国立科博専報,(5),1972年11月30日 目’ 高夕張地域の白聖紀および 第三紀魚類化石について 上卿輝彌* UYENo,Teruya*:OnCretaceousandTertialyFishRemainsfromthe HidakaandYnbariDistfictsinHokkaido,Japan 1971年の国立科学博物館による北海道の日高・夕張地域自然史科学的総合調査の結果,白塞紀ならびに第 三紀の地層から産lllした種々の11次`|ザ魚類の歯とIZlI骨魚類の骨割P鱗などの化石を調査できたので,周辺地域の もの,既報のものも含めてここに報告する 今回の調査にあたって終始ご協力を頂いた国立科学博物館の小畠郁生・長谷川善和両博士に感謝する.北 海道三笠市化石研究同好会会長村木辰雄氏ならびに村本喜久雄氏,北海道炭砿汽船株式会社地質調査所の手 島淳i#上,八木孝柵氏,谷口久能氏,藤島泰隆氏ならびに1]高111J北産木材工業株式会社の林勝氏にはご所蔵 の標本を調査研究させて頂き,産地に関する資#1を提供して頂いた.ここに深く感謝の意を表する次第であ る. ClassCHONDRICurjiYES軟骨魚綱 SubclassELAsMoBRANcnII板鯛亜綱 OrderHYBoDoNTIFoRMEs FamilyPtychodontidae oPtychoduslatissimu…As扇Iz PzycA0“は白壁組のみから産出する原始的な板鯛類であって貝類を砕くに適した歯を持っている.この 属はこれまでにヨーロッパ,アジア,北アメリカ,アフリカから報告されており(RonmR,1966),イギリス の上部白塞系のEnglishChalkからは6種も記録されている(WooDwARD,1912).今回調査したものは日 高111J附近において林勝氏が孫架したもの2個(I1X1版6,,E)ならびに夕張市南部菊水町夕張川河岸で千葉 誠氏採集のもの6個である.いずれも鋭い上縁をもった隆起を数列ずつそなえており,大きな歯はその数が 9列である.咬面はほとんど水平であり中央が商くなっていないその周囲は細かい波状のしわで囲まれて おり,WooDwARD(1112)の図ならびに記載に照合するとP.!α雄sか'"`sにもっとも酷似している.また同 種の歯一個が津田1W二氏によって日高町ペンケウシャップ沢中流から採集されており,転石ではあるが中部 蝦英屑群中部(Turonian?)から産出したものと思われる(小H1ほか,1973).夕張産の標本は大小種々の形 のものを含むがその詳細はまた別に記載される予定であるなお,この種はこれまでにTAN(1950)により 日高地方の浦河郡より報告されている. OrderHExANcn1FoRMEsカグラザメ目 FamilyHexanchidaeカグラザメ科 /IIexanchusmicrodo1AcAssIz ン カグラザメ科の魚は,鯛孔を6対ないし7対もっており,現生のサメ類のうちでもっとも原始向勺なクルー *日本ルーテル神学大学 NipponLutherShingakuDaigaku,Tokyo ■ 224 上野輝彌 プの-つとされている.属名として」W"ぬ'1WSが用いられることもあるが,ここではROmERらに従っ て匪麺"chJsを用いる.今回調査したものは,村本辰雄氏所蔵の歯二個(図版6A,B)で,両者とも完全 ではないが,峻頭が少なくとも七つある第1咬頭の前縁埜部近くには五ないし七個の明確な鋸歯をそな えている第3咬頭は第2咬頭より高い。これまでに報告されている匪弾α"chiJsの歯と比較照合すると, WooDwARD(1112)の記戦ならびに図版47にあるものとほぼ一致しているので,若干の相違点はあるが,こ こでは一応瓦7,1/cjw/、〃としておく.産地は天塩国佐久学校の沢右沢で上部白璽系の地層から産llLたも のである. FamilyHeXanchidaeカグラザメ科 IIeptranLchiasezoensisAPPLEGATEetUYENo 夕張市の第三紀iWi新世の地層より産出した歯の化石である(APPLEGATE&UmNo,1968),歯には8咬頭 があり第1咬頭の前に二個の小尖頭がある,現生の』;Iqbtγα"cルノasPerJo(BoIvNATERRE)エドアプラザメによ 一一一一一一勺゛ く似ているが,歯の各咬頭は太くて短かい OrderPRIsTェoPIIoRmoRMEsノコギリザメ目 FamilyPristiophoridaeノコギリザメ科 野ristiophorus1ineatusAPPLEGATEetUYENo 前述のエドアプラザメ属の化石とともに夕張市の漸新世の地層より産出し記救されたものである.ノコギ リザメ属の物にはえている鰊一個がその標本である.現生のノコギリザメにくらべて吻の鰊は直線的でほと んど湾曲していない. OrderLAMNIFoRMEsネズミザメ目 FamilyScapanorhynchidaeミツクリザメ科 Scapanorhynchusrhaphiodon(AGAsslz) 今回の調査で観察することのできた標本は,村本辰雄氏所蔵の一個の歯である(図版6C).歯冠は若干破 損しているが完全に近い側咬頭の有無は不明である.歯冠にはほぼ平行な隆起線が走っているが,その数 は歯冠の基部で31本,中央近くで30本ほどである.歯冠の長さは16.1mm,歯根の長さは11.2mmである. 現生のミツクリザメに類似しているとされ(WooDwAnD,1912),世界各地の白壁紀の地層から産出している. 本標本は三笠市幾春別川流域の唐松からえられたもので転石の中に発見されている.この種の歯は,日本で は磐城(YABE&OBAmA,1930)から報告されている. ClassOSTEICHTHYES硬骨魚網 目,科,属,種は未定である. 留萠郡小平村上記念別沢の上部白筆系から産出した転石に含まれている標本である(図版7A,B).骨は 多孔性である.鮒弓8本の断面が観察され,鯉の一部も表面にみえる.歯骨および他の口腔周辺のものと思 われるいくつかの骨も部分的に露出していろ.現在のところ分類上の位置は不明であるが,硬骨魚網の中の サケ目,カライワシ目,ニシン目等の原始的なグループに属するものと思われる将来クリーニングによっ て骨を取り出すことができれば詳細が判明するであろう.本標本は国立科学博物館に保管されている. OrderCYPRェNmoIuwIEsコイ目 FamilyCyprinidaeコイ科またはCatostomidaeサッカー科,厨および種は不明. 夕張市の大夕張炭山駅の北北西9粁の地点で,始新世の淡水'性の地層から発見されたものである(INOUE &UYENo,1968).標本は頭部および尾部の下半部を欠いている。 OrderPLEunoNEcTIFoRMEsカレイ目 科,属,種は不明である. 夕張市南大夕張の南西2粁,夕張川河岸の漸新世海成厨から産出したものである(INouE&UYENo, 日高・夕張地域の魚類化石 225 1968).標本は頭部と尾部を欠く. これらのほか,第三紀の地層からは多くの魚鱗化石,サメの歯の化石などがでており,夕張地域のものは 八木氏ならびに南氏等によって整理研究中であるが,ニシン科,ソコダラ科,スズキ科等が含まれている. これらの魚の同定に関しては今後の研究をまたねばならない. Summary lntherecentsurveyofHidakaandYUbariDistrictsinHokkaido,Japan,bytheNational ScienceMuseum,Tokyo,fbllowingfishremainsfromUpperCretaceousbedswereexamined inadditiontomepreviouslyreportedspecimens:P妙cノカ0通zs肱雄s力jzzzsAGAsslz,亙欺α?zc〃zfs mjdりゐ,zAGAsslz,Sb”α"0γ妙花chzzsl唖hjo`0?z(AGAsslz),andanunidentifiedfishbelonging totheclassOsteichthyes・OtherfbssilfishesfOundinthesedistzictsareH1qP力zzlzc〃fas e悪oe7zsfsAPPLEcAjrEetUYENoandPγistiqP〃0”CsノヵzeaitzJsAPPLEGATEetUYENo,bothfrom O1igocene;aspecimenofthefamilyCyprinidaeorCatostomidaefromEocene;aspecimen ofpleuronectifbrmfishfromO1igocene・Manyfishremains,mostlyscalesbelongingtothe familiesC1upeidae,Macruridae,Serranidae,etc・havebeenfOundinLYUbariareaandnow understudy. 引用文献 APPLEGATE,S、,&T・UYENo,1168.ThehrstdiscoveryofafOssiltoothbelongingtothesharkgenus HEPがa7jc〃ib1s,withancwP'・極jOPAol・『`sspine,bothfromtheOligoceneofJapan、Bz`".』VtzZ7F. SCf.JUiJs・ToAyo,118115-200.P1.1. INOUE,1V1.,&T・UYENo,1968.OccurrenceoftwoPaleogenefishfbssilsatOyubaricoalminein CentralHoldmido,Japan・乃姻.,11二311-326.p1.1. 小畠郁生・前原俊春・津田博二,1973.北海道日商町周辺の白雲系.国立科博専報,(6):印刷中. Ro迦ER,A、S・’1966.VertebratePaleontology、3rded・i-viii,1-468.Univ・ChicagoPress・ TAN,K・’1150.盃妙碗。“s/αZfssf''2zZsAcAssIzfromtheUpperCretaceousofHokkaido.P》りり.』”α〃 AC.,25:18-20. WooDwARD,A,S,1912.ThefbssilfishesoftheEnglishCha1k.Part7:225-264..London, PalaeontographicalSociety、 YABEjlI.,&ToOBAmA,1930.OnsomefbssilfishesfromtheCretaceousofJapan、JZZPα"・JGeoL 、GeQg1..,8:1-7. 226 上野輝彌 第6-7図版説明 第8図版 A,B・Hb“"c力"$?極"oわ〃AGAsslzの歯.天塩国佐久上部白塞系産.×2.4(A);×2.5(B) C・Sc“α"01./by"ch1Jslh“Aね。b〃(AGAssIz)の歯.三笠市唐松幾春別川流域上部白塞系産・ ×3.0. ,,E・P心,cho&`Sm雄sか""sAcAsslzの歯.日高国日高町附近上部白塞系産.×3.3(D); ×2.1(E). 第7図版 硬骨魚類の一種.翻萠郡小平村上部白塞系産.A,腹面観;B,側面観.×0.55. P1ate6 」二lLj:魚類化沼 Z迫姪 Al C ril P1ate7 上野:魚類化石 、I 11J iii Al ;I M1 。]8
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