ウルシ植栽地の土壌pHの矯正効果(PDF形式 80 キロバイト)

活
用
技
術
平成 25 年度
ウルシ植栽地の土壌pHの矯正効果
[ 要 約 ] 20年 生 以 上 の ウ ル シ の 成 長 と 土 壌 pHを 調 べ た と こ ろ 、 pHの 高 い 林 で 成 長 の 良
い傾向が見られたことから、土壌pH矯正は有効である。
森林研究所
きのこ・特産課
連絡先
TEL:0254-72-1173
FAX:0254-72-0019
[背景・ねらい]
農林水産省の実用開発事業「地域活性化を目指した国産ウルシの持続的管理生産技術の
開発」において、ウルシ林分の成長について調査した。
村上市中原野地内の成長が非常に良い典型的な黒ボク土壌に植栽された林分では、周辺
のク リ や ブ ナ 植 栽 林 分 に 比べ 、 土 壌 pHが 明ら か に高 い 数値 を 示し て いた ( 表1)。 これ は
土壌pHが矯正されていたことを示唆している。
そこで、ウルシ植栽林分の多く分布する村上市で広く調査を行い、土壌pHと成長の関係
から矯正の有効性について検討する。
[成果の内容・特徴]
1
村 上 市 中 原 野 の ウ ル シ林 の 所 有 者 か ら 聞 き 取り を 行っ た とこ ろ、「ケ イ カル 」 とい う
石灰(酸化カルシウム)や苦土(酸化マグネシウム)を含有する粉末を散布しているこ
とが判明した。
2
村上市の20年生以上のウルシ林16箇所を調査し、土壌pHの値から、pH5.3以下、5.4~
5.9、6以上の3グループに分けて、平均樹高、平均胸高直径等を比べると、pHの高いグ
ループほど樹高は高く、胸高直径は大きかった(表2)。
[成果の活用・留意点]
1
ケイカルに含まれる石灰や苦土は土壌の酸性をゆっくり改良する効果があり、作物の
養分として吸収されたり、リン酸の肥効を高めるとされている。
2
県内においてウルシに関連した「普及にうつす技術」なども出ているが、土壌のpH矯正
については書かれていない。
3
高野徳明著「漆の木」に植栽適地として土壌pHを6.0~6.5ぐらいに矯正しやすいとこ
ろとなっているが、裏付けデータ等がない。
また、これ以外では土壌pHの関連性についての知見がない。
4
共同研究「地域活性化を目指した国産ウルシの持続的管理生産技術の開発」で作成し
たマニュアルでは、「植栽前に完熟堆肥と苦土石灰をまいて耕作する」としている。
[具体的データ]
表1
中原野のウルシ・クリ・ブナ植栽林分の土壌pH
調査林分
土壌pH
土壌型
ウルシ植栽林分
7.2
黒ボク土壌
クリ植栽林分
5.5
黒ボク土壌
ブナ植栽林分
5.3
黒ボク土壌
ウルシ植栽林分とクリ植栽林分は所有者は同じである。
クリ植栽林分とブナ植栽林分は、共にウルシ植栽林分と接している。
表2
土壌pH
土壌pH階別のウルシの成長
林分数 平均林齢
(年)
平均樹高
(m)
樹高成長
平均胸高直径
肥大成長
(m/年)
(cm)
(cm/年)
~5.3
6
22.83
8.28
0.37
11.77
0.52
5.4~
6
24.50
9.22
0.39
16.35
0.68
6.0~
4
22.33
10.60
0.47
16.98
0.76
[その他]
研究課題名:地域活性化を目指した国産ウルシの持続的管理生産技術の開発
予 算 区 分:公募型研究(農林水産省)
研 究 期 間:平成22~24年度