Oracle Customer Case Study 京急百貨店、基幹系 BI の活用領域を拡大し、分析業務の時間短縮と精度を向上 営業戦略策定における迅速な意思決定を実現 “従来の分析ツールでは分析に時間がかかっていたため、最新のデータで分析することでできませんでした。しかし Oracle BIEE を導入してからは 最新のデータで営業戦略を策定することができ、計画の精度も向上しました。策定までの時間も大幅に短縮し、迅速な意思決定に役立てられています” -株式会社京急百貨店 営業本部 戦略推進部 営業政策・MD 担当 マネージャー 宮崎 史康氏 株式会社京急百貨店(以下、京急百貨店) はいう。 は、京浜急行電鉄株式会社(以下、京浜急行 1つ目は基幹系 BI。BI ツールにより、商品の単品分析やお中元・お歳 電鉄)の 100%子会社として、京浜急行電鉄 暮などのギフト商品分析、顧客分析をそれぞれダッシュボード化。深く細 の創業 100 周年事業の一環で 1989 年に設立。 かい自由分析が必要な場合に活用する。 1996 年 10 月に神奈川県横浜市港南区上大岡 再開発地区の百貨店棟に出店して創業開店し た。京急線の上大岡駅に直結し、隣接する SC 2 つ目は MD 系の商品分析。特定の売り場の商品分析のため、各売り場 のマネージャーやバイヤーなどが利用する、データ抽出ツールだ。 3 つ目は標準帳票と呼ばれるシステム。営業売上を日報・週報・月報・ 株式会社京急百貨店 営業本部 戦略推進部 営業政策・MD 担当 マネージャー 業態のウィング上大岡を含めて、駅立地複合 宮崎 史康氏 港南区を中心に、京浜急行電鉄沿線の南区、 しかし、従来の BI ツールではさまざまな分析が可能な半面、操作には 磯子区、金沢区であり、横浜市営地下鉄のほ 専門知識とノウハウが必要なうえに、パフォーマンスが低く処理に多くの か京浜急行バスをはじめとした 4 社 60 路線のバス交通網が網羅するさら 時間がかかるため、実質的には一部の専門家に分析業務が委ねられ、京急 に広い地域もカバーしている。 百貨店全体の分析をまとめておこなう形になっていた。 商業施設として展開している。 同社の基礎的商勢圏は、上大岡駅が属する 期報・年報・3 年報にタームで切った 18 種類のレポートで構成される。 「これら 3 つの分析手法でバランスを取りながら営業や企画部門に情 報提供をおこなっています」(生島氏) 首都圏有数の郊外型地域ターミナル駅として発展する上大岡の立地 その分析業務を一手に担っていたのが、京 条件を基盤に、顧客を単なる消費購買者ではなく成熟・自立した生活者と 急百貨店 営業本部 戦略推進部 営業政策・ 定める「生活者本位制百貨店」を目指すことで、食品部門の商品力強化と MD 担当の長田芳氏だ。 「分析や集計の依頼は 大型専門店とも協業した店づくりによるワンストップ・ショッピングを提 月に平均で 20 件、政策立案のため年度末には 供。それが地域に広く支持され、安定した経営を実現している。 さらにリクエストが集中します。全館を対象 とした明細数の多い分析を始めると、端末を 営業戦略の精度を向上し、迅速な意思決定を可能にする BI を 半日~終日専有し、ほかの業務がストップし 京急百貨店のビジネスを支えているものの 1 つに、商圏内の顧客が一家 てしまうため、当時は 1 件の分析に 2 週間前 に 1 枚以上保有しているという「京急プレミアポイントカード」がある。 後の納期をお願いしていました。そのため、 このカードから得られる顧客情報や商品・売上情報の収集によってさまざ 株式会社京急百貨店 営業本部 戦略推進部 営業政策・MD 担当 より処理能力の高い BI が必要とされていたの まなビジネス施策をうつことができる。従来は「京急百貨店ポイントカー 長田 芳氏 です」と長田氏は当時の苦労を打ち明ける。 ド」として独自に発行・運用していたが、2004 年に京急グループ内の流 通事業であるスーパーマーケットやショッピングセンターのほか、ホテル 処理スピードやコストパフォーマンスのレベルアップを目指す などのレジャー・サービス事業、タクシーなどの交通事業が共通して利用 そこで、京急百貨店では 2008 年頃から第 1 世代の統合流通システムに する「統合流通システム」を構築し、同時に京急百貨店ポイントカードも おける従来の BI ツール活用の現状分析をおこなう。2008 年 9 月に京浜急 京急グループ共通のポイントカードとなった。 行電鉄側も含めたシステム更新委員会をキックオフした。 京急百貨店では、京急グループがグループ内で共同利用するシステムに 京急グループでは、京浜急行電鉄のグループ戦略部の IT 担当が全体の おいて Oracle データベースを導入したの IT 戦略を構築し、グループ内の株式会社京急システムが情報システム全 を機に、ポイントカードのデータ活用に利 体の管理・運用を統括する。今回の京急百貨店のシステム更新委員会では、 用してきた同社の基幹系 BI システムのパ オラクルパートナーの東芝ソリューション株式会社(以下東芝ソリューシ フ ォ ー マ ン ス 問 題 解 決 の た め Oracle ョン)が構築フェーズで参加した。 Business Intelligence Suite, Enterprise また、生島氏らの情報システム部では、ユーザー部門へのヒアリングや Edition Plus(以下、Oracle BIEE)を導入 アンケートを実施して現状の BI 活用の問題点を抽出。システム更新の方 した。この結果、ダッシュボードへのデー タ抽出と分析作業を大幅に迅速化すると ともに、営業戦略の精度向上と策定までの 時間を大幅に短縮し、迅速な意思決定を可 能にしている。 向性のとりまとめとともに、最適な BI 製品候補を比較検討した。そうし 株式会社京急百貨店 情報システム部 部長補 生島 義英氏 た中、東芝ソリューションが提案した Oracle BIEE が有力な候補として浮 上したという。 「2008 年 8 月と 11 月に、日本オラクルから Oracle BIEE の顧客要件分 析機能の説明とデモを実施してもらい、従来の BI ツールにはないダッシ 「当時、統合流通システムがもっていた顧客管理機能は、DM を発送す ュボード機能などの内容を確認するなかで、これなら使いこなせるかもし るための単純な抽出機能や簡単な商品分析をおこなう機能しかなく、複数 れないと感じました。また、処理スピードの速さや、ユーザー限定で利用 のグループをかけ合わせて関連する購買行動を分析するなどの機能も備 する場合のコストパフォーマンスの高さも確認したことで、当社でも本格 わっていなかったため、構築から 1 年後の 2005 年に、京浜急行電鉄で導 的な BI にチャレンジできると確信したのです」 (生島氏) 入実績のあった Hyperion Intelligence を BI ツールとして活用。京急プレ 2009 年 9 月、京急百貨店は東芝ソリューションを通じて日本オラクル ミアポイントの顧客データを活用し、営業部門からの顧客分析リクエスト に RFP(提案依頼書)を要請。ちなみに従来の Hyperion Intelligence の後 に対応していました」そう説明するのは、京急百貨店 情報システム部 部 継である Hyperion Interactive Reporting は、現在は Oracle BIEE のモジュ 長補の生島義英氏だ。京急百貨店では分析の手段が 3 つ存在すると生島氏 ールとして使用ライセンスが含まれている。 Oracle Customer Case Study また、今回は BI の更改とともに、Oracle Database の新規採用も検討 オラクル製品/サービス選定理由 され、2010 年 6 月には一足先に基本設計がスタート。 翌 7 月に Oracle BIEE ・ パフォーマンスの高さ と Oracle Database の採用が正式に決定した。 ・ ダッシュボード機能の充実 ・ 分析処理スピードの高速化による時間の短縮 最新のデータで営業戦略を策定 2011 年 9 月に、Oracle BIEE を活用した新基幹系 BI システムが本稼動 ・ ユーザー数限定で利用する場合のコストパフォーマンスの高さ ・ 日本オラクルからの直接支援 を開始した。導入後の変化について、生島氏は次のように述べる。 「広くエンドユーザーに向けて情報発信するダッシュボードにより、日 導入プロセス にちや商品コードを設定するだけで迅速にデータを抽出することが可能 2008 年 3 月、 第 1 世代統合流通システムにおける現状分析を開始。2008 になりました。処理が速く、結果がわかりやすく、かつ簡単に運用できる 年 8 月、Oracle BIEE のデモを実施。2008 年 9 月、システム更新委員会 という印象です」 がキックオフ。社内でヒアリング開始。2008 年 11 月、顧客分析要件の提 一方、長田氏の業務環境は大きく変化したという。 「MD 系の個別商品 示とカスタムデモを依頼する。2009 年 9 月 RFP 作成を東芝ソリューショ 分析の BI は処理時間が長く、1 件の分析に 30 分ほどかかりお茶を飲む時 ンに要請する。2010 年 6 月、基本設計がスタート。2010 年 7 月、Oracle 間が作れるほどでしたが、より複雑な分析をおこなうにもかかわらず BIEE の採用を決定。2011 年 9 月、カットオーバー。本稼動開始。 Oracle BIEE は数十秒~1 分程度で処理が完了し、お茶の時間もないほど (本事例は 2013 年 12 月のものです) です。短時間に処理ができるようになったので、従来の BI ツール時代と は比べものにならないほど処理時間が短縮し、分析以外の業務に時間を配 分できるようになりました」 また、従来の BI ツールはセキュリティ管理機能が不十分だったため、 情報システム部内の指定の端末でしか操作ができず、長田氏が毎回出向い て作業をおこなっていたが、Oracle BIEE では自席の端末からでも安全に 操作できるようになり、作業効率が大幅に向上したという。 「顧客の購買集計において、売り場単位やフロア単位での集計を名寄せ し、計算値も変更できるので、分析回数が削減され、パフォーマンスが向 上しました。それにより、分析時のストレスも以前と比べて大きく改善し ています」(長田氏) そして、京急百貨店 営業本部 戦略推進部 営業政策・MD 担当 マネー Oracle Customer 株式会社 京急百貨店 年間売上: 約 420 億円(平成 24 年度) 従業員数: 正社員 約 320 名、パート、アルバイト 約 450 名 オラクル製品とサービス: ・Oracle Business Intelligence Suite, Enterprise Edition Plus ・Oracle Database 課題: ジャーの宮崎史康氏は次のように評価する。「これまでもさまざまな要素 ・ 分析処理に多くの時間を要する BI のパフォーマンスの向上 をかけ合わせた分析を長田さんに頼んでいましたが、従来のツールでは時 ・ 分析を担当する一部の専門家の業務負担の軽減 間がかかっていたため、場合によっては鮮度の落ちた出来合いのデータで ・ グループ共通ポイントカードの顧客情報の有効活用 分析するしかありませんでした。しかし Oracle BIEE に変わってからは最 ・ 鮮度の落ちた出来合いのデータで分析していた営業戦略策定の改善 新のデータで営業戦略を策定することができ、計画の精度が向上したほか、 導入効果: 策定までの時間も大幅に短縮し、迅速な意思決定に役立てられています」 ・ ダッシュボードへのデータ抽出処理が速く、結果が分かりやすく、簡単な運 特に、DM 抽出においては来店回数や売上金額などの条件で変化するた め、分析のレスポンスが高くなければ効果が上がらない。DM 施策を見切 り発車にせず、かつ試行錯誤を行う余裕も生まれたと宮崎氏は指摘する。 目的志向で顧客の悩みに応えようとするオラクルの姿勢 京急プレミアポイントは売上に対する捕捉率が高いという。それは一方 用が可能に ・ 基幹系 BI の分析時間が大幅に短縮し、分析以外の業務に時間を配分が可能に ・ セキュリティ管理機能が強化され作業効率が大幅に向上 ・ 顧客の購買集計で名寄せや計算値の変更が可能になり分析回数が削減 ・ パフォーマンス向上により分析時のストレスが大きく改善 ・ 最新のデータで営業戦略を策定でき、計画の精度が向上 ・ 戦略策定までの時間も大幅に短縮し、迅速な意思決定が実現 で巨大なデータが格納されていることを意味し、分析ツールには高いパフ ・ DM 抽出のレスポンスが改善し、DM 施策の効果を最大化 ォーマンスが求められることになる。Oracle BIEE はその資格を持つ BI ・ DM 施策の確実性が向上し、試行錯誤も可能に だと生島氏は断言する。 Oracle Partner 「BI 導入で最も効果を感じるのはダッシュボードです。ダッシュボー ドで何を見たいのかを明確にすることが仕事の標準化につながります。具 東芝ソリューション株式会社 体的にダッシュボードで何をアウトプットし、何を標準化すべきか、BI www.toshiba-sol.co.jp/ の最も得意な部分を活かすべきです。また、自由分析に関してはやはり専 門知識が必要となります。分析そのもののノウハウがないと、BI を導入 しただけでは問題が解決するわけではありません。この 2 つをしっかり認 識すれば Oracle BIEE は非常に強力なツールになるでしょう」 そして今回のプロジェクトを振り返り生島氏は、「京急システムとして も初めての BI 導入となり、試行錯誤で行われた面もありましたが、日本 オラクルからも直接支援も受けられたことで BI に関する豊富な知識が得 られたことは大きな収穫でした。目的志向で顧客の悩みに積極的に応えよ うとする姿勢は、他のベンダーにはあまり見られないすばらしいサポート の形だと思います」と評価する。 横浜市の“副都心”として発展する上大岡に根を下ろし、豊かな生活文 化の実現と地域社会への貢献を常に立ち返るべき原点とする京急百貨店 は、これからも Oracle BIEE によって良質な商品とサービスの提供を行っ ていく考えだ。 Copyright © 2014, Oracle. All rights reserved. *Oracle と Java は、Oracle Corporation およびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。文中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標である場合があります。 Published February 2014
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