電力中央研究所報告 電 気 利 用 業務用電化厨房にふさわしい換気設計手法に関 する研究(その 6) -連続フードにおける必要換気量の低減可能性- キーワード:業務用厨房,換気,排気フード,捕集 背 報告書番号:R13015 景 従来の厨房換気設計では、国土交通省の建築設備設計基準に示されるフード下面 気流速が 0.3m/s となる換気量(以下、面風速換気量)をフードによらず設定するこ とが多い。しかし、調理機器の熱や湯気発生の特徴が反映されないため、換気量が 過大になる可能性がある。近年、調理機器の特徴を反映させた必要換気量の考え方 が、調理機器を個別に覆うフード(以下、単独フード)で確立されつつある。この 考え方を複数台まとめて覆うフード(以下、連続フード)に拡張する場合、設計の しやすさから、単独フードの必要換気量の和(以下、単独合計換気量)で表現でき れば実用的である。しかし、単独合計換気量を連続フードの必要換気量とする妥当 性を確認した例はなく、また、面風速換気量からどの程度、低減できるかは明らか になっていない。 目 的 単独フードと連続フードの必要換気量を実測する。これに基づき、単独合計換気 量を連続フードの必要換気量とする妥当性を確認して、連続フードの必要換気量の 低減可能性を明らかにする。 主な成果 調理機器からの熱上昇流が弱いと、気流擾乱が排気フード捕集率を低下させやす いと考えられる。そこで、熱上昇流が弱い機器として揚げ物器を、熱上昇流が強い 機器として茹で麺器を用いて、連続フード内に設置されることの多い IH コンロ 1) を 並置した場合の排気フード捕集率測定 2) (図 1)によって、以下の知見を得た。 1.単独フードの必要換気量と連続フードの必要換気量 3) 単独フードの必要換気量は、揚げ物器で 430m 3 /h、茹で麺器で 375m 3 /h、IH コ ン ロで 330m 3 /h であった(図 2)。連続フードの必要換気量は、揚げ物器と 2 口 IH コン ロの場合に 730m3 /h、茹で麺器と 2 口 IH コンロの場合に 800m3 /h であった(図 3)。 2.連続フードにおける必要換気量の低減可能性 各調理機器の単独フードの必要換気量を足すと、揚げ物器と 2 口 IH コンロの場合 は 1090m 3 /h、茹で麺器と 2 口 IH コンロの場合は 1035m 3 /h となった(図 3)。単独合 計換気量は、排気フード捕集率測定から得られた連続フードの必要換気量よりも 235~360m 3 /h 大きかった。また、並置される IH コンロの台数が増えると、単独合 計換気量と連続フードの必要換気量との差は大きくなる傾向となった 4) (図 4)。よ って、単独合計換気量を連続フードの必要換気量と見なす上で、十分に安全側にな っている。さらに、単独合計換気量は、揚げ物器と 2 口 IH コンロの場合、茹で麺器 と 2 口 IH コンロの場合いずれも、面風速換気量 5) の 7 割になった。 注 1) IH コンロは非加熱時に作業台になるため、揚げ物器や茹で麺器と並置される典型的な調理機器である。 2) 対 象 機 器 の 定 格 消 費 電 力 は 、 揚 げ 物 器 6kW、 茹 で 麺 器 9.6kW、IH コ ン ロ 5kW で あ る 。 機 器 の 稼 働 状態 は 、揚 げ 物 器 は 1kW で 油 温 180℃ を 維 持 、茹 で 麺 器 は 定 格 で 沸 騰 、IH コ ン ロ は 3kW で 湯 沸 か し と し た 。 測 定 時 の 気 流 擾 乱 は 、擾 乱 発 生 板( 幅 0.5m×高 さ 1m)を 0.5m/s、5 回 /分 で 連 続 移 動 さ せ て 発 生 さ せ た。 3) 本 報 告 で は 、 排 気 フ ー ド 捕 集 率 が 90%に な る 換 気 量 を 必 要 換 気 量 と し た 。 な お 、 連 続 フ ー ド で は 、 フー ド内の調理機器のうち端に設置される機器の熱上昇流がフードへ入りにくく、溢れやすいことから、フ ード端の調理機器の排気フード捕集率が低くなる。このため、連続フードの必要換気量は、フード端の 調 理 機 器 の 排 気 フ ー ド 捕 集 率 が 90%に な る 換 気 量 と し た 。 4) 調 理 機 器 の 台 数 が 増 え る こ と で フ ー ド が 拡 が っ た 場 合 で も 、 捕 集 効 果 が 激 減 す る ほ ど フ ー ド 端 の 気 流 速 が小さくならなければ、連続フードの必要換気量は単独合計換気量よりも大きくはならない。なお、1 つ の 連 続 フ ー ド に 設 置 さ れ る 調 理 機 器 の 台 数 は 3 台 程 度 で あ り 、 台 数 が 多 く な る 場 合 は 、 連 結 し た 二つの 連続フードにすることが一般的である。 5) 200mm の 張 り 出 し 長 さ が あ る 背 壁 付 き キ ャ ノ ピ ー フ ー ド を 想 定 し た 場 合 の 開 口 面 積 か ら 計 算 し た 。 下面開口部が大きく、気流擾乱があっても、 熱上昇流が入りやすい。 850mm 鍋 鍋 900mm 450mm 揚げ物器 IH コンロ 6kW 5kW×2 口 450mm 450mm 450mm IH コンロ IH コンロ 6kW 5kW 5kW 稼働時消費電力 3kW 1kW 定格消費電力 稼働時消費電力 3kW 1kW 鍋 3kW×2 口 100 90 80 揚げ物器 70 茹で麺器 60 IHコンロ 50 200 300 400 500 排気フード捕集率[%] b)連続フード a)単独フード 排気フード捕集率測定時の調理機器と排気フードの配置(揚げ物器と IH コンロの場合) 図1 排気フード捕集率[%] 850mm 850mm 鍋 揚げ物器 定格消費電力 2050mm 1000mm 850mm 850mm 1000mm 850mm 下面開口部の気流速分布 (フードの端ほど気流速が小さい) 面風速換気量:1510m3/h 100 連続フードにおける 90 測定値 80 70 単独合計換気量 60 50 300 600 500 単独フードの換気量と 排気フード捕集率の関係 400 300 茹で麺器 200 揚げ物器 100 図4 0 0 900 1100 1300 a)揚げ物器(1 台)+2 口 IH コンロ 排気フード捕集率[%] 単独合計換気量と連続フード の必要換気量の差[m3/h] 図2 700 換気量[m3/h] 換気量[m3/h] 連続フードにおける 90 測定値 80 単独合計換気量 70 60 50 300 1 2 並置されるIHコンロ[台] 並置される IH コンロの台数と 必要換気量の差 面風速換気量:1640m3/h 100 500 700 900 1100 1300 換気量[m3/h] 図3 b)茹で麺器(1 台)+2 口 IH コンロ 連続フードにおける換気量と排気フード捕 集率の関係 関連研究報告書 「業務用電化厨房にふさわしい換気設計手法に関する研究(その 1)換気性能試験設備 の開発」R11005(2012. 3) 「業務用電化厨房にふさわしい換気設計手法に関する研究(その 3)排気フードの捕集 率に及ぼす擾乱発生板の移動頻度と速度の影響」R11023(2012. 3) 「業務用電化厨房にふさわしい換気設計手法に関する研究(その 4) -排気フード捕 集率に及ぼす調理機器前での調理作業の影響-」R12003(2013. 3) 研究担当者 岩松 俊哉(システム技術研究所 需要家システム領域) 問い合わせ先 電力中央研究所 システム技術研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected] 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2014 CRIEPI 平成26年3月発行 13-003
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