技術解説14-Aの計算アルゴリズム(PDF形式)

技術解説
14-A の計算アルゴリズム
はじめに
14-A の商品化は 1957 年。開発には 7 年を要しました。当時はトランジスタが誕生したば
かりでまだ IC やマイコンは世に無く、入手可能な電子素子は真空管やリレー素子や高価な
トランジスタなどに限られていました。
14-A の回路はリレー素子を用いて、スイッチ素子間を繋ぐ膨大な配線網で演算機能を実現
しています。その回路内にはプログラム制御がなく、ロジックゲート回路さえも使用され
ていません。現在、四則演算機能はパソコン上のプログラム言語でいとも容易に作成でき
ますが、14-A では、60 年前の限られた技術環境で創意工夫を凝らしたアルゴリズム設計に
より、コストと性能を両立させた計算機を実現させています。
発明家・樫尾俊雄の残したこの技術を後世に伝えるため、本資料を作成しました。
カシオ計算機株式会社
2013 年 6 月
代表取締役副社長 樫尾 幸雄
1
目次
はじめに
1. リレー素子
2. 置数制御
3. 演算回路
4. レジスタ制御
5. 加減算
6. 乗算
7. 除算
8. 小数点計算
9. 定数計算
10. 自動累計計算
2
1. リレー素子
当時、リレーは電話交換機の通話接続スイッチとして多用されていた。そのリレーが論
理回路を構成できることに着眼して計算機を設計している。下図のようにリレー素子の組
み合せで、AND、OR、NOT などの論理回路と情報を蓄積するラッチ回路が実現できる。
論理回路とラッチ回路(メモリー)が構築できれば、原理的に計算機の開発は可能である。
商品化にはコスト低減とオフィス設置スペースへの工夫が必要で、高価なリレー部品の数
を 341 個に抑えている。大型コンピュータでは 10000 個以上が使われていたようで、14A
のリレー個数の少なさは画期的であった。またリレー素子は、計算回路に適するよう工夫
改良を加えた独自設計となっている。
リレー部品
リレー部
2次コイル
端子
トランスファ接点
Cリレーの
連動スイッチ
ブレーク接点
メーク接点
S
1次コイル
端子
リレー
連動スイッチ
2段 max8ヶ
R
C
C
一次コイル
C
二次コイル(小電力)
リレー回路と論理
3
C
AND
A
OR
NOT
Latch
R
S
B
C
A
C
B
C
A
C
C
C
C
C
A
B
C
A
B
C
A
C
R
S
C
4
2. 置数制御
当時の計算機は各桁毎に 0~9 のテンキーがマトリックス的に割り振られていた。リレー
計算機 14-A では、現在の電卓テンキーの原型となる1組のテンキーによる置数入力が開発
された。テンキーからの連続入力で多桁の数値入力が可能となった。現在では多くの電子
端末にあたりまえのように搭載されているが、この機能の実現は 14-A が初めてであった。
では、この置数制御のしくみを追跡してみる。
表示部は各桁毎に 0~9 の数値ランプと小数点ランプから構成している。テンキー入力部
から数値キーが操作されるとリレーV1~V5 にその数値が保持される。数値形式はそろばん
の 5 玉に類似した 1 桁にラッチ 5 個で構成された 2・5 進法である。例えば、数値4は V4
リレーのみ ON、数値7は V5 と V2 リレーがONとなる。また、14 桁数値を保持する 3 本
のレジスタ X、Y、Z を駆使して、置数や各種演算が実施される。
では電源ON後に、数値 4 キーを操作した場合を追跡する。数値4入力でラッチ V4 がO
Nとなり、その情報はレジスタ Z の 1 桁目にコピーされ、1 桁目の Z4 が ON となる。また
レジスタ Z の 2 桁目は、レジスタ Y の 1 桁目からコピーされる。同様処理にて、レジスタ
Z の 3~14 桁目にはレジスタ Y の 2~13 桁目がコピーされていく。すなわちはラッチVを介
した置数数値とレジスタ Y の桁上げ数値がレジスタ Z で合成されたことになる。そして桁
上げされたレジスタ Z の情報はレジスタ Y にコピーで戻される。またレジスタ Z は表示部
に導出され、表示部各桁の該当数値と小数点が点灯される。
例) 置数 4
表示部
数値形式は2・5進法
そろばんに類似
桁
はリレーがON
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Y
Y
Y
Y
テンキー入力部
V
V
V
V
V
5
続いてテンキーより 4 に続いて 5、6,7 と置数入力される場合を図示する。一式のテンキ
ーからの同様な連続置数操作により、14 桁までの数値入力が可能となる。
例) 置数 4 5 6 7
表示部
桁
Z
Z
Z
Z
Z
テンキー入力部
V
V
V
V
V
Y
Y
Y
Y
Y
参考) 14-A の操作パネル
6
4. 演算回路
2・5 進法による演算回路を説明する。下図は 1 桁分の演算回路で、14 個の演算回路が直
列に繋がって、14 桁全体の演算回路となる。
M=0(ブレーク状態)は加算回
路で、M=1(メーク状態)で減算
回路に切り替わる。また M リ
レーは各桁独立で加減算を制
御できる。演算回路は 1 桁か
ら 14 桁まで通電して初めてリ
レーが動作する。
Y =Y Y Y Y
進
Y
Y
Y
進
Y
Y
X X X X X
Y
M
X X X X X
Z
M
X X X X X
X
X
Y
進
Z1~Z4 リレーからの選択が 5
進演算結果の 1~4 となり、非
選択の結果 0(Z0)は抵抗での
代用となる。また、5 進のキャ
リー有り(5 進信号)か無しか
が選択され、そろばんの 5 玉
に相当する 2 進演算部に送ら
れる。2 進の Z5 リレーが通電
すると+5 で、非通電が+0 の状
態を示す。Z1~4 と Z5 の状態
の組み合わせで、数値 0~9 を
表わす。また、2 進演算結果に
よるキャリーの有りと無し
は、それぞれ 10 進と 0 進の信
号として次桁の演算回路に送
られる。
進
減算での 5 進 2 進の各ボロー
信号は加算でのキャリー信号
と同じ信号となる。左図の
「2・5 進法演算の論理」には、
この演算回路の全ての論理が
掲載してある。
Z
X
X
Y
Y
Y
X X X X X
Z
Z
Z
X
M
Y
Y
M
M
X X X X X
Y
M
X
X
Y
進
Y
M
Z
X
X
進
M
Y
進
1 桁の演算回路 X±Y⇒Z
X+Y= Z
M=
Y
X
X
X
X
X
X
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
X Y Y Y Y
X Z Z Z Z
X Z Z Z Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
X Y Y Y Y
X Z Z Z Z
X Z Z Z Z
Xー Y= Z
M=
Y
X
X
X
X
X
X
Y
Z
Z
Z
Z
Z
進
進
進
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
進
進
進
Y
Z
Z
Z
Z
Z
Y
Z
Z
Z
Z
Z
2・5 進法演算の論理
7
4. レジスタ制御
X、Y、Z の 3 本のレジスタに使われるリレーは 237 個で全リレー数の 7 割を占める。レ
ジスタには高価なリレーを多く必要とするため、3 本レジスタだけで全ての演算を実現して
いる。特に、乗算と除算ではレジスタ Y の分割制御などの創意工夫が施されている。
① レジスタは 3 本のみ
置数制御は Y と Z の 2 本、四則演算は X、Y、
Z の 3 本レジスタで実現される。加減算の被
演算数は X、演算数は Y に格納される。
(123+456 では、X=123, Y=456)
Z
Y
X
② 桁上げと桁下げは Y の 1 桁移動⇒Z に、そして Z⇒Y で戻す
Z
Y
桁上
Z
VY
桁下
V
桁下げ制御は、数値キー操作でラッチ V1~
V5 に蓄積された後にレジスタ Z の 14 桁目に
コピーされる。続いてレジスタ Y の 14~2 桁
目の数値がレジスタ Z の 13~1 桁目にコピー
されて、桁下げ数値がレジスタ Z で合成され
た後、レジスタ Y に戻る。
③ レジスター転送(複写)は Z⇒Y と Z⇒X
桁上桁下制御や演算結果はレジスタZで求
まるため、レジスタ転送(複写)は Z⇒X と、
Z⇒Y の 2 通りで片方向だけとなっている。
Z
Y
X
④ 演算は、X±Y⇒Z
Z
Y
X
演算結果
加減数
加減演算の結果はレジスタ Z に格納される。
また、レジスタ X とレジスタ Y の数値は演算
後も変化せず演算前の数値が残る。
被加減数
減算は各桁のMリレーが関与
⑤ 桁上げ桁下げは 2 分できる(乗算)
Z
Y
乗数
桁下げ
(Kn
被乗数
桁上げ
Kn+1)
分割はKnリレーが関与(n=0~13)
乗算では被乗数と乗数が共にレジスタ Y に格
納される。乗数は 14 桁から桁下げとなるた
め、レジスタ Y は 2 分され、境界は置数毎に
下位桁に移動する。その制御は、14 個のラッ
チ K0~13 から昇順移動で制御される。
8
⑥ 乗数 1 桁をダウンカウンター L に転送(乗算)
Z
Y
X
L
乗数
乗算では、乗数の最下位桁となるレジスタ Y
の 14 桁目がラッチLn(n=1~5)にコピーされ
る。ラッチ L はダウンカウンタで被乗数の加
算回数を制御する。また、レジスタ Y(乗数
部+被乗数)が桁上げされる。境界も桁上す
るためラッチ K は降順移動となる。
被乗数
加算部 X+Y⇒Z
Kn)
(Kn-1
⑦ 加減算は 2 分できる(除算)
Z
Y
X
1
除算では、被除数と共に 12 桁目まで桁上げ
される。またレジスタ Y の 14 桁目に数値 1
が代入され、減算部の減算可能回数を数える。
除数
被除数
加算部
X+1⇒Z
減算部 X-Y⇒Z
⑧ 減算で引けなくなると Y 桁下 (除算)
Z
Y
X
被除数-除数<0
1
除数
被除数
加算部
X+1⇒Z
(Kn
除算での減算部が引けなくなったらレジスタ
Y を 1 桁分桁下げする。それによって除数と
数値 1 が共に桁下げとなり、境界も桁下げす
るためラッチ K は昇順移行となる。
減算部 X-Y⇒Z
Kn+1)
⑨ Z レジスター情報が表示される
表
示
数値
Z
レジスタ Z の数値が表示部に導出され、各桁
の該当する数値ランプが点灯する。小数点は、
小数点 ラッチ Mn(n=0~13)の情報により該当桁の
小数点ランプが点灯する。
Mn
9
5. 加減算
加減算は乗除算を含む全ての演算の基本である。リレー計算機 14-A では、各桁毎にそれ
ぞれ 2・5 進法の加減算回路が構成され、上位桁へキャリーと通電情報が送られる。
① 加算 例) 4567+1234+
4
5
6
+
7
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
1
2
3
X+Y⇒Z⇒X
加算は+操作で直ちに計算を
実施する加算器方式で、=操作
を必要としない。電源 ON 直後
では、レジスタ X は 0 のため
X+Y⇒Z の加算は Y と同じとな
りその値は X に戻される。
+
4
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
X+Y⇒Z⇒X
4567+1234+ の 加 算 結 果 は
5801 となり、その結果は X に
戻され連続加算計算が可能と
なる。
X-Y⇒Z⇒X
減算も-操作で直ちに計算を
実施する。電源 ON 直後では、
レジスタ X は 0 のため X-Y の
加算は-Y となる。その結果は
負数のため 0 の補数表示で表さ
れる。
② 減算 例) 4567-1234-
4
5
6
7
-
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
(0-4567⇒-4567)
負数は0の補数表示
1
2
3
-
4
X-Y⇒Z⇒X
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
4567-1234-の加算結果は-
5801 で補数表示となり、その
結果は X に戻され連続加減算
が可能となる。
(-4567-1234⇒-5801)
10
③ 負数結果を正数で見るには、
W
-
Z⇒Y, 0⇒X
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
結果を置数状態へ
X-Y⇒Z⇒X
(0--5801 ⇒ +5801)
W キー操作で演算結果を置数
状態に変換する。すなわちレジ
スタ Y に演算結果、レジスタ X
には 0 が代入される。続いて-
キー操作で、0-Y が計算され
るため正数に戻る。
6. 乗算
乗算は加算 X+Y の回数制御と桁上げの組み合わせで求めている。レジスタYは上部に乗
数、下部に被乗数と 2 分される。また下部のみが加算対象で、その境界は桁上げと共に上
位桁へ移動する。
① 乗算 例) 123×456 =
1
2
3
×
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
4
6
5
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
K
K
=
Z
Y
X
K
K
X+Y⇒Z⇒X, L=L-1
L=0まで繰り返す
14桁のY⇒L
L
置数後の×操作で、被乗数はレ
ジスタ Y に残り、加減算のよう
にレジスタ X にはコピーされ
ない。次からの置数は乗算用の
特殊置数となる。
Z
Y
X
L
加算部
(0+123*6⇒738)
×操作後の置数はレジスタ Y
の 14 桁から桁下げを伴いなが
ら入力され、被乗数の置数とは
逆となる。レジスタ Y は被乗数
と乗数に 2 分され、境界は置数
毎に下位桁へ移動する。ラッチ
Kn(n=0~13)の昇順移行で制
御される。
=操作で乗算の計算が始まる。
レジスタ Y の 14 桁目の数値が
1 桁分のラッチ Ln(n=1~5)に
コピーされる。2 分された下部
の加算部で X+Y⇒Z⇒X をラッ
チ L の数値回数だけ加算を繰
り返す。L は加算毎にダウンす
るカウンタで 0 になったら加
算を終了する。
11
Yを1桁上(10Y⇒Z⇒Y)
14桁のY⇒L
Z
Y
X
X+Y⇒Z⇒X, L=L-1
L=0まで繰り返す
Z
Y
X
L
加算部
(738+1230*5⇒6888)
L
K
Yを1桁上(10Y⇒Z⇒Y)
14桁のY⇒L
X+Y⇒Z⇒X, L=L-1
If L=0 and K1⇒exit
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
加算部
L
レジスタ Y 全体を桁上げによ
り境界も上位桁へ移動し、ラッ
チ Kn は降順移行する。そして
同様にYの 14 桁目をLにコピ
ーして、加算をL回繰り返す。
L
K
(6888+12300*4⇒56088)
境界が K1 すなわち乗数の最上
位桁まで同様な処理を続ける。
最終的にレジスタ Z と X に計
算結果が求まり、答えが表示さ
れる。また、乗算後はレジスタ
Y は解除されゼロになる。
② 自乗計算 例) 1232=
S
1
2
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
K
K
=
自乗(Square)計算は S キー操
作後の数値入力で被乗数と乗
数を同時に置数処理する。最初
の数値キーでレジスタ Y の 1
桁目と 14 桁目に同じ置数がな
される。続いて数値キーが操作
されると被乗数は桁上げ、乗数
は桁下げされた後、同様にレジ
スタ Y の 1 桁目と 14 桁目に同
じ置数がなされる。
以下は乗算 123×123=と同等処理となる
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
L
3
K
加算部
=キー操作後は、通常の乗算と
全く同じ処理となる。
左例では、123×123=15129 の
計算結果が求まる。
(123*123⇒15129)
12
7. 除算
除算は減算 X-Y の引けなくなるまでの回数と桁下げの組み合わせで求めている。レジスタ X は
被除数が格納され、レジスタYは上部に商、下部に除数と 2 分される。またYの下部のみが減算対
象で、上部は回数計算用に 1 が代入される。その境界は桁下げと共に下位桁へ移動する。
① 除算
例 1) 123÷3 =
1
2
÷
3
12桁までY桁上, Z⇒X
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
3
=
表
示
12桁までY桁上、14桁Y=1
Z
Y
X
Z
Y
X
(除数)
(被除数)
K
[1桁目の商算出]
[2桁目の商算出]
Yを1桁下
下X-Y⇒Z, if Z<0 次桁へ
Z
Y
X
Z
Y
X
加算
K
減算 (123-300<0)
K
下X-Y⇒Z, 上X+1⇒Z, Z⇒X
下X-Y⇒Z, if Z<0 次桁へ
Z
Y
X
Z
Y
X
加算
(0+1)
減算 (123-30)
加算
割り切れる除算を例題とする。
置数後の÷操作で、置数の最上
位桁が 12 桁になるまで桁上げ
される。同時に小数点も桁上げ
され、さらに1回余分に桁上げ
となる。その数値は被除数とし
てレジスタ X にコピーされる。
÷操作後の置数は 1 桁目から
の桁上げ置数となるが、小数点
も置数毎に桁上げされ、予め求
める商の小数点位置を表して
いる。=操作で、被除数と同じ
く置数の最上位桁が 12 桁にな
るまで桁上げされ、レジスタ Y
に格納される。レジスタYの
14 桁目に数値 1 が代入され、
除数の下部と 2 分される。レジ
スタXも 2 分され、下部は被除
数で上部は商をカウントする。
下部の X-Y が引けたら、上部
の Y=1 を利用して上部の X に
+1 を加える。下部の減算が引
けなくなったら、次桁の商を求
めるため、レジスタ Y を桁下げ
し、境界も桁下げ(ラッチ Kn
⇒Kn+1 に昇順移行)する。
同様に 2 桁目の商を算出する。
減算 (3-30<0)
13
[3桁目の商算出]
Yを1桁下
下X-Y⇒Z, 上X+Y⇒Z, Z⇒X
Z
Y
X
Z
Y
X
加算
(40+1)
K
[~12桁目の商算出]
同様処理にて
if Z<0 and 1桁Y≠0 ⇒exit
減算 (3-3)
Y=0, X+Y⇒Z
商
表
示
Z
Y
≠0
X
Z
Y
X
加算
K 減算
同様に 3 桁目の商を算出し、レ
ジスタ Y の 1 桁目がゼロでなく
なるまで商を 1 桁ずつ算出し
ていく。
Zの下部は強制ゼロ
レジスタ Y の 1 桁目がゼロ以外
になったら、商の算出を終え
る。そして Y は 0 となり、X+Y
⇒Z の加算で商が Z に代入され
る。また 2 分されたレジスタZ
の下部は強制的にゼロとなり、
結果表示に余りの混入を防い
でいる。
② 除算 例 2) 789÷123=
7
8
9
÷
12桁までY桁上, Z⇒X
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
1
2
3
今度は割り切れない除算を例
題とする。前例と同じく、÷操
作と=操作で、ともに置数の最
上位桁が 12 桁になるまで桁上
げされ、小数点も桁上げで商の
小数点位置が求められる。
=
12桁までY桁上、14桁Y=1
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
789÷123=では、レジスタXの
14 桁目に商の最上位桁が求ま
る。123÷4=の場合では、レジ
スタXの 14 桁目は 0 で 13 桁目
が商の最上位桁であった。
K
[1桁目の商算出]
下X-Y⇒Z, 上X+1⇒Z, Z⇒X
下X-Y⇒Z, if Z<0 次桁へ
if Z<0 次桁へ Yを1桁下
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
K 減算 (789-123=666)
減算 (51-123<0)
K
減算
14
[~10桁目の商算出]
Y=0, X+Y⇒Z
同様に、 1桁Y≠0 ⇒exit
Z
Y
X
≠0
加算
商
表
示
Z
Y
X
減算
Zの下部は強制ゼロ
K
レジスタ Y の 1 桁目がゼロ以外
になるまで商の 1 桁毎の算出
を繰り返す。この例では商は
6.414634146 の 10 桁が求まっ
た。なお、レジスタ X の下部に
は減算の残り(余り)が格納さ
れる。
③ 余りの表示 例 3) 789÷123= 商・・・余り
+
[余り表示]
+操作で表示下部に
余りを追加表示する
X+Y⇒Z⇒X
表
示
Z
Y
X
余り
余りの表示は+キー操作とな
る。割り算でのレジスタ分割状
態は解除され、レジスタYは全
桁ゼロのため、X+Y⇒Z でレジ
スタ X の全桁情報が表示され
る。余りは最下位桁から除数の
桁数までとなる。
15
8. 小数点計算
演算実施前の被演算数と演算数の置数の段階で、演算結果の小数点位置を予め求めてい
る。また、小数点計算は乗除算に適用されている。
① 乗算 例 1) 1.23×4.56=
1
2
3
×
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
被演算置数では、小数点後の置
数により、小数点位置は 1 桁ず
つ桁上げされる。また乗算の演
算置数でも、小数点後の置数に
より、小数点位置は 1 桁ずつ桁
上げされる。
4
1.23×4.56 の計算は 0.0123×
456 の計算に置換され、演算結
果 5.6088 の小数点位置が予め
求められたことになる。
K
5
6
=
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
K
② 乗算 例 2) 0.123×0.0456=
0
1
2
3
×
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
K
4
5
6
=
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
0
0
最初の置数ゼロに続いて小数
点が押される場合を追跡する。
被演算置数 0.123 の小数点位置
は、小数点後の置数は桁上げの
ため 3 桁分桁上げされる。また
演算置数 0.0456 の小数点位置
は、小数点後の 4 つの置数にあ
たる 4 桁分桁上げされる。
0.123 × 0.0456 の 計 算 は
0.0000123×456 の計算に置換
され、演算結果 0.0056088 の小
数点位置が予め求められたこ
とになる。
K
16
③ 除算 例 1) 7.89÷1.23=
7
8
9
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
1
2
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
=
12桁までY桁上
Z⇒X
÷
÷操作で、被演算数は 12 桁位
置まで桁上げされる。小数点位
置も数値の桁上分桁上げされ、
さらに 1 桁分の桁上げが追加
される。7.89 の場合は小数点は
13 桁位置まで桁上げされ、表
示は .789 となる。
3
12桁までY桁上
Z⇒X
商
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
K
④ 除算 例 2) 7.89÷.00123=
7
8
9
÷
0
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
1
2
3
=
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
小数点を含む被演算置数の制
御は、×÷などの演算操作前の
ため除算も乗算と同じである。
0
商
演算数の置数操作で小数点位
置は桁上げとなる。小数点操作
後の置数では、小数点位置は保
持される。よって 1.23 の場合
では、小数点位置は 1 桁分桁上
げし 14 桁目となる。演算結果
7.89÷1.23=6.414634146 は最
上位桁から表示され、小数点位
置が予め 14 桁で求められてい
たことになる。
除算の演算置数が .00123 の場
合を示す。被演算置数 7.89 に
続く÷操作で、小数点は 13 桁
位置まで桁上げし、表示
は .789 となる。
.00 のように小数点入力に続く
0 置数では、小数点位置は 0 の
個数分桁下げされる。その後 0
以外の置数が操作されると、小
数点位置は変化しなくなる。よ
って.00123 では、小数点位置
は 2 桁分桁下げし、11 桁目と
なる。演算結果は 6414.634146
で、小数点位置 11 桁が求めら
れたことになる。
注意) 除数の置数で、0.0123 と小数点入力前に 0 置数を押すと小数点位置が 1 桁ずれる。
7.89÷0.00123=641.4634146
7.89÷ .00123=6414.634146
17
9. 定数計算
14-A には 3 種類の 5 桁数値を設定できる定数メモリーX,Y,Z が備わっている。数値の設定は手
動によるダイヤル操作となる。また、この定数呼び出しは、置数後に操作パネルの右下部にある
X,Y,Z キーの操作で直ちに演算を実施する。
ダイヤル
呼出キー
① 定数計算 例 1) 12Y (定数 Y は 00365 にダイヤル設定)
1
Y 以下は12×00365=
と同等処理を実行
2
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
L
If L=0 and K1 ⇒exit
Z
Y
X
L
K
定数ダイヤル Y には 00365 が
設定済みとする。置数後の Y 操
作で、 置数×定数 Y=
が直ちに実行され、キー操作を
簡略化している。
加算部
表
示
Z
Y
X
K
加算部
② ダイヤル設定値の確認 例 2) 1X (定数 X は 31416 にダイヤル設定)
ダイヤル設定値の確認は、数値 1 の置数後の定数操作で求まる。すなわち、1 X 操作でダ
イヤル X の設定値が表示される。
1
X
表
示
If L=0 and K1 ⇒exit
Z
Y
X
L
K
加算部
Z
Y
X
L
表
示
Z
Y
X
加算部
K
18
10. 自動累計計算
自動累計計算は、トグルスイッチでモードⅡ、Ⅲ、Ⅳのどれかを選択する。各モードの入力操作
は、置数 a×置数 b=の乗算操作の繰り返しとなる。モードⅡでは∑ab が表示部全桁で求まる。ま
たモードⅢでは、表示上部 7 桁に∑ab が、表示下部 7 桁に乗算 ab が求まる。さらにモードⅣでは、
表示上部 5 桁に∑b が、表示下部 9 桁に∑ab が求まる。
モード Ⅱ
自動累計 電源 ON
∑ab
Ⅲ
Ⅳ
∑ab
∑b
X=X+ab
ab
∑ab
Xu=Xu+ab, XL=ab
Xu=Xu+b, XL=XL+ab
① モードⅡ(∑ab) 例1) 12×7=, 6×13=, 5×4=
累計計算開始時は、レジスタ X はゼロ設定される。モードⅡの∑ab 計算の基本は乗算と同様で
あるが、演算後にレジスタ X の数値が保持される。X=X+ab の計算で∑ab が求まる。また減算累計
M キー操作となる。
の場合は、 =
1
2
×
7
=
∑ab
表
示
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
(0+12*7)
K
6
×
1
=
3
∑ab
表
示
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
(84+6*3+60*1)
K
5
×
M
4
=
∑ab
表
示
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
K
(162-5*4)
19
② モードⅢ(∑ab, ab) 例 1) 12×7=, 6×13=, 5×4=
モードⅢの設定により、表示中央(7 桁と 8 桁の境)に縦棒ランプが点灯し、表示上部 7 桁と下部
7 桁に均等分割される。以降、表示部及びレジスタは分割された状態で累積計算が実施される。
被演算数 a の置数は、上部下部共に置数される。ただし、a の置数と共にレジスタ X の下部 7 桁は
ゼロに初期化される。演算数 b の置数は、通常の乗算と同じく 14 桁からの桁下げとなる。
=操作で、レジスタ上部下部共に X+a×b の演算が実施される。上部は Xu=Xu+ab の計算により
∑ab が、下部は XL=0+ab の計算により ab が求まる。演算結果の表示も分割され、負数結果の場
合は、分割表示内で 0 の補数表示となる。
1
2
×
=
7
∑ab
表
示
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
(0+12*7)
K
6
×
1
∑ab
ab
K
(84+6*13)
(0+6*13)
4
M
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
5
×
(0+12*7)
=
3
表
示
×操作で1~7桁Xは0
ab
=
∑ab
表
示
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
K
(162-5*4)
ab
(0-5*4)
20
③ モードⅣ(∑b,∑ab) 例 1) 12×7=, 6×13=, 5×4=
モードⅣの設定により、表示部の 9 桁と 10 桁の境に縦棒のランプが点灯し、表示上部 5 桁と下
部 9 桁に分割される。以降、表示部及びレジスタは分割された状態で累積計算が実施される。
被演算数 a の置数は、下部のみに置数される。演算数 b の置数は、14 桁から桁下げとなるが、上
部の最下桁(10 桁)に数値 1 が代入される。=操作で、上部はXu=Xu+1×b の計算により∑b が、
下部は、XL=XL+ab の計算により∑ab が求まることになる。演算結果の表示も分割され、負数結
果の場合は、分割表示内で 0 の補数表示となる。
1
2
×
7 置数と同時に1が設定
表
示
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
K
6
×
1
=
∑b
∑ab
(0+1*7)
(0+12*7)
=
3
∑b
表
示
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
K
5
×
(7+1*13)
(84+6*13)
M
4
=
∑b
表
示
表
示
表
示
Z
Y
X
Z
Y
X
Z
Y
X
K
∑ab
(20-1*4)
∑ab
(162-5*4)
21