モロッコ経済日誌 2014年4月 モロッコ経済日誌 2014年4月 在モロッコ日本大使館経済班 I.国内経済 1. 指標等 ① 2013年の対外公的債務と対外国庫債務1 2013年12月の経済・財政省の統計調査によると,2013年の対外公的債務は2347.4億 DH で,GDP の26.5%相当。前年の2127.1億 DH(GDP の25.7%相当)より10.35%増。 うち,対外国庫債務は1298億 DH(残りは保証債務)で,GDP の14.6%相当。前年の1168. 7億 DH(GDP の14.1%相当)より11.06%増。 ②貿易円滑化指数2 1日,世界経済フォーラム(WEF)が発表した『The global Enabling Trade Report 2014』にお いて,モロッコの貿易円滑化指数は138カ国中43位。中東・北アフリカ地域ではア首連の16位 が最高。近隣諸国ではチュニジア76位,アルジェリア120位。本報告の調査項目は市場アクセ ス,税関手続き,インフラ,ビジネス環境。モロッコの長所は税関手続きとインフラ面,短所は関 税手続きにかかる費用,国内市場へのアクセス,贈収賄。 ③2014年第1四半期の成長率3 15日,高等計画委員会の発表によると,2014年第1四半期の農業部門以外の成長率は3. 5%(前年同期には2.2%)。製造業,加工業といった第二次産業の好調による。同期の農業 部門を含めた全体の成長率は2.5%(前四半期には4.5%)。 ④Fitch Ratings のモロッコ格付け4 Fitch Ratings による最新の格付けによると,モロッコの公債は BBB-(外貨建)と BBB(自国通 貨建)で「安定した展望」。政治的安定と経済のパフォーマンスを評価。政府補助金改革と工業 製品輸出の伸び(自動車+23%,航空産業+20%,電子部門+12%)により赤字が減少。 2. 建設・公共事業・インフラ等 ①カサブランカ港の整備5 1 2 3 4 5 エコノマップ(4 月 2 日) エコノミスト紙(4月3日) エコノマップ(4 月 17 日) エコノマップ(4 月 28 日) ル・マタン紙(4月2日)他 1 モロッコ経済日誌 2014年4月 1日,カサブランカにて,モハメッド6世国王は「Wessal Casablanca-Port」プロジェクトに関わ る8つの協定の調印式を主宰。同プロジェクトは,Aabar Investments PJS(ア首連),Al Ajial Investment fund holding(クウェート),Qatar Holding LLC(カタール),モロッコ観光開発基金 (FMDT)およびサウジアラビアの Public investment fund が等しく出資する Wessal Capital(資金 総額34億米ドル)によるカサブランカ港の一部改修計画で,総工費60億 DH。Wessal Capital はカサブランカのメディナ整備計画の次期フェーズに3億 DH を提供する予定。 ②2013年の航空輸送6 航空輸送局(OTA)による『モロッコにおける航空輸送の主要指標の変化と傾向』第一回報 告書によると,欧州連合とのオープンスカイ協定(2006年に締結)が発効した2013年の航空 輸送は,不調だった2012年から回復傾向。モロッコとヨーロッパを結ぶ旅客便が航空輸送全 体の80.81%を占める。ヨーロッパ発着便旅客数の44%がフランス発着便利用。 ③モロッコ国鉄の2013年の純益7 18日,ラバトにて,Khlie モロッコ国鉄総裁は,2013年の純益が148百万 DH であったと発 表。契約プログラムで定めた目標のマイナス312百万 DH を約460百万 DH 上回った。旅客数3 8百万人,貨物重量数36百万トン,顧客の満足率77%,鉄道の定期的運行率80%以上。 ④カサブランカ・ファイナンス・シティとモロッコ王立航空の協力8 21日,カサブランカにて,カサブランカ・ファイナンス・シティ(CFC)とモロッコ王立航空の戦 略的パートナーシップ協定が署名された。CFC の認証を受けた企業及びその従業員を対象に, モロッコ王立航空の割引料金を適用するもの。地域のハブとしての CFC の利点を強化する目 的。 ⑤世界経済フォーラムによる ICT(情報通信技術)ランキング9 世界経済フォーラムが発表した「Global Information Technology Report 2014」(ICT を経済 成長と国民の安寧に利用する能力をはかる指標)によると,モロッコは148カ国中99位(前年に は89位)。ただし,電話・インターネット業界の競争力,インターネット利用料金の適切さの点は 評価。中東・北アフリカ地域ではチュニジア87位,エジプト91位,アルジェリア129位,リビア1 38位。 ⑥モロッコ・テレコム株一部買収額10 6 Les Eco 紙(4 月 14 日) エコノマップ(4 月 21 日)他 8 エコノマップ(4 月 23 日) 9 エコノミスト紙(4 月 25 日) 10 AFP 通信(4 月 28 日)他 7 2 モロッコ経済日誌 2014年4月 28日,ア首連の通信大手 Etisalat 社は,Vivendi グループが所有するモロッコ・テレコム株5 3%の買収のため,総額31.5億ユーロの資金を計17の銀行から集めたことを発表。Etisalat 社 は,中東,アフリカ,アジアの計15カ国で事業を展開している。 ⑦Bouygues社のモロッコ不動産部門進出11 フランスの Bouygues がモロッコに設置する子会社「Bouygues Immobilier Maroc」による 「Faubourgs d’Anfa」(住居,事務所,商店,教育・医療・文化施設,ホテルからなる地域開発事 業。総工費750百万 DH)を発表。カサブランカ・ファイナンス・シティも同地区に建設される予定。 着工は2015年第1四半期,販売は5月23日から。 3. 農業・漁業 ①欧州連合における野菜・果物輸入価格改革12 7日,欧州連合(EU)の農業委員会は,欧州連合に輸入される野菜・果物の価格の見直し (通関手続きの修正。10月1日より適用予定)を含む改革措置である新「共通農業政策」を承認。 ベンキラン首相とアハヌッシュ農業・海洋漁業大臣は,同措置が最終的に採択されれば,モロッ コから輸出する野菜・果物の価格(特にトマト)が上昇するとの懸念を発表。2012年の農業協 定および自由貿易協定に反すると批判。 ②農業部門への投資13 23日,メクネスで開催された第7回国家農業会議にて,アハヌッシュ農業・海洋漁業大臣は, 農業部門への官民合わせた投資額が,2008年の70億 DH から2013年には140億 DH に増 えたことを報告。同時期の農業部門の成長率は約7.6%であると述べた。 同会議中,モロッコとアフリカ諸国,国連食糧農業機関(FAO),地方の関連業界との間で9 つの協定が調印された。 4. 産業 ①モロッコ産業化促進戦略(2014年~2020年)14 2日,カサブランカにて,モハメッド6世国王主宰の下,産業化促進戦略(2014年~2020 年)が調印された。同戦略の目標は,2020年までに工業部門 GDP を GDP 全体の23%まで引 き上げ,50万の雇用創出(国内企業と外国からの投資で半分ずつ),産業投資基金(2020年 までに200億 DH)の創設,公用地1000㏊の貸与。同戦略は以下の10項目より構成される: 11 12 13 14 Les Eco 紙(4 月 24 日) エコノマップ(4 月 14 日),Les Eco 紙(4 月 14 日),AFP 通信(4 月 23 日)他 エコノマップ(4 月 24 日),Les Eco 紙(4 月 24 日)他 La vie eco 紙(4月4日)他 3 モロッコ経済日誌 2014年4月 1.「エコシステム」:各分野の代表的企業(モロッコ企業および外国企業)と中小企業を集め た産業ゾーン(=エコシステム)を構築する。 2.産業的補償メカニズム:外国企業による公共調達受注の際は技術移転を条件とする。 3.インフォーマル・セクター支援:零細企業を支援し,資金調達方法を提案し,生産性とト レーサビリティの向上を目指す。 4.人材育成:各「エコシステム」について必要数の技術者を養成する。 5.中小企業の競争力強化:投資補助金により中小企業支援を強化する。 6.資金調達:官民パートナーシップによる資金調達メカニズムとして,産業開発基金を設置 する。 7.産業用地の確保:小規模用地を貸与する。 8.自由貿易協定の有効活用:市場参入,投資確保,設備調達,産業の統合化,バリュー・ チェーンの強化を実現する。輸出能力のあるセクターを支援すると同時に,国内産業保 護のため輸入の調整を強化する。 9.海外直接投資の促進:投資促進のため投資銀行や投資専門家を活用する。 10.アフリカへの投資促進:カサブランカ・ファイナンスシティをアフリカ投資の単一の窓口と する。 ②環境保護税の適用 8日,ラバトにて,エル・ヒティ エネルギー・鉱山・水利・環境大臣付環境担当特命大臣は, 「環境と持続的発展のための憲章」(2011年に採択)の枠組みを制定する法律について発表し た。環境汚染と天然資源の消費レベルが高い活動に課税する。第一段階としてプラスチック製 品,特にプラスチック製ボトルを対象とし,リサイクルを促進する。年間15~18千万 DH の税収 を見込む。 ③モロッコリン鉱石公社(OCP)の債券発行15 17日,モロッコリン鉱石公社(OCP)は,15.5億ドルの債券を発行したと発表。2025年に 向けた生産能力強化・コスト削減プログラム(投資総額170億ドル)の資金とするため。12.5億 ドル分が10年債(利回り5.625%),3億ドル分が30年債(利回り6.875%)。企業による30年 債の発行はアフリカでは初めて。 ④ルノー・タンジェ工場の自動車生産16 16日,ルノー・タンジェ工場では,2012年2月の生産開始から数えて20万台目の自動車と なる Dacia Dokker が生産された。Dacia Dokker はこれまでに同工場で7万台以上が生産され, 15 16 AFP 通信(4 月 17 日),Les Eco 紙(4 月 18 日)他 エコノマップ(4 月 22 日) 4 モロッコ経済日誌 2014年4月 主にスペイン(12977台),フランス(12977台),トルコ(11663台)向け。モロッコ国内でも155 00台が販売された。同工場では平均600台強/日のペースで生産。 ⑤Saint-Gobain Sekurit 社のケニトラ工場17 23日,Saint-Gobain Sekurit 社のモロッコ初の工場がケニトラに完成。自動車用ガラス生産 業の同社は,ヨーロッパ第一位,世界第二位の売り上げを誇る。ケニトラ工場で生産される自動 車用ガラスは,すべてルノーのタンジェ工場及びカサブランカ工場(Somaca)に供給される。 ⑥モロッコの航空産業18 23日~26日,マラケシュ航空ショーが開催され,モロッコ空港公社(ONDA)と LH Aviation Maroc が,LH-10 Ellipse タイプの飛行機(二人用小型機)の組み立て工場の設置に関する合 意に署名。カサブランカのヌアセール地区に19千平米の工場を建設するもの(総工費1千万 DH,300の雇用創出)。 5. エネルギー・電気・水 ①モスクでの太陽光パネル発電19 8日,ラバトにて,永代財産・イスラム宗教大臣は,2030年までにエネルギー消費の15%節 約を目指す国家戦略の一環として,モスクに太陽光パネルを設置する計画を発表。エネルギ ー・鉱山・水利・環境省,エネルギー投資会社(SIE),モロッコ再生可能エネルギー開発・エネ ルギー効率化庁(ADEREE)および永代財産・イスラム宗教省による協定が調印された。第一段 階では 1 万5千のモスクが対象。モスクにおける電気消費量の40%削減を見込む。 ②「Desertec」からの撤退20 14日付のドイツ日刊紙 Handelsblatt によると,ドイツ企業 Bilfinger は西サハラ地域における 太陽エネルギー発電プロジェクト「Desertec」の契約を2014年末以降延長しない意向を明らか にした。2012年にはドイツ企業 Bosch および Siemens も同プロジェクトから撤退している。 ③「太陽エネルギー・クラスター」の創設 21日,カサブランカにて,アマラ エネルギー・鉱山・水利・環境大臣代行の同省ハフィディ 事務次官,エル・アラミ商工業・投資・デジタル経済大臣,バクリ モロッコ太陽エネルギー庁 (MASEN)長官等の出席の下,「太陽エネルギー・クラスター」の創設が発表された。競争力の 高い太陽エネルギー関連産業集合体を育成するための戦略と共同活動計画を策定する非営 利団体。 17 18 19 20 Les Eco 紙(4 月 24 日)他 Les Eco 紙(4 月 25 日)他 エコノミスト紙(4 月 9 日)他 ロイター通信(4 月 13 日) 5 モロッコ経済日誌 2014年4月 ④Tarfaya 風力発電21 Tarfaya の風力発電施設で発電開始。完全稼働は今年秋頃の予定(300MW)。同施設は フランスの GDF-SUEZ とモロッコの Nareva ホールディングスがジョイントベンチャーを組み建設 中。Narevaは3つの風力発電所をすでに建設している(南部のAkhfennirとFoum El Ouad, 北部の Haouma)。 ⑤Jorf Lasfar Energy Company(JLEC)火力発電所22 Jorf Lasfar Energy Company(JLEC)の火力発電所の第5号機(350MW)が稼働開始。Jorf Lasfar の総発電能力は1706MWとなった。建設中の第6号機も完成に近づいている。本火力 発電所は,三井物産(日本)と大宇(韓国)のコンソーシアムが建設。 6. その他 ①航空輸送税の未施行23 4月1日より適用予定の航空輸送税は,適用するための法や規則が制定されておらず,モロ ッコ王立航空はじめ多くの航空会社で適用を見送っている。ハッダド観光大臣は,2014年予 算法にも盛り込まれており航空会社は法を遵守すべきであると述べている。航空会社は同税適 用による損失を懸念している。 ②テレビとインターネットによる識字教育24 4日,カサブランカにて,モハメッド6世国王は,永代財産・イスラム宗教省によるテレビとイン ターネットを利用した識字教育プログラムの開始を宣言。「モハメッド6世ラジオ」および同省の HP で,各30分間のレベル1の授業90回分を放送するもの。内容は読み書き,コーランおよび 算数。2014年~2015年にはレベル2を公表する予定。 ③2014年モロッコ国勢調査25 29日,高等計画委員会(HCP)は,2014年モロッコ国勢調査の実施を発表した。調査は9 月1日から20日まで実施される予定。今年3月より調査員を含む関係者の研修が実施されてい る。調査員の数は52000人,調査費用は約6億 DH。前回の調査は2004年。世帯構成人数, 年齢,生活レベル,職業,健康状態等の約120項目が対象。モロッコ全土の調査区割りと必要 人員の算定のための全国準備調査が終了したのを機に,ラフリミ高等計画委員長が発表したも の。 21 22 23 24 25 AFP 通信(4 月 23 日),Les Eco 紙(4 月 24 日)他 Les Eco 紙(4 月 24 日) Les Eco 紙(4月3日) エコノマップ(4月7日)他 H24info.ma(4 月 29 日)他 6 モロッコ経済日誌 2014年4月 II.諸外国等との関係 1. 外国政府との関係 2. 経済協力 ①地中海連合(UPM)によるモロッコ支援26 7~8日,バルセロナにて,地中海連合(UPM)加盟43か国のハイレベルの代表を集めた会 議が開催され,4つのプロジェクトを採択。うち3つはモロッコも対象国のひとつ:1.公民教育, 男女平等の観点からの現行の教科書の分析(モロッコ,チュニジア,エジプト);2.水資源調査 のための組織創設(モロッコ,ヨルダン,レバノン,モナコ,スペイン,チュニジア);3.消費・生産 の持続可能なモデルの普及。 ②フランスとの職業訓練パートナーシップ協定27 24日,「マラケシュ航空ショー」開催中のマラケシュにて,ゲルージ国家教育・職業訓練大臣 付特命大臣,El Andalousi モロッコ航空・宇宙産業グループ(GIMAS)会長,Saint-Geours 金属 工業連合(UIMM-France)会長,Daligault フランス開発庁(AFD)モロッコ所長は,航空産業部 門の職業訓練能力強化に関するパートナーシップ協定に調印。フランス開発庁は50万ユーロ を供与。 ③リビアとの海運と港湾に関する協力協定28 24日,ラバトにて,ラバハ設備・運輸・ロジスティクス大臣と Ahmed リビア電気通信大臣は, 海運と港湾に関する協力協定に調印。海運設備と運営能力を強化し、両国貿易を活性化する 目的。 3. その他 ①欧州の鉄鋼製品に対する輸入制限措置29 欧州より輸入されるワイヤーロッドおよび鉄筋に対し,2014年初~2015年末まで輸入制限 措置が課されることとなった。同措置は当初2014年~2017年までの4年間とされていたが,3 月27日に2年間に短縮された。 ②モロッコ輸出促進庁(Maroc Export)の韓国訪問30 26 27 28 29 30 エコノマップ(4 月 14 日) エコノマップ(4 月 28 日) エコノマップ(4 月 28 日) エコノミスト紙(4 月 2 日) エコノマップ(4 月 17 日) 7 モロッコ経済日誌 2014年4月 21日~25日,ソウルにて,モロッコ輸出促進庁(Maroc Export)主催によりテクノ・パーク企 業連合(ASTEC)メンバー企業25社が参加し,情報・通信技術(ICT)部門の韓国企業と交流。 特にスマート・シティ,ウェブ・インテリジェンス,モバイル・マーケティングのグッド・プラクティスに ついて学ぶ。 ③水処理モデル施設の運転開始31 17日,ケニトラ県の Sidi Taibi の高校で,太陽熱及び風力発電を組み合わせた塩分・窒素 酸化物を除去する水処理モデル施設の運転開始式典が行われた。ドイツ・フランス企業コンソ ーシアム,Unesco Simev 講座,ケニトラ Ibn Tofail 大学,モロッコ膜・脱塩化会社(SMMD)のパ ートナーシップで実現した本施設は,アフリカでは初の試み。 31 エコノマップ(4 月 21 日) 8
© Copyright 2024 ExpyDoc