1-3 - 三菱東京UFJ銀行

海外経済フラッシュ
No.2015-2
2015 年 4 月 15 日
中国:2015 年 1-3 月期
1 GDP は前年比+7.0%へ減速
経済調査室
<ポイント>
 1-3 月期の実質 GDP 成長率は前年比+7.0%と、10-12 月期の同+7.3%から減速、
市場予測通りの結果となった。
 住宅市場の調整や過剰設備の削減などの投資の抑制を起点とした景気減速が続く
なか、公共投資と金融緩和を通じた景気の下支えなどにより、鈍化ペースが比較

的緩やかなものにとどまったと捉えることができる。
この先も構造改革の継続により、景気への下押し圧力は根強く、景気失速の回避
と今年の成長目標「7%前後」の達成に向け、財政・金融両面からの下支えが強化
される公算が高いと予想される。
<結果概要>
【実質 GDP 成長率】前年比+7.0%
←
10-12 月期:同+7.3%
前期比+1.3%
←
10-12 月期:同+1.5%
 1-3 月期の実質 GDP 成長率は前年比+7.0%と 10-12 月期から減速、事前の
市場予想(Bloomberg:同+7.0%)と一致。前期比ベースでも+1.3%と、10-12
月期(+1.5%)から減速した。
需要項目の動向を月次指標から見ていくと以下の通り。
【外需】輸出
輸入
前年比+4.9%
←
前年比▲17.3%
10-12 月期:同+8.6%
←
10-12 月期:同▲1.8%
 1-3 月期の輸出(名目)は前年比+4.9%へ鈍化。主要国・地域別では、米
国向けや ASEAN などの新興国向けが伸びを高めた一方、EU 向けが同
+2.4%へ鈍化。日本向けについては同▲11.8%とマイナス幅が拡大した。
 1-3 月期の輸入(名目)は同▲17.3%と二桁のマイナス。主要品目の輸入
量はプラスの伸びを維持するなか、原油や鉄鉱石など資源関連品目での価
格下落が大幅な落ち込みに繋がったとみられる。
 1-3 月期の貿易収支は 1,237 億ドルと前期(1,501 億ドル)から縮小した。
1
2015 年 4 月 15 日
【投資】固定資産投資
前年比+13.5%
←
10-12 月期:同+13.3%
 1-3 月期の固定資産投資(名目、都市部)は前年比+13.5%と、10-12 月期
(同+13.3%)と略同水準を維持。鉱業、製造業、不動産などの減速が続
くなか、鉄道や高速道路など輸送分野での公共投資が伸びを高め、全体を
下支えした格好。
 別統計の 3 月の不動産投資額(年初来累計)は、前年比+8.6%と 2009 年 6
月以来の一桁の伸びとなった。住宅価格については、一部の大都市では下
げ止まりの兆しも窺われるが、高水準の在庫を抱える地方都市を中心に調
整圧力は根強く、3 月末に中国人民銀行および財務部が、住宅購入時の頭
金比率の一部引き下げや住宅売却に係る減税措置などの追加措置を発表
し、住宅市場の梃入れを強化している。
【消費】小売売上高
前年比+13.9%
←
10-12 月期:同+11.7%
 1-3 月期の小売売上高(名目)は前年比+13.9%と 10-12 月期(同+11.7%)
からやや伸びを高めた。内訳をみると、食料品、衣料、通信などが堅調に
推移した一方、石油、自動車、娯楽用品などが低迷。綱紀粛正や住宅市場
の調整などを背景に高額消費を中心に消費の抑制が続くなか、比較的良好
な雇用・所得環境を背景にした一般消費の拡大が下支えしたとみられる。
<コメント>
 1-3 月期の成長率は前年比+7.0%と前期から鈍化。住宅市場の調整や過剰
設備の削減など投資の抑制を起点とした景気減速が強まるなか、公共投資
と金融緩和を通じた景気下支えにより、鈍化ペースは比較的緩やかなもの
にとどまったと捉えることができる。
 金融面では、1-3 月期の新規社会融資総量は前年比▲18.4%と減少したが、
内訳をみると、政府が規制を強めている委託・信託貸付の伸びが大きく減
少した一方、銀行貸出が高い伸びを示しており、金融緩和策による一定の
効果は表れつつあるとみることができる。
 記者会見では、「経済成長ペースは幾分鈍化したものの、雇用や物価等の
経済全体として安定している」との見方が示され、「新常態(ニューノー
マル)」への移行を進めるなかで、成長の質や生産性の向上等に向け、構
造改革を継続する方針が強調された。しかし、この先も不動産市場や過剰
投資の抑制など構造調整に伴う景気への下押し圧力は根強く、景気失速の
2
2015 年 4 月 15 日
回避と今年の成長目標「7%前後」の達成に向け、財政・金融の両面から
の下支えが強化される公算が高いとみられる。
第1図:実質GDPと李克強指数の推移
16
(前年比、%)
(前年比、%)
30
実質GDP成長率〈左目盛〉
李克強指数〈右目盛〉
14
25
12
20
10
15
8
10
6
5
4
0
15
(年)
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
(注)『李克強指数』は、電力消費量、鉄道輸送量、銀行貸出残高の
前年比伸び率から推計したもの。直近は1-2月平均。
(資料)中国国家統計局、中国鉄路総公司、中国電力企業連合会、
中国人民銀行統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
第1表:製造業PMIの推移
2014
2015
9月 10月 11月 12月 1月
2月
総合指数
51.1 50.8 50.3 50.1 49.8 49.9
●新規受注
52.2 51.6 50.9 50.4 50.2 50.4
新規輸出受注
50.2 49.9 48.4 49.1 48.4 48.5
●生産
53.6 53.1 52.5 52.2 51.7 51.4
●入荷遅延
50.1 50.1 50.3 49.9 50.2 49.9
完成品在庫
47.2 47.9 47.2 47.8 48.0 47.0
●原材料在庫
48.8 48.4 47.7 47.5 47.3 48.2
●雇用
48.2 48.4 48.2 48.1 47.9 47.8
購買量
51.2 50.7 50.5 50.1 49.6 49.4
購買価格
47.4 45.1 44.7 43.2 41.9 43.9
生産・活動期待 56.0 54.1 50.2 48.7 47.4 54.0
大企業
52.0 51.9 51.6 51.4 50.3 50.4
中型企業
50.0 49.1 48.4 48.7 49.9 49.4
小型企業
48.6 48.5 47.6 45.5 46.4 48.1
(注)色付けは50未満の箇所。●印は、総合指数の構成項目。
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
第3図:貿易収支と輸出入の四半期推移
第2図:主な業種別にみた鉱工業生産の推移
15
3月
50.1
50.2
48.3
52.1
50.1
48.6
48.0
48.4
49.7
45.0
61.3
51.5
48.3
46.9
(前年比、%)
20
10
(前年比、%)
(億ドル) 2,000
15
1,500
10
1,000
5
500
0
0
5
6
9
12
輸入〈左目盛〉
-10
-1,000
-15
14/3
6
9
12
15/3
(年/月)
(注)1. 1月と2月は平均した値。
2. 業種別の数値のため、ここでの『電力』は電力供給だけでなく設備投資も含む。
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
-1,500
-20
-2,000
13
14
15
(年)
(資料)中国税関統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
第4図:相手先別にみた輸出の四半期推移
25
-500
輸出〈左目盛〉
-5
13/3
貿易収支〈右目盛〉
-5
全体
化学
機械・電子部品
鉄類
電力
0
第5図:業種別にみた固定資産投資の四半期推移
(前年比、%)
50
(前年比、%)
20
40
15
10
30
5
20
0
-5
10
-10
米国
(16.9)
ASEAN
(11.6)
EU
(15.8)
香港
(15.5)
全体
製造業
輸送
不動産
水利・環境・公共施設
0
14/4-6
7-9
10-12
15/1-3
14/4-6
7-9
10-12
15/1-3
14/4-6
7-9
10-12
15/1-3
14/4-6
7-9
10-12
15/1-3
14/4-6
7-9
10-12
15/1-3
-15
-10
日本
(6.4)
-20
(年/月期)
(注)国・地域名下の括弧内の数値は、2014年の輸出全体に占めるシェア。
(資料)中国税関統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
3
11
12
13
14
(注)『不動産』は2014年10-12月期までの数値。他は2015年1-3月期までの数値。
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
15
(年)
2015 年 4 月 15 日
第2表:住宅・不動産関連指標の推移
(前年比、%)
2014年
11月
12月
(前年比)
▲ 3.6
▲ 4.3
(前月比)
▲ 0.6
指標
2015年
1月
2月
▲ 5.1
▲ 5.7
n.a.
▲ 0.39 ▲ 0.43 ▲ 0.42
n.a.
50
住宅価格(70都市平均)
①
不動産投資額
②
(年初来)
不動産着工面積
(年初来)
③
うち住宅着工面積
④
不動産販売面積
(年初来)
うち住宅販売面積
11.9
10.5
10.4
8.6
▲ 9.0
▲ 10.7
▲ 17.7
▲ 18.4
▲ 13.1 ▲ 14.4
▲ 19.8
▲ 20.9
▲ 8.2
▲ 7.6
▲ 16.3
▲ 9.2
▲ 10.0
▲ 9.1
▲ 17.8
▲ 9.8
26.1
24.4
24.6
⑤ 不動産在庫面積
27.8
第6図:主要分野別小売売上高の推移
現状
3月
(注)②~⑤の直近は、1-2月平均値。
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
(前年比、%)
小売計
贅沢品
住宅関連
その他
前年割れ 45
が続く
40
マイナス幅
が再拡大 35
減速傾向 30
25
マイナス幅 20
が再拡大
15
マイナス幅 10
拡大に
5
歯止め
0
増加ペース
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14 15/3
(年)
が鈍化傾向
(注)『贅沢品』は、食品・飲料・タバコ・アルコール、宝石、娯楽用品、文化・事務
用品、自動車を含む。『住宅関連』は、家電製品、家具、建設資材を含む。
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
第7図:消費者物価上昇率と1年物貸出基準金利の推移
10
第8図:分野別にみた生産者物価
(%)
2
実質金利
消費者物価上昇率(前年比)
1年物貸出基準金利
8
(前年比、%)
0
6
-2
4
-4
2
2013年平均
2014年平均
0
直近(2015年3月)
-6
-2
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
(注)『実質金利』は、1年物貸出基準金利-消費者物価上昇率。
(資料)中国国家統計局、中国人民銀行統計より
三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
15
(年)
▲13.9%
-8
全体
鉱業
原材料 製造業
食品
衣服
日用品
耐久
消費財
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
第3表:主な金融指標の推移
第9図:社会融資総量(新規調達額)の四半期推移
9
(兆元)
2014年
(前年比、%) 100
銀行貸出〈左目盛〉
8
銀行貸出以外〈左目盛〉
7
4-6
月
80
社会融資総量の前年比〈右目盛〉
60
6
40
5
20
4
0
3
-20
2
-40
上海
株
・ 株価指数
為 人民元(人民
替 元/ドル)
平均値 2,049
末値
0
12
13
14
(注)『社会融資総量』は、実体経済が金融システム(銀行、証券、保険などの金融機
関ならびに証券市場)から獲得した全ての資金の合計。
(資料)中国人民銀行統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
前期比 10-12 前期比
月
(%)
(%)
1-3
月
前期比
(%)
▲ 0.1 2,203
7.5 2,641
19.9 3,339
26.4
0.7 2,364
15.4 3,235
36.8 3,748
15.9
6.23
2.1
6.17
▲ 1.1
6.15
▲ 0.3
6.24
1.4
末値
6.20
▲ 0.2
6.14
▲ 1.0
6.21
1.1
6.20
▲ 0.1
4-6
月
-80
15 (年)
7-9
月
平均値
7日物レポ 平均値
金利(%) 末値
-60 金 SHIBOR 平均値
利 3ヵ月(%) 末値
1
2,048
前期比
(%)
2015年
10年物国債 平均値
利回り(%) 末値
前期差
(%ポ
イント)
7-9
月
前期差 10-12 前期差
(%ポ
(%ポ
月
イント)
イント)
1-3
月
前期差
(%ポ
イント)
3.29
▲ 0.8
3.62
0.3
3.71
0.1
4.35
0.6
4.70
0.5
2.91
▲ 1.8
5.07
2.2
3.82
▲ 1.3
5.18
▲ 0.4
4.68
▲ 0.5
4.48
▲ 0.2
4.92
0.4
4.75
▲ 0.8
4.54
▲ 0.2
5.14
0.6
4.90
▲ 0.2
4.27
▲ 0.3
4.23
▲ 0.0
3.72
▲ 0.5
3.49
▲ 0.2
4.07
▲ 0.5
3.99
▲ 0.1
3.63
▲ 0.4
3.62
▲ 0.0
(注)『人民元』の騰落率は、プラス表示が人民元下落・ドル上昇を、マイナス表示が人民元上昇・
ドル下落を示す。
(資料)Bloombergより三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
(H27.4.15
福地
亜希
[email protected])
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