透過電子顕微鏡用試料作製法 pdf

透過電子顕微鏡試料作製法
メモ書き
1. 切り出し
組織を乾燥させないよう 0.1 M バッファー、または固定液を滴下しながら目的の場所をカミソリで数ミリ
角に切り出す。軟らかい組織は摘出前にグルタールアルデヒド固定液を滴下し、ある程度硬くなってから切り
出しを行う。
2. アルデヒド系前固定;2.5% glutaraldehyde in 0.1 M phosphate buffer(pH7.4) 1~2 時間
切り出した試料はグルタールアルデヒドのみ、もしくはグルタールアルデヒドとパラホルムアルデヒドの混
合液を使用して、固定する。グルタールアルデヒドは蛋白質を良く固定するが、脂質にはほとんど固定効果が
ない。パラホルムアルデヒドはグルタールアルデヒドより分子量が小さく、組織への浸透が速いが固定力が弱
いため、グルタールアルデヒドと混合して使用されることが多い。血液などの浮遊細胞の場合、遠沈操作を少
なくするために、アルデヒド系固定後にアガロースに包埋する。試料が少ない場合は、サイトスピン装置など
でスライドガラスに塗布し、以下の作業を行うと良い。培養細胞などは IWAKI チャンバースライド II などを
使用すると、以下の作業が行いやすい(テフロンコートは樹脂包埋作業まで剥がさないこと)。
0.2 M phosphate buffer 調整法
0.2 M リン酸二水素ナトリウム(一水和物):27.6 g/L
0.2 M リン酸水素二ナトリウム(七水和物):53.6 g/L
0.2M リン酸二水素ナトリウム (mL)
92.0
81.5
73.5
62.5
51.0
39.0
28.0
19.0
13.0
8.5
5.3
0.2M リン酸水素二ナトリウム (mL)
8.0
18.5
26.5
37.5
49.0
61.0
72.0
81.0
87.0
91.5
94.7
pH
5.8
6.2
6.4
6.6
6.8
7.0
7.2
7.4
7.6
7.8
8.0
*リン酸緩衝液粉末という試薬も販売されている。
固定液希釈例)2% glutaraldehyde の場合
8% glutaraldehyde:0.2 M buffer:DW=1:2:1
8% glutaraldehyde:8% paraformaldehyde:0.2M buffer=1:1:2
効果的な脂質固定法
小さく切り出した試料を 2.5%グルタールアルデヒド液で前固定、洗浄後、0.2 M イミダゾール水溶液中に入れ、
4%オスミウム水溶液を徐々に加える(オスミウムの最終濃度 2%)。1~2 時間固定
3. 洗浄;2 と同一の 0.1M バッファー 数回
前固定終了後、数回洗浄する。洗浄が不十分な場合、オスミウム固定液が黒色になる場合がある。
4. オスミウム後固定;1% OsO4 in 0.1M phosphate buffer(pH7.4) 1~2 時間
四酸化オスミウム(OsO4)結晶は溶解し難いため、あらかじめ 2~4% の水溶液として準備しておく。二
重摺り合わせ褐色ビンを使用し、冷蔵庫(4℃)で保存する。使用時、1% 溶液を作製する。なお、四酸化オ
スミウムは強い刺激臭があるので、ドラフトチャンバー内で作業を行い、目や皮膚などへの接触、蒸気の吸入
には十分注意する。オスミウムは組織への浸透はあまり良くなく、試料表面から 1 mm 弱と言われる。リン脂
質は良く固定されるが、脂質の表面のみ固定されることが多く、風船状となることがある。
(注意)OsO4 廃液は専用容器に捨てる。
希釈例) 1% OsO4 の場合
( 4% OsO4
・・・
25 ml の水に 1 g の四酸化オスミウムを溶解 )
4% OsO4:0.2 M buffer:DW=1:2:1
5. 脱水;50% → 70% → 80% → 90% → 100% エタノール 各 10~30 分間
エタノールの上昇系列を使用し、揺り動かしながら脱水する。100% エタノールは時間をかけて何度も溶液
を交換する。脱水が不十分な場合、薄切切片に穴が開きやすい。
(注意)100% エタノールはモレキュラーシーブス入りのものを使用する。
6. 樹脂作製
調合例)
EPOK 812
24 g
DDSA
9.5 g
MNA
16.5 g
DMP-30
0.75 g
①EPOK 812、DDSA、MNA の 3 液を計り、スターラーで
約 15 分撹拌する
②DMP-30 を加えて、さらに 15 分間スターラーで撹拌する。
7.置換;樹脂:QY1=1:2 20~30 分 → 1:1 20~30 分 → 100% 樹脂
QY1(n-ブチルグリシジルエーテル)から樹脂に置換する。
1~2 時間
変法)100% エタノールから 100% アセトン(モレキュラーシーブ入り)に置換し、
樹脂:100% アセトン=1:5 に入れて一晩吸引し、組織へ樹脂を浸透させる。
8. 包埋
ビームカプセルに 100%エポキシ樹脂を満たし、組織を入れて 60℃の恒温器で 3 日間重合する(37℃か
ら段階的に上げていく場合もある)。浮遊細胞を塗布したスライドガラス、もしくはチャンバースライド
の場合は、試料の上に直接樹脂を垂らし、同様に重合する。
(注意)湿度の高い部屋でこの作業を行うと脱水不良を起こし、薄切切片に穴が開きやすくなる。
梅雨時期などは特に要注意!
9. 薄切
10. 電子染色;酢酸ウラン染色液 10~20 分 → 蒸留水洗浄 → 鉛染色液 5~10 分間
超薄した切片は重金属であるオスミウム酸と反応させてはいるものの、そのままではコントラストが低く、
観察し難い。そこで、酢酸ウランや鉛を反応させて、コントラストの補強を行う。
酢酸ウラン染色液は飽和酢酸ウラン水溶液、もしくは 4% 酢酸ウラン水溶液を用いる。酢酸ウラン染色液は
再利用が可能であるが、鉛染色液は使用後、回収廃棄する。高倍率を目的とする場合、ウラン単独染色が適す
る場合がある。酢酸ウランは切片への浸透が良く、切片全体が染まるが、鉛は切片表面のみに反応する傾向が
ある。
例)Reynold’s 鉛染色液(pH 12)
Pb(NO2)2 硝酸鉛
1.33 g
クエン酸ナトリウム
1.76 g
DW
30 ml
1N
NaOH
*8 ml
DW
*12 ml
計
50 ml
*DW を加えて 50 ml に調整する。およそ pH 12 になる。
ネガティブ染色法;生体高分子やウイルス、細菌などの観察に適する。
①親水化処理を行った支持膜付きのマイクログリッドを準備し、支持膜の面に試料溶液を 1 滴垂らす。
②半乾きのうちに染色液を 1 滴垂らし、そのまま数秒待ってから余分な水分を濾紙で吸い取る。
染色後、軽く水洗することもある。
③4% 酢酸ウランや、2%リンタングステン酸などで染色を行う(試料の濃度や染色時間などを調製し、最適の
条件を探す)。
北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1
産業医科大学共同利用研究センター
横山
満
093-691-7411