セルフメディケーション時代のOTC医薬品情報管理(636KB)

特 集:ネ ッ ト 販 売 解 禁 後 の O T C 医 薬 品 流 通
セルフメディケーション時代の
OTC医薬品情報管理
セルフメディケーションが注目される中、
OTC医薬品の情報を流通に携
わる製・配・販で共有し、
それを生活者へ正しく伝達することが、
より重要
な意味を持つようになってきた。そこで、
OTC医薬品の製品情報を管理・
提供するセルフメディケーション・データベースセンターの活動について、
同センターの運営委員会委員長を務める日本OTC医薬品協会の小田
日本OTC医薬品協会
事業推進部長
小田 武秀さん
事業推進部長、同センターの立ち上げ当初から運営に携わる室伏専務
理事にお話を伺った。
OTC医薬品業界の製品情報を一元管理、
生活者にも公開
04
セルフメディケーション・
データベースセンター
専務理事
室伏 義之さん
法令に対応した、
スムーズな情報提供を実現
高齢化と人口減少が急激に進む日本社会では、増大し
2009年6月に改正薬事法が施行され、薬局、
ドラッグ
続ける医療費をいかに抑制するかが大きな課題となってい
ストア等でOTC医薬品(第3類を除く)
を販売する際、薬
る。それに対する施策として注目されるのが、
セルフメディ
剤師または登録販売者による書面での情報提供が義務
ケーションの推進だ。セルフメディケーションとは、病院に行
もしくは努力義務となった。それに対応するためOTC医
くほどではない軽度の疾病やけがへの対処、
あるいは生活
薬品の説明文書データベースの開発・運用をプラネットが
習慣病の予防等に薬局・
ドラッグストア等で購入できるOT
行うことになり、
これと合わせて2008年10月より、
JSM-
C医薬品を活用し、生活者が自らの健康管理を積極的に
DBの運用・管理業務がプラネットに全面移管された。ま
行うことを指す。
た、2013年10月にJSM-DBは、
プラネット商品データ
セルフメディケーションが広く普及するためには、
メーカー
ベースとシステム統合された。
が責任をもって有用性の高い、信頼できるOTC医薬品を製
「添付文書、説明文書、製品情報など、
OTC医薬品の
造・販売するのはもちろんのこと、
その製品の情報が正しく
販売に必要な情報が、一つのデータベースに集約される
管理され、薬剤師や登録販売者を通して使用者に正確に
ことは、業界にとって大きなメリットです。プラネットのデータ
伝わることが非常に重要となる。こうしたOTC医薬品の各
ベース運用のノウハウと実績でOTC医薬品情報の活用
社の製品情報を一元管理しているのが、
セルフメディケー
も促進され、
また必要な情報提供もスムーズに行えるよう
ション・データベースセンター(以下JSM-DBC、Japan
になりました」
とJSM-DBC専務理事の室伏義之さん。
Self-Medication Data-Base Centerの略)
だ。
現在、
JSM-DBCはプラネットの商品データベースや
JSM-DBCは、
OTC医薬品業界のメーカー・卸・小売
日本OTC医薬品協会のホームページを介し、次の支援
業や関連団体により、2000年7月に設立された。その主
情 報を提 供している。① 流 通 支 援 情 報:メーカー、卸 売
な目的は、
OTC医薬品等の製品情報の製・配・販による
業、小売業間のEDIで必要となる添付文書、画像、製品
共同利用にあった。会員メーカーがJANコードごとにOTC
情報など、②適正販売支援情報:店頭で薬剤師、登録販
医薬品の添付文書情報、画像情報、製品情報(流通コー
売者が購入者に説明する際に必要となる添付文書・説
ド、
サイズ、包装単位、価格等)
などをセルフメディケーショ
明文書の情報、③適正使用支援情報:生活者がOTC医
ン・データベース
(以下JSM-DB)に登録し、会員卸売
薬品を適正に使用する際に参考となる
「おくすり検索」の
業、小売業が商品マスタ情報としてそれらを利用できるよ
情報、の3つだ。
う管理・運用するというものである。
2014年11月には、
「 医薬品、医療機器等の品質、有
さらに2003年からは、啓発活動の一環としてOTC医薬
効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品
品の適正使用の推進を図るため、登録されたデータを活用
医療機器等法)」が施行され、最新の情報を添付文書に
し、
日本OTC医薬品協会のサイトに生活者向け
「おくすり
早期に記載することが義務化される。
検索」
を公開している。
「おくすり検索」
は、製品名やメーカー
「 添 付 文 書の記 載 内 容に変 更があった際には、
メー
名、薬効分類、成分などさまざまな角度から検索が可能で、
カーから取引先へ、
また店頭では薬剤師、登録販売者か
添付文書や製品画像、
メーカー希望小売価格などを誰でも
ら使用者の方へ、速やかに情報伝達することがさらに重
閲覧することができ、生活者がOTC医薬品の正確な情報を
要になります。1軒1軒の取引先に情報を発信するだけで
自ら調べられる、非常に有効なサービスとなっている。
は周知にも限界がありますので、最新の情報が常に確認
Vol.104 Autumn 2014
特 集:ネ ッ ト 販 売 解 禁 後 の O T C 医 薬 品 流 通
できるツールとして、
JSM-DBの役割は今後、一層重要
あって添 付 文 書の変 更が必 要になっても、一 部のメー
になってくると思います」
と日本OTC医薬品協会の小田
カーはすぐに手が 回らなかったり、対 応が 遅くなってし
事業推進部長は言う。
まったりする。そんなとき、
その成分を含む製品を製造す
るメーカーに一斉に『 添付文書の改訂が必要ですよ』
と
JSM-DB側から情報を発信するなど、受け身でなく能
適正使用のために、
正確でタイムリーな情報提供を目指して
動 的なアクションを取ることも必 要になるのではないで
しょうか。日々進 化するITを上 手く活 用し、必 要な人に
OTC医 薬 品 の 流 通を取り巻く変 化 の 一 つとして、
必要な情報をタイムリーに届けられるような仕組みづくり
2014年6月からは要 指 導 医 薬 品 以 外のネット販 売が
を期待しています」
( 小田事業推進部長)。
解禁されたが、
「ネット販売では、対面で行われる店頭販
「ただしその大前提として、医薬品情報を扱うという社
売以上に、医薬品を適正に使用いただくために添付文
会 的 責 任を常に意 識してほしいと思います。医 薬 品 情
書をはじめとした情 報を購 入 者に正しく伝 達することが
報は1文 字 違っているだけで大きな事 故につながる可
重要であり、
その面でJSM-DBもお役に立てるのでは
能 性もある。人の生 命に関わる重 要な情 報なのです。
ないか」
( 室伏専務理事)
という。
そのためにもプラネットの基本姿勢である正確性、迅速
最後にお二人にプラネットへの要望を聞いた。
性、網羅性をこれからも徹底していただきたい」
( 室伏専
「たとえばある成分の使用上の注意に関する通知が
務理事)。
|図 1 | JSM-DBCのデータ提供先と流れ
ネット
パイロティング
JSM-DBC
事務局
セルフメディケーション・データベースセンター
商品DB
会員メーカー
添
会員卸売業
添
添
説
JSM-DB
※ 商品DBから添付文書PDFが
ダウンロードできます。
小売業(非会員)
卸売業(非会員)
会員用HP
添
添
添 説
職能・小売団体
医薬品医療機器
総合機構
流通システム
開発センター
添 説
添
流通向け
情報提供企業
生活者向け
情報提供企業
WEB
JICFS/
IFDB
各社
サービス
日本薬剤師会
全日本登録販売者協会
PMDA
添
業界団体
公開HP
携帯
アプリ
日本OTC医薬品協会
東京都家庭薬工業
協同組合
添
JSM-DBCとJSM-DBC会員の間のデータの流れ
プラネット商品DB利用者へのデータの流れ
利用可能なデータ
生活者への情報提供の流れ
添 添付文書PDF・テキスト
※ 図中の はJSM-DBC特別会員です。
※OTC医薬品のネット販売を業とする事業者は
「小売業
(非会員)
」
とみなします。
生活者
添 添付文書PDF(テキストは閲覧のみ可)
説 説明文書PDF・テキスト
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