北陸経済研究 2014.11 定例調査 1 概 要 北陸の四半期経済速報(北陸のQE推計) 〇平成 26 年4~6月期の北陸経済 (P3:図 1~図 2) 北陸 3 県の平成 26 年4~6月期における季節調整済域内総生産は、26 年1~3月期と比較して実 質▲3.0%、名目▲1.3%と 24 年 10~12 月期以降 6 四半期続いたプラス成長からマイナス成長に 転じ、マイナスの幅は全国平均(実質▲1.8%、名目▲0.2%)よりも大きなものとなった。 ○需要サイド ( P3:図 3~図 4 ) ・消費税増税前の駆け込み需要の反動減から民間需要が大きく減退した ☞26 年1~3月期を中心に発生した消費税増税前の駆け込み需要の反動減から、個人消費を中心と する民間最終消費支出が実質▲4.2%のマイナスと大幅に減少。落ち込みの幅は全国平均(▲ 5.1%)よりも小さいが、実質域内総生産を▲2.4%押し下げる方向に作用した。 ☞民間住宅投資も、26 年1~3月期以降の住宅着工の大幅な減少により、実質▲15.6%のマイナス と全国平均(▲10.4%)以上の落ち込みとなり、実質域内総生産を▲0.4%押し下げる方向に作用 した。 ☞その中で、製造業の旺盛な設備投資意欲などを背景に、民間設備投資は実質+5.6%の増加。域内 需要が全般的に減退する中で在庫を除いて唯一増加し、実質域内総生産を 0.8%上方に押し戻す 動きとなった。 ・公共事業は大きく減速し、対前期比▲5.7%のマイナスとなった ☞25 年度 1 年間にわたって北陸の経済回復に貢献した公的総固定資本形成は、スタートの遅れもあ り、▲5.7%のマイナスと2四半期連続で減少。実質域内総生産を▲0.3%押し下げる方向に作用 するなど、25 年度中の急激な増加からの揺り戻しの状態が続いている。 ・域外への供給超過(移輸出-移輸入)幅はさらに縮小 ☞製造業の生産増加などを背景に 25 年度前半に大きく拡大し、北陸経済の急回復を主導した域外へ の供給超過額は、域内需要が減退し、移輸入が減少するも、製造業の生産が減少したことの影響 もあって、その幅はさらに縮小し、実質域内総生産を▲1.2%押し下げる方向に作用した。 ○生産サイド( P3:図 5~図 6 ) ・製造業がマイナスに転じる ☞25 年度全般にわたって北陸経済の回復を主導、けん引してきた製造業は、全国的な需要減少を背 景として機械製造業、金属製品製造業の生産額が減少したこともあり、名目で▲1.9%の減少に転 じ、名目域内総生産を▲0.4%押し下げる方向に作用した。 ・建設業はマイナスが拡大 ☞民間住宅投資および公共事業の大幅な減少により、建設業のマイナス幅が名目▲7.0%に拡大。名 目域内総生産を▲0.5%押し下げる方向に作用した。 ・卸・小売業は再びマイナスへ ☞民間最終消費支出の大幅な落ち込みにより、26 年1~3月期には比較的大きな増加をみた卸・小 売業が名目で▲2.1%のマイナスと、再びマイナスに転じ、名目域内総生産を▲0.2%押し下げる 方向に作用した。 ‐1‐ 表1 北陸・域内総生産の四半期別実質成長率(支出側、季節調整系列) 平成25年 (%) 平成26年 4~6月期 7~9月期 10~12月期 1~3月期 4~6月期 4~6月期 年率換算 全国GDP(実質) 0.8 0.4 -0.1 1.5 -1.8 -7.1 北陸域内総生産(実質) 2.7 0.4 0.1 0.7 -3.0 -11.3 民間最終消費支出 0.3 0.3 0.4 1.9 -4.2 (成長寄与度) 民間住宅 0.2 11.2 (成長寄与度) 民間企業設備投資 2.8 民間需要 政府最終消費支出 0.6 (成長寄与度) 公的総固定資本形成 2.5 (成長寄与度) 公的需要 1.0 (成長寄与度) 移輸出-移輸入 44.2 (成長寄与度) -5.7 -0.5 -4.3 -1.4 -0.2 -0.1 0.2 -23.9 1.9 -1.0 -1.5 1.0 0.8 -1.3 -0.0 0.2 3.2 0.2 -1.8 -0.2 3.6 0.7 0.7 2.1 0.0 13.9 0.1 *** 2.9 0.2 0.0 0.8 -0.1 0.0 0.2 0.1 5.6 *** 0.0 1.0 -0.4 1.2 -0.4 1.4 0.6 -15.6 9.1 *** 0.5 -2.4 -0.0 0.1 *** 0.9 -0.6 0.8 0.3 -0.2 1.1 0.1 2.6 *** (成長寄与度) 5.8 -0.0 0.4 (成長寄与度) 0.2 -1.4 0.2 (成長寄与度) 民間在庫品増加 0.2 -0.3 -2.1 -0.1 -29.8 -0.2 -0.5 -38.7 -1.3 -1.2 -15.6 -49.1 24.2 *** -6.9 -3.8 -20.8 -8.1 -85.8 富山県(実質) 1.5 0.5 1.6 1.2 -3.7 -14.0 石川県(実質) 4.5 0.3 -0.1 0.8 -3.4 -12.9 福井県(実質) 2.1 0.4 -1.8 -0.2 -1.3 -5.1 (注)統計上の不突合があるため、各項目の寄与度の合計が一致しない 表2 北陸・域内総生産の四半期別名目成長率(生産側、季節調整系列) 平成25年 (%) 平成26年 4~6月期 7~9月期 10~12月期 1~3月期 4~6月期 4~6月期 年率換算 全国GDP(名目) 0.3 0.4 0.2 1.6 -0.2 -0.7 北陸域内総生産(名目) 2.6 0.5 0.1 0.5 -1.3 -4.9 農林水産 -0.6 (成長寄与度) 鉱業 -1.2 -0.0 8.8 (成長寄与度) 製造業 5.5 0.0 10.0 (成長寄与度) 建設 電気・ガス・水道 1.6 卸・小売 -4.2 -1.4 (成長寄与度) 金融・保険 -1.0 -0.2 2.8 (成長寄与度) 不動産 -5.3 0.1 -0.8 (成長寄与度) 運輸 -0.2 -0.1 2.4 (成長寄与度) 通信 0.1 0.1 0.8 (成長寄与度) サービス 1.0 0.0 1.1 (成長寄与度) 0.6 0.2 0.4 1.8 -1.0 0.1 0.2 0.0 0.1 0.6 3.7 0.1 -0.2 0.0 0.1 0.0 -4.2 0.2 2.3 -0.2 -0.1 -0.1 0.0 -2.1 -3.4 -0.5 0.0 0.3 -0.0 -0.0 0.8 2.3 -1.0 -0.5 -0.0 0.1 -0.2 -7.0 -0.3 1.0 -0.4 -0.1 -0.5 -0.1 -1.9 -1.2 -12.9 -0.0 0.0 0.3 -0.2 -8.1 0.1 3.8 -0.0 -0.0 0.3 0.5 0.1 -0.3 1.5 7.6 -1.3 -0.0 -0.0 0.5 0.3 (成長寄与度) -1.3 2.0 4.6 -0.6 0.0 0.0 2.1 (成長寄与度) 2.3 -0.0 0.0 1.2 0.0 1.4 -0.2 0.0 0.5 0.3 0.1 -5.1 -28.6 -7.4 -25.3 3.2 -8.2 -15.9 2.3 1.5 5.0 2.2 富山県(名目) 1.3 0.7 1.6 1.0 -1.9 -7.4 石川県(名目) 4.3 0.5 -0.0 0.7 -1.6 -6.4 福井県(名目) 2.1 0.4 -1.7 -0.4 0.2 0.8 ‐2‐ 25年 26年 23年 24年 25年 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅱ期 Ⅰ期 国内総生産 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅰ期 24年 Ⅱ期 -4 Ⅰ期 -4 Ⅳ期 -2 Ⅲ期 -2 Ⅱ期 0 Ⅳ期 0 Ⅲ期 2 Ⅱ期 2 Ⅰ期 4 23年 北陸域内総生産 (%) 4 Ⅲ期 (%) 図2 北陸、全国の四半期成長率(名目・季節調整済) 国内総生産 Ⅱ期 北陸域内総生産 Ⅳ期 図1 北陸、全国の四半期成長率(実質・季節調整済) 26年 全国:内閣府「四半期別GDP速報」(平成26年9月8日公表値) 北陸:北陸経済研究所推計値 図3 平成24年Ⅱ期~26年Ⅱ期における北陸の需要項目別動向(実質・季節調整済前期比) 民間最終消費支出 (%) 3 1.9 2 1.3 0.7 0.3 0.3 0.4 0.3 1 0 -1 -2 -1.0 -3 -4 -5 -4.2 -6 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 24年 25年 24年 26年 政府最終消費支出 (%) 0.6 1 0.5 0.4 0.6 0.2 25年 26年 24年 公的総固定資本形成 0.2 -0.2 -1 -1.0 -2 -2.0 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 24年 (%) 9.1 10 8 5.6 6 2.8 2.6 4 1.4 1.6 0.8 2 0 -0.1 -2 -1.3 -4 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 25年 24年 26年 25年 25年 44.2 18.6 19.2 30 26年 移輸出-移輸入 (%) 50 (%) 13.9 14 10 3.6 6 2.5 1.5 2 -2 -1.1 -1.5 -6 -3.3 -5.7 -6.8 -10 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 0 -3 民間企業設備 民間住宅 (%) 11.2 15 10 5.8 3.8 2.1 1.2 5 0 -5 -0.7 -0.6 -1.4 -10 -15 -15.6 -20 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 24.2 10.7 10 -10 -4.3 -30 -23.9 -29.8 -38.7 -50 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅰ期 Ⅱ期 24年 26年 25年 26年 図4 平成26年Ⅱ期における北陸の需要項目別寄与度(実質・季節調整済前期比) (%) 2 1 0 -1 -2 -3 0.8 0.7 -0.2 -0.4 -0.3 -1.2 -2.4 民間最終 消費支出 民間住宅 民間企業 設備 民間企業 在庫品増加 政府最終 消費支出 公的総固定 資本形成 移輸出-移輸入 図5 平成25年Ⅲ~26年Ⅱ期における北陸の産業部門別動向(名目・季節調整済対前期比) 10 25年Ⅲ期 (%) 25年Ⅳ期 26年Ⅰ期 26年Ⅱ期 7.6 1.5 5 2.3 3.7 3.8 2.0 0.8 0.1 0 -1.2 -0.6 -5 -1.9 -1.2 -1.3 -0.3 2.3 2.3 0.2 0.6 0.1 1.0 0.4 1.0 1.8 1.2 0.6 0.1 -0.2 -1.0 -2.1 -4.2 -5.3 -1.0 -3.4 -7.0 1.4 0.5 -1.0 -0.5 -4.2 -10 -12.9 -15 農林水産 製造業 建設 電気・ガス 卸・小売 金融・保険 不動産 運輸 通信 サービス 図6 平成26年Ⅱ期における北陸の産業部門別寄与度(名目・季節調整済対前期比) (%) 0.3 0.0 0.1 0.0 0.0 0.1 不動産 運輸 通信 サービス 0.0 -0.0 -0.3 -0.2 -0.2 -0.6 農林水産 -0.4 -0.5 製造業 建設 電気・ガス 卸・小売 金融・保険 ‐3‐ 【各県の動き】 ●富山県の動き 平成 26 年4~6月期における季節調整済県内総生産は、製造業が減少に転じたことや、建設業のマイ ナス幅が拡大したことなどにより、対前期比で実質▲3.7%、名目▲1.9%のマイナス成長となり、四 半期の成長率は全国平均(実質▲1.8%、名目▲0.2%)以上の大きな落ち込みとなった。 ●石川県の動き 平成 26 年4~6月期における季節調整済県内総生産は、製造業のマイナス幅が拡大したことや、建設 業が大幅なマイナスに転じたことなどにより、対前期比で実質▲3.4%、名目▲1.6%のマイナス成長 となり、四半期の成長率は全国平均(実質▲1.8%、名目▲0.2%)以上の大きな落ち込みとなった。 ●福井県の動き 平成 26 年4~6月期における季節調整済県内総生産は、建設業のマイナス幅が拡大したものの、製造 業がプラスに転じたことなどにより、名目では 0.2%のプラスとなった。実質では物価水準が上昇して いることから▲1.3%のマイナスとなったが、落ち込み幅は全国平均(実質▲1.8%)よりも小さなも のとなった。 図7 富山県の四半期成長率(実質・季節調整済) (%) 富山県実質 5 図8 石川県の四半期成長率(実質・季節調整済) (%) 全国実質 石川県実質 全国実質 23年 24年 25年 26年 23年 24年 25年 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅱ期 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅱ期 Ⅰ期 -5 Ⅳ期 -5 Ⅲ期 -3 Ⅱ期 -3 Ⅰ期 -1 Ⅳ期 -1 Ⅲ期 1 Ⅱ期 3 1 Ⅰ期 3 Ⅰ期 5 26年 図9 福井県の四半期成長率(実質・季節調整済) (%) 福井県実質 全国実質 5 3 1 -1 -3 23年 24年 25年 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅱ期 Ⅰ期 Ⅳ期 Ⅲ期 Ⅱ期 Ⅰ期 -5 26年 全国:内閣府「四半期別GDP速報」(平成26年9月8日公表値) 各県:北陸経済研究所推計値 (注)全国は連鎖方式、北陸は固定基準年方式により実質化 (注)今回、①建設総合統計年度報の平成 25 年度確報値の公表、②製造業投入物価指数の基準年の改定(2005→ 2010) 、③企業向けサービス価格指数の基準年の改定(2005→2010) 、④民間企業資本ストック統計の最新値 公表、⑤その他統計数値の遡及改訂――などへの対応、および推計方法の一部見直しにより、おもに建設(住 宅、公共事業を含む) 、運輸、通信、サービス業、民間最終消費支出、民間企業設備などの部門において数値 の遡及改訂を行ったため、 「北陸経済研究 2014.8 月号」における推計結果とは異なる数値となっている。 ‐4‐
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