A t r i a l F i b r i l l a t i o n a n d S t ro k e 学会レポート 心房細動 と脳梗塞 抗凝固療法の最前線 Congress Reports JSS2014 第39回 日本脳卒中学会総会 2014年3月13日∼15日 大阪 入院時血漿BNP値は心原性脳塞栓症の退院後の再発を予測するマーカーとなり得る 川崎医科大学 脳卒中医学 准教授 芝﨑 謙作 氏 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は脳梗塞急性期、特に心原性脳塞栓症で高値を示し、長期予後の予測マーカーと なることが報告されている。川崎医科大学脳卒中医学准教授の芝﨑謙作氏は、3月13日から15日まで大阪市で開催された 第39回日本脳卒中学会総会で、脳梗塞患者における退院後の再発と入院時血漿BNP値の関連について前向きに検討 したところ、入院時の血漿BNP値は心原性脳塞栓症における退院後の再発を予測するマーカーになり得ると述べた。 対象は、2007年4月から2011年3月までに当施設に入院した発症24時間以内の脳梗塞患者のうち、退院後1年まで再発の有無について前向きに 追跡し得た患者とした。血漿BNP値(以下、BNP値)は入院時に測定し、追跡調査は電話または手紙で行った。患者を再発群と非再発群に分け、 患者背景およびBNP値について検討した。 脳梗塞患者793例が登録され、そのうち退院後の再発は42例(5%)に認められ、751例(95%)が非再発であった。再発群と非再発群のBNP値を 比較したところ、中央値に有意差は認められなかった(54.0pg/mL vs 64.5pg/mL、P=0.7504)。再発群と非再発群の患者背景を多変量解析により 比較検討したところ、アテローム血栓性脳梗塞(オッズ比2.5、95%CI:1.10-5.59、P=0.029)とフィブリノゲン値300mg/dL以上(オッズ比2.0、 95%CI:1.05-3.94、P=0.035)が退院後の再発に関する独立した因子であることが明らかになった。 脳梗塞の病型分類別に再発群と非再発群のBNP中央値を比較したところ、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、その他/分類不能の脳梗塞に おいて有意差は認められなかったものの、心原性脳塞栓症のBNP中央値は、再発群12例で392.0pg/mL、非再発群271例で177.0pg/mLとなり、 再 発 群で有 意に高 値であった( P=0 . 0 0 6 7 、図 )。また、心 原 性 脳 塞 栓 症の再 発にかかわるB N Pのカットオフ値をR O C 曲 線にて求めたところ、 270pg/mL(感度75%、特異度68%)であった。多変量解析の結果、BNP値270pg/mL以上(オッズ比5.1、95%CI:1.33-19.87、P=0.018)は 心原性脳塞栓症の退院後の再発に関する独立した因子であることも確認された(表)。 同氏らは心房細動を有する虚血性脳血管障害患者においてBNP値が心内血栓を予測する因子であることを過去に報告しており、 「今回もBNP高値の 患者には心内血栓が存在した可能性があり、抗凝固療法の強化や退院後の頻回なモニタリングが重要と考えられる」と芝﨑氏は指摘した。また、 「心房細動を 有する脳梗塞患者において、BNP値は急性期に高値を示すことから、心不全が脳梗塞の発症に関与する可能性がある。このため、積極的な心不全の 管理と定期的なBNP値の検査も必要である」と結んだ。
© Copyright 2024 ExpyDoc