長寿命アルミニウム合金押し出し用金型の開発 富山大学 芸術文化学部 教授 野瀬 正照 実験方法 研究の背景 (1) 成 膜 :生産用スパッタ装置を用いてダイスに成膜 アルミニウム建材産業は富山県の基幹産業 ①密着性を高める成膜条件 自動車の軽量化のための自動車用部材分野への ⇒AIP法(CrAlN)+UBM法CrAlBN) 進出 ②押し出し金型へのCrAlN/BNナノコンポジット膜の成膜 ⇒大幅なCRが必要⇒メンテナンスフリー化の必要性 (2) 評 価 ⇒加工用金型の大幅な長寿命化が不可欠 ①保護膜の摩擦試験および密着性評価 ②押し出し試験による金型寿命の評価:付着物で評価 従来研究との比較 60 表1 成膜条件一覧 50 HITn / GPa CrAlN膜は比較的高い硬度 と耐酸化性を有するが, 600℃の大気中加熱でも徐々 に劣化 CrAlN/BNナノコンポジット膜 =~40GPaの高硬度 大気中の加熱によって硬さが成 膜直後よりも向上する「自己硬化 性」 No. 1 2 3 4 40 30 20 CrAlN CrAlN/8vol%BN CrAlN/18vol%BN 試験品名 UBM(CrAlBN)400℃ UBM(CrAlBN)300℃ AIP(AlCrN)+UBM(CrAlBN) 400℃ AIP(AlCrN) 10 As400 depo.500 600 700 800 900 o Annealing temp., Ta / C 押し出し材:Al-15%Si合金 押し出し温度:410℃ 押し出し量:約200g/回 押し出し回数:膜なし=2回 膜有=3 回 図1 CrAlN/BNナノコンポジット膜お よび従来材(CrAlN)の塑性硬さ の大気中加熱温度変化 図2 押し出し試験金型の図面(a) および半分割外観写真(b) 実験結果 通常ダイス(膜無し) 光学顕微鏡像 摩擦摩耗試験(相手材:SUJ2 線速度:22.6m/min 荷重:1000g 試験時間:300秒) CrAlN/BN膜付きダイス 2次電子像 0.9 4: AIP 1: UBM-400℃ 2: UBM-300℃ 3: AIP/UBM 0.8 0.7 0.6 摩擦係数 0.5 1mm 100µm ベアリング部表面の 酸化が進んでいる コーティング無しダイ スでは,ベアリング部 のAl付着が多い 光学顕微鏡像 2次電子像 1mm 100µm 10 区間移動平均 (UBM(CrAlN/BN)400℃) 10 区間移動平均 (UBM(CrAlN/BN)300℃) 0.4 Al-EDS Map O-EDS Map 10 区間移動平均 (AIP(AlCrN)) 10 区間移動平均 (AIP(AlCrN)+UBM(CrAlN/BN)) 0.3 (a) 0.2 CrAlN(AIP)/CrAlBN(UBM )複合膜が最も摩擦係数が 小さく,引っ掻き試験による 密着強度も大 0.1 0 0 50 100 150 200 250 300 350 時間(秒) 図3 ダイス鋼基板上に製膜した各種膜の回転摩擦試験結果(相 手材=SUJ-2) Cr-EDS Map Fe-EDS Map 光学顕微鏡像 2次電子像 ベアリング部表面の 酸化はほとんど生じ ていない CrAlBNコーティング 付きダイスでは,ベア リング部のAl付着は 非常に少ない O-EDS Map Al-EDS Map Cr-EDS Map Fe-EDS Map 光学顕微鏡像 2次電子像 (a) 表2 ダイスに製膜した際に同時に製膜したTPの密着強度 試験品名 AIP(AlCrN)+UBM(CrAlN/BN ) 平均 1回目 2回目 45N(36N) 44N(35N) 45N(37N) 図4 CrAlN/CrAlBN複合膜の引っ掻き試験後の 表面状態;35Nおよび44Nの荷重における剥離 状況 35N コーティング無し 押出し回数:2回目 コーティング有り 押出し回数:3回目 1mm 44N 5cm O-EDS Map コーティングなしダイス による押し出し材に比 べて,CrAlBNコーティ ングダイスで押し出した Al-15%Si材の表面は 傷がすくないことが明ら か 図5 Al-15%押し出し材の外観写真 コーティング無しダイ スでは,ベアリング部 中央でもAlの付着が 多い (b) Cr-EDS Map 1mm 100µm Al-EDS Map Fe-EDS Map 図6 押し出しダイス (コーティング無し) 押し出し2回後 ベアリング部表面 (a) 入口付近 (b)中央部付近 ベアリング部表面の 酸化はほとんど生じ ていない CrAlBNコーティング 付きダイスでは,ベア リング部中央部付近 でAlが薄く付着してい る 100µm O-EDS Map Al-EDS Map Cr-EDS Map Fe-EDS Map (b) 図7 押し出しダイス (CrAlBNコーティング膜つき) 押し出し3 回後ベアリング部表面 (a) 入口付近 (b)中央部付近 まとめ・今後の展望 ダイス鋼製基板に各種CrAlBN膜を製膜し,密着性およびダイスへのAlの溶着性を比較評価 1.密着性試験:ダイス鋼基板上の膜を引っ掻き試験で評価・・・「AIP-CrAlN下地膜あり」の場合に優れた密着強度を示した 2.Al-15%Si合金し出し試験:CrAlN/CrAlBN複合膜をベアリング部に製膜した押し出しダイスを用いて溶着性を評価 ・・・・・・・膜なしの通常ダイスに比べて,ベアリング部の酸化およびアルミニウムの溶着は少ないことが分かった 【地域社会や産業界での応用分野・活用方法 等】 押し出しダイスのみならず,鍛造用ダイスやダイカスト用金型等も含めた幅広い用途でのCrAlBNの有効性を検証し,実用化を進めたい。 研究協力者:富山県立大学工学部 上谷保裕准教授、オーエスジー㈱ R&Dセンター 杉田博昭氏,他3名 連絡先 富山大学リエゾンオフィス・TLO TEL:076-445-6392 FAX:076-445-6939 Email:[email protected]
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