立命館大学 新技術説明会 10 制御性RNAとDDSの一体開発による 抗インフルエンザ予防・治療薬 立命館大学 薬学部 薬学科 教授 木村 富紀 RITSUMEIKAN1 遺伝子の発現を制御する技術 • 核酸を用いた従来法とその問題点: リボザイム法、RNA干渉法、アンチセンス DNAオリゴヌクレオチド法、デコイ核酸法並 びにRNAアプタマー法がある。 これらの方法は、発現の抑制(低下) のみを可能にする。 RITSUMEIKAN 2 新技術の特徴 • 内因性のアンチセンスRNAを用いるわれわれ の制御方法は、特定の遺伝子の発現を seODN (mRNA上の標的配列)により抑制で きるだけでなく、asORN(アンチセンスRNA機 能ドメイン配列)の使用によりその発現の増強 を可能にする(NATRE technology)。 • これまで不可能であった双方向性の遺伝子の 発現制御が可能となる点で独創的であり、 従来法にない新規性並びに優位性を有する。 RITSUMEIKAN3 ゲノムからの転写産物の大部分はタンパク質を コードしない非コードRNAである ヒトゲノム(ca 3 Gb) 3% (20,687 遺伝子) ヒトトランスクリプトーム ENCODE project " Consortium (2012) (制御性, 非コードRNA) 90%< Human genome " sequencing " consortium, ʻ03 Protein-coding genes Rest Rest Protein-‐coding genes Transcripts Rest Rest Transcripts RITSUMEIKAN4 新技術を応用した新規抗ウイルス薬の開発 • 選択毒性に左右されない標的分子の設定。 • 宿主防御免疫応答の利用。 • 防御免疫応答エフェクター発現の人為的な調節。 • 生理的な範囲における発現の早期化と増大。 副作用が少ない汎抗ウイルス薬の開発 5 何故インターフェロン-α1 (IFNA1)遺伝子に着目したか IFN-α1 mRNA AUG 208" 452" BSL 487 487 UAA AREs 5ʼ 1 An 3ʼ 68" SL1" 637 SL2" 876 Nuclear export of IFN-α1 mRNA IFN-!1 1 IFN-α mRNA mRNA 352" BSL! IFN-!11 IFN-α mRNA/ mRNA !SLII ΔSL2 SL2" 322" 305" SL1" 229" 434" 308" IFN-!1 mRNA/ IFN-α !SLI1 A C mRNA ΔSL1 mRNA ΔBSL B CSS RITSUMEIKAN 6 IFN-!1 mRNA/ IFN-α 1 !bulge D Kimura et al., J.Cell Sci., 2004 Kimura et al., Med.Mol.Morp.,2010 Matsui, Kimura et al., Hepatology, 2008 ヒトInterferon-α1 antisense RNA (IFN-α1 AS)の同定 IFNA1 SeV" Infection - 1 + + - + IFN-α1 ! AS" RNA + + + BSL 876/ 0 -242 SL1" SL2" 28S 18S IFN-α1 ! mRNA 100 nt IFNA1� 5ʼ CDS 5’ 3ʼ 3’Probe (200 nt x 4) Northern-blot analysis Genomic location of IFN-α1 ! AS exons センスオリゴヌクレオチド (seODNs) によるIFN-α1 AS発現の抑制 IFN-α1 mRNA S4" AAA IFN-α1 AS S3" Sense ODN S2" RNase HによるIFN-α1 AS発現の抑制 S1" Time after transfection Nc2" S1 S2 S3 S4 Nc1 Nc2 hr" IFN-α1 AS 18S rRNA Nc1" RT-minus RITSUMEIKAN8 IFN-α1 AS発現抑制が同mRNA発現に及ぼす効果 IFN-α1 mRNA (fold) Time after SeV infection (hr) 1.25 12 13 14 15 16 17 KD(-)/18S KD(+)/18S 1.00 0.75 5.1hr 0.50 0.25 0 0.9hr KD(-)/mRNA KD(+)/mRNA 1 2 3 4 5 0 Actinomycin D treatment (hr) T1/2 of IFN-α1 mRNA (<80% ) IFN-α1 mRNA 発現レベルの低下 RITSUMEIKAN9 IFN-α1 AS の過剰発現が同mRNA の発現に及ぼす効果 Control 876 0 IFNA1 1 3 6 12 24 0 1 3 Time after inf. 6 12 24 IFN-α1 AS IFN-α1 mRNA (fold) ATG CMV pro AS over-expression 1.4 1.2 Over-expression(+)/ 18S Control/ 18S 1.0 0.8 8.1 hr 0.6 2.8 hr 0.4 Over-expression(+)/ mRNA 0.2 0 Control/ mRNA 0 1 2 3 4 5 Actinomycin D treatment (hr) T1/2 of IFN-α1 mRNA (290% ) IFN-α1 mRNA 発現レベルの増大 RITSUMEIKAN10 mRNAを安定化するIFN-α1 AS機能ドメインの決定 Overexpression of truncated IFN-α1 AS mutants Cont AREs 5ʼ" AUG CSS+R" UAA ED7R" IFN-α1 " AS CSSR" CSS SL2R" BSLR! SL2 BSL 0" 1" 2" 3" 4" Relative IFN-α1 mRNA " expression (fold)" IFN-a1 AS 5ʼUTRR 5'UTRR 3ʼUTRR" 3'UTRR DSR" DSR DS 3ʼ" mRNAR" Cont DS Cont" 0 1 2 3 4 0" 1" 2" 3" 4" Relative IFN-α1 mRNA " expression (fold)" IFN-α1 AS BSLR ドメインが IFN-α1 mRNA の安定性制御 のための中心領域である RITSUMEIKAN11 25塩基長のBSLR塩基配列からなるアンチセンスリボオリゴヌクレオチド (asORN)は全長のAS RNA と同程度にIFN-α1 mRNAの発現量を増加する IFN-α1 mRNA AAA asORN (corresponding to BSLR) IFN-α1 AS " 15 322 229" " IFN-α1 AS (fold) asORN 10 5 208" 30 0 5 10 15 20 25 2.3 fold increase 20 asORN 10 ncORN mock 0 0 ncORN" IFN-α1 mRNA 40 IFN-α1 mRNA (fold) 352 0 5 10 15 20 25 Time after SeV infectin (hr) RITSUMEIKAN12 想定される用途 【アンチセンスリボオリゴヌクレオチド】 • 現行INF製剤では適応がなく、又抗ウイルス薬が 存在しない呼吸器ウィルス感染症の治療: 1.コロナウイルス、パラインフルエンザウイルスやRSV による乳幼児冬期感冒 2.ライノウイルスやコロナウイルス等による風邪症候群等 3.抗ノイラミニダーゼ阻害薬抵抗性のインフルエンザ ウイルスによるインフルエンザ 【センスリボオリゴヌクレオチド】 • IFN-αの過剰産生に起因する自己免疫疾患(SLE、 皮膚筋炎等) RITSUMEIKAN13 ここ迄の発表に関わる知的財産権 • 発明の名称 :インターフェロン-αモジュレーター • 出願番号 :特願2011-536201 • 出願人 :学校法人立命館、 学校法人関西医科大学、 株式会社アミノアップ化学 • 発明者 :木村 富紀、西澤 幹雄、蒋 時文、 西川 正雄 発表論文: Kimura et al., CMLS 70 (8):1451-67, 2013) この発明は、ヒトIFN-α1 ASを用いて。ヒト細胞で証明。 RITSUMEIKAN14 実用化に向けた課題 • POC実験:asORN効果の生体内における検証 • インフルエンザウイルス感染動物モデルの構築 • DDSの開発 RITSUMEIKAN15 モルモット感染モデルの採用 モルモット • 機能性のMx1遺伝子を持つので、IFN-αによる 刺激応答、抗ウイルス効果を生体レベルで検討 できる。 • インフルエンザに罹患しても死亡せず、感染を 水平伝播するため、実験結果をヒトに外挿可能 である。 マウス • Balb/c やC57BL/6等のマウスはIFN-α 刺激応答遺伝子の主体となるMx1遺伝子が 変異している。IFN応答を解析できない。 ・インフルエンザウイルスに感染すると死ぬ。 RITSUMEIKAN16 モルモット感染モデル:IFN-α1遺伝子の特定 • モルモットIFNA1遺伝子候補の選択 • 候補遺伝子が示す抗ウイルス効果の検証 • モルモットIFNA1遺伝子の決定(DDBJ/ EMBL/ GenBank accession number, AB671739) RITSUMEIKAN17 モルモットIFN-α1 mRNA共通二次構造の選択 • mfoldを用いたモルモットIFN-α1 mRNAの二次 構造予測 • 自由エネルギー(ΔG)の低い10の予測二次構造 中に最大の保存度が見られた構造(○)の選択。 RITSUMEIKAN RITSUMEIKAN 18 モルモットセンスオリゴヌクレオチド (seODN)の決定 • mRNA共通二次構造から一本鎖領域を選択 • AS RNAの標的候補とし、その塩基配列を持つ センスオリゴ(S2-S5)を作製 RITSUMEIKAN RITSUMEIKAN 19 seODNによるモルモットIFN-‐α1 AS RNA発現抑制実験 IFN-α1 mRNA AAA IFN-α1 AS seODN RNase HによるIFN-α1 AS発現の抑制 • S4はヒトと同じく、IFN-α1 AS RNA発現を最大 値に到達後、低下させた • S3は、IFN-α1 AS RNA、mRNAを共に経時的 に増加させた RITSUMEIKAN 20 モルモットアンチセンスリボオリゴ (asORN)の作製 • IFN-α1 AS RNAに対し異なる作用を示すseODNを得たので、 これに対応するasORNを作製し、mRNA発現への影響を検討 した。 RITSUMEIKAN 21 モルモットasORN過剰発現実験 • asORN4はAS RNAに影響することなく、gpIFN-α1 mRNA の発現を増加させた • asORN3はgpIFN-α1 AS RNAを増大させることにより、同 mRNAを増加させた RITSUMEIKAN 22 DDSの開発 ホソカワミクロン株式会社開発DDSナノ粒子へのasORN3 封入至適条件の検討 • ヒトA 型インフルエンザウイルスを感染させたモルモット胎 児線維芽細胞において、対照として用いた市販の遺伝子 導入試薬(MATra; IBA GmbH)を上回るIFN-α1 mRNAを 発現誘導する、asORN3量、PLGAナノ粒子作製条件、 asORNの封入条件を至適化した。 RITSUMEIKAN 24 POC実験:asORN効果の生体内 における検証 ヒトインフルエンザウイルス感染モルモット気道において asORN3が示す抗ウイルス効果 • ヒトA型インフルエンザウイルスを感染させたモルモットにおい て、投与量に依存して、IFN-α1 mRNA発現量の増大とウイル ス力価の低下を観察した。 RITSUMEIKAN 26 asORN3投与はモルモット直腸温度その他の副作用指標に 影響を示さない • ヒトIFN-αタンパク質投与に伴い観察される発熱、自己免疫疾患様 症候の出現の有無を検討したところ、asORN3の投与により、直腸温度、 体重、脾臓重量に変化は認めなかった。 RITSUMEIKAN 27 産学連携の経歴 • 2007~2011年 JST A-‐STEPフィージビリティ スタディ、シーズ発掘事業に採択(3回) • 2013~2014年 JSTシーズ顕在化タイプ事業に採択 課題名:制御性RNAに由来する核酸医薬シー ズとDDSの一体開発による抗インフルエンザ予 防・治療薬の創出(ホソカワミクロン株式会社と の共同研究) RITSUMEIKAN 28 企業への期待 • POCを終了した本創薬シーズを前臨床試 験により検証するべく、JST A-STEP ス テージII 産学共同促進ステージ ハイリスク 挑戦タイプに共同申請する企業を求めます。 • 自然免疫調節性核酸医薬の前臨床開発を行う のみならず、任意の標的遺伝子の発現制御を 可能にする塩基配列の探索・提供が可能です。 RITSUMEIKAN29 前臨床試験 RITSUMEIKAN 30 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:呼吸器ウイルス感染症の予防・治療剤 • 出願番号: 準備中 • 出願人: 学校法人立命館、 ホソカワミクロン株式会社 • 発明者: 木村 富紀、辻本 広行、塚田 雄亮 お問い合わせ先 立命館大学研究部 リサーチオフィス (BKC) 産学官連携コーディネーター 押柄 和幸 TEL: 077-561-2802 FAX: 077-561-2811 e-mail:coor-024@st.ritsumei.ac.jp RITSUMEIKAN32
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