Title Author(s) q−対数関数と関連する級数の無理数性について 高梨, 悠太 Citation Issue Date URL 2012-03-25 http://hdl.handle.net/10748/6232 DOI Rights Type Textversion Thesis or Dissertation publisher http://www.tmu.ac.jp/ 首都大学東京 機関リポジトリ 修士学位論文 題名 q一対数関数と関連する級数の無理 数性について 指導教授 津村 博文 教授 平成24年 1月 10白 提出 首都大学東京大学院 理工学研究科 数理情報科学 専攻 学修番号 10878311 氏 名高梨 悠太 q一対数関数と関連する級数の無理数性について(要旨) 修士(理学)高梨悠太 (10878311) 標題にあるq一対数関数とは, oo oo η 工・(・)一Σ、≠.1一Σ、几…、(1・1<1・1) η=! η=1 となる級数である.対数関数と呼ばれる理由は, 1im(1−q)工q(z)=1og(1−z) q→1 となるためである. αを代数的整数とした時に工q(α)が無理数であることは,P.Erd6sが予想し, P.B.Borweinによって証明された.そのP.B.Borweinが行った証明の方法は 有用な方法で色々なことが分かっている.例としてその類似の級数が無理数であ ることが知られている. Theorem1(K.Amano and Y.Tachiya). Kを有理数体,または虚二次体とし,K上の整数環を0Kとする. q∈oK(lql>1),r∈K×,1rl<lql,全てのん∈Nに対して,〆≠〆(工∈N)とし たとき, oo た 1一Σ、!≡、が k:1 また Iθ一ど1.lQI一・12 (1) Q が,すべての整数P,Q∈0K(ただし十分大きいIQ■)に対して成り立つ、 Theorem2(K.Amano and Y.Tachiya). αをPisot数,r∈Q(α)×(同<α),全てgん∈Nに対して,Z∈Nであるとき oo k oo 為 1古・≡。い喜(一α界一・・(一) この級数はD.Duvemeyの考えた級数の拡張になっており,この証明方法が有用 であることの一例である. 1 本論文はこれらの定理の拡張を証明する. Main Theorem1. Kを有理数体,または虚二次体とし,K上の整数環を0Kとする. q∈oK(lql>1),r∈Kx,刎,〃∈N,lru1<lql,全てのん∈Nに対して,ゲ≠〆 となるとき, ◎o 舳 1一Σ÷、{ (・) 冶=ユ また,8=maX{u,η}として 1θ一どI.lQI一・・2 (・) Q が,すべての整数P,Q∈oK(ただし十分大きいlQl)に対して成り立つ. Main Theorem2. αをPisot数,r∈Q(α)×(lrl<1α1),(u,η)∈N2,lru1<α,について全ての ん∈Nに対し,〆≠αkとなるとき,であるとき oo 舳 oo 舳 θ一喜α÷喜(一歩イ・・(一) これにより発見された新たな結果は以下である. Examp1e1 。。 @4k o. 8た Σ。L。,Σ。L。,・≠Q・ ん=1 k=ユ Examp1e2 。。 3k 。。 5お 如。・)L蝸鈍),如。・)L蛎鮎), References [1]K.Amano and−Y.Tachiya,On the irrationa1ity measure for certain series Monatsh.Math.,156(2009),1−9 [21P.B,Borwein,on the irrationa1ity of certain series,Math.Proc.Gamb. Phi1.Soc。,112(1992),14!−146. [31D1Duvemey,Sur1,irrationa1it6deΣ:二1rη/(qn−r),C.R,Acad,Sci. Paris,320(1995),1−4 q一対数関数と関連する級数の無理数性につ いて 高梨悠太 Contents 3 1 Introduction and Resu1ts 2 いろいろな級数の無理数性と線型独立性,無理数度 4 2.1 さまざまなg−Ana1ogue 4 2.1.1 対数関数のq−Ana1ogue. 4 2.1.2 指数関数のq−Ana1ogue. 2.1.3 階乗のq−Ana1ogue 2.1.4 二項係数のq−Ana1ogue. 4 5 5 2.2 刀q(z)の性質.... 5 2.3 瓦(z)の性質. 6 2.4 二項係数のq−Ana1ogueの性質 7 2.5 8 2.7 工q(z)の無理数性と線型独立性. 刀α(z)の類似問題の結果 無理数度...、.. 2.8 関連する級数の線型従厨性... . 10 2.6 9 9 3さらに予想され得る関連する級数 11 3.1有理数体上線型独立性 3.2無理数性,超越数性 11 12 4Main Theorem1,2の証明 14 4.1 Lemmas .. ,. 15 4.2 Proof of Main Theorem1. .. 17 1 4.3 Proofof Main Theorem2. 19 5 Acknow1edgments 19 1 Introduction and Resu1ts 今回の論文はP,Erd6s[141の以下の定理から始まる. Theorem1.1(P.Erd6s[141).q∈Z(lql>1)に対し 。。 1 工・(1)=ΣL1 た=1q が無理数である. この級数が無理数であることから様々な級数が無理数であると予想され,示されてきた.(詳 細はSection2において書く.)その一つの結果が以下である. Theorem1.2(K.Amano and Y.Tachiya[11).Kを有理数体,または虚二次体とし,K上の 整数環を0Kとする.q∈0K(lql>1),r∈K×,lrl<lql,〆≠〆,(1∈N)としたとき, oo ん 1一Σ、1≡、1≠・ κ:1 また ■1」1.1Q一一・戸 (・.1) Q が,すべての整数P,Q∈0K(ただしIQlは十分大きい)に対して成り立つ. qσ≠qとなるすべてのσ∈Ga1(Q/Q)に対し,αがPisot数であるとは,αが正の実数で α>1,Iασ1<1を満たすような数である、 Theorem1.3(K.Amano and Y.Tachiya[11).αをP430亡数,r∈Q(α)x(同<α),1∈N であるとき oo ゐ oo た θ一喜一1≡・,喜(≠。ll・(一) 本論文はTheorem1.2,1.3の拡張を証明する. Main Theorem1.Kを有理数体,または虚二次体とし,K上の整数環を0Kとする. q∈0K(lql>1),γ∈Kx,(u,り)∈N2,について全てのん∈Nに対し,lr仙1<lql,〆≠〆と なるとき, oo uk l一Σ十、が (…) k:1 また,8:maX{伽,の}として 一1一どI.1Q1一・・2 (1.・) Q が,すべての整数P,Q∈0K(ただしlQIは十分大きい)に対して成り立つ. Main Theorem2.αをPisot数,r∈Q(α)×(lrl<1α1),(u,り)∈N2,について全てのん∈N に対し,lr仙1くα,ゲ≠αたとなるとき,であるとき 3 oo 舳 oo 仙烏 θ一 処黶g(十グ・・(1) これにより新たに得られた結果は以下のようなものである. Examp1e1 @4此 。。 8ん Σ。1.。,Σ。L。, 。。 ・・ bp. た=1 ん=1 Examp1e2 。。 @ 3た o. 5た 喜ψ。・)L蛎納),喜怖。・)L砺紬), 2 いろいろな級数の無理数性と線型独立性,無理数度 この章はムq(z)についての無理数性や有理数体上線型独立である例を述べその大元の予 想に関して述べる. 2.1 さま一ざまなq−Ana1ogue まずいろいろな関数のq−Ana1ogueを定義し,その関数がなぜq−Ana1ogueと呼ばれるのかを 示す. 2.1.1 対数関数のq−Ana1ogue lql>1のとき 工・(・)一 ?A≠一・一喜戸。(1・1・1α1) とするときこの関数は 1im(1−q)工q(z)=1og(1−z) q→1 となるため,対数関数のq−Ana1ogueと呼ばれている、 2.1.2 指数関数のq−Am1ogue 榊一1・ ナ瓜二1箒.。)一旦(1・云) とするときこの関数は 1im五q((q−1)z)=θ2 q→1 となるため,指数関数のq−Ana1ogueと呼ばれている、 4 2.1.3 階乗の咋Ana1ogue π薫=。(1−qk) [η]・,= (11)・ とするときこの数は 納[η]・!=η! となるため,階乗のq−Ana1ogueと呼ばれている. 2.1.4 二項係数のq−Ana1ogue (二)、一[、1,1㌍、]、1一瓜;。汽量1)(1一、) とするときこの数は 1出(二)、一(二) となるため,二項係数のq−Ana1ogueのと呼ばれている. 2.2 工q(z)の性質 工emma2.1.Zq(2)は(向く.ql)で絶対収束する。 Pr00∫ 1 1 c 一 < =_ q−1−lql−1 1ql となるような。∈Rをとると,すべてのん∈Nに対し 1 < 1 < 1 =⊥ ψ一1−lqlん一1’lqlた■1(lql−1) lqlん したがって oo oo た 臥…。・・喜;一1,F与.レI Lemma2.2. oo 為 oo Σ、ξ、一Σ、・…、 烏=1 k=1 Pr00∫ 叶卿一言争件一書(1)㌧≒ したがって 5 工・(言)一工・(・)一、…、 (2.1) 同様の操作を繰り返すと 工・(・)一工・(云)・÷・、。…、・ 刀。(示)一・,(η一・・)となるので・・…が導かれる・ (2.2) 口 Lemma2.3.m∈Nに対し 中一1)(言)寸一1(生・)(・)一㌍…書1) 〃。ψ工q(Z)のZでの微分は ψ・)一・,書(l!÷・一ξ(グ{)…(1・l/l・1) この両辺にz/qを代入して関数等式, ぺ1)(;)一・・一1(ムザー1)(・)一壮…芦,) を得る. 2.3 亙q(z)の性質 remma2.4. ・・着π貫=11;ん.。)一且(・・云) Pr0ψ 酬一寸)一ξ(、.。)社デ1、、。)一〆ξ) したがって 亙・(・)一(1・言)五・(書) 一(1・;)…(1・云)・・(チ) 万。(希)一・(肌一・・)となるので・・㎜・が導かれる・ (2.3) Lemma2.5.z∈C,q∈C(IqI>1)のとき 恥)一 コ(・・チ) は収束する. Pr00ヅ ・・ 氏i・・云)一着・・(・・云) を考える.平均値の定理から0≦一〇几I≦1剥が存在して, 着・・(・・云)・ξ・・(・・云) 一ξbg(1片bg1景 一ξ。十.早.、、一ξ1+,㌢、÷.、1.㌢.・言舟■、,1…Iレ. 今回,平均値の定理を使って上記の補題を証明したが,一般的に以下が成り立つ、 Theorem2.6.全てのηに対し,α。≧0のとき以下のa),b)は同値である. a)級数Σα肌は収束する. b)無限積π(1+αη)は収束する. 2.4 二項係数のg−Ana1ogueの性質 ・… D)、は・を変数!!て整数係数多駄 Pヅ00∫ (二)。一、意、。汽}1)(1.、)』紅宇) ガウスの補題からこの式は有理関数でなければ整数係数多項式である・π夏;r(1−qk)の解 をζ=e竿,とおくと解となるのはζゐ=1すなわちblんのときにかぎる.分母と分子の零点 の重複度を比べると [ψ1一([m/61+[(η一m)/61)≧o 口 7 2.5 工α(z)の無理数性と線型独立性 以下の定理は,Introductionで書いたTheorem1,1の結果をもとにP.Erd6sが予想し,P.B1 Borwein[31が複素積分を使って解決した. Theorem2・8(P.B.Borwein[31)・q∈Z,r∈Q(∀η∈N,r≠qη)に対し oo ム・(・)一Σ、÷、 お=1 が無理数である. この方法を使った論文は数多くあり,いくつかを挙げる、以下,Theorem2.9,2、ユ0,2,1ユ, の仮定はKを有理数体,または虚二次体とし,K上の整数環を0K,q∈0K(■qI>1)とする. Theorem2.9(Y,Tachiya1211).Kを有理数体,または虚二次体とし,K上の整数環を0K, q∈0K(lql>1),r∈K×,lrl<1qlとする. 1,ムq(1),五q(_1) は有理数体上線型独立である. Theorem2.10(P.Bundschuh and K,V鮎n細en[91).Kを有理数体,または虚二次体とし, K上の整数環を0K,q∈0K(lqi>1),r∈Kx,同<lqlとする. 1,工q(1),刀ら(1) は有理数体上線型独立である. Theorem2.11(P.Bundschuh[8])一Kを有理数体,または虚二次体とし,K上の整数環を 0K,σ∈0K(lgI>1),r∈Kx,同<1ψとする. 1,工。・(q),ム。・(1) は有理数体上線型独立である. P.Erd6sの方法はランベルト級数の性質によるものでそれ以上の拡張ができる方法ではな かったが,P.B.Borweinは複素積分を使う事によって無理数」性だけでなく無理数度(後述, (2.10)参照)まで出すことのできる手法を編み出した、前述の定理はすべて同様の複素積分を 使っている.また,これらの結果から予想されるものを以下に述べる、 Conjectwe2.12(P.BundschuhandK,V鮎曲nen[91).q∈Z,α1,_,αm∈Qとする. 以下を仮定する. q≠O,±1, (2.4) α1≠0,〆(μ∈N), (2.5) α1/αゴ≠qμ(μ∈Z,づ≠ゴ)、 (2.6) このとき,すべてのZ∈Nに対して 1,工、(α・),…,工、(αm),…,小1)(α・),…,中1)(αm) (2・7) が有理数体上線形独立である. これが予想された経緯は以下の定理からであるI Theorem2.13(J.一P.B6zivin[21).上のConjectureの仮定(2.4),(2.6)かつ α{≠0,1レ(ひ∈N)が成り立つとき,すべての1∈Nに対して 1,亙、(α・),…,五、(αm),…,E5王■1)(α・),…,昨!)(α肌) (2.8) が有理数体上線形独立である、 実はこの結果と,関数等式 ・ E6(・) 刀・(・)= ナ。L・=・・、(・) (2.9) を用いるとムq(α)が無理数であることが示せる.歴史的に見るとTheorem2.13の方が Theorem2.8よりも先に見つかっている.したがってもしが工q(α)が無理数であることを発 見してしまっていたらこれら数多くの結果は生まれなかったかもしれない. 2,6 ムq(z)の類似問題の結果 D.Duvemey[121が以下の定理を証明した. Theorem2・14(D.Duvemey[121)・q∈Z,r=6/α∈Q×,lrl<lql,Pを全ての自然数η で叫=αqη一6を割りきる素数全体の集合でその有限部分集合Fに対して 。 62 ダ>何 となるとき, oo た Σ、三、1 胎=1 は無理数である. その後,IntroductionにあるようにK.AmanoとY.Tachiyaは,P.B.Borweinの複素積 分の方法を用いて,Theorem2.14の吋の条件を外すことに成功した.またθの無理数度の評 価も得ている. 2.7 無理数度 無理数度とは,十分大きな1Q1に対して P lθ一一1>1Ql一κ Q となるκの下限を無理数度と呼ぶ. (2.10) 無理数度は2以下にならないことが知られている.無理数度が2である代表的な数は自然対 数の底eや代数的無理数などである.代数的数の無理数度はその定理の証明者の名前からロス の定理と呼ばれる. Theorem2.15(K.F.Roth[181).η次代数的数α,互いに素な整数ρ,q(q>0)に対して, κ>2とすると ρ 1 α一一 >一 q qκ となる有理数ρ/qは有限個しかない. しかし,無理数度を決定するのは一般には難しい.評価できたとしても下限であるかどうか わからないためである.したがって下限をよりよく評価していくこともひとつの問題となって いる.現在知られている,工q(α)の最良の無理数度は以下である.ある数θ∈Rに対して無理 数度をμ(θ)とする. Theorem2,16(T.Mlata1a−aho,K.V撚n註n㎝,W.Zudi1in[15]).有理数αに対し,工q(α) の無理数度μ(工q(α))は μ(ムq(α))≦3.76338419.一 Theorem2.17(W.Zudi1in[22]).工q(ユ)の無理数度μ(工q(1))は μ(工。(1))≦2・46497… これらの結果は今回のMain Theorem1,2よりもよい評価になっている. 2.8 関連する級数の線型従属性 次に,仙,〃∈Z,ヅ,q∈Q,1州<lq1,lr”1<lqlとしたときにMain Theoremで使われている 次の二つの級数, oo 舳 oo 舳 Σ十、1,Σ、。≡、1 (・・ll) た=! 為=1 に対して以下がわかる、 Theorem2.18.*(2ユ1)の二つの級数は有理数体上線形従属である、 この定理を示すために以下のLemmaを示す. Lemma2,19(Y.Tachiya[211)■zl<lqlかつ1α1>1/lq1を満たすα∈Cに対し oo お ◎o −m Σ1三、、1一Σ÷、募 (・…) 冶=1 m=1 Pr00∫ ノ G(・)一Σ1.、、1 此=1 とおいてLemma212と似た操作をすれば, ‡’仏前大学の立谷洋平先生に成立することを指摘された. 10 一生・(1)一一書(1)㌧≒ したがって, ・レ)一士・(言)・三 州に対して同様の操作を繰り返し行い, 酬一÷・(示)・讐・デ≡享・ ユ/α伽0(z/グ)・→0(m→○o)からしemmaがしたがう. このLemma2.19についてα=r■ω,z=γuとすると oc u此 oo 舳 〆Σ÷、ん一戸Σ、÷、為 ん=1 ん=・1 となるため,定理が導かれる. 3 さらに予想され得る関連する級数 前述に紹介したConjecture 2.12(P.Bundschuh and K.V鮎n註nen tgl)が導けることが 最も良いのであるがそれすべてに関してはこの複素積分を使っては上手くいかないと思われ る.しかし,2つないし3つが有理数体上一次独立であることを示すことはできる可能性が ある. 3.1 有理数体上線型独立性 だとえば次のようなものが挙げられる. Conjecture3.1.Kを有理数体,または虚二次体とし,K上の整数環を0K,とし, q∈0K(1引>1),r∈K×,IrI<Iqlとする. 1,工q(1),Lq(r); 1,工q(一r),工q(r); 1,工。(・),L。(・2) はそれぞれ有理数体上線型独立である. 私は当初,これらはすべて正しいものであると思っていたが,その証明には穴があった. Conjecture3.1を証明する際,P.B.Borwein[41が用いていた補題を使用していた.それが以 下である. ユ1 Lemma3.2(P.B.Borwein[4]).T(z)をzの整数係数多項式であるとしたとき, η r(qm) 茗πb(・寸・) もq,rの整数係数多項式である. この問題は以下の足しても掛けても同じ値になるような多項式が存在するのと同値である1 (11)(1−1/q)=21−1/q,1−q+1−1/q=21−1/q. Lemma3.2は正しいものだがこれらの問題に使うためには不備がある*.(4.7)はDηをか けずともΣ㌶=18mがq,γ整数係数となるためLemma3.2が用いられるが,(4.8)が整数係 数多項式にならないため,結局(4.8)を代数的整数にするために何かをかけなくてはならない. したがっていずれの場合にもConjecture3.1.は示せていない. 3.2 無理数性,超越数性 P.Borwein and P.Zhou[5]のなかでq∈Z\{土1},r,8∈Q>oについて,すべてのん∈N に対し1+r〆一8q2島≠0のとき oo 1 Σ1+、、1.、、・1 此=1 が無理数であることを証明している.しかし,証明の一部に誤りがみられる†11611項の冒頭 の計算が間違っており,この部分を正しく計算すると最終的な結論を導き出せない、しかし結 果的には私が探す限り反例は見つからなかったので正しいと思われる. 無理数であることに関しては証明できていないことが多い.例として以下のような問題がある. conjecture−3.3.q∈z(lql>1),γ∈Q,m∈N(m≧2),8∈Q,5≠〆(ん∈N)として 軌一書(洪午 (ふ1) 工!・)ケ)一・1二(ξ!学 (3.2) た=1 。。 〆 Σ、.、1 此=1 は無理数である. 非弘前大学の立谷洋平先生に指摘を受けた. †1■■■雌いの可能性を立谷洋平先生に指摘を受けていた. 12 (3,3) Conjecture3・4・q∈Z(lql>1),η∈N,r1,γ2,…,㌦∈Qすべてのゴ∈Zに対して γ1,r2,..。,㌦≠qゴとなるとき, oo (卜1)た 喜(、L+(、L。、) (・刈 は無理数である、 婁幾κ瓢鶯鮒g吊限度堀螂汀僚機鮎;3ε) が知られている.ζq(8),8>1に関しては以下の定理が知られている. 以下ζq(8)=Σこ1σ。_1(η)qη, ただしσ。_1(η):Σd■几がI1とする. Theorem3.5(Yu.A,Pupyrev t171).∀8∈N\{1}に対して,ζq(1)とζq(5)はqの関数とし てC(q)上代数的独立である。 また,(3.6)は本論文のMain Theoremの拡張となっている.rのべき乗だけでなく分母がO とならないすべての有理数r,8についていうものである.これについては本論文以外にも知ら れている結果がある. Theorem3.6(Y.Tachiya[211)。qを二次体上の整数で,恒等写像以外のすべての σ∈Aut(Q/Q)に対して,lql>1,lqσi<1となるものとする。r∈Q(q)×かつ1グ1<1となる ようなもの,5∈Q(q)×,5∈Q,8≠q為(ん∈N)かつある1∈Nに対し,den(÷)4<lqlとした とき, 。。 〆 Σ、、、た≠Q(q) 烏=1 Conj㏄ture3.4は当初,R Borwein and R Zhouエ6]によって解決されてかに見えたが,本人 たちにより撤回された(P.Borwein and P,Zhou[7】).少なくとも彼らが最初に付けていた条 件はqに加え,すべてのゴ∈Nに対してr1,r2,_,㌦≠〆である.この条件だと反例がでて くる.q∈Zu,り∈N,u>りとして o。 〆 1 。。 ψ 喜(。1・L・)(ψれ一1)=戸喜(。Lグ)(。L。一ω)∈Q 実際, 。。 ψ 。。 1 1 (㍑)喜(ψれ一1)(外・)=喜ψれ一・一ψ・一・ (35) 仙 1 一Σ、・.。∈Q (…) k=り十1 したがってゴの条件を整数にまで広げておく必要がある.ここまで広げておけば現状では反例 が見つかっていない. 13 似た級数で 1 1{(1) ホ(。糾リ)(生一・) は有理数体上線型従属である.すなわち, oo 1 ん・十岬)十ん・喜(。純一・)(ト1)=0 となる百理数ん圭,い・が存在する・ ムq(1)が無理数であることからΣこ1(、。仙.、★、十。.1)も無理数である実際, oo oo oo 1 1 , 1 (グL1)喜(。・・一1)(ψれ一・)=喜ψれ一・イーU喜ψ・・一・ (3・7) リ u 1 , 1 一(1一・H)工・(1)一Σ、・.。・・HΣ、・.ユ k=1 此=1 (3.8) したがって,ん1=_Σ貫=1{十qu一利Σ:貨=1{,ん2=(1_qu■ω),ん3。=(1_q卜刊)とす ればよいことがわかる. 同様な部分分数分解を帰納的に考えると以下が得られると考えられる. Conjecture幸.7.η∈N,m∈N,1≦㎜≦η一1,u1,…,叫∈Nとして, oo mた 喜(、1・し・)q.(、1札一・)∈Q・Q工・(1)・・Qψ)(1) C㎝jectureと書いたがほぼ正しいと思われる、乞≠ゴに対し,ψ=ψプとなるとき工ε2)(1)が 必要となるであろう.また,最大でα1;、..=u孔となるとき4η)(1)を使う必要が出てくる. 4 Main Theorem1,2の証明 Main Theorem1.Kを有理数体,または虚二次体とし,K上の整数環を0Kとする. q∈0K(1α1>1),r∈Kx,u,〃∈Nについて,全てのん∈Nに対し,1州<lql,ゲ≠ψと なるとき, oo uた 1一Σ十、が (・1) k=1 また,8=ma.X{刎,〃}として I1一どI.IQ■一・・2 (・.・) Q が,すべての整数P,ρ∈0K(ただしIρ.十分大きい)に対して成り立つ. Main Theorem2.αをPisot数,グ∈Q(α)×(lrI<1α1),1∈Nであるとき oo 舳 oo 仙冶 θ一喜一÷喜(≠ゲ・・(1) 14 4.1 1Lemmas 以下の複素積分を考える.ただし,経路の取り方は常に正の向きにとるものとする、 η H(・㌦一・た1)。。 刎、 瓦一州・討、一㎞≒ Σグ;.、沙 (・・) ・肌H(1一・ん2・)為=1 た2=1 remma4.1. η (一1)肌■1H(〆一・ゐ・十m) ト㌧行。.六廿、.ハに÷/ k2=1 た2=! 一刈㌧し。い一刈い) _(其(1一作イ) _(書■、ヅ) z=O (4.4) Prooヅ これは留数定理による.1≦m≦ηにおいてz:q■mが1位の極z=0がη位g極 である.z=oに関する極はη位の極なので,後半の微分が入る. したがってそのLemmaを得る. 日 ここで 叫一}“亘(1一・)π』守当十■抑) ただし ・一 P、、、1仏、}」一㎜・llξ」1号」/ 明らかに lD,1−lq1書η2廿2・0(η). (4.5) このとき以下が得られる. Lemma4.2.γ,qの整数係数多項式P,Qが存在して lDη刷=1Qηθ一則. 15 (4.6) PrOqブ れ Qη=Qη(q,・):=DηΣ8(m)・ (4.7) m=1 孔一州一 﨟ゥ(・)ξべ)/・几/サジ刈岬) ただし 几 (一1)m−1■(〆一qた1+m) た1=1 3(m):= m_1 、_m ・w¶(1一・為ザm)■(・イ2■m) ゐ2・・1 先2=1 Tm(q)は微分の項としてr,qの整数係数多項式.その理由は (宮い一・)ブ =±入! Σ 〆λq知(η十1)一入・一…一nλれ, (4.9) λ1+… 十λn亡λ z=O ∼=O,1 (直(1.㌧)プ) =⊥μ! z二0 Σ μ1+…十ημn q , (4.10) μユ十…十μれ=n O≦μ (ト、ヅ) 創一〃岬) 早i^フー÷讐;;) (4.11) 1Lemma4.3. 1孔1:lql一芸れ2・o(η). (4.12) Proψ まずz∈Cの関数 η n({一・先1)。。 、、 ん(・)一∼=妄 Σ≠.、l1 汐H(1一・為2・)冶=1 島2=1 として,積分経路を以下のように変形する.R∈N,R>ηとして 人1,1州・一人.、ゲ皿..、.、、、、、舳・一五、舳・・ ただし,oRは半径1γ一利11q1R+1/2の円を反時計回りに一周し,単位円周上を時計回りに一周, その間を極を通らないような経路をたどる. また,lzl=lrI”llqlR+1/2で 16 Cl l∫η(z)1≦ qη糾れ(字1) ただし,以後。4(乞∈N)はηによらない正の定数. したがって∫、H、一・1I,lR+1/2ん(z)あ→0(五→oo)・このことから n 。。・ψ・ユ)十㎜H(1一・たユ■m) 凡一Σ 肌た1=1 (…) 側十1 H(・L・k2+m) 島2=1 これを上下から評価すると 1孔1−lql一書η2・o(η). (4.14) 口 4.2 ProofofMain Theorem1. (4.5)と(4ユ4)から 1≦!d・・(θ・・3・1(・十2))D,F几Hd・・(θ・・3几(・・2))(Q几θ弍)1−lqr去w2・州→o(卜・・). (4.15) このためθ∈Kでは矛盾する. □ I−emma4.4(P,Bundschuhnd W.Zudi1in[111). θ∈盟が軌,島∈Zという数列が存在して lQ几θ一P几1=・■ψ(肌) となるとき関数ψ:N→R+が ψ(几)→oc, (η→o○), (4.16) ψ(η十1) 11m sup ≦1, (4.17) 1OgQη ρ=11m sup >0 (4,18) η→。。ψ(η) η→。。ψ(η) を満たすとき,無理数度μ(θ)≦1+ρである. 今回の無理数度を定理を使って求めると,(4.23)より lQ肌θ弍1一七抑2王・…0(几). (4.7)よりQηは lQ,1−1913・2一抑2・o(几). 17 このことから無理数度が 10gQ. 2 1+11m sup =65 肌→。。ψ(η) 今度は直接,無理数度を計算する. 工::λθ一B ただし,λ,B∈0K,IλIは十分に大きいとする.(4.23)から 1 2 1 2 1川1qr訓■cm≦1λllQ几θ一P.1≦1川1qr刺十。2n つぎに lqlかし・・(肌一ユ)≦21川・1神η2一・・η (4.19) となるようなη∈Nをとる. したがってlden(r3几(s+2))λD肌Fη!〈1/2かつ 1ρη工1=岬ηθ一理ηHd・・(・)3れ(5+2)〃^十λ片一理η1 λP、ム_BQ、、≠0のとき,λP、、_BQ肌≧1であるため 1 1ρη工1≧1λ島一理η1■d・・(・)3n(8+2)λD几則>一 (4.20) 2 λPη一BQ肌=0のとき, ρ肌工1≧ld・・(・)3η(8+2)〃、則>1パ・η このことカ、ら 1ム1≧lql・・lQ几1−1≧lqr(3■赤)η2一・・肌. 1 2 またηの取り方から(4・19)よりlq1巫几≦1λllql−c・,1og1刈十。6η1og lql≧去η21oglql となることからそれぞれ, 1工1≧lqrが(6・2−1)一・・η≧1刈一6・2・11ぺ・η, (4.21) 1・・1λ1・(去η・一・・η)1・・1・1・、、ξ11・・1・1 (…) (4,22)より,n≦c1河.したがって(4,21)から .工I≧IλI一・・2・・Iパ・・河≧I刈■(682■1ト赤 この不等式から十分小さい6に対し 1一{・1λに・・2一・・ これにより,Main Theorem1の証明を得る, □ 18 4.3 Proof of Main Theorem2. αをPisot数とし,q=±αとする.また,qの絶対値が1より大きいものとする.Lemma4.3 から ld・・(・)3几(・・2)D,F,HQ肌θ一引一1ql一抑2・o(η)→o(η→・・). (4.23) つぎに,lQZθ一P別を上から評価するために,qσ≠qとなるσ∈Ga1(◎/Q)をとり蝋,P㌶ を考える.Pisot数であるのでlqσ1く1,(4.7),(4.8)と 1八、(・)1≦Σ Σ1・σ1ωλ1・σ1去ψ十1)十(μ・一入・)十2(μ・■λ・)I一.十肌(μ一一λ・)(・…) λ工十…十柵二・λμユ十…十μ冊=n λ{=0,1 0≦μ ≦1叩Σ Σi・σ1μユ十2μ2’’I切μ一 (4・25) λ1+… 十λ兀=λ μ1+・・1+μn=几 ∼=O,1 0≦μ 肌 μ ≦(…)η・・几■Σ1・σ1んμ胎≦・㌘。 (4・26) 烏=1μk=0 からlQ引,1耳引<c㍗5であるため 峨θ一端<・㍗6 が,qσ≠qとなるすべてのσ∈Ga1(Q/Q)に対して成り立つ. 1≦lN。(、)/。(d・・(θ)(Q、θ弍))1・・㌘71・r芸w2→C,(・→・・) これは矛盾である. 注釈 Main Theorem1に関してもMain Theorem2も多くの同じLemmaを使う.したがって, Main Theorem2に関しても無理数度が出るように見える.出せない原因は体によっては体上 の整数が1より小さい場合があるためである.今回のMain Theorem2の例をあげれば, α=1+ψとすれば,そのその共役がασ=1_ψであるため,Main Theorem2の条件を満 たす.しかし,ασ=1_ψもQ(α)の代数的整数であり1より小さいものの例となっている. そのような整数があると(4.20)が評価できない。異なる整数の差が1より大きいという事か らλ島_BQη≧1を導いているのだが先程の例の体上では破たんする. しかし,Q(α)の代数的整数のノルムは1以上である.そのことを使って背理法の矛盾を導 いている. 5 Acknow1edgments この修士論文作成に当たり指導教員である津村博文先生には多様な助言を頂き,感謝いた します.また,副査である内山先生,黒田先生にも感謝いたします.また,研究室の先輩に当た る宮崎隆史さんにも精読,多くの指摘等していただき感謝いたします.最後に,この問題に関 して有益なアドバイスをしていただいた立谷洋平先生(弘前大学)に感謝いたします. 19 References [11K.Amano and Y.Tachiya,On the irrationa1ity measure for certain series,Monatsh. 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