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放射線被ばくについて
医療分野では、レントゲン・CT等様々な検査で放射線が用いられています。放射線と聞くと怖
い、危険なものという印象を持たれている方も多いかと思います。そこで今回は安心して検査を受
けていただけるよう放射線被ばくについてお話します。
0放射線・放射能の単位
放射線の単位には様々なものがあり、違いがわからない方もおられると思いますので、まず
単位について簡単に説明します。
・Bq(ベクレル:放射能量)
1秒間に1個の原子が他の原子に変わるとき、その放射能を1ベクレルと言います。崩壊時
に少なくとも1個の放射線を出しますが、元の原子核の種類によって放射線の種類やエネルギ
ー量が異なるためベクレルの値だけでは人体への影響を評価することは困難です。
・Gy(グレイ:吸収線量)
放射線を照射された対象が、放射線のエネルギーをどのくらい吸収したのかを表す値です。
・Sv(シーベルト:軽量当量、実行線量)
人体に対する放射線の影響を評価するために用います。放射線には様々な種類(X線・α
線ヰ性子線等)があり、吸収線量が同じでも人体に対する影響が異なります。その違いを考慮
した値が線量当量です。
原則、がんと遺伝性影響に関する防護のためだけに用います。
これらの単位を雨で例えてみると
Bq…空から単位時間に降る雨粒の数
Gy・・・人に当ってぬらした雨の量
Sv・・・雨に当った時の影響
人に当ってぬらした水の豊(Gy)が同じでも、小雨より大雨のほうが痛く感じるように、人に与
える影響(Sv)が異なります。
0放射線?放射能?
マスコミ等でよく放射線と放射能が混同されて使われていますが、この二つの言葉の意味は
まったく異なります。
1放射線とは
電磁波の一種で、可視光線・紫外線・赤外線・電波も仲間です。
波長の違いによって呼び方や物体に及ぼす作用が異なってきます。
・放射能とは
放射線を出す能力のことをいいます。この能力をもった物質を放射性物質といいます。
ですので、r放射能を浴びるJr放射能に汚染される」は間違った使い方で正しくは「放射線を浴
びる」「放射性物質に汚染される」となります。
※放射性物質日・放射能を有する物質
○医療被ばくの線量
現在、医療分野で行われている主な検査の被ばく線量を下記の表に示します。
ただし、これらの数値は検査部位、検査内容によっては変動しますので、だいたいこれ位被ばく
しているという参考にして下さい。
検査の種類
被ばく線量
胸部X線撮影
0.06mSv
上部消化管検査
0.6・−3mSv
CT撮影
5∼数十msv
核医学検査
0.5∼15mSv
PET検査
2一一10mSv
歯科撮影
2∼10〝Sv
被ばく線量を見てもなかなかピンとこないと思いますので、下の図で自然から受ける放射線
と比較してみたいと患います。
意外に思われるかもしれませんが、私たち人間は普通に生活していても様々なところから年
間2・4mSv(世界平均)の放射線を浴びています。その内訳は空気中のラドンから1.2mSv、宇宙
からの宇宙線で0.4mSv、大地から0.5mSv、食物から0.3mSvとなっています。
世界には、イランうムサール地方で最大149mSvというような高線量地域も存在します。
10000
1000
100
10
1
0.1
0放射線が入射こ与える影響
人体に与える影響は確定的影響と確率的影響の二つに分けて考えます。
・確定的影響
短時間の被ばく線量がある値(しきい値)を上回って初めて、症状が現れるもので、脱毛・不
妊・白内障・皮膚障害などがあります。
しきい値が最も低いのが胎児への影響で、その線量は100mGyです。実際に腹部の検査でど
れくらい被ばくしているかを示します。
腹部X線撮影 約2mGy
腰椎正面X線撮影 約2.9mGy
腹部OT撮影 約20mGy
※これらの線量は平均的なもので、施設個人によって多少異なります。
いずれの検査も複数回の検査をしなくては100mGyを上回ることはありません。仮にもし
100mGyを超えたとしても、必ず胎児に奇形が生じると言うわけではなく、被ばくに関係なくも
ともと重大な奇形の発生率が2∼4%あることがわかっているので、その発生確率が少し増え
ますよと言う程度です。
・確串的影響
被ばく線量が増大するにつれて発生確率が増加する影響のことで、発がんや遺伝的影響が
あります。
微量な被ばくの影響が現在でもわかっていないため、しきい値がないと仮定されています。
確率的影響の中で、ある程度分かっているものに白血病(血液のがん)があります。
白血病の自然発生は100万人に対して約30人くらいです。
例えば、全身のCT検査を受け、白血病になる確率は約100万分の32になります。実際には
撮影する部分のみ放射線を照射していますので、確率はさらに低くなります。
このように放射線を使うことによって、影響がほぼないとはいえ多少のリスクが存在するのは
事実です。そこで、放射線を用いる検査はその検査を受けるリスクよりも患者様が受ける利益
の方が大きいと考えられる場合にのみ行います。
0最後に
医療被ばくには、回数の制限や超えてはいけない被ばく線量限度はありません。これは検査
を制限してしまうと、本当に必要な検査が出来ずに診断や治療に影響が出て、患者様にとって
不利益になると考えられているからです。だからと言ってむやみやたらに検査することは問題で
す。無用の被ばくを避けるため、医師は本当に必要な検査のみを施行していますし、診療放射
線技師は撮影時、少しでも患者様の被ばくが少なくなるよう、診断に支障が出ない範囲で出来
る限り少ないX線量で撮影するように努力しています。被ばくについて少しでも不安があれば遠
慮なく医師、診療放射線技師に相談してください。
参考文献
滋賀県放射線技師会HP(http://ww.biwa.neJp/−ShihougV)
INNERVISION20106月号
Wikipedb