暮らしの力学 KK22 仕事とエネルギ(3) 力学的エネルギの保存則 これまでみてきたように、運動エネルギ、位置エネルギ、弾性エネルギそれぞれの変化は、その物 体になされた仕事に等しいから、仕事と諸エネルギの関係は、次式で表される。 U T Vg Ve T Vg Ve E (22.1) ここで、 E T Vg Ve (22.2) を力学的エネルギと呼ぶ。すべての力が保存力である限り、系になされる仕事はゼロとなる。したが って、力学的エネルギは一定である。すなわち、 E 0 E T Vg Ve const (22.3) である。すべての力が保存力であることを前提とすれば、運動エネルギとポテンシャルエネルギ(位 置エネルギ、弾性エネルギ)が交換可能であることを表しており、力学的エネルギ保存の法則と呼ば れる。例えば、摩擦力や空気抵抗のような非保存力(熱が発生する)が作用する場合は、この法則は 成り立たない。 保存力の定義に関しては長くなるので、説明を省略するが、簡単に言うと、その力がなす仕事が経 路に依存しないで始点と終点の位置により決定される力である。慣性力(運動エネルギ)、重力(位 置エネルギ) 、弾性力(弾性エネルギ)はいずれも保存力である。 例題 22-1 傾斜角 45 度、斜面の長さ 25m のスキ ージャンプ台がある。質量 80kg の選手が台の頂 上から滑り始めたとき(図 22-1) 、この選手が空 中に飛び出す瞬間の速度を求めよ。ただし、摩擦 は無いものとする。 (演習 26-1 と同じ問題) 図 22-1 例題解答 22-1 選手の質量を m 、始点と終点での である。始点では速度がゼロ、すなわち、v1 0 速度をそれぞれ v1 , v 2 とすると、始点と終点にお であり、終点での高さを基準面に選ぶと、h2 0 ける運動エネルギ T1 ,T2 はそれぞれ、 であるから、力学的エネルギ保存の法則により、 T1 m 2 m v1 , T2 v22 2 2 である。一方、始点と終点での高さをそれぞれ 下記の式が得られる。 mgh1 m 2 v2 2 h1 , h2 とすると、始点と終点での位置エネルギ 従って、幾何学的関係を考慮すると、 Vg1 ,Vg 2 はそれぞれ、 v2 2 gh1 2 gl sin Vg1 mgh1 , Vg 2 mgh2 となる。 例題 22-2 図 22-2 のように、長さ 20cm の糸で 質量 m のおもりをつるし、これを h だけ引き上 げ、糸が鉛直となす角60度でおもりを放した。 おもりが最下点に達したときの速度を求めよ。 例題解答 22-2 最下点の位置を基準とすると、 おもりを引き上げた高さは、 h 20 20 cos 60 10cm 0.1m であり、おもりを離した位置ではおもりの速度 は 0 であるので、力学的エネルギ保存則より、 おもりが最下点に達したときの速度 v は、 1 2 mv mgh 2 図 22-2 v 2 gh となる。 g 9.8m/s とすると下記となる。 2 v 2 9.8 0.1 1.4m/s 例題 22-3 図 22-3 のように h 5m の丘から、自転車で降りてくる。このとき、丘から降りきった地 点での速度を求めよ。ただし、自転車の初速はゼロとする。また自転車と運転者の質量は併せて m 80kg とする。重力加速度を g 10.0m/s 2 としなさい。 図 22-3 例題解答 22-3 力学的エネルギーの保存則より、 1 mv 2 mgh 2 v 2 gh 2 10.0 5 100 10m/s KK 演習 27、宿題⑰
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