需要家に於ける高調波障害の原因が内部か外部からの流入かを判別する方法 新潟県支部 吉原謙次 135 2008 年度、私の受託先、475kva の需要設備で月例点検時に直列リアクトル付進相コンデンサの LBSが、定格電流の 55%以上の第 5 次高調波が流れると保護装置が働き、開放されていた。2007 年 11 月に古いキュービクルをトップランナ-トランス交換の為、一式交換したもの。力率が 70% になり、基本料金が大幅に上がり、高価なフィルターの設置を打診したらそれは困るとの事。 私は内部か外部からの流入かを緊急に判別しなければならない羽目になった。そこで、次の方法 を案出し試行実行した例を皆様に提示し、少しでも参考なれば幸いと思い発表します。 PAS 流出又は流入 引き込みケーブル LBS 高圧電動機類 高調波発生負荷 300kva 100kva 75kva 進相コンデンサ 電流測定点 100kva 電灯負荷 1図 インバータ 電動機 説明用単結図 負荷 測定には高圧部分でブッシング又はケーブルシース被覆の所で 大型把握型電流計を用いる。測定器;FLUKE123,i2000FLEX,LC70F(双興) → 5 次波の電流 3.7A 0.8A 電流測定点 引込口 IG IR IK XR5 IA5 2175Ω XL5 3.0A 43Ω 基本波の電流方向 第 5 次高調波の等価回路 3図 IB5 XK5 引込口 2図 21.5Ω 2 図の補足図 配電側高調波定電流源 負荷側高調波定電流源 IB5 XK5 配電側高調波定電流源 IA5 XL5 進相コンデンサ 負荷側 高調波 定電流 源 IK XR5 直列リアクトル IG IR 引込口 引込口 測定値を示す 結論から申し上げると、第 3 図を見てコンデンサ回路の 3 Aは主に外部からの流入である。 もちろん、これから述べる方法によらなくても負荷を切って、引込みケーブル電流とコンデンサ回路 電流を測定すればすぐわかる。しかし現実は負荷を切れないケースが多い、この需要家も 24 時間操 業でした。 2 図の説明、 コンデンサ回路の保護装置は 5 次高調波が定格の 55 %を超えると遮断 する様になっている。5 図を参照、5 次高調波は 37 %だが、メーカの意見は測定時間帯だけでなく、 全時間の中では 55 %を超えている場合がある。大体 34 %位あるのは異常だと判断すべきとのこと。 実効値 10.8 A 5次 4 図引込みケーブル電流の波形 5図 37 % 4 図のスペクトルダイヤグラム 次に重要なことは 5 次波の電流方向です。これが今回一番肝心な事柄で、パソコン操作で得られた 苦心の一作です。 各次高調波 基本波 2次 4次 5次 7次 9次 11次 13次 17次 他次の合計 表 1 %電流値 100 4 1.5 37 4 3 2 1 各次電流値(A) 10.09158506 0.403663402 0.151373776 3.733886473 0.403663402 0.302747552 0.201831701 0.100915851 引込口測定値(A) 10.8 6 パソコン操作で得られた各次電流実効値(引込みケーブル) 6図のグラフはパソコンのJS関数 グラフツールで作成したもの y=100sin(x)- 4sin(2x)- 2sin(4x) + 37sin(5x)+ 4sin(7x)- 2sin(11x) 4 図の波形とよくにている つまり 5次波は基本波に対して +である。同相である。 コンデンサ、Tr300kva の 5 次波も +、- nsin(5x) の符号に注目する 6図 パソコン操作のJS関数グラフ 7図 パソコン操作のJS関数グラフ ツールと表2(各次電流実効値)で 得られたもの、コンデンサ回路 y=100sin(x)+4sin(2x)+sin(3x)+sin(4x) - 34sin(5x)+sin(7x)+sin(9x)+sin(11x) 表2の実測波形と出来るだけ似た形 になる式にする。 7図 パソコン操作のJS関数グラフ 次に、図2の 5 次波でのインピーダンスを計算すると XK5 は 100KVA のコンデンサと 6%の直列リアクトル (相電圧)÷(1相分容量の電流)はコンデンサのインピーダンス 3810v/(33.3kva/3.8kv)=435 Ω 5 次だから 435/5=87 Ω リアクトルは (435 × 0.06)× 5=130 Ω、 コンデンサ回路は 130 - 87 = 43 Ωになる XR5 は負荷全体に相当する遅相リアクタンス、インバター回路は交流側から見たら ∞ 進相コンデンサ 100kva だから、負荷全体の遅相リアクタンスを 100kva と見る 3810v/8.75A=435 Ω 435 × 5=2175 Ω XL5 は配電線の 50MVA 相当の線路インピ-ダンス (50000/3)/3.8kv=877A 3810v/877=4.3 Ω 4.3 × 5=21.5 Ω 高調波定電流源の内部インピーダンスは∞、 5 次波の符号の+は基本波と同相、-は 逆相。従って 3 図の様になる。 3 図 を 参 照 、 X R 5 が 大 き い の で 流 入 の I B 5 は I R に は 流 れ な い 、 I A 5 は 0.8 A と 見 て 良 い 、 従 っ て I G の 読 み の 3.7 A の う ち 3A は 外 部 か ら の 流 入 と 考 え ら れ る 。 こ の ケ ー スは電流値だけで判別出来る。然し、多くの場合直列リアクトルがなく、負荷の遅相リア クタ ン スが そ れほ ど 大き くな く、 IA5がも っと大 きい場 合、 5 次 波電流 の符 号が 基本波 に対して正か、負かが重要な判断要素となる。また低圧側に進相コンデンサ回路がある場 合その回路を外して波形測定する必要がある。点線の矢印は基本波電流方向、コンデンサ 回路は進相、負荷は遅相で3図の如くなる。 今回の場合、明らかに外部流入の案件、需要家に負担かけることなく解決できると確信 し、 電力に協力して貰い解決しました。配電線ルートを変更して貰いました。需要家か ら感謝され、同時に信頼も得ることが出来ました。 8図を参照、引込みケーブルの実測波形、配電線ルート変更前後の比較です。 最 後 に エ ク セ ル で 作 成 し た 表 2 及 び 参 考 の 表 と 9 図 Tr300kva の 波 形 を 記 載 し ま す 。 変更前 8図 変更後 引込みケーブルの実測波形、配電線ルート変更前後の波形 各次高調波 基本波 3次 4次 5次 7次 9次 11次 13次 17次 他次の合計 表2 %電流値 100 1.5 1 33.5 1 1 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 コンデ測定値(A) 9.5 6 パソコン操作で得られた各次電流実効値(コンデンサ) 次の表は参考用として示す 各次高調波 基本波 3次 5次 7次 9次 11次 13次 17次 17次 他次の合計 各次電流値 (A) 8.99091654 0.134863748 0.089909165 3.011957041 0.089909165 0.089909165 0.089909165 0.089909165 %電流値 100 1.3 18 10.5 0.7 5 4 1 Tr300kva お よ び エ ク セ ル で 自 動 的 計 算 す る 表 各次電流値(A) 4.681104867 0.060854363 0.842598876 0.491516011 0.032767734 0.234055243 0.187244195 0.046811049 Tr300kva測定値 4.8 6 A 各次高調波 基本波 2次 3次 4次 5次 7次 11次 13次 17次 他次の合計 B C D %電流値 各次電流値 測定実効値 I1 PRODUCT(D12,B2) IRMS I2 PRODUCT(D12,B3) I3 PRODUCT(D12,B4) I4 PRODUCT(D12,B5) I5 PRODUCT(D12,B6) I7 PRODUCT(D12,B7) I11 PRODUCT(D12,B8) I13 PRODUCT(D12,B9) I17 PRODUCT(D12,B10) ∑In PRODUCT(D12,B11) SUMSQ(B2:B11) (D2)/(B13) SQRT(B12) %電流値はオシロ電流計のスペクトルダイヤグラムより読む PRODUCT(D12,B2)はD12の欄の数字×B2の欄の数字 SUMSQ(B2:B11)はB2~B11の欄の数字の2乗の和 SQRT(B12)は√(B12の欄の数字) y=100sin(x)+1.3sin(3x)+18sin(5x) +10.5sin(7x)- 5sin(11x)- 4sin(13x) 9図 パソコン操作のJS関数グラフ ( Tr300kva の 波 形 ) 以上 補足説明 ひずみ波のフーリェ変換で、基本波と各次調波 の位相差がある例は教科書では見てない。 右図 ― y=75sin(x)- 75sin(2x) … y= 100sin(x) あたかも位相差があるみたいだが 実際はない。 電気技術者の責務 キュービクルの新設、改造では進相コンデンサ は直列リアクトル付になる。そこで今回の様な 保護装置が働く可能性がある。旧式の直流電源 装置は大きな 5 次高調波を出す。この様な自家 用がまだあるやに聞く。高価のフィルタ-の設 置が難しく放置されている。少しでも多くの需 要家に啓蒙し、改善すべきではないでしょうか。
© Copyright 2025 ExpyDoc