自閉症スペクトラム傾向と傷つきやすさ及び レジリエンスの関係

PF020
教心第 56 回総会(2014)
自閉症スペクトラム傾向と傷つきやすさ及び
レジリエンスの関係
○
土田弥生(早稲田大学)
佐々木和義(早稲田大学)
【問題と目的】
近年高機能広汎性発達障害(以下HFPDD)に起因すると考
えられている不登校や重大事件が取り上げられている(青木,
飯野,上馬場他,2009)
。HFPDDの特徴の一つとして,認知
の偏りが挙げられる(山崎,1999)
。認知の偏りのある人は,傷
つきやすいといわれており(平野,2011)
,その傷つきやすさが
学校不適応や重大事件を引き起こしている可能性があるのでは
ないだろうか。しかし,HFPDDを含む発達障害を抱えた人
が全員社会的不適応に陥ったり,重大事件を起こしている訳で
はない。どこにその違いが存在するのかを,精神的回復力であ
るレジリエンスとの関係から明らかにしていくことを目的とす
る。
研究Ⅰ
【方法】 研究協力者:首都圏大学生 103 名(男性 50 名,女性
53 名)
,平均年齢は男性 20.13 歳,女性 20.17 歳,年齢範囲は
18 歳~23 歳であった。
調査時期:平成 24 年 10 月初旬
調査材料:①自閉症スペクトラム指数日本版短縮版 AQ-J-16(栗
田・長田・小山・金井・宮本・志水,2004)
(以下 AQ)②Highly
Sensitive Person Scale(Aron&Aron,1997)のうち,Aron(1997
富田訳 2000)日本語版 23 項目(平野,2013)(以下 HSP)③The
Resilience Quotient 日本語版(長内・古川,2005)(以下 RQ)
④ 本来感尺度(伊藤・小玉,2005)⑤ ソーシャルサポート尺
度(菊島,1999)⑥Acceptance and Action Questionnaire-Ⅱ
(Bond et al.2009)日本語版(木下・山本・嶋田,2008)(以下
心理的柔軟性)
手続き:調査協力者の授業終了後質問紙を配布した。フェース
シートへ倫理的配慮項目の明記の上,口頭で伝えた。15 分程度
で無記名,自記式にて実施,その場で回収した。
)
【結果】 AQ,HSP(ネガティブな心理的敏感さ), ソーシャルサ
ポート,心理的柔軟性,本来感が RQ(レジリエンス)へ及ぼす
影響:AQ(高群:低群)×ネガティブな心理的敏感さ(低群:
。
高群)分散分析における交互作用が見られた(p<.05)
ネガティブな心理的敏感さ高群における単純主効果(F(1,65)
=16.10,p<.001)AQ 低群>AQ 高群
AQ,HSP(ネガティブな心理的敏感さ), ソーシャルサポート,心
理的柔軟性,RQ(レジリエンス)が本来感へ及ぼす影響:AQ(低
群・高群)×ソーシャルサポート(低群・高群)分散分析におけ
。ソーシャルサポート低群の単
る交互作用がみられた(p<.05)
純主効果(F(1,65)=12.03,p<.01)AQ 低群<AQ 高群, AQ 高群単
純主効果(F(1,65)=16.39,p<.001)ソーシャルサポート低群<ソ
ーシャルサポート高群
研究Ⅱ
【方法】第Ⅰ研究で使用したデータを基に強制投入による階層
的重回帰分析を行う。
【結果】 階層的重回帰分析による全概念の因果関係の検討
① AQ と HSP, 本来感, 心理的柔軟性, ソーシャルサポート, RQ
尺度下位尺度「状況分析力」,「くじけない心」,「問題解決力」
との因果関係(Figure 参照)
【総合考察】
レジリエンスそのものに傷つきを予防する効果や緩衝する働き
を見出すことは出来なかったが,ソーシャルサポートが,本来
感と心理的柔軟性を高め,レジリエンスを高めることがわかっ
た。したがってレジリエンスは,個人的要因と環境要因の相互
作用によって個人の成長とともに高められる総合的な力である
といえる(小田,2006)
。ゆえに個人要因と環境要因の相互作用
によりレジリエンス力が高まり,その結果として精神的な回復
をはかることが出来ると考えられる。
R
R
2
=.11
2
=.15
**
R
本来感
**
2
=.20
**
状況分析力
.25*
‐.29**
ネガティブな
心理的敏感さ
‐.38 ***
.33**
‐.24*
R
2
=.15
**
.33***
.25†
心理的柔軟性
.48***
R
2
=.11
R
2
=.48
***
**
くじけない心
自閉症スペ
クトラム
家族サポート
.47***
.27**
‐.24**
.33***
R
2
=.59
R
2
=.18
***
友人サポート
*
.20†
.39***
R
ポジティブな
心理的敏感さ
n.s.
2
=.35
***
問題解決力
先生サポート
†
p<. 10
*
p <.05
**
p <.01
***
p <.001
Figure. 階層的重回帰分析による全概念の因果関係
― 665 ―