Page 1 Page 2 学位(専攻分野) 博 士 ~(理 学) 学位授与の日付 平成

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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Bi-Sr-Cu-O系2201相および関連化合物の合成と構造(
Abstract_要旨 )
新苗, 稔展
Kyoto University (京都大学)
1999-03-23
http://hdl.handle.net/2433/181979
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【1
3
4】
氏
名
にい
なえ
とし
のぶ
新
舌
稔
展
(
理
学)
学位 (
専攻分野)
博
士
学 位 記 番 号
理
学 位 授 与 の 日付
平 成 11年 3 月 23 日
学位 授 与 の要 件
学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
理 学 研 究 科 化 学 専 攻
学 位 論 文 題 目
Bi
Sr
Cu0系 2
201相お よび 関連化合物 の合成 と構造
博
第
2071 号
(
主査)
論 文 調 査 委 員
教 授 高 野 幹 夫
論
文
内
教 授 新 庄 輝 也
容
の
要
教 授 小 菅 暗 二
旨
Bi
系銅酸化物超伝導体は一般 にBi
2
Sr2
Can
-l
Cuh
O2
n
H と表 され ,n- 1- 3の 3種類 の相が知 られている. この うち,n-
2, 3の相 は超伝導転移温度 (
T
c) がそれぞれ 8
5
K,1
05
Kと高 く,加 工性 ,化学的安定性 に優れてい るこ とか ら,銅酸化
物高温超伝導体のなかで も実用材料 として重要な ものである。 しか し, これ らの系は4種類 の金属イオ ンを含 むために相関
係 が余 りにも複雑 であ り,基礎的で明確 な固体化学的研究 を加 えるには適 さない点がある。本研究は組成 ,構造 ともに最 も
2
2
01
相 (
n- 1) について,合成条件 ・熱的安定性 ・構造 ・物性 を検討 した ものである.
簡単なBi
Bi
2
2
01
相 はBi
2
.
X
Sr2
_
X
CuO6
.6
と表 され る固溶域 をもち,x>0.
1
の範囲であれば単相試料 を得 ることは簡 単である.一方,
Ⅹ-0) の金属イオ ン組成 をもつ ものを得 るには特殊 な条件 が必要 とされ, これ まで には,高酸素圧 下 (
∼3
0
at
m)
定比 (
で合成 された例 が報告 され てい る。 ところで, これ に近い組成 を もつBi
1
7
Sr
1
6
Cu7
0Z(
1
7・1
6・7相)は非常 に安定で,合成
の過程 で一旦 この相 が生成す る と2
2
01
相 の生成反応 が進み に くくなる。 この ことに注意 して,本研究では ,1
気圧 の酸素気
流 中で,温度 を7
2
0℃ か ら800℃ まで段 階的に20℃ずつ上げなが ら数 百時間にわたって反応 を繰 り返す よ うな注意深い過程 を
2, 1
04
at
mでの合成 につい
とることに よ り,定比組成 の単相試料 を得 ることに成功 した。 さらに, よ り酸素分圧の 低 い0.
て も検討 した。
系銅酸化物超伝導体は,CuO2
面を含むベ ロブスカイ ト型ブ ロックと岩塩型 Bi
O層 との格子 ミスマ ッチが大きく,
一般 にBi
Bi
O層 内に過剰酸素 を取 り込んでその面積 を広 げることによ り格子 の整合 が図 られてい る。 その取 り込まれ た酸素の分布が
O層 が波打 った構造変調 がその bC面内に現れ る.定比Bi
2
2
01
均一ではないために,構造 は基本的 には正方晶であるが,Bi
組成 の b軸方 向,C軸方 向の変調周期 (右 お よび lc
) は,酸素 1気圧 ,800℃ で得 た試料 では 右 -4.
88b, 右 -2.
2
0Cで
41b, 右 -3.
47Cに変化 した。 また空気 中で合成 した試料 中には, こ
あったが,アル ゴン気流 中で熱処理 を行 うと 右 -5.
41b, 右 -3.
47C
れ ら 2種類 の変調周期 が混在 してい るこ とがわかった.電気抵抗 お よび直流帯磁率測定結果 か ら, 右 -5.
を持っ相 は超伝導体であるのに対 し, 右 -4.
88b, 右 -2.
2
0Cの相 はオーバー ドープ金属であることがわかった。
Bi
量の よ り高い 0 <x≦0.
4の単相試料 も上記 の条件 で合成す ることがで きた。 その格子定数 は,xが 0か ら0.
4に増加す
るにつれ C軸長 は0.
8%減少 し, a軸長 は0.
6%増加 したが, よ り詳 しく見 る と,いずれ について もⅩ-0.
1で小 さな とびが見
1で変調周期 の値 の とび が認 め られ た。 しか し, この
られ た。 また,酸素気流 中で合成 した試料 については,や は りⅩ-0.
0℃ でアル ゴン気流 中で熱処理 を行 うと消失 し, 0≦Ⅹ ≦0.
3を通 じての組成依存性 は単調 な もの となった。 また,
とびは40
1で △ ♂-0.
02の大 き さの とび が現れた。4
0
0
これ らの試料 の酸素量 を測定 した結果 ,酸素気流 中で合成 した試料ではⅩ-0.
℃ でアル ゴン気流 中で熱処理 を行 うと, この とびはほ とん ど無 くな り, 0≦Ⅹ≦0.
3を通 じて ビスマス含有量 の増加 に伴い,
1ではアニールす るこ
酸素量 は単調 に増加 した。 さらにアル ゴン中でのアニール前後 での酸素量 を比較す る と, 0≦Ⅹ <0.
0
4の酸素の減量が認 め られ たのに対 し,0.
1≦Ⅹでは過剰 酸素は約半分 の0.
0
2の減量が認
とによ り基本単位 あた り約 △ ♂-0.
め られ た。 この よ うに 0≦Ⅹ <0.
1の試料 では, よ り多 くの過剰酸素が出入 りし,同時に変調周期 も変わ るこ とが明 らか と
-3
60-
なった。 この ことは, 0≦Ⅹ <0.
1と0.
1≦又では組成 と構造 に関 して何 らかの僅 かなが らも明確 な違いのあることを うかが
わせ るものである。
定比2
201
組成 の試料 をアル ゴン気流 中で さらに高温で熱処理す ると,従来,Bi
l
2201
相 とは異 なった化合物 と考 え られて
いたBi
1
7
Sr1
6
Cu7
0Z(
1
7・1
6・7相) と基本的には同 じ単斜晶構造 をもつ単相試料 となることがわかった.熱処理の前後で試
料の重量変化 を測定 した結果,Bi
2
Sr2
CuO6
+β
はほぼゼ ロであることがわか り,構造の変化 と酸素量の変化 の間には密接 な
関係 があるもの と考 え られ る。 この構造の変化 は, 0≦Ⅹ <0.
07まで認 め られた。
以上のよ うに,本研究は,Bi
・
2201
相 について,熱 的安定性 ・変調構造 ・超伝導特性 の組成依存性 を明 らかに し, さらに
定比金属組成 について,過剰酸素を含 まない1
7・1
6・7相型単斜 晶構造が,比較的還元性 の強い条件下では安定化 され うる
ことを明 らかに したものである。
論
文
審
査
の
結
果
の
要
旨
Bi
系銅酸化物超伝導体は一般 にBi
2
Sr2
Can
_1
Cun
O2
n
H と表 され ,n- 1- 3の 3種類 の相が存在す ることが知 られている。
2201
相 に着 目し,合成条件 ・組成 ・結晶構造 ・物性 の関連 を
本研究はこれ らの うち組成,構造 ともに最 も簡単なn- 1のBi
系統的に調べ ることを 目的に行 われたものである。合成 の難 しい といわれてきた定比金属組成 をもつBi
2
Sr2
CuO6
+β
を酸素
1気圧,800
℃程度の比較的簡便な条件下で単相 として取 り出す ことに成功 し,それ を基 にこれまでにない系統的な実験デー
タを得 るとともに,全 く予期 されなかった現象 も見出 している。
Bi
22
01
相 は,Bi
∑
.
X
Sr2
X
CuO6
.6と表 され る固溶域 をもつox>0.
1の組成 は安定で単相 として取 り出す ことが容易である
1の組成範囲の試料 は合成例 が非常に希であった。 とくに金属
ために数多 くの研究例が報告 されてきたが,一転 してⅩ <0.
x- 0) のBi
2201
相 は,高酸素圧 (
∼30気圧) を用いて初 めて合成 が可能であると考 え られていた。本研 究
組成が定比 (
X
CuO6
. 6(
0≦x≦0.
4)の組成 をもつ試料 の合成
では,熱処理 を注意深 く行 うことによ り,常圧下で これ を含むBi
2
+
X
Sr2
に成功 してい る。
一般 にBi
系銅酸化物超伝導体では,超伝導の舞台 となるCuO2
面 を含むベ ロブスカイ ト型ブ ロック と岩塩型のBi
O層 との
格子 ミスマ ッチが大 きく,それ を緩和す るためにBi
O層 内に過剰酸素が取 り込まれ, しか もその分布 が一様でない ことを反
映 してBi
O層が波打った構造変調がb・C面内に現れ る.本研究 によると,その変調周期 ,基本正方晶構造の格子定数,熱的
.
1
付近で不連続的な変化 が見
安定性,酸素含有量,熱処理時の雰囲気 に よる酸素含有量の変化 のいずれ について も,Ⅹ-0
1と0.
1≦又 では,組成 と構造の関連 の詳細な部分 について,僅 かなが らも明確 な差異があるこ
られた。 これは, 0≦Ⅹ <0.
とを示唆す るものであ り,今後の研究の重要な指針 となる貴重なデーターである。
定比2
201
組成 の試料 をアル ゴン気流 中,高温で熱処理す ると,従来,Bi
2201
相 とは異 なった全 く別 の化合物 と考 え られ
ていたBi
1
7
Sr
1
6
Cu7
0Zと同 じ単斜 晶構造 をもつ単相試料 となることが分かった. その間の試料 の重量変化 を測定 した結果,
単斜晶構造の試料 には過剰酸素量がほ とん どない ことが分かった。すなわち,金属組成 を変 えることな く,酸素量を僅 かに
減少 させ るだけで正方晶か ら単斜晶-構造が変化す ることをは じめて明 らかに した。 この構造の変化 は, 0≦Ⅹ<0.
07の範
囲で認 め られた。 このよ うな振 る舞いは,従来の常識 を覆す ものであって,当初予期す ることは出来なかった待筆すべ き成
果であるといえる。
X
CuO6
十 6
の広い組成範 囲で単相試料 を得 るこ とに成功 し,熱的安定
このよ うに,本研究は注意深い合成 によ りBi
2
+X
Sr2
性 ・基本構造 ・変調構造 ・酸素含有量 ・超伝導特性 とそれ らの関連 を調べて, Ⅹ <0.
1での特異な振 る舞いを兄いだす とと
07の範囲では成分金属組成 を変 えることな く,酸素量をわずか 3%程度減少 させ ることによ り構造が明確
もに, 0≦Ⅹ <0.
に変化す る とい う興味深い結果 を得た。 その意義 は,Bi
2201
相 だけに留ま らず,他 の実用性 に富むBi
221
2相やBi
2223相
にもあてはまる可能性がある。 このよ うに本論文の学問的意義は大 きく,本論文は博士 (
理学)の学位論文 として価値 ある
もの として認 め られた。
- 361-