この世界は何かがおかしい!∼リヴィとワンコと

この世界は何かがおかしい!∼リヴィとワンコとロールキャベツ∼
火琉那
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︻小説タイトル︼
この世界は何かがおかしい!∼リヴィとワンコとロールキャベツ∼
︻Nコード︼
N0770CH
︻作者名︼
火琉那
︻あらすじ︼
前世の愛読書の世界に転生したはずの私、リーヴィア・アーネス
ト。悪役ポジとして勘当される妹を清く正しい子に育てようと思い
ましたがその必要もなく天使に育ちました。何故か明るく健気なヒ
ロインは腐女子だしヒロインのお相手である孤高の第二王子はぽや
やんとした小動物系になってるし!どういうことなの!まあ妹はひ
どい目に逢わなさそうなのでモブの私はみんなの行く末を見守りま
しょうかね。⋮⋮それはそうと、ワンコな騎士が構ってほしそうに
こっちを見ているんですが。
1
モブな伯爵令嬢の明日はどっちだ!
2
序章
︱︱︱あれ、なんか違う。
**********
私が前世の記憶を思い出したのは三歳の時。生まれたてほやほや
の妹を抱かせてもらった時だ。
﹃妹のエレーナだよ﹄
あ、ここ小説の世界だわ。
﹃Mystic mooN﹄
私の前世のバイブルである恋愛小説シリーズだ。
パン屋の娘がひょんなことから第二王子と恋に落ち結ばれるストー
リー。描写がすごく好きだった。
ちなみに我が家の妹様は第二王子の婚約者でありヒロインをいじ
めたおすテンプレ噛ませ犬な悪役令嬢ポジションである︵私と兄は
登場しない︶。最終巻で王子に断罪されたエレーナは実家から勘当
され地方の修道院に入れられる。読み終わった私は﹃エレーナ破れ
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たり!﹄と叫んだ。皆もきっと同じ気持ちだろう。
しかし転生?した今、エレーナは血を分けた実の妹である。物語
は変わってしまうと思うが何らかの補正が入ると信じて︵他の悪役
が配置されるとかね︶妹を更正させようと試みた。
**********
︱︱︱︱結果、
﹁お姉様?お姉様ー!﹂
﹁おん⋮ごめんエレン、考え事してた﹂
﹁ぼーっとしていたから魂が抜けちゃったかと思いました!﹂
﹁はっはっは﹂
﹁もうすぐ昼食ができるとサクラが呼びに来ていますわ。一緒に参
りましょう?﹂
4
更正させずとも天使ができた。
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待って、根本的に違う。
昼食を食べて暇をもて余していると足元に何かが激突した。くっ、
また強くなりやがったな!
﹁ねーたま!﹂
んばっ、と顔を上げたのは我が家の末っ子、御年二歳のレオンで
ある。
本来﹃Mystic mooN﹄にはエレーナ︱︱︱もといエレ
ン︱︱︱しか出ない。
父は忙しく家庭を顧みず、病弱な母はエレーナを産んですぐ亡くな
っている。姉︵名前も出ない作中の私ね︶は既に他家へ嫁ぎ、兄は
見聞を広めるためと他国へ留学していた。こうして家族の愛を受け
エ
ず、使用人達に悪い意味で甘やかされて悪役令嬢エレーナ・アーネ
ストは完成した。
レーナ
つまりここにいるレオ君が小首を傾げてこちらを見ている時点で悪
役令嬢を作り上げる家庭環境が機能していないことがわかる。父は
仕事が終われば屋敷へ直帰。よく言えば子煩悩、悪く言えば親バカ。
死ぬ予定どころか病気にもならなさそうなたくましい母と年がら年
中ラブラブだ爆発しろ。兄もシスコンとブラコンをこじらせ暇さえ
あれば私も含めた弟妹を構い倒す。
両親も使用人たちも私たちを誉める時は誉め、叱るときは叱った。
あ、これは私の出番ないな、と悟ったのは十歳の頃だったか。
家の教育の賜物か、エレンは清く正しく美しく、可愛い可愛いも
ひとつおまけに可愛い、この荒んだ世を癒すために産まれたのかと
私が錯覚するほどいい娘に育ったのである︵私もシスコンだって?
6
残念、ブラコンも含まれてます!︶。
﹁ねーたま、いーこ!﹂
﹁いいよー、お庭行く?﹂
そして、聞くところによると、通りにあるパン屋さんで暮らすヒロ
インは︱︱︱︱天下無双の腐女子様らしいのだ。
7
不幸の手紙?いいえ、招待状です。
現在レオくんと我が家の自慢のお庭をお散歩中である。あっちこ
っちキョロキョロする弟が可愛すぎて死ねる。
溢れんばかりに見開かれる私と同じ灰色の瞳。髪の毛は父譲りの
ストロベリーブロンドというやつだ。
﹁楽しい?レオくん﹂
﹁うっ!﹂
そうかい。
勢いよく頷く弟に目を細めていると、背後でクスクスと笑い声がし
た。
﹁いつからいたの?サクラ﹂
ニコニコと笑みを浮かべるのは私付きの侍女であるサクラ。極東
の島国出身なので黒髪黒目だ。懐かしの日本、わびさびカムバック。
﹁リーヴィア様が﹃レオくんマジ天使ぶあああああ﹄ってなってた
ときからですね﹂
﹁最初からじゃねーか﹂
﹁⋮今日もしっかりブラコンですねー﹂
﹁一回黙ろっか?﹂
﹁ウィッス﹂
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ひのもと
ちなみに彼女も転生者だったりする。全く関係ない場所にいたは
ずなのに戦乱を逃れて海を渡り、家に転がり込んだ経歴を持つサク
ラ。主の娘に悪役じゃないエレンがいて腰を抜かしていた。
基本的に同じテンションなので人がいないときは素で会話している。
﹁それで、何か用事でもあった?﹂
﹁そうでしたそうでした!旦那様がお呼びでしたよ!﹂
﹁お父様が⋮?何かやらかしたっけ﹂
﹁やらかした前提ですか。⋮⋮そろそろ社交シーズンですからその
話ではないですか?﹂
﹁げ﹂
﹁うわあ、すごい嫌そうな顔!ほら、夜会だの茶会だのの話じゃな
いかもしれませんし行ってきてください!﹂
﹁いや既に嫌な予感しかしねーし﹂
﹁素が出てますよリーヴィア様!戻して戻して!﹂
こうして私は渋々邸内に戻ったのである︵レオくんはまだ遊びた
いらしく庭師のヨハンに激突しに行った︶。
9
*********
嫌な予感ほどよく当たるもので。
﹁夜会⋮ですか﹂
﹁そう夜会。王室主催なのでリヴィに拒否権はありませーん﹂
お父様ったら若者ぶって何がありませーん、だよ。実年齢バラす
ぞ。
﹁何か言いたそうだね、リヴィ﹂
﹁イイエナニモー﹂
隣で優雅に紅茶を飲むお母様に目線で助けを求めるもガン無視。
そんな潔いお母様が大好きです。
﹁お姉様、私と一緒に行くのは嫌ですか⋮?﹂
ぐ、エレンのウルウル攻撃が私の姉心を苛む⋮!
﹁そういえばシーラ侯爵令嬢とアメリア伯爵令嬢から手紙がきてお
りましたわね。﹃今回の夜会こそリーヴィア様にお会いできますよ
うに﹄と﹂
お母様⋮!妹と友人のコンボは痛い⋮!
﹁大丈夫ですよ、リーヴィア様。しっかりドレスアップさせていた
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だきますから﹂
横に控えていたサクラが微笑むがそれどこも大丈夫じゃない。
翌日の夜、コルセットで締め上げられて魂が飛び出た状態で私は
馬車に乗り込んだ。
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不幸の手紙?いいえ、招待状です。︵後書き︶
お兄様が出てこない!
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夜会
﹁お姉様、大丈夫ですか?﹂
小鳥のような妹の声に遠くへ行っていた意識が浮上した。
﹁コルセット辛い⋮﹂
内臓どころか魂出そうだよ。サクラめギリッギリまで絞めやがっ
て。腹出てて悪かったな!
﹁もうすぐ着きますから!﹂
オロオロしているエレンの今日のドレスはエメラルドグリーン。
品よくレースや装飾が施されたロマンティックな逸品である。それ
を元々可愛いエレンが身に纏い薄化粧をすれば、すわ天使か妖精か
と問いたくなるほど愛らしいのだ。いや元々愛らしいけど︵以下略︶
**********
王室の方々へ挨拶を済ませ、兄と一曲踊った私は壁の花に徹して
いた。お兄様、エレンを頼むよ!
給仕から飲み物を受け取り手近な席につく。うあー、ヒールが痛
い。慣れんもんは慣れんのよ。絆創膏欲しい。
﹁リーヴィア様!﹂
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ちびり、ちびりと飲み物を飲んでいたら頭上に声が降ってきた。
そこには数少ない私の友人たち。
﹁ジゼット様、フィオナ様﹂
﹁リーヴィア様ったら全然夜会に顔を出さないんですもの、寂しか
ったんですからね?﹂
﹁そうですわ、私たちのことも忘れないでくださいませ!﹂
おっとりのんびりなジゼット・シーラ侯爵令嬢と明るく快活なフィ
オナ・アメリア伯爵令嬢とは領地も年も近く、仲良くしている︵少
なくとも私はそう思っている︶。
その後も談笑していた私達だが、二人の婚約者が踊らないかと誘
いに来たため私は手を振って送り出した。楽しんできてね!別にぼ
っちで寂しいわけじゃないよ!
﹁⋮⋮隣、よろしくて?﹂
ぼんやりと華やかな舞踏会を眺めていたが、不意にかけられた涼
やかな声に私は怪訝な顔になりそうになった。
﹁⋮⋮もちろんですわ、レイラ様﹂
隣に腰かけてきたのは﹃リヴィの同年代令嬢苦手な人ランキング﹄
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不動の1位であるレイラ・フリージア公爵令嬢その人だった。
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周りの視線がレーザービーム。
︱︱︱レイラ・フリージア公爵令嬢。ここミスティア王国唯一の公
爵家、名門中の名門であるフリージア公爵家の長女で、王子王女た
ちのはとこにあたる。地位、美貌、教養の全てを兼ね備えた﹃社交
界の白百合﹄が何故モブ伯爵令嬢に構うのか⋮⋮。
夜会だのなんだの社交界に出るたびに話しかけられ、話し終わっ
て去ると他の令嬢からいちゃもんつけられ⋮⋮。解せぬ。
﹁私が言うのもなんですが、楽しまれてますか?﹂
﹁あ⋮はい。王宮での舞踏会はきらびやかで目が眩みそうです﹂
﹁誰かと踊られましたの?﹂
﹁生憎お相手がおりませんの﹂
あ、ちょっとイヤミったらしかったかも。でもレイラ様はそんな
こと気にも留めずにさらに話を続ける。
﹁案外近くにいるかもしれませんわよ?リーヴィア様をお慕いして
いる殿方が﹂
はいはい社交辞令。
﹁だといいですねぇ﹂
﹁それにしても騎士団の方々のお忙しそうなこと。気も休まりませ
んものね﹂
つ、とその端正な顔を会場内に常駐している騎士団団員に向けた。
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﹁どなたか顔見知りの方はいらっしゃるの?﹂
﹁⋮⋮あそこで王女様にしがみつかれているのしか知りません﹂
こっち来た。
﹁レイラ!今日も来てくれたのね!嬉しいわ!﹂
困り顔の騎士の足から離れレイラ様の豊満な胸にダイブする少女は
ルルノアローゼ・ミスティアといい、十三歳の第四王女様である。
私は立ち上がって淑女の礼をした。
﹁ええ来ましたよ。ローゼ様がお招きくださったのですから﹂
﹁また”様”ってつけた!はとこなのに!レイラの方が年上なのに
!﹂
ぷう、と頬を膨らませるルルノアローゼ様。でもローゼと愛称で
呼ぶのは王室の方々とレイラ様だけだ。
﹁はとことはいえローゼ様は王女、私はしがない令嬢ですもの。こ
ればっかりはどうしようもありませんわ﹂
﹁むう、そうだレイラ!アル兄様と向こうでお話しましょうよ!そ
のためにルークについてきてもらったの!﹂
﹁あら、じゃあ行きましょうか。ヴェロニカ殿、ありがとうござい
ました﹂
﹁いえ、職務を果たしたまでですので。あちらまでの付き添いは⋮
⋮必要ないみたいですね。王女殿下、フリージア嬢、失礼いたしま
す﹂
席を自ら立ってキョロキョロしている第二王子︱︱アルトカイル・
ラ・ミスティア様に手を振り、ルルノアローゼ様を伴ってレイラ様
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は優雅に立ち去った。
それと同時に鋭くなる周りの視線に貼りつけた微笑がひきつるの
がわかる。
﹁体調が優れないのですか、“アーネスト嬢”?﹂
その穏やかな声で私に問いかける琥珀色の髪の騎士。ここは乗っ
かっておこう。
﹁ええ、ちょっとのぼせてしまったのかもしれません。どこか休め
そうな場所はありますか?“ヴェロニカ殿”﹂
﹁ではこちらへ﹂
かくして今日も私は面倒な貴族令嬢たちから逃げ切ったのである。
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騎士様は草食系幼なじみ。
ルーク
騎士につれられ、私は王宮ご自慢の庭園に来ていた。手近なベン
チに腰を下ろす。
﹁もーーやだー﹂
﹁こら、仮にも伯爵令嬢がそんな言葉遣いしないの﹂
﹁いいじゃないのー、ルーク︵・・・︶しかいないものー﹂
﹁全くもう⋮アンネおば様に言いつけるよ﹂
﹁それは勘弁して﹂
冗談だよ、と軽やかに笑うこの男はルーク・ヴェロニカ。騎士団
は
所属で同い年の幼なじみ、私と同じく伯爵家の三男坊である。動物
に例えるならば羊。草原でのんびり草を食んでそうなのほほんとし
たヤツだ。
﹁そういえばまた誰とも踊らなかったね﹂
﹁レイラ様と同じこと言わないで。打ち合わせでもしたの?﹂
彼の琥珀色の瞳がわずかに揺れた気がしたが気のせいだったよう
だ。
﹁俺が出れたらリヴィと踊っていたのに﹂
﹁いやいや、ルークが普通に夜会出てたら今頃私は近寄れないよ﹂
家柄こそあまり高くないものの騎士団の花形である第一部隊の若
き隊長として一目置かれているルーク。穏やかで優しい心根に王子
らほどじゃないがまあイケメン︵幼なじみびいきかもしれないが︶。
割と繁盛に令嬢たちの﹁将来有望そうなイケメンたち﹂の話題の中
で上げられているのを私は知っている。
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﹁それにしても弟みたいな幼なじみがいつの間にか騎士団の花形に
いるとはねー。人生わからないものだね!﹂
﹁⋮リヴィ、もう今さらすぎてつっこむ気にもならないんだけど。
俺の方が三ヶ月年上だから﹃弟みたいな﹄は語弊があると思うんだ﹂
﹁まあまあ﹂
前世の年齢足したらぶっちぎるから、君は弟だよルーク。
ひるがえ
なんて言葉を飲み込んで、靴を脱ぎ捨てて立ち上がりくるり、と
一回転。青いドレスが翻る。
﹁あ、やっぱ地べたに裸足は辛いや。⋮⋮ルーク?﹂
固まっている幼なじみに声をかける。
ルナリリア
﹁いや、月の女神みたいだと思って﹂
ルークはこの世界の豊穣と慈愛の女神の名を口にした。
﹁こらー、おだてたら木にのぼっちゃうよー﹂
﹁⋮⋮アンネおば様﹂
﹁ごめんなさい﹂
長いことそんな他愛もない会話をしたのち、ルークが帰ろうかと
手を差し伸べた。私は当たり前のように手を重ねた。
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その頃会場で、
﹁まーたルークが持っていったぞ、“月の伯爵令嬢”﹂
・・・
﹁見たかあのボンボンどもに一瞬向けた勝ち誇ったかのような悪い
顔!幼なじみの特権はすごいなー﹂
﹁二人の仲はアーネスト伯とヴェロニカ伯の公認らしいぞ﹂
﹁ご子息であるアーネスト嬢の兄がよく承諾したな﹂
﹁﹃どこの馬の骨とも知れんボンボンよりよく見知った幼なじみに
任せた方がいい!﹄だってさ﹂
﹁ああ、通常運転だな﹂
﹁なあ、ルークって見た目ほわほわしてるけど中身はああじゃんね、
アーネスト嬢って⋮⋮﹂
﹁あれは気づいてないだろ﹂
﹁それな﹂
などといった騎士たちの会話が繰り広げられていたことを、外にい
た私が知るよしはなかったのである。
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クレイジーなメンバーを紹介するぜ!
ミスティア国王都のルノアール通りに位置するパン屋さん、その
名も”三日月亭”。人柄のいい店長夫妻と店を手伝う一人娘。一度
食べれば病みつきとなる店のパンを求めて、人々は店へと向かう。
カランコロン、とドアに備え付けられた小さなベルが鳴る。広が
る香ばしいパンの香りに、うっとり。
﹁あー!リヴィさんにサクラさん!いらっしゃいませ!ここに来た
ということは社交シーズン始まりましたか?やったねリヴィさん!﹂
朗らかな声の少女に迎えられるがおいやめろ。
﹁おいやめ⋮ごほん、とりあえず新作を見繕ってください。一緒に
テラスで食べましょう﹂
﹁私はいつものをお願いします﹂
﹁かしこまりましたー!あとでお持ちしますね!﹂
mooN﹄のヒ
明るい栗色の髪をポニーテールにし、若葉色の瞳を持つこのかわ
いこちゃん。名をリランといい、﹃Mystic
ロインにあたる少女である。
普通にしていれば笑顔のかわいい看板娘。ひそかな彼女のファン
も少なくない。
まあでもね、神は二物を与えないって言うしね。
テラスに移動した私たちの後に、騎士団の制服を着た若い青年た
ちが二人入ってきた。おおかた、休憩時に食べるものを買いに来た
のだろう。
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ここからだと扉を隔てているので声までは聞こえないが、時折じ
ゃれあったり肩を組んだり、平たくいえばボディタッチをしている。
対してリランは一瞬真顔になり、またいつもの笑顔を浮かべて接客
を繰り返しながら接客をこなし、客を見送った。
頭の三角巾を解き、静かにトレイを置いて彼女はこう言った。
﹁悶えすぎて死ぬる⋮!﹂
﹁分かったから落ち着こうか﹂
﹁では﹂
す、と某特務機関総司令のポーズを決めて私は宣言した。
﹁第15回、転生者会議を始めます!出席取ります!番号1、敬意
は前世においてきた、ついでに胸もおいてきた!我が家の侍女⋮サ
クラ!﹂
﹁はーい﹂
﹁番号2、笑顔の裏では荒ぶる腐女子!ヒロイン何それ美味しいの
!⋮リラン!﹂
﹁うぃっす!﹂
﹁そして番号3、私!⋮⋮全員いるわね﹂
うんうん、と満足そうにうなずけば﹁全員そろわないとやらない
んだからそろってるにきまってるでしょう﹂とサクラからツッコミ
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が入る。
﹁そもそも紹介に悪意しか感じないんですけど。なんであなたは何
も肩書きがないんですか﹂
悪意?ナンノコトカナ?
﹁﹃前世は壮絶なオタク、現世は︵社交界に限り︶ヒッキー!リア
充何それ爆発しろ!﹄くらい言いましょうよ﹂
﹁くっ⋮頭が⋮!﹂
まあいわゆる全員前世の記憶もちなので時たまここに集い、仲間
で語り合おうというだけだ。会議なんてたいそうなものはしない。
﹁それにしても何故みんなリランの本性に気づかないのか﹂
なかなかの詐欺だと思うのは私だけじゃない。
﹁さっきの人達絶対﹃リランちゃんに微笑まれた!もしかして俺に
気があるのか?⋮仕事頑張るぜひゃはー!﹄くらいは思ってますっ
て﹂
﹁おいここに某非公認ゆるくないキャラがいるぞ﹂
﹁うちの店は騎士団の皆さんが来ること多いんでなんかもう⋮あり
がとうございます﹂
﹁これが﹃ぶぉぉぉぉぉホモォ⋮!ごちそうさまですありがとうご
ざいます﹄と内心で叫んでいるとはきゃつらは夢にも思わないんだ
ろうね﹂
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﹁ちなみにどっちが受けでどっちが攻めだと思われましたか、リラ
ン解説員﹂
持っているパンをマイク代わりにサクラが尋ねる。小声にしろよ
ー。
﹁金髪つんつん頭さんは問答無用で受け!これは譲れないです。そ
んで黒髪さんが敬語だったんですけど、敬語攻めって⋮イイ!﹂
ノマカプ
﹁あ、ごめんわかんない。そして私らはNL推しだ﹂
﹁⋮ミスティアにも腐の文化が広まればいいと思うの﹂
血涙を流さんばかりの勢いでつかみかかるリランをなだめる。も
ちつけ。
これ
﹁腐女子がヒロインだなんて世も末ですな⋮﹂
﹁それな﹂
﹁リヴィさんひどい!荒ぶる神︵妄想︶を脳内で済ませているだけ
いいじゃないですか!﹂
mooN﹄って現実的じゃないです
明るく優しく、その純粋な笑顔で第二王子を射止めたヒロインは
どこへ行ったのか。
﹁だ、大体、﹃Mystic
あっち
よ。原作はハッピーエンドで無理やり終わらせましたけど、庶民と
王位継承権のある人が結婚なんて無茶ですよ!仮に王子がここへ婿
入りなんてしたとしても上手くいくわけが!ない!てか何故に性格
真逆なんですか!?﹂
25
﹁その第二王子の変貌ぶりについていけなくて社交界デビューのと
きにすごい挙動不審になってたのは私です﹂
﹁私もめっちゃ遠くから見たことありますけど穏やかな方に見えま
した。もしや、ヒロインが生まれながらに腐っていたからお相手に
も補正が!﹂
﹁そろそろ泣きますよ二人とも!それに、私のタイプはこの本性知
っても丸ごと受け止めてくれそうな心がティアリカ海並に広い人で
す!右側要員に興味はありません!﹂
リランがヒロインにあるまじき顔をさらしている。こっち見んな。
しかも反撃とばかりに私に食い下がる。
﹁リヴィさんのお兄様はあ!ジューニー伯爵様と仲がおよろしいで
ターゲット
すよねえ!ご一緒に鷹狩りなどされてるときにあんなことやそんな
こ﹁ごめんって!頼むから家族を標的にしないで泣きそう﹂わかれ
ばいいです!﹂
腐女子を怒らせてはいけない。それは自然の摂理なのである。
﹁ルーク⋮私を癒してくれぇ、そののほほんとした笑顔で⋮⋮腐海
に削られた私の心を清めてくれ⋮!﹂
﹁え?ルークってヴェロニカ伯爵の三男でしたっけ?でもあの人案
外⋮⋮﹂
その時、テーブルに突っ伏す私の肩を遠慮がちにたたく手があっ
た。顔を上げれば琥珀色の瞳が和らいだ。
26
﹁やっぱり。リヴィだった﹂
唐突過ぎて叫んだのは言うまでもなかった。私は召喚士か。
27
PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n0770ch/
この世界は何かがおかしい!∼リヴィとワンコとロールキャベツ∼
2014年12月27日18時36分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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