独立行政法人国際交流基金の 平成 25 年度の業務実績に関する総合評価 Ⅰ 業務実績全体の評価 1 全般的評価 平成25年度は、第三期の中期目標期間(平成28年度までの5年間)の2 年目であり、中期計画に掲げた事業の進捗状況、業務の効率化の状況、また、 予め定めた平成25年度業務実績評価のポイント等を中心に評価を実施した。 平成25年度の独立行政法人国際交流基金(以下、「基金」)の業務実績全体 を総括すれば、主要な中期計画上の数値目標の達成を含む効率化と効果的な事 業実施、外務省独立行政法人評価委員会及び政策評価・独立行政法人評価委員 会による平成24年度業務実績評価の指摘事項を踏まえた改善努力等、総じて 順調な取組が行われたと評価できる。 平成25年度の業務実績の評価において、特に重要な点を以下の(1)~(4) に挙げる。項目別評価の具体的評価結果は、後述「Ⅱ 項目別評価の総括」及び別 紙の項目別評価シートの通りである。 (1) 文化・芸術交流の促進 文化・芸術交流の促進については、複合的・総合的に事業を実施することで 相乗効果を生み、多様な日本の文化及び芸術を多面的に紹介している。また、 双方向型、共同作業型の事業を積極的に行っており、他機関との連携や参加者 の満足度の観点からも評価できる。 特に、重要性が増す東南アジアについては、日 ASEAN 友好協力40周年の機 会を生かして、人材育成、ネットワークや信頼関係の発展に資する事業が展開 されており、これらは平成26年度より本格化するアジアセンターの事業展開 にもつながるものと期待する。 また、厳しい環境の中で着実に実施している日中交流センター事業について も、高校生招へい事業の卒業生の4割が留学のために再来日を果たすなど、日 中間の相互理解の深化と親近感の醸成につながっていることが評価できる。 (2)海外における日本語教育の拡充 JF 日本語スタンダード準拠教材「まるごと 日本のことばと文化」の開発・ 販売、海外日本語講座(JF 講座)及び自習用ウェブサイトの運営など、JF 日 1 本語教育スタンダードを活用した日本語教育の基盤強化が行われている。 JF 講座は、30か所目が開設され、受講者数は前年度比27.6%増とな った。上記教材「まるごと」の活用の効果もあり、受講者の他、講座の共催・ 連携機関からも高い評価を得ている。また、JF にほんごネットワーク(通称: さくらネットワーク)は、45か国・2地域の126機関に達し、教師研修、 教師会議、教材制作等、多様な事業を実施または支援することにより、効果的 な日本語教育の推進につながっている。 (3)海外日本研究・知的交流の促進 日本研究の促進については、日本研究機関支援、フェローシップ事業及びフ ォーラム等の開催支援によるネットワーク形成のいずれについても、支援対象 機関や参加者から高い満足を得ており、教員ポストの拡充や日本専攻部門の開 設により学生増の成果につながる事例も確認されるなど、着実な成果が認めら れる。 知的交流の促進については、研究者から草の根まで多様なレベルにおける交 流や対話の促進に取り組んでいる。中でも、外交関係が困難な中での中国、韓 国との知的交流・対話事業や、年間 2000 名を超える日米青少年交流事業 KAKEHASHI プロジェクト(受託事業)の実施とその成果は次世代交流の拡大等 に資するものであり、高く評価できる。 (4)内部統制の充実・強化 内部統制については、内部監査、監事監査、会計監査人監査の結果、特に問 題のある指摘事項がないことが確認できた。また、日常業務・職務リスクの洗 い出しを行うなどリスクの把握が行われており、それらのリスクが組織の運営 に支障を来たすことのないよう、監事による監査室に対する適切な指導も行わ れている点は評価できるが、今後も内部統制の強化への取組を継続する必要が ある。 2 今後の業務において特に考慮すべき事項 今般の業務実績評価の結果、基金が今後取り組むべきと考えられる措置及び 本委員会として来年度以降の評価のために注視する点の主なものは、以下の通 りである。 (1)事業実施上の留意点 (ア)海外の日本研究の促進については、実施事業件数、実施国数、来場者数、 参加者数などが全体として前年度から減少している。海外の日本研究者や 2 教育機関への支援は、日本学専攻の新設・拡充につながるなど、知日派や 親日派の長期的な維持・拡大のために重要であり、更なる拡充が望まれる。 (イ)国内外の国際文化交流の動向把握のための調査・研究の実施については、 調査の実施そのものに留まらず、その結果を組織の戦略・方針・事業など にどう活用するかが肝要である。 (2)業務運営の効率化に関する留意点 (ア)一般管理費及び運営費交付金を充当する業務経費の削減については、経 費削減を進めるあまり、事業の縮小や質の低下を招くおそれがある。特に 一般管理費はこれ以上の削減が厳しい状況にあり、本目標の設定により、 組織の本来の目的が損なわれる懸念がある。 (イ)随意契約の見直しについては、競争性のない随意契約の競争性のある契 約への移行や、契約件数の多い業種別の状況把握・監視を行うなど、全体 としては努力が認められるが、随意契約率が高い傾向にあることも事実で あり、今後も「真に随意契約によらざるを得ないもの」も含めて随意契約 の削減に向けた努力は継続する必要がある。 (ウ)内部統制の関連では、平成24年度会計検査院の決算検査報告指摘事項 について、部内の意思決定についてのチェックが十分に働いていたのかと いう点で内部統制上の疑念が生じた。その後、再発防止のための改善策を 策定し、情報システム委員会を開催したり、理事会での審議事項としたり するなどの対応がとられている。これらの改善策が形骸化しないよう、引 き続き努力が必要である。 Ⅱ 項目別評価の総括 1 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達 成するため取るべき措置 ●文化・芸術交流分野については、上記Ⅰ1(1)に記載の通り。 ●海外における日本語教育、学習への支援の分野については、上記Ⅰ1(2) に記載の通り。 ●海外日本研究・知的交流の促進については、上記Ⅰ2(1)(ア)に記載の 通り。 ●東日本大震災からの復興に資する事業の実施については、今後も継続的な実 施が期待されるが、時間の経過を踏まえ、何を核とし、何を目標として今後 3 の発信や共有を行っていくのか、再検討が期待される。 ●国際文化交流への理解及び参画の促進については、国内外で国際交流基金の 活動やその成果が十分に知られていない面もあるため、適切な目標設定も含 め国際文化交流への理解促進に向けてより一層の取組が期待される。 2 業務運営の効率化 ●経費の効率化については、上記Ⅰ1(4)及び上記Ⅰ2(2) (ア)に記載 の通り。 ●契約の適正化の推進については、上記Ⅰ2(2)(イ)に記載の通り。 ●内部統制の充実・強化については、上記Ⅰ2(2)(ウ)に記載の通り。 3 予算、収支計画及び資金計画 計画通り順調である。 4 短期借入金の限度額 実績がないため評価対象外とした。 5 重要な財産の処分 保有宿舎については中期計画に則って7戸を譲渡し,譲渡収入を国庫返納し た。 6 剰余金 実績がないため評価対象外とした。 7 その他 計画通り順調である。 (了) 4
© Copyright 2024 ExpyDoc