電力中央研究所報告 電 力 輸 送 PCS を用いた太陽電池モジュールの故障判定 (その 2) -PV 用 PCS を用いた I-V 計測による判定法の実証- キーワード:太陽光発電,太陽電池モジュール,故障判定, パワーコンディショナ,I-V 特性 背 報告書番号:R13018 景 太陽光発電(PV)システムは、屋外環境下で長期にわたり使用されるため、故障や 劣化の事例も報告されている。しかし、家庭では PV システムの点検を行うことは困難 であり、大規模な PV システム(メガソーラー)では現地での保守・診断に多大な労力 を要するため、PV アレイの故障や劣化を検出する簡便な診断技術が望まれている。こ れに対して、当所では PCS を用いた手法に着目し、前報 1) では、PV アレイ I-V 特性に よりバイパスダイオード 2) が動作するモジュール故障の有無を検出する方法を提案し (図 1)、I-V 計測装置を用いた実験とシミュレーションにより手法の有効性を検証した。 実用化に向けては、市販の PV 用 PCS に備わっている MPPT 機能を用いた故障判定を検 証する必要がある。 目 的 既提案の故障判定手法について、市販の PV 用 PCS を用いた故障判定の有効性を検証 する。また、提案手法で故障判定するための計測仕様条件を明らかにする。 主な成果 1. 市販の PV 用 PCS を用いた故障判定手法の実証 市販の PV 用 PCS を用いた実験により、PV 用 PCS の起動時に MPPT 動作を行う 10 秒程度の直流電流と直流電圧を同時計測すれば 3)、特別な I-V 計測装置を用いなくても 最大出力動作電圧までの I-V 特性を計測でき、I-V 特性の 2 階微分最大値によるモジュ ール故障の有無の検出と、2 階微分最小値による部分影と故障の判別ができることを実 証した(図 2)。また、実験結果をシミュレーション結果と比較し、実験結果の妥当性 を検証した。 2. 提案手法による故障判定に必要となる計測仕様条件 市販の PV 用 PCS を用いた実験により、今回の判定基準を用いる場合、20msec 以下 のサンプリング速度で電圧・電流を同時計測すれば、提案手法による故障判定が可能 であることを明らかにした(図 3(a))。また、1msec 以下のサンプリング速度で電圧・ 電流を計測すれば、提案手法により部分影と故障の判別が可能であることを明らかに した(図 3(b))。 注 1)八太: 「PCS を用いた太陽電池モジュールの故障判定-I-V 特性の 2 階微分を用いた判定法の検証-」, 電中研報 告 R12017 2)結晶系シリコン太陽電池モジュールでは、直列接続されている一部のセルに故障や影が生じた際にモジュール 全体への影響を避けるため、モジュール内のいくつかのセルごとにバイパスダイオードを付けている。市販さ れているモジュールの大部分は結晶系シリコンであり、提案手法はこれに適用できる。 3)ある程度の強度で一定の日射が得られる時間帯に PCS を停止・再起動し、開放電圧から最大出力動作電圧まで の直流電圧と直流電流を計測する。今回の実証では、電圧と電流を市販の汎用波形計測器で計測した。 バイパスダイオードが 動作するモジュール故障 (接触不良・断線など 直列抵抗増加) 故障診断手順 電圧と電流の 同時計測 ① PCSのDC/DC コンバータを利用した アレイI‐V特性の計測 ② I‐V特性とその微分値により部分影 との区別を含め、故障の有無を判定 ③ 故障検出時は、故障箇所を詳細 診断 A PVセル バイパス ダイオード PCS V PVセル モジュール構成(例) ※メガソーラーでは、25kW程度の計測 単位にアレイ切り分けを要する場合が ある 1)。 前回はI‐V計測装置、 今回は市販のPV用 PCS(3.4kW)を使用 PVアレイ 図1 故障判定法の原理 故障なし 10秒程度 PCS起動 故障判定 故障あり PCS起動 部分影を 判別 部分影 手順① PCS起動時に電流と 電圧を計測 手順② I‐V特性の2階微分を算出 手順③ 以下の基準1)により故障判定 - 2階微分の最大値が0.1以上かつ最小値が‐0.025以上 → モジュール故障あり - 2階微分の最小値が‐0.025以下 → 部分影あり 市販の PV 用 PCS による故障判定の実証結果(計測サンプリング周期 0.1msec) 判定基準を0.1にした場合、 モジュール故障なし サンプリング周期 モジュール故障あり 20msec以下なら 故障の有無を判定可能 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 故障判定基準 0.05 0 0.1 1 10 サンプリング周期 (msec) (a) 故障有無の判定 図3 100 電流の2階微分最小値 (A/V2) 電流の2階微分最大値 (A/V2) 図2 0 部分影の判別基準 ‐0.05 ‐0.1 判定基準を‐0.025とした場合、 サンプリング周期1msec以下なら 部分影と故障を判別可能 モジュール故障 部分影 ‐0.15 ‐0.2 ‐0.25 0.1 (b) 1 10 サンプリング周期 (msec) 100 部分影と故障の判別 提案手法による故障判定に必要な計測仕様 関連研究報告書 「PCS を用いた太陽電池モジュールの故障判定-I-V 特性の 2 階微分を用いた判定法 の検証-」R12017(2013. 6) 研究担当者 八太 問い合わせ先 電力中央研究所 システム技術研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected] 啓行(システム技術研究所 需要家システム領域) 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2014 CRIEPI 平成26年6月発行 13-022
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