IL-18と分子標的抗体とを併用する 癌治療薬の開発 兵庫医科大学 腫瘍免疫制御学 特任教授 岡村 春樹 1 従来技術とその問題点 腫瘍の腹膜播種は、胃癌、大腸癌、卵巣癌などに伴って生じ 手術によって腫瘍を切除した場合でも発症することがある。 腹膜播種の治療には、従来、化学療法剤による治療、血管内 皮細胞増殖因子(VEGF)を標的とする治療、ビスホスホン酸を 用いる増感作療法などが試みられているが、治療が非常に困 難であることが知られている。 2 分子標的抗体を用いたがん治療 近年免疫反応/炎症反応を抑制するリンパ球(regulatory cells) や、マクロファージ、腫瘍細胞に発現される分子等のほかに、 CTLA-4やPD-1/PD-L1・2等を標的とした抗体薬が、 黒色腫をはじめ様々ながんに有効であることが確かめられて 臨床において実用化されている。 このような抗体薬は、がんの腹膜播種への適用も期待できる。 しかし、治療効果を高め、副作用を軽減するという観点からは、 改良の余地が残されている。 3 新技術の特徴・従来技術との比較(1) 従来の分子標的抗体は、腫瘍細胞の排除や病原体感染細胞を抗原 特異的に排除すると考えられている。 獲得免疫を増強。 抗腫瘍作用を持つサイトカインIL-18の効果。 IFN-γ 誘導因子として発見されたが、その後インフラマゾームの発 見によりIL-18は単なるサイトカイン誘導因子ではなく、細胞の増殖 、生存、分化などに関わる分子であることがわかってきた。 自然免疫を増強。 自然免疫は獲得免疫に強く影響する。 4 新技術の特徴・従来技術との比較(2) がん治療に有効性が認められた分子標的抗体は大きな希望を 与えているが、効果が限定的ながんも多く、用法などまだまだ 進歩の余地を残している。 一方、IL-18は抗原やサイトカインで活性化されたCD8陽性T 細胞,NK細胞,γ δ T細胞などのエフェクター細胞の数を著し く増大させ、それらの生存、分化を促進するので、腫瘍の免疫 治療における効果増強に応用できる。 新技術として、IL-18と分子標的抗体との併用療法を開発。 がんの腹膜播種は有効な治療法が確立していないため、有用 性が期待される。 5 お問い合わせ先 学校法人 兵庫医科大学 学術研究支援部 産官学連携課 河村 康彦、渡邉 純造 TEL:0798-45-6488 FAX:0798-45-6498 E-mail: [email protected] 6
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