外乱の影響を考慮した運航支援システムの開発

外乱の影響を考慮した運航支援システムの開発
Development of Navigation Support System for Electric Boat considering influence of disturbance
○
山岸雅(東京海洋大学)Masashi YAMAGISHI (Tokyo University of Marine Science and Technology)
清水悦郎(東京海洋大学) Etsuro SHIMIZU (Tokyo University of Marine Science and Technology)
大出剛(東京海洋大学) Tsuyoshi OODE (Tokyo University of Marine Science and Technology)
電池推進船の航続可能距離は,同サイズの内燃機関船に比べ短いため,電池推進船操船者は,天候(風の向きや力),波(高さ,流れ)さら
にバッテリー(電圧,電流,充電状態)状況から航続可能距離を推定しなければならない.安全航行上の観点から洋上での電池切れは避けなけ
ればならない.このため,航続可能距離や推奨船速を与え,要求操作を達成するために出力を制限する運航支援システム(NSS)が開発された
.しかし,以前のNSSでは外乱の変動に適応させることができなかったため,本研究では外乱の影響を考慮に入れたアルゴリズムを提案した.
The possible cruising distance of the electric boats is still short compared with that of similar-sized internal combustion engine
boats. Currently, electric boat operators have to estimate the possible cruising distance from weather (wind direction or power), wave
(height and tide), and battery (voltage, current, state of charge) conditions. Battery failure has to be avoided from the viewpoint of
operational safety. In order to solve this problem, a Navigation Support System (NSS) that provides the possible cruising distance and
the recommended speed, and restricts the output power to achieve the desired operation, have been developed. However, the
previous NSS cannot adapt changes of disturbances. Therefore, this study proposed the algorithm that include considering influence
of disturbance.
外乱推定
研究の背景と目的
推定対水速力v(t)と,推定対地速力vT(t)との偏差、すなわ
ち外乱をe(t)とするとこれらの関係式は以下のようになる.
一般に電池推進船はコスト,重量,充電時間などにより搭載
できる電池容量は限られている.限られた電池残量で目的地に
到着するために,時々刻々と変化する航海状況を考慮した航続
可能距離や最適船速を計算しなければならない.そこで本研究
では,航行時の潮流や風,船体汚損や乗員数による抵抗の変化
などをまとめて外乱とし,その外乱を推定し,速力を補正する
ことにより最適な航海情報を提示する運航支援システムの開発
を行う.
𝑣𝑇 𝑡 = 𝑣 𝑡 + 𝑒 𝑡
GPSにより取得された対地速力vOG(t)と,推定対地速力との
差をフィードバックすること(図3)によって偏差e(t)を補
正する.
𝑣𝑂𝐺 +
−
𝑒
𝑘𝐷 𝑠 2 + 𝑘𝑃 𝑠 + 𝑘𝐼
𝑠
+
+ 𝑣
Fig.3 Block diagram of disturbance estimation unit
実験結果
Fig.1 Electric boat “RaichoⅠ”
推定器を用いて,速力計測試験を行った際の対地速力を
推定する.時間経過に対する各速力を図4に示す.150[s]付
近から転針を行ったため,潮流を受ける方向が変わり,対
地速力に変動が起きているが,推定速力もそれに伴い追従
していることがわかる.また図5に推定器の汎用性の検証の
ため別海域で計測試験を行った際の速力変化を示す.
2450[s]付近において,vOG(t)が一定値での出力されているこ
とがわかる.これは,GPSは遮蔽物に弱く,架橋下を航行
した際に,橋によって信号が遮られてしまいデータの更新
が行われなくなったためであると考えられる.そのため推
定速力は一定の値である対地速力に追従しようとしてしま
うので,今後はGPSデータが途切れた場合の対応が必要で
ある.
運航支援システムの最適船速推定アルゴリズムは,外乱
の影響を考慮しておらず,気象海象条件による運航データ
の変動には対応ができない.そのため正確な船速を推定す
るためには潮流の影響等を考慮した対地速度で算出しなけ
ればならない.そこで新たに船舶運動モデルを導出し,潮
流等の外乱を一括で推定し,モデルから得られる推定対水
速力を補正することでモータ出力から対地速力の推定値を
得ることを可能にする.
トルク入力に対する対水速力の推定式を導出する.定出
力時の時間に対するトルク,速力のグラフを図2に示す.こ
のグラフを,ステップ入力に対する一次遅れ系のグラフと
みなし,微分方程式を解くと,以下のようなトルクと推定
対水速力の関係式が得られる.
𝑣 𝑡 = 𝐾𝐹 1 −
𝑡
𝑒 −𝑇
+
𝑡
𝑣0 𝑒 −𝑇
(T,Kは実験から得られた定数)
Speed v [m/s]
運動モデルの導出
12
10
10
8
8
6
4
Ground speed vOG
Estimated speed vT
Model speed v
2
0
0
100
200
300
Speed v [kont]
運航支援システムの開発
Ground speed vOG
Estimated speed vT
Model speed v
6
4
2
0
2200
2300
Time t [s]
Fig.4 Relationship between
time and speed
2400 2500 2600
Time t [sec]
2700
2800
Fig.5 Experimental of Speed change
at the time of river navigation
まとめ
8
600
6
400
4
Torque
200
2
Speed
0
Speed v [knot]
Torque Tm [Nm]
800
0
0
10
20
30
Time t [s]
Fig.2 Time response of torque and speed
急速充電対応型電池推進船開発プロジェクト
・新しく設計した推定器により適切に外乱を推定しアルゴ
リズムを開発することができた.
・橋の下等ではGPS信号が遮られてしまい,速力の算出が
正確に行えないことが確認できた.
・本結果より,GPS取得データだけではなく,スロットル
位置,舵角等も考慮したシステムを構成する必要があると
考えられる.
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~takamasa/kaiyodai-ees-project/