太陽光発電のライフサイクル分析と大規模輸送システム

水素エネルギーシステム
Vo.
120,N
o
.
1
2,1995
資料
太陽光発電のライフサイクル分析と大規模輸送システム
電子技術総合研究所
エネルギー部 エネルギー情報技術研究室
加藤和彦
はじめに
地球温暖化対策技術としてその役割が大きく期待されている太陽光発電に関し、
最 近 、 化 学 工 学 会 第 一 種 研 究 会 rC02と地球環境問題研究会」で、エネルギー収支お
よ び 経 済 性 の 評 価 が 行 わ れ て い る (1)(2)(3)。 さ ら に 、 電 子 技 術 総 合 研 究 所 、 東 京 大 学
および資源環境技術総合研究所の研究グループは、上記研究会の試算をもとに太
陽 光 発 電 シ ス テ ム (PVシ ス テ ム ) の 間 接 的 な CO2排 出 量 に つ い て 考 察 し て い る (4)。
これらの一連の研究では、太陽電池セルの年間生産規模の拡大とそれに応じたセ
ル効率および生産技術の向上などを前提条件としたライフサイクル分析により、
PVシ ス テ ム が 日 本 に 設 置 さ れ る 場 合 の エ ネ ル ギ ー ・ ベ イ バ ッ ク ・ タ イ ム (Energy
PaybackTime:EPT) , 発 電 コ ス ト お よ びt
c
o2排 出 原 単 位 が 試 算 さ れ て お り 、 国 内 に
おける PVシ ス テ ム 、 特 に 住 宅 用 屋 根 設 置 型 シ ス テ ム が エ ネ ル ギ ー 収 支 や cO
2排 出 量
の点で優れていることが示された。
しかし、将来的に太陽光発電が地球環境問題対策としてより大きな効果を発揮
するためには、やはり、日照条件に恵、まれた低緯度地域での大規模導入が必要と
なるであろう。
そ こ で 、 本 稿 で は わ が 国 に お け る 住 宅 用 屋 根 設 置 型 PVシ ス テ ム の EPTお よ び
cO2排 出 原 単 位 に つ い て 紹 介 す る と と も に 、 日 本 国 内 で 製 造 し た PVシステムをオー
ストラリアに輸送、地上設置し、さらにその電力を現地で利用する場合、あるい
は 液 体 水 素 に 変 換 後 、 日 本 に 輸 送 し て 国 内 で 利 用 す る 場 合 の EPTを概算した結果を
報告する。
1
.評 価 指 標 -EPTとCO2排 出 原 単 位 l
.1エ ネ ル ギ ー ・ ベ イ バ ッ ク ・ タ イ ム
発 電 技 術 の EPTと は 「 発 電 プ ラ ン ト の 建 設 や 運 用 の た め に 投 入 さ れ る エ ネ ル ギ Emを 、 そ の 発 電 プ ラ ン ト の 年 間 出 力 エ ネ ル ギ ー E
o
u
tで、回収するのに要する年数 J の
ことであり、一般的には下記の (
1
)式で定義される o
咽
且
,
‘
、
i1
・
E.
F
EPT(
y
]=ーニ
Eout
投入エネルギー Em には化石エネルギー E川.i Mca1 ] と電力エネルギ ~Ein.JkWh] とが
あるため、通常、 (1) 式は電力量を熱量に変換する換算係数~、九
[Mcal/kWh] を用い
て次のように表される。
Em E耐 ~+J; xEm .
.
EPT(
y
]= ー こ = 叫
xE
E側
f
2 p
4
山
(
2
)
ここで、 Epは 発 電 プ ラ ン ト の 年 間 発 電 電 力 量 [kWh/y]で、ある。発電プラントの製
1
=
1;と見
造・建設と発電とが同一地域内で、かつ時間的に大きなずれがなければ、 1
なすことができるが、そうでない場合にはそれぞれ別個に検討する必要がある。
'
"
3
6ー
水素エネルギーシステム
資料
Vo.
120,No.1-2, 1995
T
a
b
l
e
1 CO2排出原単位。)
(
2
)式 の 分 母 は 発 電 プ ラ ン ト か ら 得 ら れ た
電力によって回避される化石エネルギー量
排出源
2
)式
とを表していることになるから、この(
電力(燃焼)
にしたがえば、 EPTは「投入エネノレギーを、
回避される化石エネルギー消費量で回収す石炭(燃焼)
るために要する年数」と考えることもできる。石油(燃焼)
1
.2CO2排 出 原 単 位
天然ガス(燃焼)
発 電 プ ラ ン ト の CO2排 出 原 単 位 c[g-C/kWh]
は、耐用期間L
[y]中 の 総 発 電 電 力 量 セ メ ン ト ( 製 造
単位
原単位
g
C/kWh
1
0
7
g
ClM
c
a
l
1
0
3
.
4
4
g
ClM
c
a
l
8
0
.
2
3
g
C
品1
c
a
l
5
6
.
3
9
g
C
/
g
-セメント I 0
.
2
1
4
EL[kWh]あたりの CO2排 出 量 を 炭 素 量 に 着 目
し て 定 義 し た 指 標 で あ る 。 発 電 プ ラ ン ト か ら の CO2排出量は、エネルギー起源、
CJg-C]お よ び 非 エ ネ ル ギ ー 起 源 CnJg-C]の二つに大男J
Iさ れ 、 前 者 は EPTを 求 め る 際
排出原単位
(
5
)に 示 し た そ れ ぞ れ の CO
に 用 い る 燃 料 種 別 投 入 エ ネ ル ギ ー 量 に Table1
2
cは以下の (
3
)式で求められる。
を乗じることによって得られる
,
C +Cm Ce+CM
(
3
)
c=一
一
一
一
一
一
ー
ー
=
ー
一
一
一
一
ー
ー
ー
EL
Ep'L
2
.太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル の 投 入 エ ネ ル ギ ー お よ び CO2排 出 量
2
.
1前提条件
分 析 の 対 象 と し た 太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル は 、 多 結 晶 シ リ コ ン (polycrystalline
s
i
l
i
c
o
n、 以 下 "
p
o
l
y
S
i
"と 略 記 ) モ ジ ュ ー ル お よ び ア モ ル フ ァ ス シ リ コ ン (amorphous
・S
i
"と 略 記 ) モ ジ ュ ー ル の 二 種 類 で あ る 。 モ ジ ュ ー ル を 構 成 す る セ ル
s
i
l
i
c
o
n、 以 下 "
a
の 年 産 規 模 に つ い て は 、 い ず れ も 10MW/y、 1
GW/y、 お よ び 100GW/yの 三 通 り を 想
定 し た 。 年 産 規 模 10MW/yの 製 造 技 術 は 、 現 在 開 発 段 階 に あ る が す ぐ に 実 用 化 可 能
な技術レベルを想定し、
T
a
b
1
e
2 モジュール 1kWあたりの投入エネルギーと CO2排出量
その他のケースでは、将
年産規模
1
GW/y
│ 州 W/y
来の大量導入時代を想定
して可能な限り現在研究
2
.
2
0
5
λ[Mca
比Wh]I
2.
45
7
2
.
3
2
4
!
I
!
I
!
E
i
n[M
c
a
l
] cOz[
k
g
C
]E
i
n[M
c
a
l
] CO
必q E
i
n[M
c
a
l
] CO
晦q
p
o
l
y
S
i
セル効率
セル化
モジ、ュール化
メ
口
玉
、
三
ロt
0
.
1
5
4,
652:
1
,
386
6,
037:
0
.
2
0
.
1
7
2,
210:
1
5
0
1
,
295:
90
808
56
6
6
1
373
3,
0
1
8
:
206
2
8
3
0
.
0
8
0
.
1
6
0
.
1
3
セル化
1
,
1
5
0:
モジューノレ化
2,
252
1
4
7
合計
3,
402:
216
69
1
6
1
0
4
:
1
,
1
1
4
72
877
1
,
395:
88
9
8
1:
2
8
1:
び CO2排 出 量
太陽電池モジュールの
製造過程からの投入エネ
ルギーとして評価した項
5
目は、①直接素材製造エ
58
ネルギー、②直接投入エ
64 ネノレギー、③製造装置製
,
955
」 1137
l
a
S
i
セル効率
中の製造技術の実用化を
想定している。想定した
poly-Siセ ル お よ び か S
iセ
ルの製造工程については
90 文献(1)を参照されたい。
47 2
.
2 投入エネルギーおよ
t
月
n
o
水素エネルギーシステム
資料
Vo1
.20,No.1-2, 1995
造エネルギー、④間接素材製造エネルギー、⑤建屋建設エネルギー、および⑥照
明 ・ 空 調 用 エ ネ ル ギ ー で あ る 。 ま た 、 そ の ほ か に CO2排出として、⑦製造工程から
o
l
y
S
iおよ
の 直 接 排 出 、 お よ び ⑧ 建 屋 建 設 用 セ メ ン ト 製 造 時 の CO2排出を求めた。 p
S
i太陽電池モジュール製造時の投入エネルギー量と CO2排出量を T
a
b
l
e
2に示す。
びa
3
.住宅用屋根設置型システムの EPTおよび CO2排出原単位
3
.
1周辺装置 (
B
a
l
a
n
c
eo
fSystem:
BOS) の投入エネルギーおよび CO2排 出 量
ア レ イ 容 量 PAは 3kWとした。日本国内では系統連系による逆潮流が可能であるこ
とから、特に電力貯蔵装置は考慮せず、屋根上に同定するため架台とインバータ
について検討した。これらの BOSを構成する素材(鉄鋼、鋼、絶縁材料)の製造エ
ネルギーと BOSを製造するためのエネルギーを投入エネノレギーとして求め、さらに
CO2排出量を求めた。
3
.
2年 開 発 電 量
太陽光発電システムの年開発電量は次式で求められる。
H.
En=ー
ニ 'K'P.
• G
(
4
)
晶
S
j
m量 の 率 考
W射場効を立
北日現の率掛
ト﹁るを路効原
岐れ率回の出
問ら効辺路塑
中川得換周回刊さ
仁川ら変の気引
向かのど電四
I タ也なの一
市一電路辺一九
七げ陽田周決
ku
心川瀬太御の
m衛た制そ置
泊象れ電や設
、バ慌さ放ナ誠
内ど 'k定 充 ヨ 即
仰お湯測やシ宕
ν
.度 傍 で 池 イ 住
市温的態電デ
d
[凡 H 状 蓄 ン 剥
量セム笹コ
T
瑚、テ町一民ぺ一
12m ス 要 フ
シゃい視勺)イの積と幻内テ設し発な位位結
面
r
UW
出闘の
p h M 一目的 Mt 以 、 ゾ 。 間 以 騨 騨 時
レ削酌因す、
マリ強基一一瓶一九一比一川、射的トた用りはり W
mMi
山一明一描日行凪二吋刻化士一位協比心即州り州
諸官完結盟問引い品印刷山川果
一qk
i泊 る 系 ら で は な 結 お 山
、間刑判げにしす要準叫の斜川 し 年 標 7 ら に 慮 る 標 作 稿 均 3 H W dけ 連 か っ Fり F 算 内 I 4
だ 1iri--一
- さ 件 考 す : 量 本 平 値 、 引 お ( 例 が 量 。 日 試 日 か
たH
γ⋮ の (
を条を慮九容年算に休にム計た電る
••
年産規模
h
[
M
c
a
1
I
k
W
h
]
10MW/y
1
GW/y
1
0
0GW/y
2.
457
2
.
3
2
4
2
.
2
0
5
前
IPIi v
p
V
C
四
I
j
c
p
v
A
<
W
h
] [
k
g
<
二i
Wh] [y]包:
C
A
<
W
h
]
[
y
] 包
ベ
ご:
y
]i[
p
o
1
y
S
i
セル化
1
.6
:
1
2
.
3 0
.
8:
6
.
5 0
.
5:
3
.
9
モジューノレ化
0
.
5:
3
.
9 0
.
3:
2
.
4 0
.
3:
2
.
0
BOS
0
.
2:
1
.5 0
.
1:
1
.3 0
.
1:
1
.2
計
2
.
3:
.
9:
1
0
.
3 0
7
.
1
1
7
.
7
1
.3
:
a
S
i
セル化
0.
4
:
3
.
0 0
.
1:
0
.
7 0
.
0:
0
.
2
モジュール化
0
.
8:
4 0
.
4i
6.
3
.
1 0
.
3:
2
.
5
BOS
0
.
2
:
.
2:
2
.
3 0
.
1:
1
.5 0
1
.3
計
l
.4
:
11
.6 0
.
7:
5
.
3 0
.
5:
4
.
1
叩叩
水素エネルギーシステム
Vo.
120,No.1-2,1995
資料
果は T
a
b
l
e
3に示す通りである。
4
.太陽光発電システムの海外立地と発電電力の大規模輸送システム
4
.
1前提条件と投入エネルギー
立 地 地 点 PVシステムの立地地点として、日本から約 7.000km離れたオーストラリ
2
100[kW
h/
y/m]であり、日本の平
ア を 想 定 し た 。 オ ー ス ト ラ リ ア の 年 間 日 射 量 は 約 2,
均のおよそ1.5
倍である。
太 陽 光 発 電 シ ス テ ム ア レ イ 容 量PAは26GWとした。太陽電池モジュールについて
o
l
y
S
iモジュールを用いることとした。
は
、 3章 の 試 算 の う ち の 年 産 規 模 1GW/yの p
また、 BOSについては地上設置のための架台、インバータおよびバッテリーについ
,
000kWシステムの架台を参考に、
て検討した。架台は資源調査会の資料(7)にある 1
発電効率の差異による架台必要面積の減少など考慮、して決定した。インバータに
8,
000kVA
容量のものを必要台数分考慮した。バッテ
ついては岡島ら (8)を参考に、 1
リーもインバータ同様、岡島ら (8)を参考にして NaS電 池 が 使 わ れ る も の と し 、 貯 蔵
効 率 は 89%、貯蔵容量は太陽光発電システムの 2日分とした。システム出力係数Kに
.
7
2として、 K=0.72xO.89=0.64とした。した
ついては貯蔵による損失を除く部分を 0
9
4
)式より年開発電量Epは 35x1
0[kW
h/
y
]となる。
がって、 (
構 成 機 器 の 海 上 輸 送 太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル お よ び BOSを、日本からオーストラリ
ア ま で 海 上 輸 送 す る 。 輸 送 エ ネ ル ギ ー は 、 輸 送 船 1隻あたりの年間輸送可能重量を
8
6
.9
[
t
/
y
]、年間重油消費量を1.92x1
0
S
[
G
c
a
l
/
y
]、日本から輸送するモジューノレ、架台
7
などの総重量を1.52xI
0[
t
]として求めた。なお、輸送船の製造エネルギーは考えない。
PVシ ス テ ム の 建 設 エ ネ ル ギ ー 現地での PVシステム建設に必要なエネルギーにつ
いては、オーストラリアのデータがなかったため、ここでは仮に日本における地
上 設 置 型 シ ス テ ム ( ア レ イ 容 量 lMW) を 設 置 す る 際 の 建 設 エ ネ ル ギ ー で あ る
1
T
a
b
l
e
4 投入エネルギーのまとめ
3.
1
6
x10s[kWht)を容量
6
設備製造 1
倍して求めた。
0G
c
a
l モジュール
7
6
.
2
PVシ ス テ ム
海外での発雷:霞力の
架台
1
0
1
日 本 へ の 輸 送 PVシ
インバータ
l
.27
ス
テムの出力を日本
バッテリー
5
4
.
2
に輸送するためには、
セメントなど
5
.
3
1
得られた電力を何ら
計
238
かの輸送可能なエネ
ルギー形態に変換す
輸送
3
.
3
6
1
06G
c
a
l
る 必 要 が あ る o そこ
建設
1
06G
c
a
l
1
8
.
2
で
、本稿では液体水
言
十
1
06G
c
a
l
260
Ei
n
,PV
素 (LH2) への変換お
L~製造・輸送 設 備 製 造
1
06G
c
a
l
2
.
1
7 Ei
n
,LH2
よび輸送を想定した。
輸送
1
06G
c
a
l
/
y
1
.47 E
r
.LH2
その際に必要な設備
6
保守
1
0G
c
a
l
l
y
0
.
0
4 EM
としては、水電解プ
,
LH2
6
ラント、水素液化プ
ガスタービン c
c設 備 製 造 10Gcal
4
7 Ei
3.
n
,GT
6
ラ
ント、現地での
保守
1
0G
c
a
l
l
y
0
.
0
2 EM
.
GT
LH 2 貯 蔵 タ ン ク 、
h
v
q
o
水素エネルギーシステム
Vo.
120,No.1-2, 1995
T
a
b
l
e
5 設定した分析ケースとそれぞれのエネルギー供給量川(11)
資料
[
c部 e1
]PVシステムを設置した地域で、その発電出力を利用するケース
1
0
・年開発電電力量
Ep=HAxKxPA=2100xO.64x(26x1
0
6
)
=
3
.
5
0
x1
0 [kWh
今]
→この年開発電量は、 4GW
規模の水力発電が定格出力で年間ブノレ稼働した場合の年開発電量に
ほぼ等しい。
.
3
4
6
(
1のより、 ,
h
=
0
.
8
6[Mcal
/k
Wh]/0.346=2.
486[Mca
1lkWh]
・オーストラリアにおける平均発電効率0
[ca鵠 2]L~ を製造、日本に輸送して直接利用するケース
・水電解の電力原単位。):4kWhlNm3_~ 、水素液化の電力原単位: lkWhlNm3-~
.荷役時のロス助 :2%
・日本国内に供給可能な水素の量
9
7
EL
=E
J
(
4
+
1
)
x(
l・0
.
0
2
)
=
6
.
8
6
x1
0 [Nm3-~/y]= 1. 95x 1
0[
G
c
a
l
/
y
]
H
2
[c出e3]L~ で発電した電力を利用するケース
・水素燃焼タービン複合サイクル発電の発電効率。'):48%
1
0
-年開発電電力量
E
G
T
=
E
L
H
2
x
0.
48
/
0
.
8
6
[
M
c
a
l
IkWh
]
=
1
.
0
9
x1
0 [
k
Whl
y
]
・日本の平均発電効率を 0
.
3
9と仮定。 ,
h
=
0
.
8
6[Mca
1lkWh
]
/
0
.
3
9
=
2
.
2
0
5[Mca
1
l
k
Wh]
[
c
a
s
e
4
]L~ で発電した電力を電気自動車で利用し、ガソリン車を代替するケース
・電気自動車の燃費(11) :8
.
5
km1kWh (
60kmlh
定地走行時)
・ガソリン車の燃費(11) : 1
5
k
m
1
l
=
1
.79
kmlM
c
a
l (60kmlh定地走行時)
・ガソリン車を電気自動車で代替することにより、回避されるガソリンの年間消費量
7
E
j
u
e
l
=
E
G
T
x
8
.
51
l.
7
9
=
5
.
1
9
x1
0[
G
c
a
l
l
y
]
輸送タンカー、日本で、の LH2貯蔵タンクがある。また、日本に供給された LH2か
LH
2
ら電力を得る場合には、さらに水素燃焼のガスタービン複合サイクル発電フ。ラン
トも必要となる。これらの設備の製造、保守に要するエネルギ一、および LH2輸 送
のための燃料消費量については、文献 (9)を参考に求めた。
T
a
b
l
e
4は上記の前提条件によりそれぞれの設備投入エネルギー、輸送エネルギー、
建設エネルギーおよび、保守エネルギーを求めたものであるが これから PVシステ
ムの設備投入エネノレギーが非常に大きいことがわかる。
4
.
2年間発電量および国内へのエネルギー供給量附(11)
海 外 に 設 置 し た PVシ ス テ ム か ら の 発 電 電 力 に は い く つ か の 利 用 段 階 が 考 え ら れ
るが、本稿で、は T
a
b
l
e
5に示す四つのケースについて検討した。
4
.
3EPTの試算結果とその考察
4
.
1節 お よ び 4
.
2節 に も と づ い て EPTを 試 算 し た 結 果 は Table6に示す通りである。
c
a
s
e
lが 3年と最も短く、逆に c
a
s
e
2が 1
4
.
6年と最も長くなった。 c
a
s
e
lが最も短いのは
むろん LH2の製造などによるエネルギーの損失が少ないことによる。一方、その他
のケースではEoutの違いが EPTに影響している。
c
a
s
e
2お よ び c
a
s
e
3はそれぞれ、園内に供給される水素および電力を最終的な用途
a
s
e
3の方が EPTが
を特定せずに評価した EPTである。発電による損失がある分だけ c
長くなりそうなものだが、実際には既存の発電技術に比べ発電効率の高いガス
タービン複合サイクル発電で電力を得ているため、発電に用いられる水素エネル
ギー以上の化石燃料を節約していることが、両者の EPTの差に現れている。ただし、
他の発電技術がガスタービン複合サイクル発電と同等の発電効率となれば、両者
の差はなくなる。
-40-
水素エネルギーシステム
Vo.
120,No.1-2,1995
c
a
s
e
l
[
1
06
G
c
a
l
]E
;
n
.p
v==260
E
;
n
資料
T
a
b
l
e
6各ケースのEPT
試算結果
c
a
s
e
2
E
;
n
,
pv
+
E
;
n
,
w]+E
;
n
,
G
T
E
;
n
,
pv
+
E
;
n
,
w2
=262
EOU1
[
10
6
G
c
a
l
l
y
]f;xE
=87
p
,
EPT=EiE
制
[
y
]
c
a
s
e
4
c
a
s
e
3
E
;
n
,
pv
+
E
;
n
,
W]+E
;
n
,
G
T
=266
=266
ET
EM,
h
x
E
G
f
・E
T
.W
]-E
M
, wFE
M
,G
T
EW2-E
T
.W
2-E
M
,W
] l
E
j
u
e
r
,
W
2
出 E
M
,
G
T
=
1
8
.
0
=50.
4
=
2
4
.
0
3
.
0
0
11
.1
1
4
.
6
5.
28
さらに、 c
a
s
e
4は国内で利用するケースの中では最も EPTが 短 い が 、 こ れ は 代 替 す
るガソリン車と電気自動車の燃費の違いによるものである。つまり、熱量換算の
.88km/Mcal、 ガ ソ リ ン 車 が 1.79kmlMcalと、電気自動車の方が
燃費は電気自動車が9
約5
.
5倍 効 率 が よ い 。 し た が っ て 、 電 気 自 動 車 が ガ ソ リ ン 車 を 代 替 す る こ と に よ り 、
よ り 多 く の ガ ソ リ ン 消 費 が 回 避 可 能 と な り 、 こ れ が EPTの短縮に貢献している。
おわりに
従来、 EPTあ る い は エ ネ ル ギ ー 収 支 と い っ た 評 価 は 、 個 々 の 要 素 技 術 に 適 用 さ れ
ることが多かったように忠われる。一方、複数のエネルギ一変換過程を含むよう
なシステム技術の場合は、その過程の中で異なった利用段階が考えられ、各段階
での EPTは 評 価 基 準 の 置 き 方 に よ っ て 変 わ っ て く る 。 特 に 本 稿 で の 検 討 し た シ ス テ
ムのように、電力だけでなく水素エネルギーとしての直接利用形態も考えられる
場 合 に は 、 ど の よ う な 利 用 技 術 を 想 定 す る か で EPTによる評価も異なる。今回は水
素エネルギーから得られる電力を電気自動車で利用する場合しか検討できなかっ
たが、水素自動車で利用する場合についても検討する必要があろう。むろん、こ
の よ う な 大 規 模 シ ス テ ム の 導 入 は EPTだ け で な く 経 済 性 の 評 価 も 重 要 で あ る が 、 太
陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーをエネルギー源とする大規模システ
ムの場合は、 EPTについての検討が極めて重要である。
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