海外経済フラッシュ No.2015-1 2015 年 1 月 20 日 中国:2014 年 10-12 月期 GDP1は前年比+7.3%と前期並みの成長を確保 経済調査室 <ポイント> 10-12 月期の実質 GDP 成長率は前年比+7.3%と、7-9 月期の同+7.3%から横這い。 2014 年通年では同+7.4%と、政府目標「7.5%前後」をほぼ達成する形となった。 10-12 月期の成長率は前期から横這いとなったが、直近、月次の経済指標では工業 生産、PMI 等全般に低調。不動産市場の調整を起点に投資や生産の伸び悩みが続 いている。 2015 年についても、過剰生産能力の調整や信用の抑制等、構造改革の継続により 成長ペースの低下傾向が予想されるものの、景気腰折れ回避に向け、引き締め策 の緩和等により安定成長維持とのバランスを図っていくことが予想される。 <結果概要> 【実質 GDP 成長率】前年比+7.3% ← 7-9 月期:同+7.3% 前期比+1.5% ← 7-9 月期:同+1.9% 10-12 月 期 の 実 質 GDP 成 長 率 は 前 年 比 +7.3 % と 、 市 場 の 事 前 予 想 (Bloomberg:同+7.2%)をやや上回り、7-9 月期と同水準となった。但し、 前期比ベースでは+1.5%と、7-9 月期(+1.9%)から減速。 2014 年通年の実質 GDP 成長率は同+7.4%となり、2013 年(同+7.7%)か ら減速。政府目標「+7.5%前後」をほぼ達成する格好となった(注)。 (注)国家統計局の馬建堂局長は、会見で 2014 年の 7.5%前後の政府目標を実現したと発言した。 需要項目の動向を月次指標から見ていくと以下の通り。 【外需】輸出 輸入 前年比+8.6% 前年比▲1.6% ← ← 7-9 月期:同+13.0% 7-9 月期:同+1.1% 10-12 月期の輸出(名目)は前年比+8.6%と一桁台に鈍化。主要国・地域 別では、ASEAN 向けが同+17.1%と伸びを高めた一方、EU 向けが同+4.3% へ大きく鈍化。日本向けについては同▲7.0%とマイナス幅が拡大した。 10-12 月期の輸入(名目)は同▲1.6%と約 5 年ぶりのマイナス。もっとも、 原油や鉄鉱石など資源価格の下落の影響が大きいとみられる。10-12 月期 1 2015 年 1 月 20 日 の貿易収支は 1,496 億ドルとなった。 2014 年通年では、輸出は同+6.1%と底堅い伸びを示した一方、輸入は同 +0.5%にとどまり、貿易黒字は 3,825 億ドルへ拡大した。 【投資】固定資産投資 前年比+13.3% ← 7-9 月期:同+13.4% 10-12 月期の固定資産投資(名目、都市部)は前年比+13.3%と、7-9 月期 (同+13.4%)から小幅減速。景気下支え策を受け「水利・環境・公共施 設」などのインフラ関連が高めの伸びを維持したほか、「輸送」が加速。 「製造業」はやや持ち直しがみられたが、相対的に低めの伸びとなった。 別統計の不動産投資は、2014 年が前年比+10.5%(2013 年通年は同+19.8%) と大きく減速した。 【消費】小売売上高 前年比+11.7% ← 7-9 月期:同+11.9% 10-12 月期の小売売上高(名目)は前年比+11.7%となり 7-9 月期(同+11.9%) から小幅鈍化した。内訳をみると、食料品、衣料は堅調に推移した一方、 石油、自動車などが減速。綱紀粛正や住宅市場の低迷に伴う景気減速など が高額消費を中心とした消費の抑制に繋がっている。 <コメント> 10-12 月期の成長率は前期並みの成長率を確保したが、直近、月次の経済 指標は工業生産、PMI 等全般に低調が続いており、不動産市場の調整を起 点とした投資や生産の伸び悩みが続いている。 焦点の住宅市場では、地方政府の購入規制緩和に加え、中国人民銀行の住 宅ローン規制の一部緩和等の梃入れ策を受け、前月比でみた新築住宅価格 の下落幅が縮小に転じるなど、悪化に歯止めがかかりつつあり、今のとこ ろ底割れは何とか回避されているとみられる。但し、一部の地域では、高 水準の住宅在庫を抱えていることなどから、調整の長期化が予想される。 なお、記者会見では、政府は「新常態(ニューノーマル)」への移行を進 めるなかで、昨年 12 月の中央経済工作会議で決定された 2015 年の政策課 題(成長の質や生産性の向上等)に取り組むと同時に、不動産市場の調整 や地方政府債務等のリスクには細心の注意を払い、安定した経済の増加を 目指すとの方向性が示された。 このため政府は、今後、成長率目標を 7%程度まで引き下げ、構造改革を 2 2015 年 1 月 20 日 継続するとみられるものの、景気腰折れ回避に向け、引き締め策の緩和等 により安定成長維持とのバランスを図っていくことが予想される。 第1表:製造業PMIの推移 第1図:実質GDPと李克強指数の推移 16 (前年比、%) (前年比、%) 30 実質GDP成長率〈左目盛〉 李克強指数〈右目盛〉 14 20 10 15 8 10 6 5 4 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 総合指数 ●新規受注 新規輸出受注 受注残 ●生産 ●入荷遅延 完成品在庫 ●原材料在庫 ●雇用 輸入 購買量 購買価格 生産・活動期待 25 12 14 0 (年) 8月 51.1 52.5 50.0 45.9 53.2 50.0 48.1 48.6 48.2 48.5 51.9 49.3 57.9 2014年 9月 10月 51.1 50.8 52.2 51.6 50.2 49.9 45.6 44.7 53.6 53.1 50.1 50.1 47.2 47.9 48.8 48.4 48.2 48.4 48.0 47.9 51.2 50.7 47.4 45.1 56.0 54.1 第2図:主な業種別にみた鉱工業生産の推移 50 (前年比、%) (億ドル) 6,000 貿易収支〈右目盛〉 40 輸出〈左目盛〉 30 10 5 全体 化学 機械・電子部品 鉄類 電力 -5 6 9 12 14/3 6 9 (年/月) (注)1. 1月と2月は平均した値。 2. 業種別の数値のため、ここでの『電力』は電力供給だけでなく設備投資も含む。 (資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 4,000 0 3,500 -10 3,000 -20 2,500 -30 2,000 -40 1,500 -50 1,000 -60 500 -70 10 11 12 14 (年) 第5図:業種別にみた固定資産投資の四半期推移 50 (前年比、%) (前年比、%) 0 30 20 各相手先別の縦棒は、左から時系列。 左端が2014年1-3月期、右端が直近の 2014年10-12月期。 10 全体 製造業 輸送 不動産 水利・環境・公共施設 0 -30 -10 -40 米国向け (16.7) 13 (資料)中国税関統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 40 -20 0 09 10 -10 4,500 10 第4図:相手先別にみた輸出の四半期推移 20 5,500 5,000 輸入〈左目盛〉 20 13/3 12月 50.1 50.4 49.1 43.8 52.2 49.9 47.8 47.5 48.1 47.8 50.1 43.2 48.7 第3図:貿易収支と輸出入 (前年比、%) 0 11月 50.3 50.9 48.4 43.9 52.5 50.3 47.2 47.7 48.2 47.3 50.5 44.7 50.2 (注)1. 色付けは50未満の箇所。 2. 『●』印の5項目は、総合指数の構成項目。総合指数は、新規受注 ×0.3+生産×0.25+雇用×0.2+(100-入荷遅延)×0.15+原材料 在庫×0.1で算出。 (資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 (注)『李克強指数』は、電力消費量、鉄道輸送量、銀行貸出残高の 前年比伸び率から推計したもの。 (資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 15 7月 51.7 53.6 50.8 46.4 54.2 50.2 47.6 49.0 48.3 49.3 53.0 50.5 55.3 EU向け (15.3) 日本向け (6.8) ASEAN向け (11.0) 香港向け (17.4) -20 11 12 13 14 (注)『不動産』は2014年4-6月期までの数値。他は2014年7-9月期までの数値。 (資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 (注)括弧内の数値は、2013年の輸出全体に占めるウェイト。 (資料)中国税関統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 3 (年) 2015 年 1 月 20 日 第2表:住宅・不動産関連指標の推移 第6図:主要分野別小売売上高の推移 (前年比、%) ① ② ③ 指標 8月 9月 10月 11月 12月 全国の住宅価格 (70都市平均) 0.5 ▲ 1.1 ▲ 2.5 ▲ 3.6 ▲ 4.3 北京の住宅価格 2.1 0.4 ▲ 1.3 ▲ 2.1 ▲ 2.7 上海の住宅価格 1.5 ▲ 0.8 ▲ 2.0 ▲ 2.9 ▲ 3.7 13.2 12.5 12.4 11.9 10.5 ▲ 10.5 ▲ 9.3 ▲ 5.5 ▲ 9.0 ▲ 10.7 ▲ 14.4 ▲ 13.5 ▲ 9.8 ▲ 13.1 ▲ 14.4 ▲ 8.3 ▲ 8.6 ▲ 7.8 ▲ 8.2 ▲ 7.6 ▲ 10.0 ▲ 10.3 ▲ 9.5 ▲ 10.0 ▲ 9.1 不動産投資額 (年初来) 不動産着工面積 (年初来) うち住宅着工面積 ④ 不動産販売面積 (年初来) うち住宅販売面積 ⑤ 不動産在庫面積 50 現状 小売計 贅沢品 住宅関連 その他 45 40 9月以降、 前年割れ 35 30 25 減速傾向 20 26.6 28.0 28.4 27.8 26.1 マイナス幅 が再拡大 15 10 5 マイナス幅 が 小幅縮小 0 04 増加が続く 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) 第8図:分野別にみた生産者物価 第7図:消費者物価上昇率と1年物貸出基準金利の推移 3 (%) 実質金利 消費者物価上昇率(前年比) 1年物貸出基準金利 8 05 (注)『贅沢品』は、食品・飲料・タバコ・アルコール、宝石、娯楽用品、文化・事務 用品、自動車を含む。『住宅関連』は、家電製品、家具、建設資材を含む。 (資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 (資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 10 (前年比、%) (前年比、%) 2 1 0 6 -1 4 -2 -3 2 -4 0 2012年平均 -5 2013年平均 -6 -2 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (注)『実質金利』は、1年物貸出基準金利-消費者物価上昇率。 (資料)中国国家統計局、中国人民銀行統計より 三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 2014年平均 -7 全体 (兆元) 衣服 (%) 銀行貸出〈左目盛〉 7 食品 日用品 耐久 消費財 第10図:7日物レポ金利と人民元相場の推移 (前年比、%) 100 16 8 原材料 製造業 (資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 第9図:社会融資総量(新規調達額)の四半期推移 9 鉱業 (人民元/ドル) 7日物レポ金利〈左目盛〉 銀行貸出以外〈左目盛〉 80 14 社会融資総量の前年比〈右目盛〉 60 6.5 人民元対ドル相場〈右目盛〉 6.4 12 6.3 10 6.2 0 8 6.1 3 -20 6 6.0 2 -40 4 5.9 1 -60 2 5.8 0 -80 6 40 5 20 4 12 13 14 0 (年) 12/1 (注)『社会融資総量』は、実体経済が金融システム(銀行、証券、保険などの金融機 関ならびに証券市場)から獲得した全ての資金の合計。 (資料)中国人民銀行統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 13/1 14/1 (注)月末値。 (資料)Bloombergより三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 (H27.1.20 福地 亜希 5.7 15/1 (年/月) [email protected]) 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、金融商品の売買や投資など何らかの行動を勧誘するものではありません。ご利用に関しては、すべてお客様ご自身 でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当室はその正確性を保証するものではありません。 内容は予告なしに変更することがありますので、予めご了承下さい。また、当資料は著作物であり、著作物法により保護されております。全部または一部を転載する場合は出 所を明記してください。 4
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