原油価格下落の石油企業への影響

原油価格下落の石油企業への影響
2015年2月19日
調査部エネルギー資源調査課
片山 治
1
ポイント
1. メジャー企業等業績
•
•
利益、生産量
これまでの費用高騰と再構築(費用削減)策
2. 原油価格下落を再構築強化→利益創出力向上の
機会に
2
メジャー5社純利益推移
2014のトタール
は未発表
3
原油価格推移(ブレント・スポット)
2013年
1月
2014年
1月
2015年
1月
4
メジャー5社生産量推移
2014のトタールは
未発表
5
メジャー5社上流部門用途別投資額
(~2013年)
開発費の上昇が顕著
2014年は決算
報告により明ら
かになる
出所:メジャー5社アニュアルレポート等
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タイプ・フェーズ別投資・キャッシュフローと投資判断
(イメージ)
注意:大規模プロジェクトの支出が終了に向かうなどして、前年からの減額が見通され
るなど、支出減の全てが原油価格下落に起因するとは限らない。
現時点(縦太線)
投資に係る判断と理由(例として)
投資続行
既にコントラクターと契約済みで費用逓減期待薄
投資後ろ倒しによる生産開始遅延の影響
LNG
投資延期
ほとんどの支出がこれから
大水深
(複数フィールド段階的繋
ぎ込み)
投資続行
安定的な利益創出源
ワークオーバー等維持費の削減が長期的にも影響
中水深
7
2015年投資支出見通し
(億ドル)
資本支出
(全部門)
現在の
2015年
見通し
2015年
当初
見通し
2014年
実績
シェル(資産買収除き)
350
‐
約400
BP(資産買収除き)
200
240~260
229
今後発表
370未満
(2014年3月)
385
今後の事業環境を反映した
2015年事業・支出計画を3月に
発表。
シェブロン
348
‐
403
今後の事業環境を反映した
2015年事業・支出計画を3月に
発表。
トタール(上流のみ)
235
コノコフィリプス(上流中
心)
115
エクソンモービル
•
備考
260
135
(2014年12月)
約200
115億←135変更内訳:資材・
サービス費の低下5億ドル、開
発費14ドル削減
今後のコスト低下見通しを織り込んでいる企業(シェブロン・コノコフィリプス)とそうでない企
業(BP)あり。
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事業タイプ別再構築策
 ベース事業(生産中・キャッシュ回収段階)
(参考)シェブロンの原油価格損益分岐点
 クリティカルで、生産維持目的の費用の削減の余地は
限定的。(シェル)
 増産・新規生産:
 オイルサンド、シェール/タイト・オイル、大水深
開発費巨額で「$50/Bでは成立せず」「価格上昇はい
ずれ起きる。」(シェブロン)
 探鉱・未FID事業
原油価格低下に対応し、支出対象厳選、支出ペー
ス減速・支出額削減。(シェブロン)
 資産売却
 BPは2010年のメキシコ湾事故以降の再構築に
よる資産売却、シェルは2014~2015年の資産
売却予定額150億をほぼ達成。→BP「残る資産
売却は原油価格下落の影響を比較的受けない
探鉱および下流資産が対象。」
2013年業績発表資料より転載
 その他
 昨年比で生産量の伸びを掲げる企業もあり-今後の
資材・サービス費低下によるセーブ分を投資に振り向
け、目標生産量達成するとしている。
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事業エリア別再構築策
 北米
シェルの場合(シェール事業を2014年に強力にテコ入れ)
 資材・サービスに係る費用低下
 コントラクターとの再契約、包括購買基本契約・委託先等ロケーション厳選操業費・資本支出合わ
せて5.5億ドルを削減。
•
5割強が掘削数およびプロジェクト数の削減
•
約2割が人員削減、残りが操業費の削減
•
管理費は事業減・資産売却への呼応と海外での作業シフトと効率化によって達成
•
33億ドルの資産売却(11万boe/d相当)も行った。
 北米以外
シェルの場合(2016年以降大規模プロジェクト支出を控える)
 2014年、2015年の2年間で投資数十億ドルを削減中。
 2015年にプロジェクト撤退を含め投資2014年比20%減(2億ドル)
•
多くのケースで事業環境等いわゆる地上リスクの問題あり。
•
また投資額の上限を超えている。
•
新たな減損・評価損発生の可能性あり。
 シェール
 シェール事業対象厳選(シェブロン、北米以外含む)。
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終わりに

以下の再構築は企業にとり最優先課題である再投資および利益創出(→株主還元)のための施策

ベース事業(利益創出源)の支出を持続。

これまで行ってきた以下のコスト高騰に対する費用節減策を、原油価格下落でさらに強化

資材購入・サービス契約につき
 短期的には再契約・契約更新時の料金見直し
 包括購買基本契約・安価なロケーションの重視(シェル)
 操業・管理費の削減


短期的な利益創出に影響を与えない、プロジェクトのFID後ろ倒し・投資減速。
費用見通しは、現段階のものであり今後の原油価格・コスト推移如何でさらなる支出削減の可能性あり。
→多くの企業は3月もしくは第1四半期業績報告時に追加削減等の変更を発表予定。
•

北米では、3月末に金融機関による半期毎のredetermination(担保資産(埋蔵量)の評価見直し)、
つまり融資の適正審査がある。バランスシートが大きく悪化している企業は資産の売却を迫られる。
原油価格下落のメジャー企業等国際石油会社の短期的な生産への影響は限定的と考えられる。
 低価格が継続する場合、プロジェクトの後ろ倒しによる中・長期的な影響があり得る。

再構築の強化で、コスト体質はさらに強固になると考えられる。

一方、費用節減・再構築で、安全・安定的操業を犠牲にはしないことを企業は強調。
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