小さな眼をもった台風の強さを, ーR DV。RAK 法で

小さな眼をもった台風の強さを,IR DVORAK
決定する場合に生じる誤差について
法で
On the Error of Typhoon Intensity Estimation by Means of IR
Dvorak Technique OccurrinsT when the Eye is Very Small
島 田 健 司*
Kenji
Shimada
Abstract
A case study was
Dvorak
made
<m the error of typhoon intensity e8tiinati<≫i
by
technique occurring when
mated the intensity weaker
8210 when
the eye is very small.
The IR
Dvorak
than the actual・one by 0.5 to 1.0Tnumber
is lower
is due to that the
than the real one because a part
clouds is included in the instant field of view
1。 はじめに
of IR
in case of Typhoon
it had a very small eye of about 5 a. m. in di&meter。This
71a。in the eye observed by CMS
means
technique esti-
of the infra-red radiometer
of the wall
of GMS.
(EIR)の時間的変化を示している。
Fig. 1 からすぐわかる゛J;うに,眼の直径がほぽ5海
気象衛星の赤外画像データを使って,台風の強度を推
里の時期,すなわち9月22日12Zから9月25日00Zまで
定する手法のひとつとして,DVORAK(1982)の方法
は, EIRはRCPよりも20
があり,各国の台風予報業務の中でよく使われている。
くなっている。
1983年に,
9月25日00Zの後,限の直径は急速に大きくなり,25
WMOの主催で行なわれた,台風業務実験,
mb
ないし45
mb
程度高
第2回本実験において,国際実験センターは,気象衛星
日12Z頃には30海里を示した。その後は,15ないし25海
センターが作成した.
里で推移したが,この間における,
DVORAKの赤外強調画像を使っ
て,台風の強度の推定を行なった。その結果によると,
対象となった4個の台風,
EIRとRCPとの差
は極めて小さくなっている。
8305, 8309, 8310,8311のう
3。 誤差の原因
ち,8310は他の3個の台風と異なり,発達初期から最盛
期にかけて,DVORAK法で推定された中心気圧が,飛
行機観測による中心気圧よりもかなり高かった。 」
IR DVORAK
本論文は,この原因について,ひとつの考察を提供す
主として,限内のTbbの最高値と,限を完全に取巻い
法における,眼を有する台風の強度は,
るものである。
ている.
Tbbの最低値によって決定される。従ってこ
れら2つの7`。j,が,正しい値を示さない場合に。は,決
2。 飛行機観測による中心気圧とIR DVORAK法
定される台風強度に,誤差が生じることになる。
による中心気圧との比較
GMSが雲を観測する場合,一般的には,観測対象の
雲を斜め上方から見ることになる。このため,観測され
Fig. 1は,台風8310の発生時から,衰弱期以前まで
る雲頂の位置は,雲頂が高くなるに従い,実際の位置か
の,飛行機観測による中心気圧(RCP)と眼の直径,お
ら視線方向にずれることになる。よく発達した台風の
よびIR
DVORAK
法によって推定された中心気圧
wall cloud は,このために,台風の眼内のTbb cア)値
に影響を与えることが考えられる。以下に.
*気象庁予報課,
Japan Meteorological Agency.
よってこの影響を説明する。
−9−
Fig. 2に
METEOROLOGICAL
SATELLITE
CENTER
TECHNICAL
NOTE
N0.10. NOVEMBER
1984
Neasured
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pressure
by RECCO
Eye DlCKKter
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X C翰tral
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RECCO
Pressure
Estlmted
o
幼1000﹂こ﹂こ﹂一コ一﹂ここ890﹂
Central
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SEPT 1983
Fig. 1 Time changes in central surface pressure measured by RECCO
(dots and a solid
eye diameter measured by RECCO
({Jotsand a broken line) and central surface
line),
pressure estimated using EIR.
P, G and E indicate the radar representation of the eye
was poor, good and excellent, respectively.
は,D>W十jLでなければならないところが,
GMSが
観測する場合放射計は,北から南へ,1ライソずつステ
ップしつつ東西に走査する。このため,特別な場合を除
き,瞬時視野角の前縁又は後縁が,
Wall cloud の内壁
に一致することはない。したがって実際には,眼内の
T・・が, Wall cloud の影響を全く受けないためには,
D>2W十jLでなければならない。 。
台風8310は9月23日00Zから26日00Zにかけて,16N,
138 E 付近から,27N,125
E 付近に。移動した。原田(1980)
によると,雲頂高度が15
Fig. 2 Illustration of the oblique
of an eye
and
wall
clouds
by
位置が4
observation
これらの位置で,それぞれ,
GMS.
km
とすると,jLは,前者の
km,後者の位置では8km程度であり,Wは
5.5 kmおよび6km程度
である。従って,2W十jLは,23日00Z前後で15
直径Dの眼を持つ台風を,斜め上方から観測する場
程度,26日00Z前後では20
合,衛星に近い側のWall
台風8310の眼の直径は,23日00Zから25日00Zまで
cloud の内壁の上端Kは,K
km
km
程度となる。
の実際の位置LからjLだけ前方の地点K吋こ投影され
は,5海里すなわち, 9.2 km前後であったから,眼内の
る。従ってGMSの瞬時視野角の後縁がKyより後方に
T。3は, Wall cloud の影響を受けて,かなり低くなっ
あれば. Tbbは,
ているが,25日12Z以降では,眼の直径は,少なくとも
Wall cloud の影響を受ける。また,
衛星から遠い側のWall
cloud の内壁の下端をJとする
15海里すなわち27.8km以上を示しているので,眼内o
と, GMSの瞬時視野角の前縁が,Jより前方に入れば,
Tbbは,
同様に,観測されるTjjは,
る。
ける。すなわち,
Wall cloud の影響を受
GMSの赤外放射計の瞬時視野角の地
Wall cloud の影響を受けていないと考えられ
実際,9月22日2340 Z にGMSが観測した,Tbb O
上に落す長さをWとすると,瞬時視野角の後縁がK勺こ
分布図(Fig.
あった場合,前縁が,
133.6Eの7j3は−39°Cである。ちなみに,22日2307
Wall cloud にかからないために
−10−
3)を見ると,中心とみられる18.5N,
Z
気象衛星セyJターゾ技衛報告1鯵10号mi年U刄
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Sept. 22,1982.
values
in the
vicinity
of typhocMi center
measured
by
GMS
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Fig. 4 Same
as Fig. 3 but for 2339Z,Sept. 25,1982.
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METEOROLOGICAL
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Fig. 5 Nomogram for determining T-numbers using ths highest temperature in eye and
the su^ouoding ,
lowest temperature out of eye.
の飛行機観測によると,眼内に,中・上層雲喋存在じて それぞれ.
7.4と6.6となり,ぞの差は0.8である。こ
いない。
の差はTOPEXのマーこ・,アル(1983)の中の中心気圧
いっぽう,9月25日2339
付近の7.。図(Fig.
Z にGMSが観測した,中心
4)によると,中心の26.7N,
125.1E付近の値は,3°Cないし8°Cであり,
への換算表を用いると,35
mb
の差となる。すなわち,
眼内Tbbの正しい値が8°Cであり,眼が小さかった
Wall cloud
の影響はほとんど受けていないものと考えられる。
ためにWall
cloud の影響を受け,
-39°Cと観測した
場合, DVORAK法で推定した中心気圧は,35
mb 程度
の誤差が生じることになる。
4。 小さい膜が台風強度に及ぼす影響量
9月22日2340の赤外画像から求めたTナンバーは6.0
換算した中心気圧は927
前にも述べたように,
IR DVORAK
法では,眼がは
RCPは883
mb
mb
であった。 22日2307Zの
であったから,その差は,44
mb
であ
っきりしている台風では,台風の強度(ナンバー)は,
り,・上に述べた35 mb よりも大きい。しかし,25日2339Z
主として眼の中(D Tbbの最高値と,眼を完全に取りま
は,最盛期をやや過ぎているので,最盛期の22日2340
いているバンドの7・。によって決められる。
には,眼内の7j・は8°Cよりも高いと考えられる。
Fig. 5は,DVORAK(1982)が眼内のTbb最高値
したがって,誤差も,35
と,眼を取り巻くTbbの最低値とから,台風の強度示
際に生じた,
mb
Z
より大きいと推測され,実
EIRとRCPの差に近くなろう。
数を求めるために作成した図である。
この図によると,眼を取り巻く7`。jの最低値が,同
6。 まとめ
じ−75°Cであったとき,眼内の7`。jの最高値が,
+8°Cおよび−39°Cであった場合,Tナンバーは,
台風8310についての,
−12−
IR DVORAK
法による,中心
気象衛星センター 技術報告 第10号 1984年11月
気圧の推定値は,眼の直径が5海里前後の時期には,飛 る。
行機観測による中心気圧よりもかなり高い値を示した。
最後に,本論文を作成するにあたり,寺内栄一気象衛
これは,眼が小さいために,
GMSの瞬時視野内に,
星セソター所長をはじめ,多くの職員の方々から貴重な
cloud が部分雲量として含まれ,眼内のTBBか,
御意見をいただいた。また,黒沢真喜人予報課長には,
Wall
実際より低くなるためである。
DVORAK
は,太平洋地
原稿の閲読をいただいた,ここに,謝意を表する。
域の熱帯低気圧の強度示教を,NOAA/TIROSの資料に
もとづいて調査し,強度示教(Tナンバー)と中心気圧
参考文献
の換算表を作った。
この衛星では,赤外放射計の分解能は衛星直下点で
1.1 km
であるので,眼内のTbbにWall
響を及ぼす割合は,
cloud
の影
hanced infra-red imagery, Report on the WMO
seminar on the application of satellite data to
GMSの場合に比べてはるかに小さ
く直径5海里程度の小さな眼をもった台風についても,
この種の影響を考慮せずにすんだ。 しかし,
外資料を使う場合には,
内, 25N付近では,直径20
tropical cyclone forecating. Bangkok,
GMSの赤
15N付近では,直径15
km
Dvorak, V.,1982 : Tropical cyclone intensity ana lysis and forecasting from satellitevisible or en-
km
以
衛星センター技術報告第1号,
以内の眼をもった台風
Thailand 24
May-4 June, 1982.
原田知幸,1980:衛星画像を用いた雲位置の補正,気象
pp. 53-57,昭和55年3
については,DVORAK法で推測された強度示教を調整
月,気象衛星センター.
WM0,1983 : TOPEX
operational Manual―Analysis
し,示教を0.5ないし1.0加える必要があると考えられ
and
−13−
forecast―, Appendix
E,p. 16.