3. 公社債関係の制度

3. 公社債関係の制度
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3.1. 公社債の登録制度
3.1.1. はじめに
国債については「国債に関する法律」、一般公社債については「社債登録法」において所
有者の権利内容を登録簿に記載することによって所有者と発行者との間の債権債務関係を
証明することができるとしており(登録制度)、この場合、登録された公社債券について
は本券は発行されない(社登第 4 条、国則第 28 条)。
更に国債の場合には、登録制度の枠組みの中で、登録事務の効率化・簡素化を目的とし、
取引当事者の寄託した口座間の振替記帳によって管理する国債振替制度が採用されている。
3.1.2. 登録制度の概要
(1) 登録機関
公社債の登録とは、公社債権者の所有する公社債券の名称(銘柄・回号)、額面金額、記
号番号、公社債権者の住所、氏名、印鑑、元利金支払場所などを、法規に定められている
「登録簿」に記載することである。登録簿への登録事務を取扱うものを「登録機関」とい
う。
* 国債の登録機関 … 日本銀行(国法第 1 条)
* 一般公社債の登録機関 … 勅令で定めた法人(国法第 2 条)
一般公社債の登録機関は、公社債の銘柄や回号によって特定され、代表受託銀行がなるの
が通例である。
(2) 登録対象銘柄
① 国債
国債の登録には、甲種登録と乙種登録とがあるが(国則第 21 条、甲種は無記名債の登
録、乙種は記名国債の登録)、現在では乙種は大蔵省で廃止されている。
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② 一般公社債
日本国内で発行され、かつ日本国内で元利払いの行われる、次の公社債が対象となる。
社債、地方債、特別の法令により設立された法人で、かつ会社でないものが発行する
債券、命令(社則第 2 条)で定める外国または外国法人が発行する債券(例、国際復
興開発銀行円貨建債券)。
(3) 主な登録の種類
主な登録方式としては次の 4 通りがある。一般公社債と国債では法律が異なるため、登録
請求手続きの名称も異なっている。
登録請求の内容
一般公社債
国債
応募者登録
当初登録
既発債の本券を登録する方式
所有者登録
登録
登録債から本券発行に切り換える方式
抹消登録
登録除却
登録債のまま他へ売買譲渡し
移転登録
登録変更
新発債を応募時点から登録しての本券
の発行をしない方式
登録名義人を変更する方式
(4) 登録制度のメリット
① 発行体から見たメリット
a) 債券の発行事務が本券発行より簡素化する
b) 元利金支払事務が簡略化される。
② 公社債権者から見たメリット
a) 債券の保管事務が容易である
b) 元利金の受領が確実に行われる
c) 紛失、盗難などの事故防止になる
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3.1.3. 登録手続きの停止期間
(1) 停止期間
登録機関には元利金の受領者(登録名義人)を確定するため、登録手続きの受付を停止し、
登録簿を閉鎖する期間が設けられている。
一般公社債:元利払いの期日前 3 週間(暦日)停止(社令第 4 条)。
国債:元利払いの期日前 7 営業日間停止。
(2)停止期間の日数の数え方
登録請求の最終期日は、登録の売買では登録名義人の変更などの実務上の理由からも、正
確に理解しておく必要がある。
一般公社債:一般登録債の場合は、元利金支払日が休祭日のときは、前営業日に繰り
上がるのが通例である。(繰り下がる例外の銘柄もある)。他方、停止期間の日数は
休祭日に関係なく数える(国債は営業日のみ)。
一般公社債の場合
日
月
6
13
20
27
7
14
21
28
○○年 2月
火 水 木
1
2
3
8
9
10
15 16 17
22 23 24
金
4
11
18
25
土
5
12
19
26
日
6
13
20
27
○○年 3月
火 水 木 金
1
2
3
4
7
8
9
10 11
14 15 16 17 18
(21) 22 23 24 25
28 29 30 31
(3/21は祭日)
月
<例 1>
元利金支払日が 3/20 の場合の元利金支払日は 3/18。
停止期間は 2/27∼3/18 で、登録請求の最終期日は 2/25
<例 2>
元利金支払日が 3/25 の場合の元利金支払日は 3/25
停止期間は 3/4∼3/25 で、登録請求の最終期日は 3/3
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土
5
12
19
26
国債の場合
* 国債の場合は、元利金支払日が銀行休日のときは翌営業日に繰り下がる。
日
月
2
9
16
23
30
3
10
17
24
31
○○年10月
火 水 木
4
11
18
25
5
12
19
26
6
13
20
27
金
7
14
21
28
土
1
8
15
22
29
日
6
13
20
27
○○年11月
火 水 木 金
1
2
(3) 4
7
8
9
10 11
14 15 16 17 18
(21) 22 (23) 24 25
28 29 30
(11/3,11/23は祭日)
月
<例 1>元利金支払日が 11/20 の場合の元利金支払日は 11/21
登録停止期間は 11/10∼11/18 で登録請求の最終期日は 11/9
3.1.4. 登録の種類と添付書類
一般公社債(書面による請求の場合)
登録の種類
必要書類
応募者登録
応募者登録請求書
所有者登録
所有者登録請求書
抹消登録
抹消登録請求書
移転登録
移転登録請求書
承諾書方式の時、登録請求承諾書)
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土
5
12
19
26
3.2. JB ネット決済と書面決済
3.2.1. はじめに
JGB 同様、債券(済証)と金の受け渡しを同日に行う目的で作られた。以前は基本的に決
済日に済証が実際に受け渡されることは半分くらいで残りは預り証を売り手が発行し、買
い手はそれをもって済証の代わりとしていた。その後、済証が届いたらこれと交換してい
た。長いもので半年も済証が遅れることもあった。これは済証を一つずつまわさないとい
けないことや、分割に時間がかかったりするからである。しかし、預り書は済証と同じ効
力があるためある程度の物後れは許されていた。そこで JB ネットというシステムが出来上
がったが、問題点が多い。すべての投資家とすべての債券が入っていないという点、済証
はなくなるが券面と記番号は残るという点が残る。つまり、これにより JB ネットと今まで
どおりの受け渡しが混在する。しかも JB ネット入力では受渡日より前までにしなければな
らないが済証はほとんどが遅れる。
JB ネットが始まったが、券面と記番号をあわせないと相殺はできない。
これ以外にも JB ネットの不備は多く気をつけることが多くある。
要約すると、売買をする上で売買の前に確認することは以下の通り。
ネットの銘柄かどうか
物が誰の手元にあるか
ネットでない場合いつ物が渡せるか
レポに出しているかどうか (レポも売買と同様物をまわすため)
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3.2.2. 書面決済
JB ネットが出来る前はすべて社債登録制度により管理されていた。
通常売買が起こると
売り手 → 移転登録承諾書、登録済証
買い手 → 移転登録請求書
を数多くある一つに決まっていない登録機関に持ち込む。そこで移転登録し(名義を買い
手に換え)買い手が登録済証、または預り証をもらう。物遅れというのは、この済証がと
どかず預り証で決済することを言う。
この一連の動作をそれぞれ行う。同日決済で 5 回売買があればこれを 5 回繰り返す。この
管理方法にはいろいろ問題があり、見直しをという声が多かった。
→ 書面請求による決済という
問題点:
① 売買が重なったり、売り手買い手の所在地が遠かったりすると物遅れとなり、実際に登
録済証がすぐに手に入らない。半年も遅れるケースもあり、一週間は当たり前だった。
② 上記のようなことが慣習となっていたため、物と金が同時に決済できない。
③ 登録機関が全国に散らばっており、統一されていない。東京同士で売買がおきても地方
の登録機関に持ち込んだりしなければならない。
④ 決済が 10 日おき、一ヶ月に 3 回しかない。約定日と決済日が遠いし一日に多くの決済が
集中する。
⑤ 済証という紙きれの決済。
以上の問題点を改善するために新しい制度が導入された。JB ネットとローリング決済であ
る。
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3.2.3. JB ネット決済
オンラインですべての手続きができる。流れは次の通り。
売買が起こる
MAC コードの交換
JB ネット端末に買売の入力
決済日に決済
登録済通知書を郵送または窓口よりもらう
→ オンライン請求による決済
問題点:
① すべての銘柄が JB ネット対応ではない。JB ネット対応銘柄以外は、今までどおり書面
請求で決済することとなる。
② すべての人が加入していない。加入は自由である。
③ 券面、記番号がなくならないため基本的に国債と同じように、同日でまとめて多くの売
買を決済できない。一つずつ売買を追って決済する。
④ JB ネットの入力時間と書面請求の業務時間が違うため決済が不可能な場合がある。
オンライン請求入力 …
書面請求
…
通常
約定日∼決済日の二日前
9:00~15:00
特別
決済日の前日
9:00~13:00
当日のみ
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3.2.4. 書面決済と JB ネット決済が重なる場合の流れ。
(1) 決済が難しいパターン
①
A社
→
B社
書面請求
→
C社
オンライン請求
前にも述べたように書面での請求は当日のみ。オンライン請求の最終入力時間は、当日
9:00~11:00、つまり書面請求が 11:00 までにすべて終了していないといけない。
②
A社
→
B社
→
オンライン請求
C社
書面請求
オンライン請求での処理は、当日 15:00 時点であるため書面請求はできず、次の日になっ
てしまう。
(2) 売買での注意点
JB ネット外の銘柄の場合は名義が今どこにあるか必ず確認する。レポに出していても借
り手がどこかに売っていると下記のようになってしまうため不可能である。
レポ
売り手
⇔
売却
A社
→
B社
↓売却
買い手
マーケット
売り手が A 社にレポを出していて A 社がそれを売却している場合 A 社は同じ受け渡しで
マーケットから債券を調達しなければならない。この場合間に合わないことがある。
レポも出していなくて名義が売り手のものになっている場合しか買い取れない。名義を確
認したらすぐに登録請求承諾書をもらう。これで問題ない。
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3.2.5. マーケット
JB ネット銘柄、書面銘柄、JB ネットに登録している投資家、そうではない投資家、この
4 つが一つのマーケットで売買している。当然何かしらの問題が起こりやすい。そのため、
JB ネット銘柄のほうが人気が高く、書面よりも流動性が高くなっている。
97 年 12 月 JB ネットが始まった当初は、地方債マーケットが特に流動性が落ちネット銘柄
と書面銘柄で大きなスプレッドがついた。もともとこのシステムの前は、物が届いていな
くても(預り証の状態)で売買できたが、JB ネットが始まってから書面のものも物遅れを
なくすよう、手元に物が届いてからしか次に売れなくなったからだ。99 年にはネット銘柄
も増え流動性が増してきた。しかし、依然満期一括でないものなどはネットにのせること
ができないため、現在でもネットと書面二つの方法で受け渡しをしているし、また、受渡
日も 2 つある。
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3.3. 券面、記番号
JGB 以外の国内債にはすべて券面と記番号が付いている。言い換えれば、同じ債券を同額
買っても券面と番号が違う。同日決済で多くの売買が重なると JGB の様に一括相殺せず、
ひとつずつまわす必要がある。また、10 億のものを勝手に細かく、例えば 5.46 億と 4.54 億
などに分けられない。必ず券種を確認してから分割しなくてはならない。間違って分割し
て売買するとそこから先はストップし、JB ネット(前述)も止まり、決済日を過ぎても受け
渡しができず、フェイルする。国内円債はユーロ円債と違いペナルティーを払えば良いと
いう慣習はなく、フェイルしたらすべてが終わる。当社の信用が落ち、顧客との関係もな
くなる。しかし怖がる必要はなく、この辺は私が管理する。
<例>
書面決済で同日決済の以下のトレードがおきた場合矢印は物の流れ、つまり名義の流れ
A社
→
当社
→
C社
→
D社
物が A 社 → 当社 → C 社と同日決済で動いた場合、書面決済は証書を手で持って運ぶ。A
社,C 社,D 社が東京から距離がある場合、一日でものがうまく D 社までいかない。その
結果、物後れとなりフェイルする。
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3.4. 受入代理事務手数料
(取扱券面金額 100 円につき、円)
国債 地方債 政保債 事業債 転換
社債
WB 利付 割引 円建 NTT
金融債 金融債 外債
利金取扱
手数料
0.18
0.20
0.20
0.60
0.60
0.60
-
-
0.20
0.30
元金取扱
手数料
0.09
0.10
0.10
0.10
0.30
0.30
-
0.07
0.10
0.20
(注 1)事業債、転換社債、新株引受権付社債の手数料率は、たびたび引き下げられて
いる。また、1994 年 6 月以降は個別銘柄ごとに代理事務手数料が決まっており、現
在では事業債のほとんどの代理事務手数料は、利金 20 銭、元金 10 銭となっている。
ただし、元金の取扱い証券業者に支払われる手数料の上限は、一社当り 100 万円と
決められている。
(注 2)円貨外債(サムライ債)は、1995 年 8 月発行の韓国電力公社より引き下げられ、
利金 20 銭、元金 10 銭となった。
(注 3)割引国債(割引短期国債及び政府短期証券を除く)の元金取扱い手数料は 9 銭。
割引短期国債及び政府短期証券の元金取扱い手数料は 0.009 銭。
(注 4)登録国債は同一銘柄・同一名義人ごとに、また振決国債は口座区分ごとに、元
利金は 500 万円を上限(つまり償還額面 55 億 555 万円を上限)とすることになって
いる。 ただし、振決国債の割引短期国債および政府短期証券の顧客元金手数料は
15,000 を上限(償還額面 166 億 6666 万円が上限)とすることになっている。
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