ISO/TC 4/WG 21第1回ウィーン会議報告

ISO レポート
ISO/TC 4/WG 21 第 1 回ウィーン会議報告
(振動測定)
日本精工株式会社 遠山 史雄
まえがき
1.
2013 年 5 月に開催された TC 4 上海本会議において、TC 4/WG 21(以下、WG 21 という。)を設置し、
ISO 15242-1 及び-2(振動の測定方法-第 1 部:基本、及び第 2 部:円筒形状の内外径を持つラジアル玉
軸受)
の改正を行うことが決議された。
今回その第1回会議が 2014 年 3 月 24~25 日の 2 日間にわたり、
ウィーンの ASI(オーストリア規格協会)にて行われ、日本のエキスパートとして会議に出席したので、
その概要を報告する。
第 1 回ウィーン会議までの経過
2.
WG 21 第 1 回ウィーン会議までの経過を次に示す。
•
2012-09 ISO 15242-1 及び-2 の定期見直しが行われ、改正提案が多数あった。
•
2013-05 TC 4/SC 4 上海会議にて、改正が必要であることが合意され、TC 4 上海本会議にて TC 4
直下にオーストリアの Christian Sommerhuber 氏をコンビーナとする WG 21(振動測定)
を設置し 3 年の標準規格開発トラックにて改正を行うことが決議された。
3.
•
2013-10 WG 21 のメンバー(9 か国 18 名)が決定。
•
2013-12 ISO 15242-1 及び-2 の WD(作業原案)初版が回付された。
•
2014-01 ISO 15242-1 及び-2 の WD に対する意見票を送付。
•
2014-03 WG 21 第 1 回ウィーン会議開催
WG 21 第 1 回ウィーン会議の目的
ISO 15242-1 及び-2 の改正を行うにあたり、デジタルフィルターなどの最新機器に内容を合わせたも
のにするとともに、振動測定の回転速度を変えた場合の記述などを加え、実際の測定方法に役立つ規格
とする。今回はその WD 初版に対する各国意見票の審議を行う。
4.
関連文書
今回の会議に関連する文書を表 1 に示す。
表 1 WG 21 文書及び関連文書
文書番号
提出国
題目又は内容
発行年月
N1
幹事国
WD 15242-1(初版)
2013-11
N2
幹事国
WD 15242-2(初版)
2013-11
N3
幹事国
上海会議決議事項(TC 4 N1610 と内容は同じ)
2013-11
N4
幹事国
ISO 15242-1 の定期見直し投票結果
2013-09
N5
幹事国
ISO 15242-2 の定期見直し投票結果
2013-09
N6
幹事国
WG 21 メンバーリスト
2013-11
N7
幹事国
WG 21 第 1 回ウィーン会議議事次第案
2013-12
5.
N8
幹事国
TC 4 ウィーン会議開催通知及び会場案内
2013-12
N9
幹事国
WD 15242-1(初版)への各国意見に対する幹事国提案
2014-03
N 10
幹事国
WD 15242-2(初版)への各国意見に対する幹事国提案
2014-03
N 11
幹事国
WG 21 第 1 回ウィーン会議議事録
2014-03
N 12
幹事国
WD 15242-1(初版)への各国意見の審議結果
2014-03
N 13
幹事国
WD 15242-2(初版)への各国意見の審議結果
2014-03
議事次第
今回の会議の議事次第及び参照文書を表 2 示す。
表 2 議事次第及び参照文書
議題
6.
WG 21参照文書
1
開会
-
2
出席者の点呼、紹介
N6
3
議事次第の承認
N7
4
業務項目に関する一般情報及び TC 4 決議
N 3、N 4、N 5
5
WD 15242-1(初版)への各国意見の審議
N9
6
WD 15242-2(初版)への各国意見の審議
N 10
7
その他の業務
-
8
まとめ及び今後の予定
-
9
次回会議の予定
-
10
閉会
-
WG 21 第 1 回ウィーン会議の内容
議題 1
開会
コンビーナの Christian Sommerhuber 氏が会議の開会を宣言した。
議題 2
出席者の点呼、紹介
WG 21 第 1 回ウィーン会議には、次の 9 か国 19 名が参加した。
番号
参加者名
国名
所属
1
Christian Sommerhuber
オーストリア
SKF(WG 21 コンビーナ)
2
Hans Wiesner
オーストリア
SKF
3
Hubert Köttritsch
オーストリア
SKF
4
Maximillian Bichler
オーストリア
SKF
5
Paul Dieti
オーストリア
SKF
6
Rolf Thesslin
スウェーデン
SIS(WG 21 事務局、TC 4 国際幹事)
7
Hakan Bastedt
スウェーデン
SKF
8
Robert J. White
アメリカ
John Deer
議題 3
9
Victor Li
アメリカ
Timken
10
David Carnell
イギリス
Mechconsult
11
Tim Ainsworth
イギリス
NSK
12
Yvonne Yang
中国
SKF
13
Kirl Bywalez
ドイツ
Schaeffler
14
Alfred Weidinger
ドイツ
SKF
15
Evgeny Varlamov
ロシア
EPK
16
Irina Diachkova
ロシア
EPK
17
Valery Lapenko
ロシア
EPK
18
Gerrit van Nijen
オランダ
SKF
19
遠山 史雄
日本
NSK
議事次第の承認
議事次第案の N 7 の議題 5 及び 6 に、それぞれ N 9 及び N 10 が追加され議事次第案は承認された。
議題 4
業務項目に関する一般情報及び TC 4 決議
TC 4 決議 767(ISO 15242-1 及び-2 の改正、WG 21 の設立及びコンビーナの決定に関する決議)が
確認された。また、関連文書及び投票結果の TC 4 文書が確認され、それらは WG 21 の文書番号 N 3、
N 4 及び N 5 であることが伝えられた。
また、今回の WD 初版は定期見直しの意見票をもとに作成されたものであることが伝えられた。
議題 5
WD 15242-1(初版)への各国意見の審議
文書番号 N 1 にて回付された WD 15242-1(初版)に対する各国意見について討議し、次の内容が合
意された。
•
重要な技術変更事項については、CD 時点で前書き(Forward)に記載する。
•
“pick-up”という用語は ISO 2041(機械振動,衝撃及び状態監視-用語集)の 4.1 に使用しない旨
の記載があるので、“transducer”に変更する。
•
“test”という用語は適切でないので“measurement”に変更する。
•
“outer ring”及び“inner ring”という表現は、両方に適用できる、“measured ring”又は“stationary
ring”などに変更する。
•
PL(プロジェクトリーダー)は“nominal upper and lower cut-off frequency”について 3.12 及び図 4
を修正する。(f upper 及びf lower を使用する)
•
振動波形に関する用語の 3.16“peak”及び 3.17“spike”は、“spike”及び“pulse”とし、PL はこれ
ら波形の図を新たに作成し、説明を参考の附属書として追加することが合意された。
•
用語に“electronic unit”を追加する。
•
PL は 6.3 の“Time domain”について、わかりやすい説明を参考の附属書として追加する。
•
図 3 の“Transducer response specification”について、表示以外の周波数に拡張する方法が不明確で
あるとの日本意見が合意されたため、PL が修正した図を準備する。
•
7.2 の“condition of the test environment”については、ロシアからもっと詳細を記載すべきとの意見
があったが、日本及び中国から反対意見があり、討議の結果 7.2 は 7.1 の“Bearing conditions for
measurement”及び 7.3 の“Conditions for the test device”の箇条に、温度に関して記述することで代
用し、詳細は規定しないことが合意された。
•
速度、加速度及び変位の周波数レンジの関係を附属書に示す。
議題 6
WD 15242-2(初版)への各国意見の審議
文書番号 N 2 にて回付された WD 15242-2(初版)に対する各国意見について討議し、次の内容が合
意された。
•
WD 15242-2(初版)の内容は関連する WD 15242-1(初版)の内容に合わせて修正する。
•
表 2 の“frequency ranges”は、デフォルトの 1800 回転の表と、その他の 3600、900 及び 700 回転の
表との二つに分ける。
•
図 2 及び 3 は、異なる形の矢印についての説明を追加する。
議題 7
その他の業務
なし
議題 8
まとめと今後の予定
今後の予定は次の通り。
•
コンビーナは第 1 回ウィーン会議の結果を反映した WD 第 2 版を 6 月末までにエキスパートに回付
する(投票期限は 9 月 30 日予定)。
•
次回会議で WD 第 2 版への意見を基に討議を行う。
•
次回会議の結果を反映した CD 案を 2015 年 1 月に回付し、3 月末までに意見を求める。
•
2015 年 5 月に予定されている TC 4 会議にて CD 案について討議する。
議題 9
次回会議
次回会議は、他の WG の会議に併せて 11 月にベルリンにて行うことが合意された。
(詳細は後日決
定)
議題 10 閉会
コンビーナから、会議を準備していただいた ASI 及び出席者に謝辞が送られ閉会した。
7.
あとがき
今回はじめての WG 21 会議が開催され、19 名もの参加があった。開催地であったため、特にオー
ストリアからの参加者が多かった。また、アメリカからは、軸受使用者の立場の John Deer からの参加
者もあった。日本からの意見内容は今回の会議でほぼ受け入れられ修正案へ反映される予定である。
会議会場になった ASI はウィーンの北にあるプラターシュテルン駅のすぐそばにあり、プラター遊
園地にはイギリスの有名な映画“第三の男”の舞台となった大観覧車がある。ASI の建物は最近内装を
改装したとのことで鮮やかな赤が使われた明るい雰囲気で、その中で二日間にわたり会議は行われた。
会場の提供及び準備をしていただいた ASI に深く感謝する。
次回はベルリンにて WG 21 第 2 回会議が行われる予定であるが今後も有意義な意見を多く出し、日
本にとって有利な規格となるよう努力してゆく。
会議参加者(向かって左端が筆者)
プラター遊園地の大観覧車