株式会社 DZH フィナンシャルリサーチ 株式会社 T&C フィナンシャルテクノロジーズ 東京都中央区明石町 8 番 1 号 聖路加タワー32 階 東京都港区芝浦 1-12-3 Daiwa 芝浦ビル 5 階 http://www.tandcft.com 〔Fx Whisper〕 ドル円 三角もち合い上抜け 107 円が目標 September 9, 2014 ユーロは昨年安値 1.275 ドル付近が下値めど=三菱 UFJ 信託銀行・市河伸夫氏 第 78回を迎えた FX Whisper では、三菱 UFJ 信託銀行 資金為替部 為替グループ・グループマネ ージャー市河伸夫氏に、QE停止を背景としたドル円の上値目標や、欧州追加緩和や財政出動の 催促相場によるユーロの下値めどついてうかがった。以下、インタビュー要旨。(国際金融情報部・ 関口 宗己) ■DZH 関口:まず米金融政策を語る前提となるアメリカ の景気認識をお聞かせ願えますか。 ■市河氏:1-2 月の寒波の影響を脱して、半年以上にわ たり雇用者が 20 万人以上も増え続けた。Fed(FRB、 連邦準備制度理事会)は当初、雇用が増えている割に 賃金が上がらない、あるいは長期失業者が多いとの理 由で、まだ利上げは早いと述べていた。 とはいえ、6 カ月間にわたり 130 万人以上雇用が伸 びてきたインパクトは強い。現実として、寒波直前 12 月ぐらいからアメリカで自動車が売れなくなってい たが、3 月以降は 1600 万台を超えるペースで販売が急 拡大した。家が買えるほどではないが、自動車は買え るほどには回復している。これは新たに雇用が創出さ れた結果の好影響だろう。 そういった意味で、米国経済は順調に回復している と認識している。8 月 20 日発表の FOMC 議事録(7 月 29-30 日開催分)によれば、ようやく Fed 内でもハト 派を中心に意見が擦り寄ってきた感がある。10 月末の QE(量的緩和)の完全停止に向け、ドル買いを試す展 開が続くと考えている。 ■DZH 関口:具体的にどのような動きを想定しています か。 ■市河氏:6 カ月間続いた三角もち合いを 8 月 18 日に 上抜けした。ここから 2 カ月間、10 月 20 日前後まで は上昇トレンドが続くとみている。前回、昨年 11 月 7 日に三角もち合いを抜けた際は、1 月 10 日ぐらいまで 約 2 カ月上昇トレンドが続いた。このときは 12 月に テーパリング(QE 縮小)が開始されている。今回は QE が完全に停止するフレーズで、QE の縮小開始のと きと同程度のサイクルで上昇が続くと思う。 ウクライナの問題などリスク回避の円高要因もあ る。しかしこれは先にも後にも進みにくい要因。そう なると米国の経済や利上げ時期が焦点となり、上値の めどはもち合いの垂線の値幅 4 円 70 銭を、上抜け水 準に加えた 106 円 90 銭といったところ。10 月末まで の約 2 カ月間のターゲットは 107 円で、徐々にここへ 近づくことになるとみている。 ■DZH 関口:8 月米雇用統計(非農業部門雇用者数が市 場予想を下回る+14.2 万人にとどまった)の影響は? ■市河氏:例年 8 月は新学期前で休職扱いになる人が 多く、季節調整が困難な月。一般的に市場予想より悪 い速報値が出ることが多く、翌月、翌々月にリバイ ス・アップされる傾向が強い。今回も速報ベースで一 瞬悪い数字となりドル円が下落しても、買い遅れてい た人たちにとっては良い押し目になるだろう。その後 は 8 月 18 日以降の上昇トレンドへ回帰していくとみ ている。 ■DZH 関口:ユーロについてはどのようにみていますか。 ■市河氏:日・米・欧の三極のなかでユーロ圏の状況 が最も悪化している。欧州のなかで特に強かったドイ ツの指標がここへきてピークアウト。欧州全体として も年初に関しては先進国買い・新興国売りの名のもと に、改善幅の大きかった欧州が最も元気が良かったも ののピークアウトの感が否めない。ウクライナ問題も 覆いかぶさり拍車を掛けている。消費増税の反動減で 弱い日本と比べても、三極のなかで一番悪い。ファン ダメンタルズは間違いなく下向きの状態にある。 過去においてはユーロ売り(ショート)が溜まりや すい傾向にあっても、必ずショートカバーが誘発され、 水準が徐々に切り上がっていく展開が多かった。しか し今年 5 月以降、ドラギ ECB(欧州中央銀行)総裁が ディスインフレを退治しなければならないとして完 全にハト派となるなか、過去 3、4 年と違ってショー トポジションを保持していても安心感が持てる。 金融政策に関しては、QE 実施は難しいハードルとみ ていることが言葉の端々に感じられる。ドイツ中心に QE に反対する風潮ある。 ■DZH 関口:逆にここまでショートカバーで水準を上げて きたことに対する巻き戻しのユーロ売りが入りかねず、少 なくとも上値は重そうですね。 ■市河氏:昨年冬から今年年初にかけてユーロが強さ を増していった前のステージの安値が対ドル 1.275 ド ル付近となる。1.3 ドルを下回って、同水準が視野に 入ってくる。 本レポートはお客様への情報提供のみを目的として作成したもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。実際に投資をなさる場合の最終ご判断は、お客様ご自身でご判断なさるよ うお願い致します。本レポートを原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については一切補償には応じません。 Copyright DZH Financial Research, Inc. 株式会社 DZH フィナンシャルリサーチ 株式会社 T&C フィナンシャルテクノロジーズ 東京都中央区明石町 8 番 1 号 聖路加タワー32 階 東京都港区芝浦 1-12-3 Daiwa 芝浦ビル 5 階 http://www.tandcft.com ■DZH 関口:その水準までいかないと達成感が生じない かもしれませんね。 ■市河氏:ドラギ総裁が米ジャクソンホールの講演で 財政出動に言及し、いまはオランド仏大統領ととも にそれを唱え始めている。メルケル独首相がそれを 強く正す格好になっている。欧州は三極のうちで、 日米のようにリーマンショック後にカンフル剤を打 つように財政を出動して失業率を下げなければなら なかったステージを経ていない唯一の極。その間、 不況だったといっても、骨を削って身を切って様々 な努力をし、例えばいったん国債が発行できなくな ったポルトガルが再び国債を発行できるようになっ た。まだ、財政を出動する余地がある。アメリカで いえば 2009 年、日本でいえば震災後など機動的な財 政出動を消費増税前に行なってきた時期に、欧州は 身ぎれいになっている。その分だけ、財政出動の余 地があるだろう。 過去は、経済的に関係が深かった中国がリーマンシ ョック後に欧州を支えていた時期もある。しかし当時 10%程度が続いていた中国の成長も、いまは 7%程度 に落ちている。欧州経済も当時ほど外需に依存できな い。自らの経済圏に何らかのカンフル剤を打たなけれ ばならない状況になっている。 欧州は議論に参加する国の数も多いため、どのよう な結論になるか不透明な部分はまだある。しかし、こ れまで何年かの努力で財政が改善してきている。ドラ ギ総裁とオランド大統領も、このあたりで 1 年ぐらい カンフル剤を打ったとしても、他の二極にくらべれば 余裕はあると見越しているのだと思う。 本来、金融の番人である ECB 総裁が財政のことにあ まり触れるべきではない。しかし追加緩和や QE さえ も必要との状況に追い込まれていることが、ドラギ総 裁が財政について発言する理由となったのだろう。ウ クライナ情勢の悪化もあって外需がしぼむなか、カン フル剤を与えて経済を支えることは許されるだろう。 それほど多くの財政出動は必要ないと思う。 ■DZH 関口:黒田日銀総裁も政府が財政で動くという前 提があってこそ、QQE(量的・質的金融緩和)を行なうとの 姿勢を示していますね。今度は欧州にそのような動きが 見られるということですね。ECB による緩和が為替へ及 ぼす影響についてはどのようにみていますか。 ■市河氏:「会議は踊る。されど進まず」ではないが 欧州の話し合いは進みにくい。結局はマーケットに催 促されユーロが売られることになるかもしれない。積 極的な財政出動が確認されれば、ユーロが戻る可能性 はあると思う。 ■DZH 関口:いずれにしろ、緩和的な金融政策が続くの であれば、ユーロの上値は重そうで、ユーロドルが 1.275 ドルをつけるような達成感が必要かもしれませんね。 ■市河氏:2012 年からの時期は、ユーロが売られた一 方、外需依存による刺激があって独 DAX が買われた。 ドイツが世界で最も稼ぐ国といわれ始め、ユーロ圏全 体を引っ張るようなかたちで景気が回復した。 ところが今年 3 月頃からウクライナ情勢が悪化し、 中国も 8%から 7%成長へと右肩下がりの状況。ドイ ツ車をどんどん購入してくれる国もなくなった。であ れば、以前の回復過程で身ぎれいになった一部の財政 余力を使う時期ではないかと感じる。 ■DZH 関口:ドイツも成長の方向性にも変化が生じてき たので、自らのためにも財政出動でこれ以上の悪化を食 い止めることを議論すべきかもしれませんね。ただ、そう してユーロ圏の多くの国々が議論している間にも、マーケ ットがユーロ売りを浴びせかける状況も想定できますね。 ■市河氏:ドイツはこれまでの成長で高い水準に達し ているため、まだ余裕がある。ドラギ総裁が、財政出 動について問う背景になっている。マーストリヒト条 約で財政赤字を 3%以内に収めなければならないとい う金科玉条はある。しかし一時的に、一瞬それを緩め てもいいのではないかということになるのかならな いのかが、今後のユーロの行方を左右する。財政が出 動し、国債の QE なども行われた後、ユーロは本格的 な上昇へ転じてくるであろう。(了) 本レポートはお客様への情報提供のみを目的として作成したもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。実際に投資をなさる場合の最終ご判断は、お客様ご自身でご判断なさるよ うお願い致します。本レポートを原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については一切補償には応じません。 Copyright DZH Financial Research, Inc.
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