琵琶湖沿岸環境変動の影響調査研究 琵琶湖への栄養塩負荷量と湖中クロロフィル a 等の現存量の長期変化 大山 明彦 1.目 的 琵琶湖では漁獲量の減少とともに水草の異 常繁茂や付着藻類による漁網汚損が顕在化し ている。本研究では、背景にある琵琶湖への 栄養塩負荷量と湖中クロロフィル a 現存量等 の変化を把握することを目的とした。 2.方 法 調査期間は 1984 年 4 月から 2009 年 3 月ま での 25 年間とした。公共用水域水質測定結果 から 26 河川(図 1)での溶存態無機態窒素 (DIN)、リン酸態リン(PO4-P)の L-Q 式を 5 年 間ごとに求めて他の周辺河川に当てはめると ともに、年間平均流量を野洲川と姉川の流量 実測値および推定値、降水量(彦根)、流域面 積と流域推定降水量から求めたのち L-Q 式に 代入して各河川からの年間平均負荷量を推定 した。下水道処理施設からの負荷量は沿湖 5 施設、降水による負荷量は沿湖 2 施設での実 測値を用いた。湖中クロロフィル a、DIN、PO4-P 年間平均現存量は、公共用水域水質測定結果 を用いて南湖は 1 層、北湖は水深 20m を境に 上下2層に分けて見積った。 PO4-P 負荷量とクロロフィル a 現存量との関 係は明瞭でなかったが、この一因として、農 業排水路や中小河川は公共用水域水質測定調 査ではフォローされておらず、その分、北湖 では河川由来の栄養塩負荷量が過小評価にな っている可能性が考えられた。それらが加味 される北湖での原単位法による全リン負荷量 (図 4)とクロロフィル a 現存量との関係は 明瞭であり、北湖南湖ともにリン負荷量の減 少によってクロロフィル a 現存量が減少して いるものと考えられた。 3.結 果 琵琶湖北湖および南湖それぞれへの DIN 年 間平均負荷量は 1984-1988 年度に 1,611t と 362t、1989-1993 年度に 2,166t と 518t、 1994-1998 年度に 2,373t と 621t、1999-2003 年度に 2,183t と 683t、2004-2008 年度には 2,370t と 673t、同様に PO4-P 年間平均負荷量 は 45t と 16t、49t と 15t、52t と 13t、47t と 10t、48t と 8t と推定された(図 2)。また 湖中クロロフィル a 年間平均現存量は 75t と 2.0t、80t と 2.2t、77t と 1.8t、73t と 1.4t、 59t と 1.2t と推定された(図 3)。北湖では 本報告は環境省の環境研究総合推進費(D-1004)により実施した。 本結果は平成 25 年度日本水産学会春季大会で発表した。 図1 調査対象河川(太線部) 琵琶湖沿岸環境変動の影響調査研究 3000 60 年間平均負荷量 DIN 北湖 年間平均負荷量 PO 4 -P 南湖 2500 2373 (t) (t) 49 48 47 45 40 1611 南湖 52 2370 2183 2166 2000 1500 北湖 50 30 1000 20 500 683 621 518 16 673 15 10 13 10 8 362 0 0 1984-1988 1989-1993 1994-1998 1999-2003 2004-2008 1984-1988 1989-1993 (年度) 図2 2004-2008 90 年間平均現存量 北湖C hl-a 年間平均現存量 南湖Chl-a 深層 表層 80 80 70 70 33.9 33.1 60 36.2 36.1 50 24.2 40 50 (t) 60 (t) 1999-2003 琵琶湖への溶存態無機窒素(DIN)およびリン酸態リン(PO4-P)年間平均負荷量の推移 90 40 30 30 45.7 41.8 20 40.3 37.2 35.2 20 10 10 0 0 1984-1988 1989-1993 1994-1998 (年度) 8000 1999-2003 2004-2008 1.4 1.2 1984-1988 1989-1993 1994-1998 (年度) 1999-2003 2004-2008 390.9 5523.9 388.7 383.3 300 5084.5 317.9 (t) 5021.7 北湖 南湖 400 6462.0 5000 4000 268.3 200 3000 2000 1.8 年間負荷量 TP 北湖 南湖 7000 6594.5 2.2 500 年間負荷量 TN 6000 6518.9 2.0 湖内クロロフィル a 年間平均現存量の推移 図3 (t) 1994-1998 (年度) 1284.1 1282.2 1387.0 1282.2 1146.1 1181.9 100 98.9 86.9 79.6 59.5 1000 45.3 247.5 40.5 0 0 1985 1990 1995 2000 2005 2010 (年度) 図4 1985 1990 1995 2000 2005 (年度) 原単位法による琵琶湖への全窒素および全リン負荷量推定値の推移 (滋賀県環境審議会水環境部会資料より) 本報告は環境省の環境研究総合推進費(D-1004)により実施した。 本結果は平成 25 年度日本水産学会春季大会で発表した。 2010
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