帝人/PX の生産・販売停止を発表

帝人/PX の生産・販売停止を発表
帝人がパラキシレン(PX)の生産を今年 3 月で停止することを発表した。帝人は 1973 年
に DMT(テレフタル酸ジメチル)の原料として、混合キシレンを購入、PX を製造開始し
たのである。DMT はその後ポリエステル原料の主流となった PTA(テレフタル酸)に主力
の場を譲ることになり、世界的にも能力の縮小が行わることとなった。現在では大部分が
PTA に代わっているが、樹脂用用途の上で DMT の特性を生かした分野があり、世界的に
も外販が限定しているなか、帝人の外販量は徐々に拡大しており、昨年、外販用 DMT の能
力を 5 万トンから⒑万トンに倍増したばかりである。更に 2016 年には更なる増設を予定し
ている。
帝人が PX を製造した背景として、当時繊維産業の中心が、日本から韓国、台湾にシフトす
る中、日本の繊維産業としては脱繊維化を図ることが大きな課題となり、高機能繊維、合
成樹脂への展開を図る為、ハーキュレスから DMT 技術を導入した。しかし当時の日本のリ
ファイナリーでは、リフォメートからキシレンの抽出まではしていたが、PX は製造してい
なかった。そのため帝人が PX の製造を始めたのである。
現在ではポリエステルの主要生産国は中国にシフトしており、大規模な新増設が今も続い
ている。その為、PX の需要も拡大しているが、能力が追い付かず大量の PX を輸入してい
る。更に、周辺諸国は PX の原料である混合キシレンの需要も増加しているが、混合キシレ
ンはリフォメートの確保が必要であり、それはガソリン需要にも関連している。中期的な
見通しでは、混合キシレンの需給がタイト化するとの見方が一般的であり、アジアでの調
達が益々厳しくなるようである。従ってキシレンと PX の格差が縮小することとなれば採算
の悪化は避けられない。
欧米では、PX はリファイナリーから製造することが一般的であるが、日本は特殊要因から、
当初の繊維会社は自社又は関連会社がキシレンから PX を製造している。
ポリエステル・チェーンは、おおもとの原料であるリフォメートから見ると、ガソリン等
石油製品の需給、環境問題、中間原料の需給等様々な変動要因が多い為、今後も大きな変
化が予想されるチェーンである。
世界的に PX はリファイナリーから製造するのが一般的であり、リファイナリーとしても自
社で付加価値をあげる為に PX まで一貫して生産する方向は今後も続く。キシレン購入、
PX を製造するメーカーにとっては厳しい環境が続きそうである。