を行っていた。 2) 主治医に薬のことを相談しにくいと思わないグループ(16 名) ①主治医のイメージは「協働者イメージ」に発展する。 ②医師との関係は「取り替えがたい」と関係と認識され,患者は医師と治 療に関する情報の共有などを行っていた。 表 4. 医師とのコミュニケーションおよび意思決定に関する研究 著者, 研究 発行年 デザイン Slingsby, 質的研究 (2004) 調査対象 1) 分析対象:11 名 (候補者数:15 名,参加率:73.3%) 2) 10 年以上の臨床経験のある精 神科医 3) 関東地方の精神科病院,関西 地方の大学病院とクリニック アウトカム/分析方法 暴露 1) Decision making につ いての 11 項目の質問 を用いた半構造化面接 2) コード化作業を伴う 質的分析 ※特別な分析方法の明 記なし NA うつ病の治療の際の医 師とのコミュニケーショ ンについての質問を含 んだ 39 項目:オリジナ ルの質問項目 NA 1) 分析対象:2020 名: Sawada et al, (2012) 実態調査 ※候補者:インターネット調査会社 マクロミルの登録者である 323226 名のうち,うつ症状を経 験したことがあり,調査に同意し た 13527 名 ※13527 名のうち,下記の導入基 準を満たすもの; ①20 歳-69 歳 ②1 年以内に,大うつ病の診断あり ③1 年以内に,うつ病の治療歴あり ④双極性障害の診断なし ⑤Patient Health questionnaire (PHQ-9)で 5 点以上 ⑥調査への同意あり ※①~⑥に合致:2027 名 NA=該当なし,95%CIs = 95% confidence intervals(95%信頼区間) *=%から著者らが再計算 主たる研究結果 1) 以前の患者-医師関係:「おまかせモデル」(自分の治療の意思決定を医師に委ねる) 2) 今日の患者-医師関係:「おまかせモデル」と「参加モデル」(治療の意思決定に患者が参加) 3) 「おまかせモデル」は,能動的に意思決定を委ねるモデルと,受動的に意思決定を委ねるモデルを持 っている。 4) 「能動的おまかせモデル」と「参加モデル」における患者は,治療に前向きに参加する 5) 「参加モデル」:精神科の治療の効果と効率を向上させる 6) 臨床では,「参加モデル」と「能動的おまかせモデル」が併用される。 1) 医師とのコミュニケーションの満足度(n=2020) 「満足」(55.0%),「どちらでもない」(30.7%),「不満足」(14.3%) 2) 主なアウトカム(n=2020) 「真実を隠すひと」(70.2%),「相談なしに治療をやめる人」(31.9%), 「相談なしに抗うつ剤をやめる人」(44.7%) 3) 真実を隠す理由(n=1418*):上位 3 つ ①医師と話すことが難しい(49.0%) ②たとえ話したとしても,医師は真剣に取り合わないと思う(36.5%) ③真実を話すことが恥ずかしい(425 名, 30.0%) 5) コミュニケーションを改善させる方法は?(n=2020)上位 3 つ ①それぞれの患者にもっと多くの時間を使う(68.4%) ②患者と医師が自由に話せる環境の提供(33.5%) ③手紙やメモなどを使用して,コミュニケーションや説明を図る(29.8%) 6) 真実を隠すことへの影響(n=2020) ①医師とのコミュニケーションの満足度:「どちらでもない」(n=620):OR=3.35 [95%CIs:2.63-4.27], p<0.001 ⇒効果量 d = 0.61 [95%CIs: 0.48 to 0.74], p<0.05 ②医師とのコミュニケーションの満足度:「不満足」(n=288):OR=4.57 [95%CIs:3.17-6.58], p<0.001 ⇒効果量 d = 0.82 [95%CIs: 0.62 to 1.03], p<0.05 7) 相談なしに治療をやめることに影響するもの(n=2020) ①医師とのコミュニケーションの満足度:「どちらでもない」(n=620):OR=1.98 [95%CIs:1.60-2.45], p<0.001 ⇒効果量 d = 0.37 [95%CIs: 0.25 to 0.48], p<0.05 ②医師とのコミュニケーションの満足度:「不満足」(n=288):OR=2.78 [95%CIs:2.12-3.65], p<0.001 ⇒効果量 d = 0.57 [95%CIs: 0.43 to 0.72], p<0.05 8) 相談なしに抗うつ剤をやめる(n=2020) ①医師とのコミュニケーションの満足度:「どちらでもない」(n=620):OR=1.92 [95%CI:1.57-2.35], p<0.001 ⇒効果量 d = 0.36 [95%CIs: 0.25 to 0.47], p<0.05 ②医師とのコミュニケーションの満足度:「不満足」(n=288):OR=2.64 [95%CI:2.02-3.44], p<0.001 ⇒効果量 d = 0.56 [95%CIs: 0.42 to 0.71], p<0.05 ※6)-8)は,医師とのコミュニケーションに「満足」の人と比較した結果
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