ショックブレイクアウトが見られた IIb型超新星 SN 2013dfの後期観測

ショックブレイクアウトが見られた
IIb型超新星SN 2013dfの後期観測
川端美穂(広島大学)
川端弘治、高木勝俊(広島大学)
山中雅之(甲南大学)
前田啓一(京都大学)
松本桂、増本一成(大阪教育大学)
服部尭(国立天文台)
上野一誠、森健彰、伊藤亮介、森谷友由希(広島大学)
日本天文学会
2014年秋季年会@山形大学
超新星爆発K06a
IIb型超新星とは
初期のスペクトルで
Ib型 … 水素の吸収線が見えない
IIb型 …
見える
⇒爆発前の星の表面に水素の層があるかどうか
H
He
Fe
Dc
Type IIP
IIb型超新星では親星の外層が剥ぎ取られ、
わずかに水素外層が残っている
H
He
・単独の大質量星?
・連星系?
ロッシュローブオーバーフローなどによる
相互作用
Fe
Dc
親星には、コンパクトなタイプと、広がった
タイプがある。爆発前の質量放出の違いを反映?
He
初期の光度曲線で、ショッククーリングを示す天体と
そうでない天体がある。親星半径に依存?
IIb型超新星の親星の正体は?
恒星進化を知る手がかり
Dc
Fe
Type IIb
Type Ib
IIb型超新星 SN 2013df
初期観測 (2014年 春季年会 K03a)
初期にショッククーリングが捕えられた
⇒親星半径に制限
後期観測
超新星の内部構造がわかる
独立に親星の質量の推定が可能
膨張
光学的に厚い
外層が見える
吸収線が卓越
親星、爆発パラメータの
推定
外層が十分に希薄
内側が見える
広島大学 かなた望遠鏡 + HOWPol
輝線が卓越
~2014年1月22日
爆発機構などの推定
すばる望遠鏡 + FOCAS
2013年12月21日
IIb型超新星 SN 2013df 初期観測
とても明るいショッククーリングが見られるShock luminosityからSN 2013dfの
親星半径の推定を行った
⇒530~1200R ☉
HSTの過去画像の測光観測から得られた親星半径は545±65R ☉ (Van Dyk et al. 2014)
SN 2013dfのスペクトルはIIb型超新星のプロトタイプであるSN 1993Jと類似
爆発エネルギーは同程度か
93J (1d) ●
11dh (-1d) ●
13df (0d) ●
93J ●
11dh ●
13df ●
Days from V-band maximum
6000
8000
Rest Wavelength(Å)
後期光度曲線
2成分モデルのfitting
SN 1993J ー
後期の光度曲線では、SN 2013dfの方が
SN 1993Jよりも減光率はゆるやか
疑似総輻射光度曲線
BVRIバンドの波長域を
全放射の60%が透過と仮定
2成分モデル(Maeda et al. 2003)でフィットさせ、
𝜏𝑖𝑛
外側と内側の密度を推定
𝜏𝑜𝑢𝑡
SN 2013dfの方が内部はやや高密度の傾向?
93J
13df
17~23
24 ~ 35
0.5~0.7
0.3 ~ 0.8
後期スペクトル
初期のスペクトルとは異なり、輝線が卓越。
[O I] 6300,6363に複数の速度を持つ細い輝線が見られる。
SN 2013dfは[O I] 6300,6363が弱く、[Ca II]7291,7324が強い。
[O I]6300,6363
[Ca II]7291,7324
[O I]6300,6363
Ca II IR
Na I
O I 7774
93J 185day
13df 179day
6200
6500
5000
6000
7000
8000
Rest Wavelength(Å)
9000
親星質量の推定
酸素は親星の不燃物質。酸素の質量は親星質量に依存。
一方で、カルシウムは比較的、親星質量の依存性は小さい。
[O I] 6300,6363 と[Ca II] 7291,7324の強度比を取ることで、
親星の質量を推定することができる(Fransson & Chevalier 1989)
⇒[Ca II]/[O I]が大きいほど親星質量は小さい
SN 2013dfの[Ca II]/[O I] 比は179dで~4.76
13df
Valenti et al. 2013
親星質量の推定
酸素は親星の不燃物質。酸素の質量は親星質量に依存。
一方で、カルシウムは比較的、親星質量の依存性は小さい。
[O I] 6300,6363 と[Ca II] 7291,7324の強度比を
取ることで、親星の質量を推定することができる
(Fransson & Chevalier 1989)
93J
[Ca II]/[O I]
0.47± 0.05
13df
4.76 ± 0.01
SN 2013dfの[Ca II]/[O I] 比は179dで~4.76
SN 2005cz(10~12𝑀☉ ; Kawabata et al. 2010)と同程度
⇒SN 2013dfの親星質量は10~12𝑀☉ か
WR星では初期質量は25𝑀☉ 以上必要
⇒大質量の単独星だと考えると、
水素外層を剥ぎ取るためには
SN 2013dfの質量は軽すぎる
⇒SN 2013dfは連星系を成していた
13df
05cz
Valenti et al. 2013
まとめ
初期にとても明るいショッククーリングを示した
IIb型超新星SN 2013dfの後期測光分光観測を行った。
後期観測ではSN 1993Jとの違いが見えてきた。
後期の光度曲線では減光が遅く、
SN 2013dfの方が内部はやや高密度か。
親星質量の指標となる[Ca II]/[O I] 比は、SN 2013dfの方が大きい。
⇒SN 2013dfの親星の方は軽い。
推定されるSN 2013dfの親星の質量は10~12𝑀☉
単独星で水素外層を剥ぎ取るには軽すぎる。
SN 2013dfは連星系を成しており、
その相互作用によって外層を剥ぎ取られたものか