ドラッグストアの出店空白地域を探せ

シリーズ 商圏分析と立地診断[第1回]
ドラッグストアの出店空白地域を探せ
ここ数年、90坪以上のドラッグストア(Dg.S)は年
にも思えるDg.Sだが、出店余地はまだあるのだろうか?
間6 ∼ 700店ずつ開店している。これに加えて都市部で
技研商事インターナショナル(株)のエリアマーケティ
は、大手チェーンを中心に90坪以下の薬局薬店も店数を
ングGIS(地図情報システム)を使って、関東1都3県で
増やしている。陣取り合戦が進んで一見飽和状態のよう
Dg.Sが出店可能な地域を分析した。
(田中)
【図 1 立地特性エリアクラスター分析マップ】
■STEP1
3つの立地特性に区分
分が「郊外」だ。
今 回 の 分 析 で は、 関 東1都3県 を
示したのが右の表。国勢
500mメッシュごとに「都市」
「近郊」
「郊
調査の主要60項目から商
外」と3つの立地特性に区分。それぞ
圏を9つのクラスターに分
れの区分について、①既存店の出店状
類。それぞれのクラスタ
況(1店当たり人口)と②人口動態(人
ー毎に「都市」性が高い
口と年代別の構成)から、需要(=人
のか「近郊」性が高いの
口)と供給(=出店)がアンバランス
かなどを分析し、最も数値が高いもの
「都市」
な地域を検索する。
を該当区分とした。例えば表の三世代
・都市居住性因子が高い
上の地図は、3つの立地特性を色分
家族性因子は最も郊外性が高いので、
・若者が多く、共同住宅住まいが多い
けしたもの。都内を中心に最も色の濃
このクラスターを持つ地域(500mメ
「近郊」
い部分が「都市」
、その周りを囲む色
ッシュ)は「郊外」としている。
・ファミリー関連の因子が高い
の薄い部分が「近郊」
、一番外側の部
各立地区分の特性は下記の通り。
・都市近郊の住宅街に分布
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【表 1 エリアクラスター解釈表】
立地特性算出の根拠を
シリーズ 商圏分析と立地診断[第1回]
【図 2 エリアクラスター別人口特性(代表的な 3 つの駅)
】
「郊外」
・高齢者、2次産業、大家族関連の因
子が高い
・郊外の1次産業、2次産業従事者
■STEP2
各区分の人口特性を分析
次に、
「都市」
「近郊」
「郊外」それ
ぞれの区分から、サンプルとして代表
的な駅を選出。それぞれの駅周辺の人
口構成から、各区分がどのような人口
特性を持つのかを分析する。
この結果を示したのが、上図の人口
ピラミッド。左側が男性、右側が女性
・ニューファミリー世代が多い。
出店可能地域も変わってくる。そこで
で、それぞれ外側に行くほどその年代
・若者世代、シニア世代の構成比が低
これまでの分析結果から、立地区分ご
の構成比が高いことを示している。こ
い。
とに必要とされる業態を下記のように
のグラフから、各立地区分の人口特性
「郊外」
予測。それぞれに合った検索条件で、
が以下の通りであることが推察できる。
(サンプル:小川町駅[埼玉県小川町]
)
出店可能地域を抽出する。
・シニア世代が突出して多い。
「都市」
・シニア世代以外の構成比が低い。
(サンプル:三軒茶屋駅[都内世田谷区]
)
抽出条件…1店当たり人口が多い地域
半)が突出して多い。
■STEP3
立地区分ごとに検索条件を選定
・ニューファミリーや、シニア世代の
次のステップでは、立地区分ごとに
構成比が低い。
出店可能地域の検索条件を設定する。
・若者世代(特に20代後半から30代前
「都市」
:業態…都市型小商圏Dg.S
「近郊」
:業態…調剤併設型Dg.S
(もしくは調剤薬局)
抽出条件…調剤薬局がない人口密集地
「郊外」…シニア対応ができるDg.S
「近郊」
立地区分に応じて、必要とされる業
抽出条件…高齢者のみ世帯が多く、調
(サンプル:新座駅[埼玉県新座市]
)
態は異なる。またその業態によって、
剤薬局が少ない地域
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【図 3 「都市」で 1 店舗当たり人口が極端に多い地域】
「都市」の立地区分の中で、Dg.Sの
いうことだが、該当地域が各所に点在
が、地図上で検索してみると都市型小
1店当たり人口が多い地域に色づけし
していることが見て取れる。
商圏Dg.Sの出店余地はまだ沢山残っ
たのが上の地図。1店当たり人口が多
特定地域だけを見ていると「Dg.S
ていることが分かる。
いということはまだ出店余地があると
は飽和状態だ」と思えるかも知れない
【図 4 「近郊」で調剤薬局がない地域】
「近郊」の立地区分の中で、人口が
に色づけしたのが上の地図。いわゆる
を中心に、多くの出店可能地域がある
多いにもかかわらず調剤併設型Dg.S
門前薬局が多いせいか、かなり多くの
ことが分かる。
(もしくは調剤薬局)が1店もない地域
地域に印がついている。ベッドタウン
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シリーズ 商圏分析と立地診断[第1回]
【図 5 「郊外」で高齢者のみ世帯が多く、調剤薬局が少ない地域】
「郊外」の立地区分の中で、高齢者
行させてもらっているDg.Sも出始め
ーでは様々なカテゴリーの商品を扱う
のみ世帯が多く、調剤薬局が少ない地
ているが、より採算の見込める地域が
ため、
「園芸」
「ペット」
「家具」など
域に色づけしたのが上の地図。
抽出できる。
自社の得意カテゴリーに応じた抽出条
件を設定することで、我が社の業態に
車の運転ができない高齢者だと移動
合った出店可能地域を検索することが
では訪問調剤の必要性が高まると考え
■我が社の業態に合った
抽出条件を
られる。中でも特に高齢者のみの世帯
今回は立地区分ごとに抽出条件を変
単に行政人口だけを見ていては発見
が多い上図の地域では、訪問介護や訪
えて出店可能地域を検索したが、実際
できない出店候補地が見つけられる筈
問調剤のニーズが年々高くなると想定
には自社の業態に応じて抽出条件を変
だ。
できる。訪問介護に自店の薬剤師を同
える必要がある。例えばホームセンタ
の範囲が限られてくるため、特に郊外
できる。
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