2)資源管理型漁業対象種

研
研
究
究
分
課
題
野
Ⅱ-1水産業の経営安定研究の推進
名
(2)本県主要水産物のマーケティングに関する研究 2)資源管理対象魚種
予
算
区
分
試験研究実施年度・研究期間
担
当
部 名
企画指導部
交付金(資源回復計画作成推進事業)
平成 16 年度~平成 19 年度
(主)宮田勉
(副)大野宣和
協 力 ・ 分 担 関 係
<目的>
漁獲体長規制によるヒラメ資源管理の成功事例では、体長と価格の関係が明確となり、漁業生産者の合意形
成がスムーズに図れた。
そこで、本調査は、資源管理推進対象種である魚介類の流通調査を実施することによって、流通・価格形成
構造を明らかにし、これらの構造の側面から資源管理のあり方を提案する。
資源管理推進対象種であるが、16 年度~17 年度の間、ミズダコを中心に研究を展開し、ある程度の成果が得
られたことから、今年度から主対象魚種をケガニに変更し、研究を行った。
<試験研究方法>
データは岩手県内産地市場、産地仲買、東京都中央卸売市場、大阪市中央卸売市場の聞き取り調査などに因
っている。その他、統計資料等も収集し、分析に供した。
<結果の概要・要約>
・国内の主要ケガニ産地である北海道産ケガニの需給動向であるが、明確ではない(図1)
。
・この関係を月別で検討した(図2)
。漁獲量の多い3月~7月において、やはり、3月を除けば、漁獲量と
価格の関係がほとんど無いことが分かる。つまり、国産ケガニ価格の形成要因は、国内産ケガニの漁獲量
による影響があまりないと考えられた。
・そこで、輸入データも含む東京都中央卸売市場の需給動向を概観すると、その関係がある程度あることが
分かった(図3)
。
・ケガニ価格に影響を及ぼすカニ類について、検討した結果(表1)
、ケガニはカニ類全体、つまりカニ類の
平均価格との相関(r=0.77)があることが分かった。
・岩手県産ケガニの価格動向は、2001 年以降、僅かであるが、下方にシフトしており、その低位のまま推移
している(図4)
。
・岩手県産ケガニの重量とサイズの関係であるが、漁獲規制サイズである7cm であると 200g/尾、8cm で
あると 300g/尾であることが分かる(図5)
・200g/尾は 1,000 円/kg を下回るが、300g/尾は 200g/尾の約2倍の価格である。また、300g/尾を上回るサ
イズになると価格が急上昇することが分かった(図6)
。
・そして、釜石魚市場において、300g/尾を上回る銘柄は、1番~4番であり、300g/尾~200g/尾は5番~8
番となっている(図7)
。
・その1番~4番の上場量であるが、1、2、3月ともに、5番~10 番の上場量をかなり下回っている(図8)。
・以上をまとめると、ケガニの価格形成要因はカニ類全般の平均価格が強く影響しており、つま
り、ケガニ国内生産量の多寡によって、単純に価格が決まる構造ではない。ただし、今後は、ロシ
ア政府による活カニ違法輸出規制が強まることが想定されることから、この限りではない。
・8cm(300g/尾)を上回ると、価格が逓増することが明らかとなった。しかし、そのサイズ(4
番以下)のケガニ漁獲量は非常に少なく、資源管理の方向性を考えると、サイズ規制による管
理は現実的でないといえよう。
・上述しなかったが、ケガニはカニ味噌の多寡が差別化要素であることから、その量が少ない時
期、漁場の漁獲規制などの管理方策は考えられ、この研究とともにブランド化戦略の研究(小型
-100-
だがカニ味噌が多いというプロモーション戦略)が行われれば、資源管理と価格向上が期待できる。
<主要成果の具体的なデータ>
(円/kg)
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
0
200
400
600
800
1,000
(トン)
図1 北海道のケガニ漁獲量と価格の関係
資料:北海道水産現勢(マリンネット)(1991 年1月~2004 年 12 月)
(円/kg)
(円/kg)
【1月】
7,000
7,000
6,000
6,000
5,000
5,000
4,000
4,000
3,000
3,000
2,000
2,000
(円/kg)
【2月】
【3月】
5,000
4,000
y = -1332Ln(x) + 8973
R2 = 0.1753
1,000
0
0
50
100
150
3,000
2,000
1,000
200
y = -2302.7Ln(x) + 14167
R2 = 0.5647
0
(円/kg)
50
100
150
200
250
200
(円/kg)
【5月】
400
600
(トン)
【6月】
4,000
5,000
4,000
3,000
0
(トン)
(円/kg)
【4月】
y = -1053.9Ln(x) + 8593.8
R2 = 0.4962
0
0
(トン)
4,000
1,000
3,000
3,000
2,000
2,000
2,000
1,000
y = -587.68Ln(x) + 6494
2
R = 0.1862
0
1,000
1,000
y = -98.827Ln(x) + 3494.6
2
R = 0.0216
y = 142.88Ln(x) + 1470.2
R2 = 0.0029
0
0
200
400
600
800
1000
0
200
(トン)
400
600
(トン)
-101-
0
0
200
400
600
(トン)
(円/kg)
(円/kg)
【7月】
(円/kg)
【8月】
5,000
5,000
5,000
4,000
4,000
4,000
3,000
3,000
3,000
2,000
2,000
2,000
1,000
1,000
y = -701.48Ln(x) + 6648.5
R2 = 0.0853
0
0
200
(円/kg)
400
600
50
100
150
200
(トン)
0
50
100
150
(トン)
(円/kg)
【11月】
5,000
【12月】
6,000
5,000
4,000
3,000
y = 310.36Ln(x) + 1464.1
R2 = 0.1717
0
0
(円/kg)
【10月】
4,000
1,000
y = -978.65Ln(x) + 6901.6
R2 = 0.319
0
800
(トン)
【9月】
4,000
3,000
3,000
2,000
2,000
2,000
1,000
y = 101.95Ln(x) + 2510.9
R2 = 0.0352
1,000
y = -104.14Ln(x) + 3467.3
R2 = 0.0346
1,000
0
0
0
20
40
60
80
(トン)
y = -1121.8Ln(x) + 9023
R2 = 0.5684
0
0
50
100
150
200
(トン)
0
200
図2 北海道産ケガニの月別漁獲量と価格の関係
資料:北海道水産現勢(マリンネット)(1991 年1月~2004 年 12 月)
(円/kg)
7,000
6,000
y = -1496.3Ln(x) + 18849
R2 = 0.5306
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
0
50
100
150
図3 東京都中央卸売市場の月別ケガニ需給動向
資料:東京都中央卸売市場年報を利用して作成。
観測データは 2002 年1月~2006 年 11 月。
-102-
200
(トン)
400
600
(トン)
表1 東京都中央卸売市場に上場されたカニ類価格の相関関数
資料:東京都中央卸売市場年報を利用して作成。
観測データは 2002 年1月~2006 年 11 月。
ワタリガニ
ズワイガニ
ケガニ
その他
全体
ワタリガニ
1
-0.09341
-0.21791
-0.24972
-0.10096
(円/kg)
ズワイガニ
ケガニ
1
0.355157
1
0.413553 0.483821
0.774355 0.748165
平均値(円)
その他
全体
1
0.744306
1
(トン)
数量(kg)
2,500
45
40
2,000
35
30
1,500
25
20
1,000
15
10
500
5
0
0
2006.3
2006.2
2006.1
2005.3
2005.2
2005.1
2004.3
2004.2
2004.1
2003.3
2003.2
2003.1
2002.3
2002.2
2002.1
2001.3
2001.2
2001.1
2000.3
2000.2
2000.1
1999.3
1999.2
1999.1
1998.3
1998.2
1998.1
1997.3
1997.2
1997.1
1996.3
1996.2
1996.1
1995.3
1995.2
1995.1
図4 岩手県産ケガニの価格動向
資料:フィッシャリーネットいわて
(mm)
100
90
80
70
y = 26.304Ln(x) - 68.743
R2 = 0.9974
60
50
40
30
20
10
0
0
100
200
300
600
(g/尾)
図5 岩手県産ケガニの重量・サイズの関係(釜石魚市場)
-103-
資料:岩手県水産技術センター・漁業資源部
―103―
400
500
(円/kg)
7,000
y = 183.02e 0.0073x
R2 = 0.8915
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
0
100
200
300
400
500
600
(g/尾)
図6 岩手県産ケガニの重量・価格の関係(釜石魚市場)
資料:岩手県水産技術センター・漁業資源部
(g/尾)
600
500
400
300
y = -34.857x + 464.85
R2 = 0.9012
200
100
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
図7 岩手県産ケガニの銘柄・重量の関係(釜石魚市場)
資料:岩手県水産技術センター・漁業資源部
-104-
9
(銘柄)
(kg)
600
300g/尾、8cmを超えるケガニの漁獲量は多くない
500
400
300
200
100
0
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3
(月)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (銘柄)
図8 釜石魚市場における月別・銘柄別上場量および価格動向
資料:2006年釜石魚市場原票より作成
<問題点>
・2001年以降、岩手県産ケガニの価格が低下している要因の解明が必要である。
・資源管理を実行するためには、カニ味噌(強みを活かす)を核とした、生態研究、プロモーシ
ョン研究が必要である。
<結果の発表・活用状況等>
口頭発表
1 宮田勉「アイナメの漁業実態及び流通実態」(2004.9、岩手県資源管理型漁業沿岸漁業者協
議会)
2
3
宮田勉「アイナメ活魚化の必要性」(2004.12、大船渡市漁協資源管理勉強会赤崎・末崎地区)
宮田勉「ミズダコとケガニの価格動向」(2005.2、資源管理型漁業沿岸漁業者地区協議会)
他3地域で発表
4 宮田勉「ミズダコとケガニの価格動向」(2005.2、県資源管理漁業者区協議会)
5 宮田勉「ミズダコ・タコ類の価格と量」(2005.9、資源管理型漁業沿岸漁業者地区協議会)
6 宮田勉「タコ類価格動向」(2005.12、岩手県資源管理型漁業沿岸漁業者協議会)
7 宮田勉「世界のタコ需給動向と平成18年のアイナメ価格形成要因」(2006.9、資源管理型漁
業沿岸漁業者地区協議会)
8 宮田勉「世界のタコ需給動向と平成18年のアイナメ価格形成要因」(2006.9、県資源管理漁
業者区協議会)
9 宮田勉「ケガニの価格動向」(2007.2、資源管理型漁業沿岸漁業者地区協議会)
10 宮田勉「ケガニの価格動向」(2007.2、県資源管理漁業者区協議会)
論文・報告書等
平成16年度多元的資源管理型漁業推進事業報告書
平成17年度多元的資源管理型漁業推進事業報告書
平成18年度資源回復計画作成推進事業報告書
-105-