Step up MRI 2014 Ⅳ MRI のこれから─ 近未来への通過点 2.PET/MR ─ 本邦初の臨床用装置の使用経験と 将来展望 久保 均 福島県立医科大学先端臨床研究センター 臨床においては,さまざまなイメージン 設置することが可能であるが,互いに影 維持,PET 電子装置からの電磁放射の グモダリティが活用されている。これはマ 響が出ないように非常に広いスペースが 影響,渦電流や磁化率アーチファクトな ルチモーダルイメージングと呼ばれるが, 必要,かつ PET と MR を同時収集する どが考えられる。また,全体的な問題と 一人の被検者をさまざまなイメージング装 ことができない。②は,MR の静磁場に しては配置空間,温度や振動などの環境, 置で順次検査する場合と,複数のイメー 対応する PET 検出系が必要であり,MR PET データに対しての減弱補正などが ジングモダリティが組み合わされた装置(複 と PET の同時収集は可能であるが,MR 挙げられる。 合機)で一度に検査する場合がある。臨 と PET のコンソールが統合化していない。 PET 検出系で重要な役割を果たす光 床に供与されている複合機には IVR-CT 装 ③は,MR と PET 技術を完全に統合し 電子増倍管は,磁場の影響を大きく受 置,PET/CT 装置あるいは SPECT/CT たものであり,コンソールおよびソフトウ けるため,そのままでは MR と併用でき 装置などがあり,互いの利点を組み合わ エアも一体である。また,MR と PET の なかった。そこで,現装置ではアバラン せた装置として普及している。これらの流 同時収集も可能である。臨床機としては, シェ・フォトダイオードというコンパク れの中で,PET 装置と MR 装置を組み合 ①と③の方式があり,本稿執筆時点で トで,強磁場下でも動作可能な半導体 わせた PET/MR 装置が開発され,臨床で ①の方式は九州大学に,③の方式が本 光素子が採用されている。また,近年で の使用が開始された。本学に本邦初の臨 学に設置されている(図 1)。本稿では, は,シリコンフォトマルを用いた開発も 床用 PET/MR 装置が導入されて,2 年ほ 主に③方式の装置について述べる。 なされており,高い時間分解能を利用し どになろうとしている。この間に得た経験 を基に,本稿では PET/MR の現状と将来 展望について述べてみたい。なお,本デバ イスについては MR-PET や MR/PET な MR と PET を併用する ための技術開発 た画質向上が期待されている。 PET 定量性維持に 関する諸問題 ど,さまざまな呼称があり,現状はいまだ MR と PET の検出系を同位置に配置 一定していない状況であるが,本稿では世 する場合,双方からの影響を排除する必 PET/MR で問題になるのは,減弱補 界的にコンセンサスを得つつあると思われ 要がある。PET に対しては MR の静磁場, 正である。PET/CT では,CT 画像が る PET/MR という呼称で統一する。 RF や傾斜磁場からの電磁気的干渉が考 X 線吸収マップそのものであることを利 えられ,MR に対しては静磁場均一性の 用し,エネルギー変換により補正マップ PET/MR 装置の構造 PET/MR 装置には,① 同じスキャン ルームに PET 装置と MR 装置を置き, それらを 1 つの寝台で共用する,② MR 装置のガントリ内に PET の検出系だけ を挿入する,および③ MR 装置の中に完 全に PET 検出系を組み込んだ統合型, の方式の 3 つが存在する 1,2)。①は,現 在の PET 装置および MR 装置の技術を そのまま使用でき性能を落とすことなく 54 INNERVISION (29・9) 2014 図 1 本学に導入された 同時収集型 PET/MR 装置 「BiographmMR」 (シーメンス社製) 〈0913-8919/14/¥300/ 論文 /JCOPY〉
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