59 パソコンLANの開発とCAIへの応用 法 雲 俊 邑 1.はじめに パソコンLAN(Local Area Network:ローーカルエリアネットワーク)の普及によ って,近年,CAI(Computer Assisted Instruction)が大きくクローズアップされ てきている。文部省も1992年から段階的に小学,中学,高校にパソコンを取り 1) 入れて教育を行っていく方針を出している。このような環境から,CAIの考 え方や研究が最近になって始められたと思われがちであるが,現実には1958年 から,すでにアメリカでその研究が始められていた。CAIブームの波は, 1965年頃から始まり,70年代の中ばまで続く。しかし,その頃からCAIへの 批判論が出され,ブームの波は鎮静化の方向に向かい,80年代に入ってから再 びクU一ズアップされて,今日に至っている。 したがって,ENIACのコンピュータが1945年に誕生して以来,わずか40年 足らずの歴史のなかでコンピュータサイエンスが目覚ましい発展を遂げてきた ことを考えれば,CAIの考え方や研究にもそれなりの歴史があると考えてよ い。CAIの歴史については稿を改めて詳しく述べることにして,ここでは大 学における情報処理教育の概要と,この研究に着手した目的を述べておこう。 まず,数十人以上の学生を対象にして一斉に教育するために,コンピュータ が本格的に利用されだしたのは,1960年代に入ってTSS処理が可能になって 1)1983年のOECDの調査において,日本の学校教育へのマイコン導入が欧米諸国に 比べて著しく遅れていることをデータで示した。これを受けて文部省では,昭和59年 9月9日に「教育におけるマイクロコンピュータの利用」についての審議を開始した。 さらに,昭和60年8月22日には,「情報化社会に対応する初等中等教育のありかたに 関する調査研究協議会」の一次審議のとりまとめを出し,昭和60年度以降,教育の最 重点事項として取り組んでいる。 60 彦根論叢 第250号 からである。その普及のきっかけとなったのは,65年にアメリカのダートマス 大学において.,、対話型言語のBASICが開発されてからと見ていいであろう。 そして,それ以後,各種の大学にコンピュータが導入され,教育の主要なツー ルとなってきk。ちなみに,我が国でTSS処理が可能になった:のは1971年 (昭和46年)から,また,対話型言語のBASICが利用されだしたのは,73年 (昭和48年)頃からである。 当時のコンピュータによる大学での情報処理教育は,まず,言語の教育があ り,それを修得した後に教授から出題された各種の応用問題をアルゴリズムと して組み立て,プログラミングを行い,解答を得るというパターンの繰り返し が中心であった。それ故に,完成したプログラムを用いて定形的な作業を行う ような処理は少なく,たえずバカデカイ,コンパイラを引っ張りだして大量の メモリーを使用し,文法チェックとオブジェクトプログラムを作るという作業 が頻繁に繰り返された。 この結果として,学生数が多くなればそれに比例して,端末機の台数とメイ ンメモリーの容量が大きい大型コンピュータを用意する必要があった。つまり は,グロッシュの経験則である「性能を高め,大容量の情報処理を行う経済的 な方法は,コンピュータを大型化(高価格化)することである」とする(性能) &(価格)2がそのまま適用されたのである。しかしながら,1971年のマイクロ プロセッザの開発以来この定説は覆されることになるが,相変わらず我が国 の大学での情報処理教育には,膨大な費用をかけて大型コンピュータを用いる TSS処理方式が永く採用され,1980年代前半も尚この傾向が続いていた。 この時期に我々は,ネットワーク化したパソコンを用いて一斉に教育を行え ば,大型コンピュータを用いたTSS処理に比べ,はるかに安価な対話型シス テムが構築できるであろうことを予測した。そして,パソコンが本格的な普及 期を向かえた1982年(昭和57年)4月に,対話型の個別学習に利用するための ラ パソコンLAN, PLSシステムの設計と開発に着手し,84年4,月から情報処理 2) PLSシステム(Personal Computer LAN of SHIGA Univ.)は,システムの機能 仕様,操作仕様等の全体的なシステム設計および,応用ソフトの開発は筆者が行い,ノ パソコンLANの自弁とCAIへの応用 61 教育の実用に共してきた。 当時,8ビットマシンがホビーとして使用された時代の域をようやく脱し, 16ビットマシンが各メーカから相次いで発表され,名実ともに「OA機器.」’と しての利用版下ーズの期待が大きく高まって来た時期である。それは8ビットマ シン時代に蓄積した技術を土台として,従来まで大型コンピュータでしか利用 できないと思われていたグラブ機能や.日本語ワードプロセッサ機能が,容易に 16ビットマシンで実現できるとの唄い文句によってデビューし,多機能・複合 パソコンと銘打って販売されだし.たからである。 事実それから数年後には,汎用機の中ないし小型機がカードや片仮名による 処理を行っているのに,個人用の16ビットパソコンでは,グ.ラフ機能やカラー 表示,日本語ワードプロセッサなどが稼動するという.妙な時期であった。そし て,筆者らはLAN技術こそ情報化を促進する最大の武器.,最強の切り札にな ると確信していた。 以下では,1982年当時のLAN技術の実情と開発したCAI用パソコンLAN のシステム概要,およ.びCAIシステムとして実用に供した利用効果と.今後の パソコンLANの展望について考察してみよう。 ■.LAN開発の技術的背景 (1)LANの基礎技術 まず,コンピュータは,ネットワーク化して利用する方が,ハード・ソフト の資源の共有化による,便益性効果,経済性効果等々の面から,単体として利 用する以上に,はるかに大きな効果が期待できる。また,インテリジェントな パソコンをネットワーク化して,分散処理を行うζ二とは集中化に伴うオーバー ヘッドの回避や,危険の分散,レスポンス.タイムの向上.など,いくつかの利点 が予想できる。したがって,LANを構.聾する事を前提条件.としたが,システ ムの機能は,通信機能を備えたパソコン本体のほかに,ネットワータ媒体,イ \ ネットワークの基本ソフトおよび器材等は,コンパックマイクロシステムズ社(本社, 東京)から,パソコン本体は富士通ビジネス社から購入し,共同開発を行った。 62 彦根論叢第250号 ンターフェイス,およびネットワーク運用ソフトなどがそれを大きく左右する ことになる。設計時点でこれらの諸要素について,何を選択するかは十分考慮 すべきことであった。 LANの技術は,最初, FA分野の制御用のコンピュータと工作機械を接続 するME(メカトロニクス)技術の延長として発達して来た。しかしながら,使 用されるマイコンの種類やその組み合わせが,まちまちであることから,1982 年当時の我.が国では未だしAN技術の規格統一化されたものが皆無に等しい時 期であった。また,OA分野においてもLANシステムに着目する企業は少な く,わずか数社の開発状況も機能的レベル差がまちまちで,一様に比較するこ とは困難であった。当然の事ながら,ネットワーク技術とその製品の基礎的な 部分は国外製のものが使用されていた。 ここで,LAN技術の基礎的な知識について若干ふれておこう。まず, LAN とは,構内通信網または,一定地域内(数Km以内)の通信網のことで,広大 な地域をカバーするパブリックなグn・・一バルネットワークとは区別される。前 者のLANは,システムを購入または構築した者がネットワークを所有し, データ転送率も1Mbpsから数Gbpsと伝送量が多いのに対し,後者は日本 の場合,NTT, KDD,第二電電等がネットワークを所有し,転送率も1200 bpsから9600bpsと伝送量が少ない。しかし,通信網に公衆回線,専用回線 などを用いることにより全国的あるいは国際的な範囲でのネットワークが利用 できる。 ところで,LANの種類は,様々な角度から分類できるが,その特徴を以下 に列記してみよう。 第1表伝送媒体の種類 媒体の 種類 デーータ転送率 (Mbps) 伝送距離 (km) コ ス ト (km/円) ッィストペァ(より対)線 同軸ケーブル ベースバンド tvl Nl O. 3−2. 0 ・v50 .v3 2. 1−3. 3 ブm・一一ドバンド −v500 −v300 2. 1−3.3 光ファイバー ・vlOOO .v300 1. 8−5. 9 パソコンLANの開発とCAIへの応用 63 伝送媒体は,ノードからノードヘデータを転送するケーブルのことである。 米国では,早くからCATVに同軸ケーブルを採用しており,その蓄積技術が あることから,今日でもこの同軸ケーブルをデータ通信に採用している所が多 い。 しかしながら我が国では,当初,同軸ケーブルを350Mbps−500 Mbps の伝送量で使用して来たが,今日ではコスト的にも光ファイバーが安価になっ た関係から,それを採用する所が多くなっている。 第2表 通信方式とトポロジー一(形態)の種類 通信方式 トポロジー (送信一受信が1対1) ブロードキャスティング型 (情報を総てのワークステーショ ①②③④⑤⑥ ポイントーッウーポイント型 スター (各ワークステーシ ループ ョンを結ぶ線の形態 トリー によって,6種類に コンプリート 分類できる) ノミス リング ンに送るが,その情報を受ける 権利があるものだけが受信し, 返信する) 通信方式とは,データの送信・受信の方式であり,基本的には1対1のやり とりか,1対nのやりとりかに分類できる。一般的にはポイントーツウーポ イント型とブロードキャスティング型が多く採用されており,前者は,送信・ 受信が1対1,後者は,情報を総てのワークステーションに送るが,その情報 を受けとる権利があるものだけが受信し,返信する方式である。トポロジー 第3表 アクセス方式(伝送制御)の種類 TDMA(Time Division Multiple Access:回線交換) 低速データ,ディジタルPBX(音声)主体の制御に使用 CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access/CollisionDetection :パケット交換= 搬送波感知多重アクセス/衝突検出方式) バス型ネットワークに採用され,高速・大量データの送受信に適する TP(Token Passing :トークン・パッシング:パケット交換) リング型ネットワークに採用され,高速・大量データの送受信に適する 64 彦根論叢 第.250号 (形態)とは,ノード間または各ワークステーション間を結ぶ線(伝送媒体)の形 態のことで,様々なものが考えられるが一般にはこの6種類のうちのいずれか .が採用される。 アクセス方式.(伝送制御)は,データの送受信に関して,ビットまたはレコ ードをどのような手順で送受信するかの方式である。ノイズの混入や受信デー タの化け等に対する対応もこの制御手順によって行われる。プロトコールと呼 ばれる部分に属する制御手順で国際的なISO規格やJIS規格も制定されてい る.。詳細については,後述するg 第4衰周波数の種類 ベースバンド 一つの周波数帯域だけを使う方式 ブロードバンド 多くの周波数帯域を使う方式で,細分して送信・受信を使い分.けるものもある。 CATVなどへの利用には,ベースバンドに比べてコスト・パフォマンスがよい。 周波数は,伝送媒体を通じて,データをどのような周波数帯域を使って送受 信するかという方式に関して,の規約である。 第5表 パソコン用の代表的ネットワーク基本システムの種類 齢社名システ・名園擁ワーク Corvus社 DATA POINT社 WANG LABO RATORIES Xerox社 後:,IEEE標準 サイメッ.クス社 Zilo9社 OMNINET バ ス 型 ARCローカル バ ス 型 ネットワーク (2. 5 Mbps) WANGNET 伝送媒体 アクセス方式 ツイストペア線 CSMA 同軸ケーブル パッシング バ ス 型 デュアルケーブル CSMA/CD Ethernet バ ス 型 同軸ケーブル CSMA CyNET バ ス 型 同軸ケーブル CSMA/CD Z−net (1 Mbps) (9. 6−12 Mbps) (10 Mbps) (1 Mbps) バ ス 型 (e. 8 Mbps) 同軸ケーブル トークン 十Ethernet CSMA/CD 今日でこそさらに様々な技術が開発されており,合理的なネットワークを組 パソコンLANの開発とCAIへの応用 65 むことが出来るが,当時は,以上のような技術の背景にあった。これらの,ネ ットワーク基本システムを用いて,一つのノード(端末)を構成するために必 3) 要な基本費用の一例を示せば,次の通りである。OMNINETのトランスポー タは18万7千円,ARCローカル・ネットワークのアクティブ・ハブ約50万円, WANGNETのCIU(ケーブル・インタフェイス・ユニット)が115万円,モデム が25∼36万円であり,さらに,EthemetよりもOMNINETの方が経済的で あった。この費用にケーブル代とそれを接続するコネクターおよび,工事費で ある。 4) また,ネットワーク用OSとしては, OMNINETがCP/Mをサポートし ており,Corvus社が開発したCP/M−OMNIが製品化されて,アメリカでも 徐々に実績をあげて来ていた。もちろん,従来の実績は8ビット機が中心であ り,アドレス空間が非常に狭いという制約から,メモリー・バンクの切り換え に様々な工夫をしても能力不足からくる不都合さは,待ち時下の長さ,処理手 順の煩雑さ,など随所に現れていた。ここで開発したシステムは,16ビット機 を用いることによりこれらの不都合さの幾つかを克服している。 (2)ISOのプロトコル階層 上記してきたコンピュータネットワークのデータの送受信に関する制御を, 国際的にISO規格として制定している。本稿のでのLANの構築にも是非と も必要な技術であるので,その概要についてふれておく。 ISOが規格制定しているプロトコルは, OSI(Open Systems Interconnection) モデルと呼ばれ,コンピェータネットワークの接続に関するハードとソフトの 階層(Layer)を決めて,各階層ごとにモジュール化して標準的な仕様を取り決 めたものである。現在,その階層は七つに区分することが決められており,中 3)米国コーパス・システムズ社が開発したパソコン用のネットワークシステムである。 また,CP/M−OMNIは, OMNINETをOSのCP/Mに組み込んだネットワーク 用ソフトである。 4)CP/Mは, Control Program fbr a Microcomputerの略称であり,米国ディジタ ルリサーチ社が開発したパソコン用OSの商標。 66 彦根論叢 第250号 味である各層ごとの標準的な仕様も逐次決まりつつある。この層の概略図は第 1図のようである。 5) 各階層の機能概要は,つぎの通りである。まず,物理層は,隣接するノード 間での信号レベルの電機的制御を行う。つまり,コード転換,およびメッセー ジの物理的転送方法を規定するプロトコルである。物理階層におオるプロトコ ルを考えるとき,一一maには,物理的な接続に重点がおかれ,伝送の誤り検出や 訂正はまったく扱われない。この場合,CPUのボード上で用いるインターフ ェイスのプロトコルを考える時は,たとえば,キャラクターごとにデータが届 けばよいという範囲の信頼性の確保でよい。 しかし,ネットワーク開発における物理階層のプロトコルを考える時には, 第1図 OSIモデル Aコンピュータ Bコンピュータ 階層 ユーーザ ユーザ プログラム プログラム アプリケーション層 7 アプリケーション層 プレゼンテーション層 6 プレゼンテーション層 セッション層 5 セッション層 トランスポート層 4 トランスポート層 ネットワーク層 3 ネットワーク層 データリンク層 2 データリンク層 物理層 1 物理層 バックボーンケーブル 5)大特集:ネットワークアーキテクチャ(開放型システム問相互接続)の標準化動 向,情報処理,VoL 26, No.4,1985. General Motors:Manufacturing Automation Protocol−A Communication Network Protocol for Open Systems lnterconnection− Version 3.0,1987.32ビット・パソコン台頭で,新局面迎えるLAN,日経エレクト ロニクス,No.447,1988年5月16日号。 パソコンLANの開発とCAIへの応用 67 第6表 OSIモデルの機能概要 要 機 7 6 能 概 管理者および利用者向きのプロトコルを実行し,利 用者間の通信を可能とする総てのサービスを行う。 構造を持つデータの入力・受信・表示の制御を行う。 入出力端末,ファイル転送等に標準形式へのデータ iプ… ル FTAMI MHS 1 AP ACSE ROSE ISO 8823 変換機能を実行する。 5 セッションと呼ぶコネクションを設定し,ネーム, アドレス解釈,アクセス保護および同期とデータの ISO 8327 管理を行う。 4 セッション層のエンティティ間に標準化した汎用的 ISO 8073 なトランスポートコネクションを設定し,トランス 3 2 ペアレントなデータ転送を行う。 クラス0.2 一つまたは,複数の通信欄を介してデータ転送を行 ISO 8208 うためのメッセージルーティングを実行する。 X. 25 隣…接するノード間のデータ転送を行い,伝送誤りの ISO 8802/2 制御を行う。 1 フィジカルな機能として,ビット伝送するための機 ISO 8802/5 IEEE 一> Wb’ 2’.一2 1EEE ”” W02. 5 械的および電気的な制御を行う。 FTAM : File Transfer Access and Management MHS : Message Handling System AP : Application Program ACSE : Association Control Service Element ROSE : Remote Operation Service Elernent もし,ビット落ちやノイズの混入があったらどのように対処しなければならな いかという,使用環境からくる影響に関しても考慮し,その信頼性を確保する 必要がある。具体的には,データ伝送速度,データ・エンコーディングなどの 仕様が,用いる媒体(ケーブル)やノード間距離,ステーション数のもとで規 定される。 データリンク層は,隣接するノード聞でのデータ転送を規定する。移動する メッセージの誤り率を改善する機能として,アクセス方式やメッセージ・プロ 68 彦根論叢 第250.号 トコルの方式が規定されている。いいかえれば,データリンク層では,物理層 におけるプロトコルにより,物理的な接続がなされたことを前提にして,ビッ ト落ちやノイズの混入があった場合に.どのように対処するのかを,ソフト的ま たはハード的に規定する層である。この層は,伝送媒体へのアクセスを制御す る媒体アクセス制御層と,これに依存しないデータ伝送を実現する論理リンク 制御層に分かれる。 一般の広域ネットワークでは無手順,ベーシック,HDLCなどを用いる。 つまり,メッセージ間のフォーマットを区切るデリミタ(delimitter)で,キャ ラクタ・カウント(キャラクタ数をフレームのヘッダ部に書く方式でDDCMPなど) やキャラクタ挿入(フレーム終了の特別なキャラクタを付け加える方式でベーシック など),ビット挿入(01111110(7EH)のビット・パタ・一・・ンでフレームを区切る方式で HDLCなど)等がある。 LANでは,これらと異なるプロトコルをIEEE(The Institute of Electronical and Electronics Engineers, Inc.)がIEEE−802という規格制定を行っている。 しかしパソコンLANの多くは, CSMA方式を採用している。つまり,HDLC と互換性を保つように配慮されており,1本の通信ラインをバスとして共有 するが,各ノードが自主規制をすることによってバスのタイムシェアリングを 実現している。この自主規制をするために,キャリア・センス(他のキャリアが バス上にあるか否かを検出)と衝突監視(発信した信号が衝突したか否かを検知)があ る。 ネットワーク層は,複数のネットワークを経由するデータ転送のためのメッ セージルーティング(経路選択)を実行する規定である。信号の経路選択を行 って,混んでいる経路を避け,速く相手局へ送信するための制御で,広域ネッ トワークでは,CCITT(lnternational Telegraph and Telehone Consultative Com・ mittee)のX・25プロトコルがよく知られている。元来,広域ネットワークを 使用する場合の制御であり,LANなどの狭いエリアでのネットワークには, 必要としないことが多い。 トランスポート層は,エンドノーードからエンドノードへ透過的かつ高信頼な パソコンLANの開発とCAIへの応用 69 データ転送を行うための規定である。ネットワーク層での制御は,経路選択機 能が中心であり,エンドノードへ確実にデータが転送されることまで保証して いるものではない。それを保証するのがこのトランスポート層である。たとえ ば,転送中のデータ化けやパケットが無くなったり,シーケンス番号が不明に なった時,これをホストに知らせて,再びデータの送受信ができるようなコマ ンドを用意している。しかしそのコマンドやアドレスは,ビットで表わされる ものを意識しなければならない。標準のX.25では,RESETやRESTART のパケットがある。 セッション層は,ネーム/アドレスの解釈,アクセス保護,および同期とデ ータ管理を規定している。たとえば,DISCやPRINTERの名前がでてくれ ば,これをアドレスに翻訳して機器番号10のディスクや20のプリンターに結 合させて,データを送る。応用に強く依存する層で,トランスポートコネクシ ョンを開放する際にコネクション上に残るパケットを確実に転送するために必 須である。 プレゼンテーション層は,ネットワ 一一クの範囲内で用いられる標準形式への, または,それ以後のデータの再構成を規定している。つまり,データの抽象的 な表現とネットワーク上での転送形式との間の変換を規定し,コネクション上 で変換規則の集合であるコンテクストを制御する。たとえば,データのフォー マットをネットワークの標準形式から端末機やファイルの形式に変換,その逆 の変換,暗号化やテキストの圧縮などである。この層以下では,コネクション をアドレスで指定する。また,この層における主要な機能は,入出力の記述 (端末プロトコル)とファイル転送プロトコルであるが,今後の検討課題として 残されている部分が多い。 アプリケーション層は,応用プログラムで直接的に理解される総てのサービ スを行うための規定である。この層は,共通的に必要な機能をまとめた共通機 能と特定の応用向けにま.とめた応用機能に分けられる。たとえば,前者にはデ ィレクトリを使って名前からアドレスを求めるアソシエーション制御機能など があり,後者にはファイル転送,ディレクトリ,ネットワーク管理などの機能 70 彦根論叢i第250号 がある。一般的にユーザが使用するユーザプログラムは,この七層の外に位置 するζとになる。 OSIモデルは,このようにネットワークの接続についての問題を七つの階 層に分けて,それぞれの機能を規定している。しかしながら,物理層から上の 層に向かうほど目的に応じた機能の設計が増えてくることや,ハードの技術的 進歩が著しいことから,今後の検討課題として残されて詳細な部分が規定され ていない箇所も多い。 以下では,パソコンLANの開発について述べるが,ハードの部分はここ で説明してきたOSIモデルの階層に照合する形で述べていこう。 皿.開発システムの機能概要 (1)PLSシステム機能の概要 本システムのパソコン本体には,富士通(株)社のFM−11 BSを27台使用 した。また,Corvus, systems社(サンタクララ)が開発したOMNINETを採 用した。CP/MのOSに組み込んだCP/M−OMNIによるLANの構築は, パソコンの機種に依存しないように考慮されており,RS−422規格のツイスト ペア線上のバスの任意の位置からブランチして,トランスポータと呼ぶインタ ーフェース・カードを介して64台までのパソコンが接続でき,いずれのパソコ の ンもホストになり得る。 CP/M−OMNIの応用により,ハードディスクやプリンター資源の共用の他 に,電子メール機能,プログラムやデータファイルの個別および一斉転送など, 種々のアプリケーションシステムの開発が期待できる。システムの主な機能と しては,対話型でTSS処理に似せた運用を考え,いろいろな内容の問題やデ ータを,共有のハードディろクから学習者に提示し,学習進度や個性に応じた 6)マーク・ハーン,フィル・ベランジャ(米国コーパス・システムズ社),パーソナ ルコンピュータを単純なより対線で結ぶローカルネットワーク,日経エレクトロニク ス,1981年12月21日号。 柴田晋吾,ツイストペア線によるオムニネットの概要,インターーフェイス,Nov. 1982, pp.223−229. パソコンLANの開発とCAIへの応用 71 個別教育のできることを主たる目標とした。 ハードウェアシステムの機能概要は,つぎの通りである。 ○ 物理層 データ伝送速度 ノード間最長距離 1Mビット/秒 リピータ使用時1. 2 Km (1セグメント内300m) 最大ステーション数 64台(うち設置台数27台) 媒体 ツイストペア線 データ・エンコーディング ベース・バンド伝送方式(NRZI) 通信媒体には,20AWG(ゲージ)のツイストペア線を,伝送方式はRS−422 規格(インピーダンス100Q±5%平衡伝送用ケーブル)を用いている。ノード問距 離は,1セグメント300m以内であるが,一室内にノードを総て設置したため 数mであった。OMNINETは,トランスポータと呼ばれるLSIボードをパ ソコン内部にビルトインすることにより,ノードが設置できる。トランスポー タはMB8464−15, MC6801, MC6854ADLC, CORVUS MONO CHIP(コーパ ス社製カスタム・ゲートアレイ),メモリーRAM,などで構成されている。 トランスポータには68系のLSIが使用されているが,ホストのCPUとは 必ずしも一致させる必要はない。さらにOMNINETは, MC6854ADLCを 用いて,CSMA/ACKをハードで実現している。この種の方式は,他メーカ ーの製品であるCyNET, Z−netがZ80SIOを使って実現しているのと同じ である。 ○ データリンク層 アクセス方式 CSMA/ACK(DCなし) メッセージ・プロトコル 可変長フレー・一ム(データグラム方式) LANには,プロトコルにIEEE−802という規格制定を行っている。しかし パソコンLANの多くは, CSMA方式を採用していることについては前記し た。OMNINETもCSMA方式を採用しているが,発信した信号の衝突監視 (CD)をもたずに, ACKを返す方式を採用してこれに代えている。つまり, 72 彦根論叢 第250号 コーパス社独自のカスタム・ゲートアレイによって,ADLCの機能を使い, 回線上のレベル遷移を検出し,同等の機能を果たしている。 ○ ネットワーク層 ネットワーク層は,信号の経路選択であるル三ティングを行ってすみやかに 相手局へ送信するための制御であるが,パソコンLANは広域ネットワーク ほど経路が複雑ではないので,ほどんど考慮する必要がなく,つぎのトランス ポート層と合わせて設計される。 ○ トランスポート層 パソコンLANでのトランスポート層の機能は,データの正確な送受信が 行えるようにすることが中心であり,複数ネットワークを考慮したデータチェ ックへの配慮は必要ない。OMNINETでは.,送信先のホスト番号とソケット 番号を指定し,送信用データアドレス,データ長などの情報を書いて,データ のありかを指定する。このような指定に,SEND DATA, RECEIVE DATA, POLL DATAなどのコマンドを用いて,データの送受信を行う。このコマン ド指定さえ間違えなければデータは正確に送信される。 物理階層,データ・リンク層およびトランズポート層までをトラン.スポータ と呼ぶLSIボードとソシトにより,ユーザに提供してくれるので,我々の目 的を実現するためには,セッション層から上位のソフトを開発すればよい。 第2図 OMNINETを利用したPLSシステム サーバ役のパソコン 共有型 面的 口 ?ム (コーパスシステムズ社命) トランスポータ RS422 ツイストペアケーブル トランスポータ トランスポータ トランスポータ 魍 雛 圃 LEai117 F。.クステ.、,4] トランスポータ 圏蚕 サーバ役のパソコン パソコンLANの開発とCAIへの応用 73 ② ソフトウェアの機能概要 す OMNINETは, CP/Mの他にMS/DOS, RSX−11(米ディジタル・イクイッ プメント社,DECのPDP−11用OS)の各OSにも組み込めるものである。ここ では,本システムに採用したCP/OMNIについてのソフトウェアの基本的な 部分と,それを応用した開発ソフトについて述べよう。 CP/Mは,パソコンの機種によつで仕様が異なるBIOS部分と,機種が異 なっても共通的な基本部分がある。CP/OMNIは,この基本部分とリンクす る形態を採っているため,異機種上での実行が可能なほか,CP/Mが有する 日本語機能などを含む総ての資源の利用,および,そのアプリケーションの利 用,などが通常の操.作できる。また,それらのバージョンアップにも左右され ずに運用できると言う特徴をもっている。 以下では,これを応用した開発ソフトについて述べよう。まず,CP/OMNI は,初期ルーチンにより自分自身をCP/Mとリンクしてメモリーに常駐させ る。つまり,CP/Mの一種のユーティリティと.してロードされるが,この時 点でシステムプログラムの一部となる。 便宜上設定してあるホストと各パソコンは,ネットワークとして接続され, 双方の画面にはリクエスト・メニューが表示されリクエスト待ちの状態になる。 各パソコンのリクエストを受けて,ウィンチェスター・ディスクにアクセス がかかる。 各パソコンからのアプリケーション・ソフトのリクエストを受けて,ホスト と各パソコンのトランスポータ間でのメッセージの送受信が開始される。 CP/OMNIでは,9種類のインターフェース・コマンドにより各パソコン のトランスポータ間のデータの送受信を行う。パソ.コンAからパソコンBに データを送信するには次のような手順を経る。 まず,受信側のパソコンBで,SET UPコマンドを実行する。そのために メモリ内にそのコマンドを置き,受信バッファ長と,ソケット番号(ロジカル 7)MS/DOSは, Micro Soft Disck Operating Systermsの略称で,米国のマイクロ ソフト社が開発したパソコン用OSの商標。 74 彦根論叢第250号 な値で一種の通信チャネル番号と同様の働きをする。送受信の両側は同一の番号を使用し なければならない。)を設定する。そして,トランスポータにこのコマンドのメ モリ上の位置(アドレス)を知らせれば,トランスポータ内のファームウェアが それを読み込んで,受信準備の処理をする。 送信側のパソコンAでは,SENDコマンドを実行する。コマンドに送信し たいデータのアドレスとその長さ,受信側のトランスポータ番号を相手先ノー ド・アドレスへ,また,相手先ソケット番号ヘソケット番号を設定する。そし て,トランスボータ内のファームウェアに処理を依頼すると,データを送信し, 実行結果をリターン・コードとして8086のALレジスターへ返す。 受信に割り込みを用いない場合は,POLLコマンドを実行して,データの 到着/未到着をチェックすることができる。 これらの,トランスポータ間のデータの送受信を行うコマンドの詳細を,次 8) に示しておこう。 CP/OMNI, MS/OMNIにトランスポータ間の データ転送を実行させるコマンドー覧表 ①セットアップ・レシーーブ(SET UP RECEIVE) 一一トランスポータを受信状態に設定する ②センド・デーータ(SEND DATA) 一トランスポータにデータ送信を指令する ③ポール・データ(POLL DATA) 一トランスポータへ受信されたデータを読み出す ④エンド・レシーブ(END RECEIVE) 一トランスポータの受信状態を解除する ⑤イニシャライズ・トランスポータ(INITIALIZE TRANSPOTER) 一トランスポータをリセット状態に設定する ⑥フーアムァイ(WHO AMI) 一自分のトランスポータのノード・アドレスを読み出す ⑦エコー(ECHO) 一自分に対して相手側のトランスポータの接続状態を検出する ⑧ピーク/ポーク(PEEK POKE) 一トランスポータ内蔵のファームウェアのパラメータ設定を変更する ⑨セマフォ(SEMAPHORE) 一ローカル・ネットワーク上の共有型ウインチェスタ・ディスク内部の共有型 ファイルを書き込みアクセスするときの排他処理に使用する 8)柴田晋吾,小池仁巳パーソナルコンピュータ・ネットワークの共有ディスク・ア クセス方式,日経エレクトロニクス,1984年2月27日号。 パソコンLANの開発とCAIへの応用 75 ①セットアップ・レシーブコマンド制御 パラメーータ・ブロック o 1 リターン。コード→ALレジスタ FE:受信バッファが正しく設定された 84=ソケット番号がイリーガル 85=ソケット番号はすでに使用されている 87:受信バッファ長が1024以上である OAUO 000 ソケット番号 受信バッファ長(バイト数)MSB 受信バッファ長(バイト数) LSB ②センド・データコマンド制御 パラメータ・ブロック o o 相手先ノード・アドレス 相手先ソケット番号 送信用データ・アドレス 送信用データ・アドレス 送信用データ・アドレス MSB LSB 送信データ長(バイト数) MSB 送信データ長(バイト数) LSB リターン・コード→ALレジスタ OO:送信が正しく行われた nn:nn回の送信再試行後送信に成功した 80:再送信したがついに成功しなかった 81:送信したデータ長がバッファで用意し たものより大きかった 82=準備されていない相手先バッファに対 して送信しようとした 84:相手先ソケット番号がイリーガル 86=相手先ノード・アドレスがイリーガル 87:送信データが1024バイト以上である ③ポール・データコマンド制御 パラメータ・ブロック 。 2 ソケット番号 転送先バッファ・アドレス MSB 転送先バッファ・アドレス 転送先バッファ・アドレス LSB リターン・コード→ALレジスタ FE:データが未到着 00∼3F:データ受信を完了した送信先ノー ド・アドレスが入る BXレジスタに受信したデータ長 (バイト数)が入る 受信バッファ長(バイト数)MSB 受信バッファ長(バイト数) LSB プログラムコーディング例 このプログラムでは,送信側から文字列「SHIGA UNIVERSITY」を送信 し,受信側ではそれが到着したかどうかを確認して,OKであればCRTに 76 彦根論叢 第250号 9) 表示する。 送信側 ORG 100H MOV DX, CS MOV MOV DS, DX WORD PTR SEND−S, DX ;SET SEGMENT ; START ; MOV DX, OFFSET SEND−P MOV CL, 32H MOV AH, 70H INT 128 ;SEND DATA AL, 80H ; NORMAL ? ; CHECK: CMP JAE START ; NO, SEND RE’TRY ; MOV MOV CL, OOH INT 224 DL, OOH ;RETURN TO CZ/M. ; ; 80H 工)W SEND SEND.S DW OOOOH ; SEGMENT OOH O2H 90H ; SEND ; SEND O , DATA B BD BD BD B DD SEND−P DB’ DRG DB DB OOH, 02H, OOH OOH,11H ..... .. ; SEND NODE ADDRESS. ; SOCKET NUMBER ; DATA ADDRESS. ; DATA LENGTH. 200H rHIGA.UNIVERSITY’ .‘ 一$p END ORG ’ 受信側 MOV MOV MOV MOV 100H DX, CS DS, DX ;・SET DS・ WORD PTR RECIV−S, DX ;SET SEGMENT TO WORD PTR POLL−S, DX : PARAMETER BLOCK ● , 9)富士通(株),FM−11ローーカルネット』ワ.一クユーザーズマニュアルのプログラムを 応用したものである。 パソコンLANの開発とCAIへの応用 77 START : MOV DX, OFFSET RECIV−P MOV MOV AH, 70H CL, 32H 128 ・ START AL, OFEH LOOP: MOV DX, OFFSET POLL−P ; INT CMP JNZ MOV MOV INT CMP JZ ; SETUP RECEIVE ; NORMAL? ; NO, SET UP RETRY CL, 32H AH, 70H 128 AL, OFEH ; POLL DATA ; RECEIVE DATA? ; NO, RETRY AL, BYTE PTR NODE ; CHECK NODE ; LOOP TEST: CMP JNZ ; DISP: MOV ERR MOV CL,09耳 DX, 200H INT 224 ; CL, OOH DL, OOH INT 224 ; DISPLAY RECEIVE DATA TO CRT. ; RETURN TO CPIM−86 ; RVEND : MOV MOV ; ADDRESS, ERROR ; ERR: MOV CL, 09H INT JMP 224 RECIV−P DB 80H MOV ; DW RVEND ; DISPLAY ERROR ; MESSAGE. DECIV OOOOH ; RECIV−S DW DX, OFFSET ERMSG POLL−P DB 80H POLL POLL−S DW OOOOH ; DW RECIV DB DB DB OIH’, 90H ; SET UP RECEIVE OOH; OOH, OOH OOH, 11H ; POLL・ DB O2且,90H ;POLL DATA 78 彦根論叢 第250号 DB OOH, 02H, OOH ; DB OOH, ltH ・ERMSG DB ‘*** NODE ADDRESS ERROR ***’ DB ‘$’ ; NODE DB OIH ;NODE ADDRESS OF END ; SEND−NODE, 下記のプログラムは,ホスト側からステーションにアクセスしてデータの送 受信を行うものである。 0884 DPDATAO322 ECHOO320 ECHOBSO310 ECHOCNTO323 ECHONO O324 ECHOPUTO4E2 EOFSWOIOO ESCAPEOIO3 ESCAPE20108 ESCAPE3 010D ESCAPE4012C ESCCDO38A ESCCDIO391 ESCCD20398 ESCCD3 039D ESCCD403A2 ESCCD503A7 ESCCD603AC ESCCD704E3 ESW OOsC FCBBUFOO7C FCBCRO804 FCBWKO781 FSWOgBA HTCNT O69E工NITO69C INITBSO6991NITCNTO3BD KANJIO3BA KANOUT O2A3 MENUCDO139 MENUTBLO782 MESSIO7E3 MESSIOO462 MESSII O487 MESS1208C5 MESS1608Fl MESS17098E MESS1804AB MESS19 07A4 MESS207C4 MESS303BF MESS403E4 MESS50402 MESS6 0423 MESS70443 MESS802F8 MESS904EA NODECDO4EO NODENO O690 POLLBSO692 POLLLO68D POLLPNTO90E PRDATAIO94E PRDATA2 03BO RCBBUFFO3B6 RCBLNGO3B2 RCBOFFO3B4 RCBSEGO328 RDYNRDY O686 RECIVO684 RECVBSO681 RECVPNTO4E9 SENDDO4E4 SENDPNT O4E7 SENDSEGO326 XYPOS eOOO NUMBERS OOOO LABELS OIOO ALLOOD6 CHOICEO12D CODEERRO2Al DATAGETO36D DISPLAR O385 DPJJIO39D DPJJ203A3 DPJJ303A9 DPJJ403ED DPJJ5 03El DPJJ603B9 DPJJ703DO DPJJ80121 DPYOOBO EXITI OIIB GETO337 GTCLOSEO345 GTERRIO34F GTERR20359 GTERR3 0363 GTERR402Fe GTJJIO2C7 GTPOLLO2FE GTREPO2BA GTSETUP O329 GTWRITEOOC2 LOOPO4DE NAMESUBOIIO ONEO3FO OPENERR O471 PRHTSUBO3FA PRINTO40B PRJJIO4CA PRJJIOO4D2 PRJJII O491 PRJJ1204D9 PRJJ13049F PRJJ140423 PRJJ20486 PRJJ25 042C PRJJ3043B PRJJ40474 PRJJ5045F PRJJ704BC PRJJ8 04Bl PRJJ90127 PRTOOBI RETRYO28D SDERROIFD SAERR2 0297 SAERR301Bl SAJJIO21C SAJJIIOIDA SAJJ20207 SAJJ3 01A3 SAJJ40280 SAJJ5027D SAJJ6022F SAJJ7014E SALO OPI O162 SANEXTOICA SAREADO215 SARESETO17C SARETRYO238 SASEND パソコンLANの開発とCAIへの応用 79 022C SASUBIe245 SASUB2026C SASUB3e277 SASUB40144 SATRYI O179 SATRY20137 SENDALLOOOO STARTO4E6 SUBJJIO4EC SUBJJ2 050A SUBJJ30513 SUBJJ40523 SUBJJ50531 SUBJJ60537 SUBJJ7 04F6 SUBJJ8008D SUBKAN IV. CAIへの適用効果 (1)PLSシステムの運用機能 PLSシステムの運用機能は,教師用の学習管理ツールとCAI実行ツール に大別できる。まず,教師用の学習管理ツールには,教材作成システムと学習 結果分析システムがある。 教材となるコースウェアを作成するための特別なシステムは,未だ準備途上 にあるが,現状ではBASICなどの言語や,市販の統合ソフトによって作成し ている。しかし,実際にコースウェアを作成することは,犬変な労力を必要と し,とても一人や二人の教師が仕事の合間に開発しても追い付かない。このた め,市販のコースウェアを購入して利用するという方法もとっている。 学習結果分析システムは,PLSシステムを用いて教育を行った後の,デー タを個人別に分析・評価するシステムである。データ・ベースに蓄積された個 人別の学習結果デーータを,実習の終了後,学生毎に集計し学習進度や理解度の 分析をし,この資料を基に指導・助言する。 CAI実行ツールは,教師用のホスト・パソコンと学生用のステーション・ パソコが,1:1または,1:nでコミュニケーションをしながら実習を進行させ る基本部分のシステムである。電源が投入されると,CP/MおよびCP/M− OMNIが実行され, PLSシステムがロードされて初期メニュー画面が表示さ れる。リクエスト待ちの状態で,以下に説明するいずれかの機能を選択する。 [1] 一括送信機能:ホストから総てのステーションにデータを送信する機能 であり,プログラム,データ,日本語文章などをディスクからロードして,送 信できる。ステーション側には,この機能は付いていない。 [2] 個別送信機能:ホストから特定した一台のステーションだけにデータを 送信する機能であり,プログラム,データ,日本語文章などをディスクからロ 80 彦根論叢 第250号 一ドして,送信できる。ステーション側からは,ホストに向かって送信する機 能になる。 [3]受信機能:ホスト側は,複数のステーションからの送信データを,待ち 行列を作って到着順に受信する機能である。ステーション側は,ホストから送 信されたデータを受信する機能である。プログラム,データ,日本語文章など を各ステーションのディスクからロードして,ホストへ送信できる。 [4]表示機能:ディスクからファイルをロードして,その内容を表示する機 能であり,プログラム,データ,日本語文章など,各種の教材とコミュニケー ション・メッセージを各ディスプレイに表示する。 [5] 印.字機能:ホストおよびステーションのメモリー上にあるプログラム, データ,日本語文章など,各種の教材をプリントアウトする。 これらの機能を使った実習の流れは次の通りである。まず,教師用のホスト から学生用のステーションへ,データ・ベースに蓄積されているハード・ディ スク上のコースウェアを,学生の要求に応じて取り出し,配分する。学生は, 教師からのコースウェアを受信し,その問題を解答し,結果を教師側へ転送す る。必要があれば,学生は教師への質問やプリンターへの.出力を行.うことがで きる。また,教師からは,随時任意の学生の進捗度を調べることも可能である。 実習が終了すれば,教師は,前記の学習結果分析システムを用いて教育を行っ た後の,データを個人別に分析・評価する。 第3図PLSシステムの概略 学習進度や理解度の分析 w導資料の作成 w習歴データベースの構築 CAI実行ツ!ル w習結果分析システム PLSシステム @ 教材データベースの構築 学習管理ツ1ル 教材作成システム コースウェアの作成 一括送信機能 個別送信機能 受信機能 表示機能 印字機能 パソコンLANの開発とCAIへの応用 81 第4図.PLSシステムの実行 教材作成 学習問題 融 選定 教材資料 学習結果 学習結果の 分析資料 CAI実行 学習結果 (個別) このような流れによるCLSシステムの利用は,主としてプログラミング実 習やワープロ教育などに用いている。また,情報処理概論,コンピュータ言語 の教育などの基礎知識を修得させる為にも一部利用している。 ② PLSシステムの適用効果 パソコンをスタンドアロン型で数十台配置しても,利用効果は低く,担当者 は非常な苦労を強いられる。たとえば,ハードウェア,ソフトウェアの資源の 有効的な共用を図ることは困難である。 本システムでは,パソコン27台.に対してプリン.ター一 2台.,20Mのハードデ ィスク1台を共用しているが,適度に間に合っている。このことからいえば, 50台のパソコンに対してプリンター5∼6台あれば,十分であろう。 本システムは,費用の点から完全なサーバー形式には出来なかったが,統合 型のサーバーを設置し,それに各種の周辺装置を接続すれば,ハードウェアの 共用,データベースの共用な.どは極めてスムーズに運用できる。 スタンドアロン型のパソコンでは,教師の開発したコー.スゥェァを学生に配 付するのに,台数分だけフロッピーシートをコピーしなければならない。そし て,学習結果のデータも学生のフロッピーシートを一枚一枚集めて,結果を分 析する労力が必要になる.。代数が40台,50台と増えていけば大変な作業である。 パソコンLANでは,これらの愚な利用と労力は完全に克服できる。 82 彦根論叢 第250号 現状のPLSシステムは,パソコン台数が極めて少ないため,1台に二人ず つ使用させても尚,不:足の状況が毎年続いている。昭和59年4月より,非常勤 の他大学で筆者が機能選定をしたPC−Semi(日本電気製の教育用パソコンネット ワークシステム)を用いているが,台数が多いことと,コミュニケーション機能 が充実していることから非常に使いやすい。 これまでの経験から言えることは,パソコンLANで教育を行う場合,パ ソコンの台数が学生数に見合う分だけ用意されていることと,操作性に優れて おり,コミュニケーションがいつでも容易に行えるような機能が充実している ことが重要である。もちろんコースウェアも実習の運営方法も重要であるが, 前記の基本的な要素が充実していなければ,パソコンLANによる教育効果 は半減する。 ここで,教育的側面にも若干触れておこう。パソコンLANによる教育は, 教室での講義や演習形式に比し,学生個々人の反応を非常に豊かにするととも に,理解度を増す教育を実施することが可能である。これは,従来まで集団教 育により,ややもすれば学生個々人の存在を見失いがちだった点を補間し,マ ンTOマン教育に近い個別学習方式がとれるからである。 また,授業時間外の使用を認めれば,実習内容のアウトラインは再現でき, 繰り返しによる反復授業が容易に行える。これにより,学生自身の自助努力に よって学習能力を助長させる事にも繋がる。さらには,高速演算やグラフィッ ク表示機能などにより,シミュレーションや図形表示の再現などをその場で実 現でき,黒板中心の教育に比し,新しい教育環境と未知の世界を切り開く可能 性をもっている。このように,LANによる教育効果はスタンドアロン型でパ ソコンを利用する点にLANの効用がプラスされた効果が期待できる。 ところで,PLSシステムは,パソコンLANの先駆けの時期に開発したも 10) のであり,LAN技術の未成熟さと, LAN用OS,コースウェア,管理シス 10)PLSシステムの概要は,昭和59年7月19日付の日刊工業新聞に発表された。また 本システムの開発成果は,我が国の後のパソコンLANの開発に直接・間接的に影 響を与えた。 パソコンLANの開発とCAIへの応用 83 テムなどの不十分さにより,操作性が悪く,再構築の必要性に迫られている。 本システムの弱点は,CAI実行中の学生にメッセージを送ったり・マルチ 画面の使用が出来ないことである。このため,割り込みをかけて学習実行中 のプログラムを一度終了させ,そこヘメッセージを送るという方法しかとれな い。 16ビットパソ.コンのメモリー空間は,1Mバイトが限度である。したがっ て,LANのOSをたえず動かしながらユーザープログラムをマルチタスクで 実行することは,事実上不可能といわざるを得ない。シングルタスクの実行に より、,LANのQSとユー一一ザープログラムをたえず切り替えながら処理を実行 する形態で,ディス・クやプリンターなどの周辺装置を共有する程度になる。こ の点では,LANという概念がもつ本来の目的や目標を,総て実現する事はで きない。 しかしながら,最近,相次いで発売されだした32ビットで,米マイクロソフ ト社(Microsoft C。rp.)のMS−DOS用MS−Networksやこれをサポートする OS/2あるいは, Ethernet上でUnix−OSを実行させることにより,分散処理 を中心とするLANの本来的な目的が達成できるようになりつつある。今日の LAN技術からすれば, AV機能をも付加したシステムが構築でき,コースウ ェアの作成やホストとステーション間のコミュニケーションも望外な効果が期 11) 待できる。 V.CAIとLANの今後の動向 今日のコンピュータシステムは,確実に二極分化の方向に向いつつある。一 方は,パソコンを中心とする32ビット・マルチCPU;を用いた中型クラスまで であり,他方は,独自のCPUを中心とする超大型化の傾向である。 このような状況の中で,情報処理教育にパソコンLANを使用するか,ホス 11)筆者の調査}こよれば,昭和63年4月現在には,AV機能を付加した薗内のパソコン LANは, PC−Semi, FMTnet,等数多く実用化されており,欧米にやや先行するハー ドウェア製品が出荷されだした事は好ましいことである。しかし,CAI用ソフト, 特にコースウェア作成ツールは貧弱であり,欧米に比し4−5年の開きがある。 84 急所論叢 第250号 ’ トを大型コンピュータにしたLANを構成するかは,目的に応じて異なるとこ ろである。最近,大型コンピュータのLANの端末機にパソコンを使用する傾 向が増えているので,ステ■一.ションが分散端末機になり得るという点では,両 システムが一致する利点になる。 しかしながら,パソコンLANを使用する最大の利点は,コストが大型コン ビュー一撃のLANに比し,半額または1/3程度で済むというのが最大の利点で ある。32ビットといえば,4∼5年前のミニコンに相当する能力を持つもので あり,大型機に比べれば,需用者数は数千倍以上の違いがある。それ故に,・パ ソコンの薪製品の開発サイクルは圧倒的に早く,周辺機器も豊富で手軽に接続 でき,一頃のパソコンと汎用中・小型機のような逆転した機能ギャップが今後 も起こり得ることは容易に予想.できる。また,供給コストも需用者数の多い分 だけ安価になる事は当然である。 したがって,CAI実習の中で,大型コンピュータのハード・ソフトの資源 をどの程度まで使用するかが,両者を選択する最大のポイントになる。 大型コンueユータを用いたTSS処理による情報処理教育は,何年も経験し て来たが,端末機の台数が多くてシステムがしばしばダウンするという初期の 欠点を除けば,実習形態はパソコンLANとほぼ同じである。しかし, TSS の最大め欠点は,教師の存在が全く隠れてしまい個別指導の助言が出来ない事 である。それを実現するには,50∼60台もある端末機の一つ一つを歩いて見て 回るしかない。 大型コンピュータのLANを情報処理教育で使用する最大の利点は,複雑で 克,大きなアプリケーションプログラムを多種類にわたって分散処理方式で実 行する時に発揮される。通常の情報処理教育では,このケースは少ないと思わ れるが,企業内部の実際の経営情報処理では頻繁に行われるため,この種の LANを導入するところが多い。 この種の論議は,現在,開発途上にあるマイクロソフト社のOS/2 LAN Managerと, IBM社のネットワーク・アーキテクチャSNA(SAA)のどちら が優位になるかを示すものである。つまり,工BM社が提唱するのはホスト・ パソコンLANの開発とCAIへの応用 85 コンピュータとパソコンの垂直連携により,効率の良い統合OA処理を展開 しようとするものである。しかしながら,この方法はメィンフレーマ独自のア ーキテクチャが多く,メーカー主導型の閉鎖的な色彩が濃くなるであろう。 他方の,マイクロソフト社などが提唱している,LANに複数のパソコンを 水平連携させる方法は,アーキテクチャがオープンであることから様々なメー カーが参加して,多機種のパソコンを接続するようになるであろう。これによ り,異機種の壁を越えて様々な流通ソフトが利用出来ることになる。パソコン の高機能化が進み,LANのOSが充実し,ユーザーが益々増えればメインフ レームを脅かす存在にもなるであろう。 参 考 文 献 (1)特集ローカルエリアネットワーク,情報処理,Vo1,23,1982, No.12,情報処理学 会。 (2)阿江忠,ローカルネットワーク技術の基礎と実際,CQ出版社,昭和58年9月。 (3) C.Tropper, Local Cemputer Network Technologies, Academic Press, 1981. (4) Digital Equipment Corporation, lntroduction to Loeal Area Networks, 1982. (s) R.M. Metcalfe and D. R. Boggs, Ethernet: Distributed Packet Switching for Local ComPuter Networks, Communications of the ACM, Vol.19, No.7, July 1978. (6) A.S. Tanenbaum, “Network Protocols,” ACM Computing Surveys, Vol.13, No. 4,pp。453−489,1981.(小林訳,「コンピュータ・ネットワークのプロトコル」,『コ ンピュータ・サイエンス’81』,bit別冊) (7)日経エレクトロニクス,1988年5月16日号。 (8)法雲俊邑,企業情報システムー高度情報化の展開とその対応一,杉山書店,昭和62 年5月。 本稿は,昭和62年度滋賀大学学内研究助成金の成果の一部である。 尚,PLSシステムの開発にあたっては,富士通ビジネスソフト社大阪営業所販売課長 の古田博久氏,およびコンパックマイクロシステムズ社東京営業所技術課長の池田修氏に ご協力と貴重なご意見を賜った。ご両氏に感謝の意を表したい。また,本稿は,在外研究 等により,中断していた研究を再開して,とりまとめたものである。
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