Process matrix framework 森前智行 September 2, 2014 これまでの計算機は古典力学に基づいていたが、古典力学を超える理論、量 子力学、に基づく計算機を考えることにより、よりパワフルな計算が行えること がわかったり、計算機についての理解がより深まったりした。この考えを推し進 め、量子力学を超える理論に基づいた計算機を考えるのはとても面白い研究であ る。実際、例えば、PR-box やポストセレクションや非線形時間発展など、量子 論の枠組みを超えることができると仮定すると、より高速な計算ができたり、通 信量を削減できたりすることが分かっている。 Oreshkov, Costa, Brukner は、量子論を拡張した枠組み、process matrix framework を提案した [1]。これは、local には量子論が正しいが、global にはなんの causal structure も仮定しない、というものである。量子論を重力理論と統一しよ うとするときには、量子論における時間と空間の非対称性が問題となる。量子論で は時間はパラメーターに過ぎず、一つの固定された global な causal structure が あるが、重力理論では、causal structure は dynamical に出現するものである。し かも、量子重力理論では、異なった causal structure の量子的重ね合わせ、などと いうものも考えたい。このようなモチベーションから、process matrix framework は生まれた。 1 Process matrix framework 簡単のため、アリスとボブの二人の系を考えよう。(多人数への拡張は自明であ る。)アリスの研究室とボブの研究室は互いに隔離されている。各研究室の中で は量子論が正しいが、研究室の外ではなんの causal structure も仮定しない。ア リスは研究室に入ってきた粒子に CP map EiA を作用させ、粒子を研究室の外に 送り出す。ボブも同様に、研究室に入ってきた粒子に CP map EjB を作用させ、 粒子を研究室の外に送り出す。このときに、アリスが結果 i、ボブが結果 j を得 る確率は process matrix framework では P (i, j) = Tr(W MiA ⊗ MjB ) と定義される。ここで、W は process matrix と呼ばれるものであり、W ≥ 0 を満 たす。ある意味、通常の量子論の density operator を拡張したものである。また、 MiA ,MjB は CP map EiA ,EjB に対応する Choi-Jamiolkowsky operator である。 2 Process matrix framework における測定型量子 計算 Ref. [2] において、process matrix framework において測定型量子計算を行った らどうなるか、ということが考えられた。 1 References [1] O. Oreshkov, F. Costa, and C. Brukner, Nature Comm. 3, 1092 (2012). [2] T. Morimae, Phys. Rev. A 90, 010101(R) (2014). 2
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